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プロローグ

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 言わば俺は死んだ。
 せっかく、今日はコミケの日だと言うのに、向かっている途中、というか、会場の目の前で同士ともだちに手を降りながら横断歩道をわたっているとき、死神のごとく現れたトラックは俺をぐちゃぐちゃに引き裂き、殺した。

 あー。焦ってる。焦ってる。

 トラックから慌てて飛び出る運転手。俺を見て血相を変え、その場にばたりと倒れた。

 あー。二次災害。まぁ、こんなぐちゃぐちゃ死体を見ればそうなるわな。

 ぐちゃぐちゃ死体の俺を見て吐き出している同士ともだち2名。情けないぜ。

 とにかく、俺は死んだ。俺は、27歳で色々あって職を捨て、廃人となり、今では自宅警備員ニートという職を得た。そして、アニメをみたり、ネトモとゲームをしたり、遊んだり、周りから見れば情けないことをしていた。神様はそんな俺を見て怒ったのかもしれない。ろくに働かず、至福三昧の俺に…

 となると行き先は地獄であろうか。地獄にはアニメとかマンガとかあるのかな…アマプラはあるのかな…なんて下らないことを考え、死んでいった。

 とはいえ視界に見えたのは絵に書くような天国にいそうなおじいさんであった。

 「起きたか。哀れな人の子よ。」

 おじいさんは髭をいじりながら俺を見てそう言った。

 「すいませんね。働かないばかりでこんなことになっちゃいまして。」
 「ホッホッホ。自覚はあったんじゃのぉ。」

 やはりそうか。俺の日頃の行い的なものが悪かったということか。

 「だが、お前さんがここへ来たのはお前さんの日頃の行いが悪いからではない。お前さんが一番分かってるだろうに。職を持ってからの辛い日々が。」

 確かに、そうだった。20歳になって、よし!これからバリバリ働くぞと思い、入社した。だが、入社した会社は真のブラック企業で過労によるストレスでうつ病になる人も多数で、そのうちの一人になったという感じである。

 「だから、この死は運のなさ。半ば私のミスということ。」
 「ミス!?あなたのミスで俺は死んだの!?」
 「だから、詫びとして、お前さんの次の人生は飛びっきりスゴいものにしてやるぞよ。」
 「スゴい人生?」
 「少々不謹慎だが、死んでよかった。なんて思うこともあるかもしれない。」
 「そんなに良い人生なんですか?」
 「うむ。期待していてくれ。」

 そして、おじいさんは杖を持った。そして、俺の周りに円を描いた。

 「何をしているの?」
 「転生ゲートを作っている。これでワシが手を叩けば転生する。」
 「ほ、ほぉ。こんなにいきなり。」
 「死んだのもいきなりだろうに。お前さんに怖いものなんて今はないじゃろう。」
 「確かに、そうかもね。」
 「では、武運を祈るぞ。」

 すると、おじいさんはパンっと手を叩いた。
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