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第6話 ウィリアム編4日目 大公との食事会が、始まる? 俯瞰視点(3)

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「わたしは今し方、『表情は変えられない』と聞いた。これはどういう事なのだ?」

 鋭く冷めた瞳。過去に1度も向けられたことのない、厳しい視線がウィリアムへと注がれます。

「嗤い顔が動揺を孕んだ必死なものになり、酷い焦りを擁したものとなる。『内心がうっかり顔に出てしまい、必死に誤魔化している』――。それは、わたしの邪推なのだろうか」
「しっ、失礼ですがっ、仰る通りでございます!! なっ、なぜか唐突に顔面の自由が戻ったっ、一時的に戻っていたのです!! 動揺は閣下の誤解を懸命に解こうとする為の、わたくしの意思で変化していた表情! その次の酷い焦りは、再び勝手に発生した表情!! 心の中では『いつの間に自由が戻った!?』と唖然となっており、狼狽する余裕などございませんでした!!」

 これもまた、事実。嘘のような内容ですが、どこにも嘘はありません。
 ですが――

「その言い分は、あまりに無理がある。邪推ではなかったようだな」

 ――荒唐無稽なため、受け入れられません。
 当人であるギーズは勿論の事、従者や使用人たちもおんなじ。ウィリアムにやってくるのは、氷柱のような視線のみでした。

「どうやら長年、勘違いをしていたようだ。ウィリアム・オーレス。君は、わたしが思っていたような男ではなかったのだな」
「かっ、閣下!! ちっ、違いますっ!! わたくしは――」
「人の不幸を嗤う。あれこれ言い訳を並べたて、あまつさえ頭部の痛みという病気の影響を匂わせた。そんな者と、懇意にするつもりはない。この関係は、この瞬間を以て解消とする」

 大公ギーズが何よりも嫌う存在、その1位と2位が『人の不幸を嗤う者』と『言い訳をする者』。ウィリアムは完璧に、絶縁の条件を満たしてしまっていたのでした。

「こたびの解消により、遺産贈与の件もなしとさせてもらう。クラウとミシャにも、その旨を伝えておくようにな」
「かっ、閣下っ!! お待ちくださいっ!! これはっ、これらは本当に――」
「もう、君の声を耳に入れたくはない。……従者ロドベル。速やかにこの国で関係解消の際の手渡す果物ピーチを用意し、この者を外へと案内してやってくれ」
「ぎっ、ギーズ閣下!! かっかぁっ!! お待ちください!! 待ってくださいっ!!」

 彼は必死になって呼び止めますが、ギーズは扉の向こうへと消えて会話は成立せず。そうしてウィリアムは『土地』などの継承権を失い、意気消沈の状態で帰路についたのでした。
 そして――

「くそっっ!! あの糞ジジイめ!! さっさとくたばりやがれ!!」

「どうしてなんだ!? なぜあんな事が起きる!? どうなっているんだっっ!!」

 ――ショックが収まると怒りがこみ上げてきて、馬車内で暴言を吐きつつ激しく暴れ回るウィリアム。
 そんな彼は、すっかり忘れていました。数か月前に仕組んだ悪行により、無表情になってしまった顔面に異変が生じてしまった少女の存在を――。

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