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第6話 ウィリアム編4日目 大公との食事会が、始まる? 俯瞰視点(1)
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「よく来てくれたな、ウィリアム君。頭部と目に異常が発生したと聞いているが、もう平気なのか?」
「ええ、幸いにも完治しております。……ギーズ閣下が回復を祈ってくださった、そう伺っております。ひとえに閣下のおかげでございます」
待ち侘びた日が台無しになった日の翌、その午後6時過ぎのこと。ウィリアムは豪華絢爛な大豪邸で、がっしりと握手を交わしていました。
彼を歓迎している相手、ひげを蓄えた男性は、国王の実弟でありこの国の重鎮であるギーズ・ラルズ大公。ウィリアムの実態は自己中心的ですが、外ではまるで別人。自身の立場がより良くなるよう上の者には媚を売り続けており、王族や上級貴族には非常に気に入られているのでした。
――強きに弱く、弱きに強い――。
それが、ウィリアム・オーレスという男なのです。
「閣下。一昨日は約束を違えてしまい、申し訳ございませんでした。折角誘っていただけたのに……。こうして延期していただく事になってしまい、忸怩たるものを感じております」
「ウィリアム君、詫びなど不要だ。今回の原因は十中八九、婚約の破棄のショックが原因。君は被害者なのだからな」
婚約者は、裏では醜い真似をしていたのだ。信じていた者に裏切られるショックは大きい――。長年の『擬態』によってギーズはまんまと騙されており、返ってきたのは同情を含んだ声と視線でした。
「今夜は、輪をかけて豪勢なものを用意した。思う存分食べて飲み、あんな記憶は追い出してしまうといい」
「閣下、痛み入ります。わたくしは、幸せ者でございます」
「はっはっは。目の前にいる男が良い人間ゆえ、あれこれ行いたくなるのだよ。さあ、行くとしよう」
豪奢なエントランスホールに満足げな笑い声が響き渡り、ギーズ直々の案内が始まります。
大勢の使用人によって常に手入れが施され、きらきらと輝きを放つリッチな空間。ウィリアムはいつものようにそんな中を進み、大きな食堂へと入る――直前でした。いつもとは違うことが、発生します。
「最近では、君との食事だけが楽しみなのだよ。ウィリアム君がわたしの子か孫であればと、最近は気が付くとそう考えていでぶっ!?」
すっかり騙されているギーズは快復を心から喜び、かつてない程に上機嫌になっていた。そんな興奮が悪い方向に作用してしまい、自分の左足に右足を引っかかってしまい転倒。赤いカーペットに顔から突っ込んでしまい、この上なく無様な声をあげてしまいました。
「閣下っ!! 大丈夫でございますかっ!?」
「う、うむ。平気だ。すまんな、ウィリアム君。年甲斐もなく舞い上がってしまい――…………」
慌ててしゃがみ、差し出された手を取り、ゆっくりと身体を起こしたギーズ。しかしながら彼はウィリアムを見上げると、一瞬にして詫びの意思を孕んだ笑みは消え去ってしまいました。
彼は一体、なにを見たのでしょうか――。
「ええ、幸いにも完治しております。……ギーズ閣下が回復を祈ってくださった、そう伺っております。ひとえに閣下のおかげでございます」
待ち侘びた日が台無しになった日の翌、その午後6時過ぎのこと。ウィリアムは豪華絢爛な大豪邸で、がっしりと握手を交わしていました。
彼を歓迎している相手、ひげを蓄えた男性は、国王の実弟でありこの国の重鎮であるギーズ・ラルズ大公。ウィリアムの実態は自己中心的ですが、外ではまるで別人。自身の立場がより良くなるよう上の者には媚を売り続けており、王族や上級貴族には非常に気に入られているのでした。
――強きに弱く、弱きに強い――。
それが、ウィリアム・オーレスという男なのです。
「閣下。一昨日は約束を違えてしまい、申し訳ございませんでした。折角誘っていただけたのに……。こうして延期していただく事になってしまい、忸怩たるものを感じております」
「ウィリアム君、詫びなど不要だ。今回の原因は十中八九、婚約の破棄のショックが原因。君は被害者なのだからな」
婚約者は、裏では醜い真似をしていたのだ。信じていた者に裏切られるショックは大きい――。長年の『擬態』によってギーズはまんまと騙されており、返ってきたのは同情を含んだ声と視線でした。
「今夜は、輪をかけて豪勢なものを用意した。思う存分食べて飲み、あんな記憶は追い出してしまうといい」
「閣下、痛み入ります。わたくしは、幸せ者でございます」
「はっはっは。目の前にいる男が良い人間ゆえ、あれこれ行いたくなるのだよ。さあ、行くとしよう」
豪奢なエントランスホールに満足げな笑い声が響き渡り、ギーズ直々の案内が始まります。
大勢の使用人によって常に手入れが施され、きらきらと輝きを放つリッチな空間。ウィリアムはいつものようにそんな中を進み、大きな食堂へと入る――直前でした。いつもとは違うことが、発生します。
「最近では、君との食事だけが楽しみなのだよ。ウィリアム君がわたしの子か孫であればと、最近は気が付くとそう考えていでぶっ!?」
すっかり騙されているギーズは快復を心から喜び、かつてない程に上機嫌になっていた。そんな興奮が悪い方向に作用してしまい、自分の左足に右足を引っかかってしまい転倒。赤いカーペットに顔から突っ込んでしまい、この上なく無様な声をあげてしまいました。
「閣下っ!! 大丈夫でございますかっ!?」
「う、うむ。平気だ。すまんな、ウィリアム君。年甲斐もなく舞い上がってしまい――…………」
慌ててしゃがみ、差し出された手を取り、ゆっくりと身体を起こしたギーズ。しかしながら彼はウィリアムを見上げると、一瞬にして詫びの意思を孕んだ笑みは消え去ってしまいました。
彼は一体、なにを見たのでしょうか――。
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