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第12話 知る、本音 アントワーヌ視点(2)
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「あっ、その方! 助けてください襲われているんです!!」
((なっ!?))
さっきまで誰もいなかったのに、運の良いヤツめ……!
俺は殴り掛かっていて、圧倒的に分が悪い。急いで弁解をしないと――
「は? 誰もいない……?」
――慌てて振り返ると、そこには人っ子一人いなかった。
コイツ、誰に向かって言ったんだ……?
「ふ、やっぱり間抜けね。引っかかると思ったわ」
「しま! ブラフだった――ぎあ!?」
股間を激痛が襲い、ひとりで力が抜けて前のめりに崩れ落ちる。
や、やられた……。弱点を、やられた……!
「ぁぐぐぐ……! ぐううううううう……!」
「あらあら、さっきまでの威勢はどこにいったのかしらねぇ? 腫れるところがなくなるまで殴るんじゃなかったのかしらぁ?」
「ぐううううう……! こ、このぉお……!」
「せっかく待ってあげたのに、何もしてこない。なら、わたくしがやるわね? この役立たず!! 役立たずっ!!」
コイツが始めたのは、踏みつけ。蹲って動けない俺の後頭部や背中に、激しい痛みが走る。
「お前のせいで! お前のせいでっ、滅茶苦茶よ!! 最悪!! 最悪っ!! どうしてくれるのよ!!」
((逆だ!! お前のせいだ!! 許せない!! 許さない……!!))
顔面を滅茶苦茶にしてやりたいが、股が痛すぎて動けない……。力が入らない……。
だから、なにもできなくて……。
……踏まれっぱなし……。
1分? 5分? 10分?
分からない。
ただひたすらに踏まれ続け……。不意に痛みを感じなくなり始めて……。意識が遠のきはじめた……。
「あら、もう落ちちゃうのね。……まあいいわ。これ以上やったら人殺しになっちゃいそうだし、このくらいにしてあげる」
((こいつ、め……! こいつ、め……!!))
「全然足りないけれど、わたくしの人生を台無しにした迷惑料。これは全部貰っていくわよ」
暗くなっていく視界の中で、リリナが俺の袋を拾い上げるのが見えた……。
あれには金や衣類が入っていて、絶対に取り返さないといけない。
のに……。なにも、できない……。
((待て……! まて……! ま、てぇ……! ま、て、ぇぇぇ……………………))
許せない相手が、許せないことをしているのに……。
俺は地面に伏せたままで……。ついに、その意識さえも、途絶えてしまったのだった……。
((なっ!?))
さっきまで誰もいなかったのに、運の良いヤツめ……!
俺は殴り掛かっていて、圧倒的に分が悪い。急いで弁解をしないと――
「は? 誰もいない……?」
――慌てて振り返ると、そこには人っ子一人いなかった。
コイツ、誰に向かって言ったんだ……?
「ふ、やっぱり間抜けね。引っかかると思ったわ」
「しま! ブラフだった――ぎあ!?」
股間を激痛が襲い、ひとりで力が抜けて前のめりに崩れ落ちる。
や、やられた……。弱点を、やられた……!
「ぁぐぐぐ……! ぐううううううう……!」
「あらあら、さっきまでの威勢はどこにいったのかしらねぇ? 腫れるところがなくなるまで殴るんじゃなかったのかしらぁ?」
「ぐううううう……! こ、このぉお……!」
「せっかく待ってあげたのに、何もしてこない。なら、わたくしがやるわね? この役立たず!! 役立たずっ!!」
コイツが始めたのは、踏みつけ。蹲って動けない俺の後頭部や背中に、激しい痛みが走る。
「お前のせいで! お前のせいでっ、滅茶苦茶よ!! 最悪!! 最悪っ!! どうしてくれるのよ!!」
((逆だ!! お前のせいだ!! 許せない!! 許さない……!!))
顔面を滅茶苦茶にしてやりたいが、股が痛すぎて動けない……。力が入らない……。
だから、なにもできなくて……。
……踏まれっぱなし……。
1分? 5分? 10分?
分からない。
ただひたすらに踏まれ続け……。不意に痛みを感じなくなり始めて……。意識が遠のきはじめた……。
「あら、もう落ちちゃうのね。……まあいいわ。これ以上やったら人殺しになっちゃいそうだし、このくらいにしてあげる」
((こいつ、め……! こいつ、め……!!))
「全然足りないけれど、わたくしの人生を台無しにした迷惑料。これは全部貰っていくわよ」
暗くなっていく視界の中で、リリナが俺の袋を拾い上げるのが見えた……。
あれには金や衣類が入っていて、絶対に取り返さないといけない。
のに……。なにも、できない……。
((待て……! まて……! ま、てぇ……! ま、て、ぇぇぇ……………………))
許せない相手が、許せないことをしているのに……。
俺は地面に伏せたままで……。ついに、その意識さえも、途絶えてしまったのだった……。
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