愛魂aitama~月の寵辱~

奏井れゆな

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第2章 調教

1.男のために生まれた女

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 吉村の手に引かれ、もと来た廊下を戻り、一つめの分岐点で玄関とは違う方向に折れた。そこを突き当たりまで行くと、吉村はいくつか並ぶ戸の一つを開けた。
 なかに促されて入ってみると、壁の一面を占める洗面化粧台がいちばんに目についた。この家のイメージと違い、モダンなパウダールームだった。いかにもお金がかかった家の造りだ。洗面部分は、クラブにあるようなフェイクの大理石ではなく本物だろう。毬亜と吉村、そして運転手の男と若い男が入ってもまったく窮屈じゃないほど広い。
「化粧を落とせ。道具はそろってるはずだ」
 毬亜の躰をまわして洗面台に向かわせ、吉村は背後から手を伸ばしてサイドの棚を開いた。
 その間に、毬亜は正面の鏡に映る自分を見つめた。
 京蔵が云ったとおり、どちらかといえば母親に似ている。目が大きく口もとは丸っぽく、十七歳という年齢を思えば普通かもしれないが、メイクをして二十歳だと偽っても童顔が覗く。鼻は少しつんとして、目口ばかりでなく顎や頬も含め、やや丸みを帯びたパーツとは少しバランスが悪い。母親から綺麗さを欠いたら、ふたりはそっくりになるだろう。
 高校に通っていた頃までは漠然と明るい雰囲気だと云われてきたが、いま、肩下までの髪をハーフアップにして剥きだしにした顔はぼんやりとして表情がない。
 自分で認識しているよりもずっとショックを受けているのかもしれない。毬亜は他人事のようにそう思った。
「どれだ?」
 吉村は鏡越しに毬亜を見下ろし、必要なものを選ばせた。毬亜はクレンジングと洗顔フォームを取って洗面台の隅に置いた。
謙也けんや嵐司あらし、準備しろ」
 後ろに控えている二人が、はい、と低い声で応じる。
 何を準備するのだろう。鏡のなかのふたりは、反対側の壁際に据えられた台付きの棚に向かった。
「早くしろ」
 今度は、吉村の言葉は毬亜に向けられている。
 怖さは不思議と感じることがなく、何があるの? と、その疑問だけがぐるぐると頭のなかで回転していた。
 メイクを落としているさなか、吉村がボレロを捲り、ミニワンピースの背中にあるファスナーを開いていった。
「や」
 洗面台へとわずかに前のめりにした躰をねじってみたが、抵抗は無駄だと口にするかわりに無視されて、吉村はブラジャーのホックを外した。思わず躰を起こすと、ボレロとワンピースとまとめて腕から抜かれていく。メイク落としのオイルにまみれた手をとっさに握りしめた。そう服を買い換えられる余裕はないから、汚しちゃいけないという気持ちのほうが勝って、毬亜は逆らえなかった。
 服が床に落ちると次はショーツに手がかかった。抗議する間もなく引きおろされた。片方だけ脚が持ちあげられて、少し開かされる。
「顔を洗え」
 鏡越しに命令した吉村はその目を伏せていく。背後にいながら毬亜の頭上に余裕で顔を出す。その目の位置からは、毬亜のどこまでが鏡に映しだされて見えるだろう。顔を洗えば躰を伏せることになり見られなくてすむ。そう気づいて洗顔の仕上げにかかった。
 そうして終わろうかというとき、お尻がつかまれた。
「あっ」
 双丘が開かれたかと思うと、お尻のなかに何かが挿入された。
「やだっ」
 躰をひねってもしっかりと握られたお尻だけは動かせない。直後、生ぬるい液体が体内に入ってきた。
「吉村さんっ」
「じっとしてろ」
 お尻は何かを入れる場所ではない。ただし、母は男のモノを簡単に受け入れていた。それどころか快楽を得ていた。その記憶に憂えた予感を覚えながら毬亜は洗面台の縁をつかみ、異質な感覚に怯えて身ぶるいをした。
「力を抜け」
 吉村の言葉と同時に、お尻に当てられていた硬く細い物が離れていく。かわりにもっと太い物が充てがわれてなかに入ろうとする。本能的に力んだが、突然、脚の間を弄られた。
「あっ」
 はじめて触れられた場所は驚くほど繊細なのかもしれない。下半身がかくかくと頼りなくふるえる。それを待っていたかのように――
「あ、ああっ」
 それはなんなのか、押しつけられたものがお尻のなかにすっぽりと入っていった。
「しばらくこのままだ」
 吉村は毬亜の躰をまっすぐに起こすとタオルを手渡した。
 お尻に痛みはないが異物感はある。いま何をされているのか毬亜にはわからない。けれど、何が待っているのかわかっていると思う。ただ、考えたくなかった。
 すぐ傍で衣擦れの音がしていて、タオルで顔を拭いたあと、毬亜は頭を巡らせた。
 すると、吉村が服を脱いでいた。ジャケットからアンダーシャツまで順に取り払い、京蔵よりもずっと艶のある上半身をあらわにしていく。手は下腹部におり、毬亜の目は勝手にその動きを追う。ベルトに手がかかり、スーツパンツのまえがはだけられると、躰にフィットしたグレーのパンツに目が留まった。そこは高く盛りあがっている。
 あの和室で吉村の躰に拘束されているとき、背中にはだんだんと硬くなるモノを感じていた。京蔵と同じように、吉村も当然ながら男だ。
 京蔵もそうだったが、吉村もまた羞恥心はない。ためらいなくスーツパンツごとボクサーパンツをおろした。
 吉村の性器は、それを見下ろす毬亜の目を狙うように上向いていた。
 吉村の手が顔に伸びてきて、毬亜はパッと目線を上げながら息を呑む。後頭部にまわった手が、まとめていた髪を手探りでほどいていく。
「来い」
 吉村は毬亜の腕をつかみ、奥の戸に向かった。

 毬亜はお尻の違和感をどうにかやりすごして歩く。
 折り畳み式の戸が開くと、想像どおりそこは浴室だったが普通とは違っていた。
 広すぎる洗い場に、仕切りもなく隅っこにあるのは洋式のトイレだ。小・中学校の修学旅行で利用したホテルを思いだせば異様なことではない。普通にないのは、ずっとまえ温泉に行ったときに見たマッサージチェアのような椅子が置かれていること、壁一面だけではなく、一部分の天井――椅子の真上に一枚鏡が貼り付けられていることだった。
 換気しているのか、モーターのまわるような音が少しうるさい。
 吉村は毬亜を椅子に連れていき、かがんだかと思うと躰をすくって椅子にのせた。
 背もたれは斜めになって躰がすっぽりと嵌まるようにできていた。ナイロン張りの椅子は少しひんやりして、思わず起きあがろうとしたが簡単にはいかない。吉村に片手を取られれば、もう起きることはかなわなかった。
 椅子には輪っかの半分が開いたホルダーが合わせて四つ、手と足もとにある。吉村は一つ一つに手首と足首を充てがうと輪っかを閉じた。留め金が音を立て、これで毬亜は逃げられない。
「吉村さん……」
 心もとなくなって意味もなく毬亜はつぶやいた。
「おまえは気づけばおれを見ている。そのとおり、おまえが当てにしていいのはおれだけだ。いいな」
 毬亜の呼びかけに、吉村が囁くように応じた。
 気づいてみると、あとのふたりは浴室に入ることなく、戸は閉ざされている。聞こえないように声を落としたのか。
「はい」
 毬亜は深く考えることなく、本能のようなもので返事をしていた。
 吉村が椅子の脇に手をやると椅子が上昇し、それとは別に足もとも浮く。膝が立つまで持ちあがると、次には横に動きだした。足首が固定されている以上、椅子の力のほうが強く、脚を閉じておくことはできなかった。椅子は吉村の腰の高さまで上がり、毬亜の腿が限界近くまで開いて止まった。
 きっと不安は隠せていない。見上げると、胸の谷間に吉村が手のひらを添え、それはなだめられているように感じた。ぴくっと躰が反応するなか、手はそこから中央をおりていく。脚の間に到達したとたん、敏感な場所を手がかすめ、毬亜は小さく呻いた。
 すぐ手が離れたのもつかの間、吉村は花片かへんを指でなぞった。
 あ!
 逃れようと脚を突っぱったが、腰をわずかにひねることしかできない。指はそこを何度かくるりと這いまわったあと離れた。
「濡れてるな」
「……濡れてる?」
 吉村は再度、秘部に触れた。
 んっ。
 捏ねるような動きで、たまらず呻いた。それ以上、声を出さないよう下くちびるを咬(か)み、すると、かすかだったが水を掻くような音を聞きとった。
「濡れてるのがわかるだろう? 母親の感じる姿を見て共鳴したか? それとも、セックスを見て感じたか?」
 ばかにしているわけでも嘲っているわけでもない、淡々とした声で吉村は云う。そのせいか、辱めだと感じていいはずが、そうした気持ちが起きない。毬亜は指が引き起こす感覚に喘ぎながら、ただ首を横に振った。
 吉村は指を放して毬亜にその指を見せる。右手のなかで、関節が太く長い中指だけが確かに濡れていた。それを自分の口もとに持っていった吉村は舌を出し、尖らせた舌先で指を舐める。
「汚いから……!」
 仕事のまえにシャワーを浴びてはいるが、それからもう数時間がたっている。そんな汚れを吉村に舐められていることのほうが、濡れていることよりも恥ずかしかった。
「汚い? だれも触れていない生娘が汚いことはない。それともだれかにやられたか?」
 毬亜は小さく首を横に振った。
 吉村は答えなくてもわかっていた様子で、また舌先で指を舐めまわす。じっと見下ろしてくる眼差しは扇情的で、毬亜をじかにそうしているかのように見せつけた。
 余すところなくぐるりと指先を舐め尽くした吉村は、毬亜の頭上のほうに手を伸ばす。軽い金属音が立った。椅子には物を置くためのトレイがあった。何がのっていたかまでは見ていない。
 何をしているのだろう。首をのけ反らせて振り仰ぐと、吉村の手の内に刃物が見えた。折り畳み式の西洋剃刀だ。
「吉村さん……」
「傷つけるわけじゃない。痛めつけないよう、おまえの反応をちゃんと見るために毛を剃る」
 吉村はプッシュ式の容器からジェルを左の手のひらに落とし、椅子をまわって毬亜の脚の間に来た。ジェルをのせた手のひらが脚の間を滑ると、ひやりとして腰をよじった。吉村はかまわず、秘部に広げて塗りこんでいく。それが終わるまで、焦れったさに近い、なんともいえない感覚が毬亜を襲っていた。
「じっとしてろ」
「は、い」
 硬く、冷たい刃が脚の付け根に当てられる。躰がこわばって手を握りしめた。そこを見るのは怖く、顔を上向けてそう高くない天井を見上げたが、鏡が貼りついているのを忘れていた。自分の恰好がまともに視界に入って毬亜は目を閉じた。
 そうした一瞬の間に焼きついた残像が一つ、まぶたの裏に映って見えた。
「吉村さん……背中……」
「鷹の彫り物だ」
 曖昧に云ったにもかかわらず、吉村は的確に答えた。
 毬亜はおそるおそる閉じた目を開いていく。天井の鏡は吉村の右肩から腕にかけて描かれた黒い模様を映しだすが、鷹だとまでははっきり見取れない。
「あとで、ちゃんと見せてもらえますか」
「かまわん」
「あたし……どうなるんですか」
「答えられない」
 それは、教えられないということか、わからないということか、判別のつかない返事だ。
「怖い」
 不思議だ。冷酷な眼差しで見つめられても、怖いと思っても、吉村を見てしまうのは止められなかった。いまは吉村に対しての怖さがまったくなくなっている。だから、正直に云えるし、逆らおうという気持ちが湧かない。守ってくれるのは吉村だけだ。そんなことを信じている。
 なぜ? 車のなかの――キスのせい?
 しばらく待っても吉村は怖いという言葉に応えなかったが、共有してくれているような気配を感じた。
丹破にわ京蔵はこの丹破一家の総長三代目だ。如仁じょじん会は聞いたことがあるだろう。その一派になる。如仁会はそこら辺に転がっている組織よりも古くから続く。弱肉強食が通る世界で流儀に重きを置く。云ったとおり、丹破総長に従順であれば、おまえの身に危険が及ぶことはない」
 吉村は自分が身を置く場所を簡潔に教え、毬亜の怖さをなぐさめているつもりだろうか、再び忠告した。
「お父さんは……従順じゃなかったの?」
 やはり吉村は答えなかった。それが『いなくなった』ことへの真の答えのような気もした。
 如仁会は確かに聞いたことがある。大きな組織らしく、クラブ自体が如仁会の一派である丹破一家のものだ。係わりたくないから表立って口にすることはないものの、ホステスの間でも話題にのぼる。
 どういった類の組織か、毬亜は自分がされてきたことはわかっているし、世間がどういう認識をしているかというのも知っている。大多数である一般人を表とするなら、少数で固まるこの世界は裏であり、吉村が云う流儀はあくまでも裏の基準であって、表の基準が当てはまるわけではない。
 ここに来てしまった毬亜は、もう裏から逃れることはかなわないかもしれない。
「吉村さん、名前は?」
一月いつき、だ。一つの月と書く」
「何歳ですか」
「四十一だ」
「……奥さんは?」
「いない」
 よかった――と漏れそうになった言葉は寸前で止めた。
 なぜ、という自分への疑問の答えはこの気持ち――『よかった』と通じているような気がした。

 まもなく吉村はかがめていた躰を起こした。剃刀が片づけられ、横の壁にかかったシャワーからお湯が出始める。それを手に取った吉村は毬亜の腿に当てた。
 吉村の手が太腿を撫でる。ぞくっと背中が粟立つ一方で、毬亜はおなかに違和感を覚えた。
 シャワーはもう片方の腿に移り、そして吉村の手と一緒に脚の間に近づいてくる。
 んあっ。
 勢いのついた水滴が躰の中心に集中したとたん、反射的に毬亜の腰はびくついた。秘部の周囲からジェルを落とし、それから吉村は指先でお尻のすぐ上を擦る。
「ここが男を咥える膣口だ」
「あ……やっ」
「感度がいいな。ジェルは落としたはずだがぬめりが取れない」
 吉村の指がなかに侵入すると、思わず腹部に力が入った。またおなかの奥が痛んだものの、軽く揉むような指の動きがシャワーの効果を伴いつつ感覚を刺激すると、そこに意識が移った。指の第一関節だけでもきつく、それがさらに潜ってくるとまた力が入って足先が反りかえった。
「吉村さ……おなか、痛い」
「効いてきたようだな。もう少し耐えろ」
 何が効いてきたのか、吉村はそう云う間も膣内に入れた指をうごめかす。見た目の荒っぽさはその指先には欠片もない。むしろ、驚くほどしなやかに触れまわった。
 おなかの痛みと経験のない感覚をやりすごそうと試みながら、何かを探るようだ、と思っていると――
「はっ、あ、あぅ、んっ……だめっ」
 毬亜の口から堪えようと思う間もなく、ふいを突かれたような悲鳴が飛びだした。吉村の指の接点からふるえが派生する。
「ここだな」
 何が『ここ』なのか。指がそこを揉みこんで、すると急激に尿意が襲ってくる。同時にお尻まで誘発され、崩壊しそうな怖れを抱く。そうすれば痛みはなくなる、そんな腹痛なのだと気づいた。
「いやっ! 吉村……さ、あふっ……漏らしちゃうっ」
「尻から以外なら漏らしていい」
「あ、無理……で……ぁんっ。おなか、痛い! お尻だけ、止める……なんてできな……あっ」
「なら止めるのも手伝ってやる。ここだけで逝ってみろ」
 吉村はシャワーヘッドをお湯の溜まった浴槽のなかに放りこんだ。
 左手の中指が右の指と入れ替わって体内に潜ってくる。違和感はあってもそれは不快さや痛みではなく、むしろ安堵のようなものだった。クチュッと水音を立てて煽られながらも、どうにか声を我慢できるくらいで左の指は出ていく。
 吉村は毬亜の腰をつかんで自分のほうへ引き寄せた。お尻は少し椅子から飛びだし、不安定になった気がして落ちまいとおなかに力が入る。すると鈍痛に呻いた。
なまやかだな」
 吉村はつぶやき、立てた指を双丘の間に沿わせた。尾骨辺りからいたぶるようにゆっくりとのぼってきて、孔口にたどり着く。
 んはっ。
 羞恥心に襲われ、孔口がきゅっと窄まる。その周囲を指が這う。
「そこ、違いますっ」
 毬亜の訴えは無視して、吉村はほぐすように周囲を摩擦していく。
 力めば吉村の手も躰も汚してしまう。触られるのをただ受けとめようとするものの、リラックスすればくすぐったいような感覚が昂っていくばかりだ。そんなことは認められない。孔口を少しでも引き締めようとするけれど、吉村はぬるぬるした指で捏ね、尽く攻めてくる。そうしながら指はだんだんとなかに沈んできた。
「いやっ、そこはいや!」
「そのわりにおまえの穴はひくひくして応えてる。ここでも感じられる。さっき母親を見ただろう」
「ちが……っ」
「いや、愛液が流れてくる。ローションもいらないくらいな。母親もそうだが、おまえも男のために生まれてきたらしい」
 それはまるで母を抱いたことがあるような云い方だった。
「吉村さ……ん?」
 はっきりは訊けない。さっき母にたかる男たちをこの目で見た。その一員になったときがきっと吉村にもあるのだ。
 毬亜が当てにできるのは吉村だけでも、吉村を当てにする人は毬亜だけではない。虚しくなるような、悲しくなるような感情に囚われる。
「詰まらないことを考えるな」
 なんらかを気取けどったふうに放ち、吉村は膣口に指を潜らせる。考えさせまいとする方法としては、何もかもはじめてという、いまの毬亜には有効的だった。
 んんっ。
 躰をひねると、膣内が弄られるのと同時にお尻のなかの異物が引っ張られる。
「はっ、だめっ」
 異物には紐が付いているから引きだすのは簡単だ。けれど、いま抜かれたら粗相をしてしまうに違いなかった。そうされまいとお尻が浮きあがる。
 すると、引っ張られる力が緩む。が、ほっとしたのもつかの間、逆にお尻のなかにも吉村の指が潜ってきた。
「いやっ」
「栓のかわりだ。ここは止めておく。あとは我慢せずに漏らしてみろ」
 吉村はまた膣内を探り始めた。程なく、毬亜の弱点を当てる。指の腹で弾かれると、すぐに漏らしそうな感覚が甦った。
 弄られるほどに、ぐちゅぐちゅと粘り気が増した音に変わっていく。
「あ、いやっ。も……ヘンになりそ……!」
 母が見せた快楽の果てを一度でも経験してしまえば抜けだせないような予感がして、いまさらで怖くなる。その怖さのためか、快楽のためか、躰に身ぶるいが走る。
「逝け。女の絶頂はドラッグに侵されたように何もかもどうでもよくなるらしい。その快楽を味わってみろ」
 なんとか踏ん張っている毬亜を吉村が誘惑する。
 毬亜は無意識で激しく首を横に振った。
 吉村は拒否を許さないとばかりに、ぐりぐりと揉みこむような動きに変えた。
「あ、はうっ……やっ、だめっ、あ、あ、あ……んん――っ」
 腰がせりあがり、そして、毬亜ははじめて快楽の果てに達し、堕とされた。沈んでいく感覚のあと、溜めこんでいたものが躰の中心から迸った。吉村が膣内から指を抜く。そうした吉村を毬亜が濡らしていく。止めたくても止められない。腰ががくがくと上下に揺れて、水を吹きあげる音を毬亜の叫び声が消し去った。
 快楽の頂点はあまりにも強烈な感覚だった。喘いでいるなか、吉村は輪っかの留め具を外していく。躰は痙攣するばかりで、開いた脚は自由になっても閉じられない。その隙を突いて、お尻に埋めこんだ吉村の指がぐるりと回転しながら前後した。
「あうっだ、め……」
 快感を引きだされた場所はそれを憶えている。逝った余韻とおなかがきりきりする痛みと入り混じって毬亜は訳がわからなくなる。
「も、無理っ。わからないのっ……あふっ、やっ……あたし、ああ! 壊れっ……てるの!」
「もう少し耐えろ」
 吉村の指が抜けたとたん、心もとなくなる。
「吉村さ……助けて!」
 無意味な言葉に違いない。
 吉村は毬亜の肩を抱き、膝の裏をすくった。
 何を見られても、これだけは、というのがある。耐えられなかった。
 堪えようと躰が突っぱるのを力で押さえこんだ吉村は隅っこのトイレに毬亜を座らせた。そこに座る習慣と限界だったせいで、自ずと毬亜の意思は崩壊した。同時に吉村が股間に手を入れて紐を引く。
 かがんだ吉村に縋った躰がぶるっとふるう。
 いゃぁああ――っ。
 ショックと、解放感と、羞恥心と、どれがより強いのか。
「見ないで!」
 そう云いながらもかがんだ吉村にしがみついたままで、毬亜は泣きじゃくった。
 やがて迸出する音もやんだ。
「耐えたぶんだけ、ただの生理現象も快感にかわっただろう」
 どういうつもりで吉村がそう云うのかわからない。
「もういや……」
 嗚咽がひどくなる。
「おまえがどうあろうと、なんらためらうことはない」
 その真意はなんなのか捉えられるわけもなく、毬亜は首を振った。
「躰を洗ってやる」
 吉村は水を流すと、自分の首から毬亜の腕をほどいて立ちあがった。
 お湯が満杯になった浴槽からシャワーの管を取りあげると、そのまま手に持って戻ってくる。
 吉村から腕を取られて立ちあがると躰を引き寄せられた。躰が正面から密着したまま、背中にお湯が当たって流れ落ちていく。手のひらが首根っこから肩甲骨、そして腰へとおりていってお尻へと伝う。洗うというよりは撫でまわすような触れ方だった。
 幼い子供みたいにしゃくりあげていた毬亜の嗚咽は徐々におさまっていく。
 その間、吉村のモノが毬亜の下腹部をつつくのを感じていた。かわらず硬くて、それが毬亜に呆れていない証拠のようで、きっと愚かしいのだろう、毬亜はほっとした。
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