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第二話 勘当
しおりを挟む「マーレ。お前を勘当とする。まったく……あのリード子爵という男の才覚は、わがフロアンダー伯爵家のものにしたかったというのに。これでは何のためにお前を育ててきたかわからん。恩義をあだで返しおって」
家に戻るなり、父は不機嫌そうな顔と声で言う。
わかっていたことではあった。
勘当。親子の縁を切るという宣言。
一度ケチのついた娘は、もう由緒正しい家柄には嫁げない。
父はリードの持つ商会運営のノウハウが欲しかったのである。
リードの父は海運王と呼ばれるほど海での商売を制御しているからだ。
つながりができれば、それは利益になるだろう。
父は家族だが、味方ではない。
昔からそうだった。
家の格やお金、地位に執着する人物なのだ。
私たち子どもは生まれたときから政略の道具。それがうまくいかないのなら、いらないということ。
……わかっていてもつらい。
婚約者に裏切られ、娼婦のような女に馬鹿にされ。
あげく実の父親にさえ見限られた。
もう少し優しい言葉が欲しかったと言えば、父は笑うだろうか。
「……わかりました。出ていきます」
「金は出さんぞ。自分の力でなんとかしろ」
それも予想通り。
父にとって金はすべてと言えるのだろう。
着の身着のまま家を出て、私の足は港町に向かう。
思い出のあるこの土地から離れていきたかった。
この場所にいると、誰も味方してくれない事実だけを強く意識してしまうから。
「持ってるのは高級宿ならせいぜい一週間くらいの金額……どこか別の場所へ着いたら、そこで仕事を探そう」
貴族の令嬢でも何でもなくなってしまったのだから、これからは仕事もせねばならない。
そして誰か、今度は本当に大事にしてくれる誰かを探す。
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