婚約者が、他の女性と内緒で出掛けているのを見つけました。でも、それには理由があったようです

柚木ゆず

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第8話 ギリギリセーフ クララ視点

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(ふぅ。お嬢様、ギリギリセーフでしたね)
(そうね。危ないところだったわ)

 ユリウスが『25C』という意味不明な文字を書いて、マーガレットが一喜一憂したあと再び2人で歩き出す。そんな姿を『ミュゼ』の店内で盗み見ていた私達は、揃って大きく胸を撫で下ろした。

(まさか、あのタイミングでラーゼン様がこちらを見るなんて。予想外でした)

 さり気なく様子を窺っていたら、彼の視線が一瞬こちらに向いて、それ以降意識されるようになってしまった。
 そこで私達は咄嗟に声音を変え、『ライネお姉ちゃん、どれを選んでもいいの?』『うんそうだよ~。ミルファちゃんが好きなのを自由に選んで』と――。姉妹のフリをして、やり過ごしたのよね。

(急遽とはいえわたくしの手によって変装を施していたのに、訝しむなんて。浮気野郎のくせに、いっちょ前に恋人気取りですか?)
(……ジュリア、まだ浮気と決まっていないでしょ? なぜ貴方の中では確定事項になっているのよ)
(だってアレですよアレ!! あんな服を恋人以外に見せますか!? 逆にお聞きしますけど、お嬢様はなぜまだ確信されていないんですかっっ?)
(それは2つあって、1つ目は25Cという数字が理解できない点。2つ目は……………………)
(??? 2つ目は、なんなのですか?)
(………………2つ目は、ユリウスを見ていたら幸せな気持ちになっちゃったからよ)

 私達の姿をじっくり見られている時と、25Cを出したあと。独りでに頬が緩んでしまった。
 理由も根拠も、分からないのだけれど。あれはやはり、私を裏切る行為ではないと思うのよね。

(………………ぇ………………。婚約者が、他の女性と仲良くする姿を見て喜ぶなんて……。失礼ですが、お嬢様って風変わりなマゾだったのですね……)
(貴方ってば、本当に失礼ね。違うわよ。そういう意味じゃないわよ)

 この人のこういう発言は日常茶飯事だし、今のは言葉足らずだった。なのでため息を堪えて説明し、ようやく正しく理解された。

(すみません、つい勘違いをしてしまいました。ただ、お嬢様。先ほど申し上げましたが、その手の感情は命取りになりかねません。目で見た、耳で聞いたことだけ信じましょう)
(分かってる、それを理由に尾行を中止したりはしないわよ。あくまで今の気持ちを口にしただけで、ジュリア。行きましょ)
(はいお嬢様。二人が向かったのは、更に西。そちらにあるスポットといえば、少々遠くなりますが『フィナ公園』ですね。あそこにはお花が沢山咲いているそうですから、それらを見に行くのでしょうか……?)
(その先には確か、目ぼしいお店はなかった。そうかもしれないわね)

 私達はそんなやり取りをしながら、引き続き尾行。再び10メートルほどの距離を保って進んでいると、喉が渇いたらしく2人はカフェで休憩。そして再開後はなぜか早歩きになってたっぷりと遠回りをして、およそ30分後にお洒落なゲートを潜ったのだった――ジュリアの予想通り、フィナ公園に入ったのだった。

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