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 俺は転生したようだ。何故なら、俺が住む地域とは全く雰囲気が違うからだ。建ち並ぶ住宅街は巨大な樹に。近くのゴミ捨て場は湖に。車の行き交う音は聞いたことのない鳥のさえずりに。

 (本当に転生したんだな。)

 手を上げる。だが、そこには俺の手よりはるかに幼く、小さな可愛らしい手があった。

 (は!?)

 体もとても小さくなっていた。そして、その体も毛布でいっぱいのカゴに入っていた。

 (何これ!?捨てられた状態!?)

 声も出せない。出そうとしても「ぁ」「ぅ」「ぇ」なんてろれつのおかしい声しかでない。確かに、赤ちゃんはまともに喋れないからな。

 (どうすればいいんだこれ。赤ちゃんだから体も上手く動かせねぇ。)

 すると、視界に謎の人影が写った。

 「ありゃりゃ。酷い親がいるもんだ。こんな玉のような可愛い子を捨てるなんて。」

 だが、その人影はあからさまに普通の人のがたいでは無かった。野獣?

 「可哀想に。持ち帰って、養ってやろう。」

 目の前に現れた人影の正体は、野獣ではなかった。筋肉ムキムキの厳つい顔をした大男だった。

 「よしよし。大丈夫だからな。」

 お前誰やねーん!!!っていうツッコミも、この赤ちゃん状態では出来なかった。
 そして、俺はカゴごとその大男に担がれ、何処かへ連れ去られた。

 (どうなるんだ俺。)

 森は日本のとは全く違った。いや、地球のものとは違った。なんか光みたいなのが浮いているし、鳥のさえずりも、この世のものとは思えなかった。つまり、ここは、地球ではない何処かである可能性が高い。

 大男は、湖にぶつかった。

 (どうするんだ?)

 すると、大男は突然上を向いた。

 「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 そう、叫んだのである。

 (おっさん!うるせぇよ!)

 思わず俺も泣いてしまった。そうか。赤ちゃんはこういうときに泣きたくなるんだな。

 「おぉ!すまない!でも大丈夫。これで

 (渡れる?)

 すると、大男は当たり前のように湖を徒歩で渡った。

 (はぁ!?このおっさん何だよ!?)

 「やっぱり湖の上は気持ちが良いねぇ。」

 やはり、ここは地球ではない。何故なら、湖を足で渡るなんて技術は聞いたことが無いからだ。いや、それ以前に裸足で湖を渡っている。靴にジェット機とかそういう次元ではなかった。

 「もうちょっとだぞう。辛抱してくれ。」
 
 大男の家は、どんなものだろうか。人骨で作られた家とか?血まみれの家とか?俺もその一部にされる的な?あんな優しいこと言っといて?
色んな妄想が浮かんだ。そして、そのについた。

 「着いたぞ。」

 そこは、木で作られた小屋のような家だった。
 
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