もしかすると私は、最愛の婚約者に騙されているのかもしれない

柚木ゆず

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第6・5話 アリーの両親に起きていたことと、上乗せされるアリーの罪 俯瞰視点(1)

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「ふぅ。やっと、エリオットアレと自由に会えるようになったようだな。よかった、実によかった」
「ええ、そうねあなた。これでようやく、わたし達の手元に戻ってくるわ」

 エリオットとアリーのいる部屋の、丁度真下。邸内にある広めのリビングスペースで、彼女の両親ことグエントとチエラは安堵の息を吐いていました。
 彼らにとってこの3か月間は、不安が付き纏う3か月間。なぜそうなったのかというと――

『お父様、お母様。お二人のお部屋で、こんなものを見つけましたわ』

 娘であるアリーに、2人の大きな秘密を――汚職の証拠を、発見されてしまったからでした。

『『なっ!? アリーっっ!! なに勝手な真似をして』』
『そんな事は、どうでもいいんですの。それより、お父様お母様。これが明るみになったら、大変、ですわよねぇ?』

 汚職は犯罪。貴族がこの手の罪を犯せば、その程度がどうであれ、貴族籍は即座に剥奪されてしまいます。
 そのためアリーは右手にあるバインダーをこれ見よがしに掲げ、にぃと口元を緩めました。

『どんな時でも正直に、真面目に生きなさい。散々そう教育していたのに、裏では私利私欲に走っていた。その過程で、邪魔な人間を殺害してもいた。最低、ですわねぇ』
『アリー……貴方、告発をするつもり……!? やっ、やめなさい!!』
『そうすれば我が家(いえ)は確実に衰退してしまう!! お前が享受している日々も、全てがなくなってしまうのだぞ!? それでもいいのか!?』
『お父様お母様、落ち着いてくださいな。わたくしは告発するつもりなんて、微塵もありませんわ。わたくしがこれから行うのは、「お願い」。これらを秘密にする代わりに、聞いて欲しい事があるんですの』

 その内容とは、もちろん協力。レオンによるコントロールで様々な対策をしていますが、それでも行き届かない部分は出てきます。
 アリーはそのフォローを、絶対に裏切らない人間・・・・・・・・・・させようと・・・・・していたのです。身近にいる者の弱みを探し回り、見つけていたのです。

『これからお伝えする事を手伝ってくれるのであれば、なにもかにも見て見ぬフリをしますわ。いかがなさいます?』
『『……お前は(あなたは)……。親を、脅迫するつもりか(つもりなの)……!!』』
『どうしても欲しいものがあって、この作戦は僅かな失敗も許されませんの。……ああそうそう。わたくしは別に、お父様達が牢屋送りになっても構いませんのよ? 確かに様々な悪影響がありますけど、わたくしにとっては致命傷にはなりませんしね』
『『ぐ……っっ』』
『でもお父様とお母様にとっては致命傷で、そんな問題が娘に従うだけで解決してしまいますの。最高の条件だとは、思いませんかぁ?』

 そうして2人は首を縦に振り、完全なる成功と証拠を引き換え、という条件で暗躍していました。そして今夜エリオットが自由になったことによって、引き換えの条件が達成。
 彼らはようやく、3か月間の苦しみから解放されようとしていたのでした。

「よかった……! よかった……!!」
「ええ……っ。よかったわ……!!」

 コーヒーを飲みながら、しみじみと喜びを噛み締める2人。でしたが――。そんな安堵の時間は、すぐに終わってしまいます。

 足音もなく侵入してきた、5人の男達の手によって。

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