お姉様を泣かせましたね?

柚木ゆず

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第7話 対応その1 アントワーヌ視点(1)

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「……ん? なんだ、この匂いは――?? み、皆様……? どうされたのですか……?」

 甘い――さっきとはまた異なる匂いを感じたと思っていたら、いつの間にか俺は参加者達に囲まれていた。
 周りにいる人々は真っ青になっていて、真正面にいらっしゃるフィウナ様は顔を真っ赤にして俺を睨みつけている。なんなんだ、これは……?

「え? え……? な、なにが起きてるんだ……?」
『『『『『………………』』』』』
「!!!!!!!!」
「み、皆様っ、フィウナ様っ、お返事をください! なっ、なんなのですか!?」

 周りの真っ青も、正面の真っ赤も、まるで分からない。
 ここは、楽しいパーティーの場なんだぞ? どうなっている……!?

『さすがにマズいと思ったのでしょうね……』
『ええ……。でも、もう遅いですわ……』
「マズイ? 遅い? なっ、なにがですか――あ!! ああ!?」

 思い出した。

『フィウナ様が綺麗? お世辞に決まっているだろう。こんな女が綺麗なはずがない』

『レアン、聞き逃したのかい? なら、もう一度言おう。フィウナ様が綺麗? お世辞に決まっているだろう。こんな女が綺麗なはずがない。と言ったんだ』

 真っ青も真っ赤も、原因は俺だ!!

「ぁ、ぁぁぁ……! ぁぁぁぁぁ……!!」

 なぜか急に本音を言いたくなってしまって……。思っていることを全て、本人の前で口にしてしまった……。

「ちっ、違うんです!! 違うのです!! フィウナ様っ!」
「……なにが、違うんですの?」
「ひっ、日頃のストレスの蓄積なのだと思います!! 俺はっ、おかしくなってしまっていたのです!!」

 相手は侯爵家、格上。しかもこの方は、かなり気難しい方。そんな人のご機嫌を損ねたらどうなるか、そんなの分かり切っている!
 普段の精神状態なら口が裂けても言わない!!

「こたびの愚行っ、心より謝罪し撤回致します!! そんなつもりはありませんでした!! おれ――わたくしめにはっ、お気を逆撫でする意思は微塵もございません! 先ほど申し上げたようにっ、実は膨大なストレスがございまして!! ついっ、本当についっっ! そんな意図はなかったのですが!! おもわず本音が出てしまったのでございますっ!!」
「…………ふぅん」
「ど、どう、なさいましたか……?」
「ほ・ん・ね。ストレス云々は置いておいて、ず~っとそう思っていたのね?」
「!!」

 しまった!!
 動揺のあまり、余計なことまで言ってしまった!

「ちっ、違います!! 違うのです!! こちらも撤回致します!」
「そんなもの、もう要らない。……貴方との縁はここで切らせてもらいますわ。さようなら」
「ごっ、ご慈悲を!! ご慈悲を!!」

 縁を切られてしまったら――侯爵家を敵に回してしまったら大変なことになる。どうにかして元に戻さないと!

「ブスで豚な女は、慈悲なんて持ってないわよぉ……!! ねえ、主催さん。この男が居るなら、わたくし帰らせていただくわ」
「至急、対処させていただきます。……アントワーヌ、君はここにいる資格はない。出ていってもらう」
「待ってくれ! 待ってくれっ!! 頼む!! 頼む――ぁあああああ!!」

 戻さないと、いけないのに……。ザックから強制退場を命じられ、開場から引きずり出されてしまったのだった……。

「お姉様、わたし達も帰らせていただきましょう。大事なお話をしなければなりませんし」
「そうね。アントワーヌ様、失礼いたします」
「ぁ、ぁぁ、ぁぁぁ……」

 そうして俺はひとり、頭を抱えて屋敷に戻る羽目になり……。


 
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