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1巻
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「見込んだ? わたしを、ですか」
「だから、おれは弓月工業を譲ったんだろう? 弓月はうちの開発には欠かせない部品屋だ。譲ったという価値をわかれ」
「……丸山さんからそんなことを聞いたことあります」
「なら、おべっかでもなんでもないってわかるだろう。まあ、おれが碓井さんにおべっか使う必要はどこにもないけどな。ずうずうしさも謝るときも、碓井さんには嫌味がない。それが碓井さんの強みだ」
強みという言葉はまえにも聞いた。嫌味がないというのがどういうことかはわからないけれど、またこんなふうに褒められるとは思っていなくて、深津紀は拍子抜けするくらい驚いてしまう。
「ありがとうございます」
と言いつつ、深津紀は城藤がちらりと壁のほうに目をやるしぐさを見て、そこに時計があることを知ると、城藤は話をうまく逸らしたのではないかと思った。
「城藤リーダー、ずうずうしさに嫌味がないなら、話の続きを……遠慮なくずうずうしくなっていいですか」
深津紀は引き止めるように早口で言った。
「それがおれにとって『得する話』になるって言うのか」
「はい。……じゃなくて、そこは城藤リーダーの解釈次第です」
「はっ。『得する話』は釣りか」
「ごめんなさい。そうなります。でも、ウィンウィンの話です、きっと」
「それなら……おれにプレゼンしてみたらいい」
城藤は例のごとく椅子にもたれて、隙あらば取って食う、と豹が威嚇するようにゆったりとかまえた。
プレゼンなんて、仕事みたいだ。
ビジネスライクなウィンウィンという言葉を使ったのは深津紀だ。いや、いまから話すことはビジネスそのものだ、お金が伴わないだけで。それなのに、何かがしっくりこない。
城藤が挑むように顎をしゃくる。ここでためらっている場合ではない。しぐさひとつで深津紀をそんな気にさせるのは、城藤の営業のやり方でもある。
脅しばかりではなく、城藤は人を思うように促すことに長けている。弓月工業に謝罪に行ったときもそうだった。戦艦アニメの話では、城藤は深津紀と鹿島を会話に引きこもうと、解説と見せかけながら自然と質問してしまうように話していた。城藤のそんな営業力に気づくまで、深津紀が自発的にやっていると思わせられていたくらい、巧妙なのだ。
深津紀は観念して――いや、観念するも何も、深津紀がそうしたくてやっていることではあるが、とにかく駄目で元々、と口を開いた。
「わたしがこの会社に入ったのは、簡単に言えば〝デキる女〟を目指しているからです。だれかに頼らなくても生きていくのが理想なんです。でも、人生ってやり直しはきかないし、だからやれることはひととおりやって、本当に完璧な人生を送りたいっていう野望があります。つまりその……結婚と子育ては一度は経験したい。かといって、恋するってよくわからないし、それに、そういう人が現れるのを待ったすえ、アラサーになった頃に子育てで仕事が中断されるような支障が出るよりも、大変な時期を早いうちに一気に乗り越えてしまうほうが、残りをひたすら走っていけると思うんです。正直に言えば、入社するまえからこの会社で結婚相手を見つけられたらという下心もありました。城藤リーダーのこと嫌いじゃないし……わたしが選ぶなんてずうずうしいし、贅沢すぎますけど、女性は面倒だって言われてましたし、親から結婚を急かされてるってことも聞きました。でも子供はいてもいい。それなら、わたし、きっと城藤リーダーにとって都合のいい妻になれると思います。そうじゃなくなったら離婚も受け入れます。だめですか」
深津紀は一気に言い、その間、城藤は黙って耳を傾けていた。その表情からは何を感じているのか、少しも読みとれない。
「つまり、碓井さんはおれとの間に子供が欲しいってことだ」
「はい、もちろん、そういうことです」
「碓井さんに好きな奴が現れたら?」
それが博愛のような意味ではなく、恋という意味だとは察せられる。思いがけない質問に戸惑って、深津紀は少し考えた。
「……城藤リーダーはだれかに負けたって思ったことあります?」
「勝ったとも思ったことはない」
城藤を客観的に見たとき、少し言葉が辛辣な点を除けば良識的だし、容姿も経済力も、問題ないどころかパーフェクトに映る。恋には定義がなくて、よくわからない。そんな深津紀がこれからさき、城藤を差し置いてだれかに恋することがあるのだろうか。それをまわりくどく答えたわけだけれど、城藤の返しもまわりくどい。
「わたしは……いま言ったことが叶ったら満足して、きっと恋するとか、そういう対象として男の人を見ることはない気がします」
「おれが浮気したくなったら?」
「……離婚してください」
再び思いがけない質問を受けて、深津紀は言葉に詰まったうえに、胸が詰まるような感覚も覚えた。そのせいだろうか、城藤の浮気現場だったり、それを見つけたときの自分の感情だったり、そういったことを想像するよりもさきに答えていた。
「つまり、おれは碓井さんに束縛されるわけだ」
城藤は抜かりなく、鋭いところを突いてくる。
「そうなりますね……」
「詰めが甘い」
「はい。あの……少なくとも、子育てっていう夢が叶うまでそうしてもらえたら……。わたし、男性経験がないんですけど、その……愛想尽かされたり飽きられないようにがんばります」
なぜだか城藤はその言葉に目を瞠った。かと思うと、直後には笑いだす。いつもは短かったり皮肉っぽかったり、そんな笑い方しかしないのに、ツボにはまったような心からのものだ。
おかしい話をしたつもりはなく、笑われることで傷つけられたように感じて気を悪くしたのは一瞬、少年ぽくもある城藤の新たな一面を目にして、深津紀のなかにもっと知りたいと欲張りな気持ちが芽生えた。それに伴う、この焦るような気持ちはなんだろうと首をかしげる。
まもなく笑い声がやんで、室内はしんと静まる。城藤へのプロポーズがなんとか叶ったことでいったん解けていた緊張が俄に復活した。成功したか否かはまだわかっていない。
「おもしろいプレゼンだった」
終止符を打つように城藤は立ちあがった。深津紀もまた急いで立ちあがる。
「あの、返事は……考えてもらえるんですか」
焦って呼びかけている間に城藤はテーブルをまわってきた。目の前に立たれて、深津紀はその顔を振り仰ぐ。
「都合のいい妻って言ったことを忘れるなよ、碓井深津紀。契約は成立だ」
びっくり眼の深津紀の瞳に映る城藤の顔がだんだんと大きくなって、すぐにいっぱいに満ちた。
たぶん、成功したのだ。〝たぶん〟と確信が持てないくらい深津紀は混乱している。
煙草の薫りが鼻腔をくすぐり、直後、くちびるがくちびるでふさがれた。
第二章 結婚のメリット
はじめてのキスから――いや、プロポーズした日から十日たった日曜日の今日、互いの家族を呼び、レストランでささやかな結婚祝いの食事会を開いた。
この十日間、〝はじめてのキス〟と、つい深津紀はこだわってしまう。会議室のキスは吸いつくように触れただけで、城藤――否、深津紀も『城藤』となるいまに至っては隆州か――隆州は時間を置かずにくちびるを離した。触れただけで、とそう言うと物足りなく感じているように聞こえる。実際に、不意打ちで混乱したまま襲われて、くちびるに触れた体温がなくなると深津紀はさみしいような気持ちになった。
深津紀の戸惑いを知ってか知らずか、隆州はくちびるを歪めた笑みを浮かべた。それをどう受けとめればいいのかはわからない。隆州は、『打ち合わせは日曜日だ』と言った。『両親に紹介しないとだめだろう?』と続けて問われるまで、仕事のことかと思ったくらい事務的な言い方だった。
プライベートの携帯番号を教え合う間も、深津紀はどきどきするよりも戸惑ってばかりで、拍子抜けするほど普通に残業に戻った。おかげで、気にかけてくれている丸山から、『槙村の件、どうだった?』と訊ねられたときは、『大丈夫でした』とすんなり答えられた。
そうして翌々日の日曜日、打ち合わせで隆州の住み処を訪ねたものの、用事があって時間がないからと極めて端的にすませられた。キスもなかった。
――と思ってしまうあたり、やはり物足りなく感じているのだ。あのキスは契約締結の署名捺印みたいなものだったのか、なんとも無味乾燥な婚約(?)期間だった。
そもそも恋愛のすえに成り立った結婚ではないのだから、そうあっても不思議ではないし、かまわない。そのはずなのに、やはり何かがしっくりこない。何が計画と違っているのだろう。
深津紀が両親に打ち明けたのは、隆州のマンションを訪ねたあと家に帰ってからだった。プロポーズをした日にそうしなかったのは、どこか現実ではない感じがしていたせいだ。あれから仕事を切りあげて帰る段になっても隆州は至って平常どおりで、打ち合わせの日、駅に迎えに行くというメッセージが来るまでは半信半疑だった。隆州に対する大胆な自分の行動も、隆州の承諾も。
深津紀本人がそうなのだから、両親が青天の霹靂とばかりに呆気にとられ、しばらく言葉を失っていたのも致し方ない。その間に隆州のことを話すと、両親の驚きは理解に変わり、そして安堵に変わった。それは、深津紀がひとりっ子であり、行く末を心配していたからこそだ。
母は三十六歳で深津紀を出産したからもう六十歳になる。深津紀が結婚しなければ、同年代の子よりも早く娘が孤独になるのではないかと母は案じていた。確かに、小学生の頃までは同級生の親と比べて両親のことを年上に感じていた。けれど今時、三十代での出産はあたりまえだし、ひとりっ子も多いし、子供を持たないという選択をする人もいれば、もとから結婚しない人も多いのに。とはいえ深津紀自身も結婚したいと意気込んでいたから人のことは言えない。
そして、その碓井家の孤独ぶりはこの顔合わせの食事会にも表れている。出席者は、碓井家は両親のみ、城藤家からは両親と隆州の兄夫婦、そして甥と姪に当たる四歳と二歳の子が参加している。
本来は両家にそれぞれ挨拶をしにいくのが筋だけれど、隆州がかわりに食事会を提案した。深津紀と隆州の家族、そして互いの家族同士は初対面だ。隆州は昨日、深津紀が隆州のマンションに荷物の引っ越しをしたときに両親との挨拶をすませている。
城藤家にとっても結婚は唐突で、貸し切りスペースのなか和気あいあいとは言い難い。
深津紀はといえば、食事もあまり喉を通らない。幼い子供たちの無邪気さに気が紛れ、助けられている。一方で、隆州はマイペースだ。隆州に契約と称された結婚だ。だからここまで冷静でいられるのだろう、言いだした深津紀のほうがあたふたしてばかりだ。
「その拗ねた顔はいったいなんだ」
食事がすんで、デザートが来るのを待っているなか、突然、剥きだしの耳もとに吐息がかかって、背中を中心にしてぞくっとした感覚が走る。深津紀は首をすくめ、危うくあげそうになった悲鳴をどうにか堪えた。恥をかかなくてすんだことにほっとしながら隣を振り向くと、隆州の顔が間近にあった。ドキッと鼓動が高鳴り、深津紀は息を呑んだ。
「……拗ねてません。緊張してるだけです」
動揺から立ち直るまでに二拍くらい要しただろうか、鼓動はまだ乱れていて、それを引き起こした原因から遠ざかるように深津紀はわずかに顔を引き、声を潜めてほかの会話に紛れさせた。
「接客は仕事で慣れてるだろう」
隆州もまた声を忍ばせて呆れたように言う。
「それとこれとは違います」
「せめて笑え。おまえの両親から、おれの能弁ぶりをいかにも信用できないって目で見られてる」
そんなことがあるはずないのに、隆州の言い方は至って真面目だ。それがおかしくて深津紀の口もとが綻ぶ。隆州も釣られたようににやりとした。
「ふたりでこそこそ何を話してるのかしら」
そんな言葉が割りこんで、隆州は深津紀に近づけていた顔をゆっくりと上げていき、自分の母親に目をやった。
「これまで周囲に隠してきたんだ、こそこそするのが癖になってるのかもな」
「そうよね。わたしたちにも内緒にしてるなんて。いきなり『結婚する』だもの」
深津紀の母も会話に混ざり、隆州の言葉に同感しているというよりは、自分を納得させるように何度もうなずいている。
「男の人と付き合うのははじめてだから、言うタイミングを逃してただけ」
深津紀が弁明すると、まさか、と隆州の母親が不穏な気配を漂わせ、いったん言葉を区切った。そうして。
「子供ができたんじゃないでしょうね。だから急いで……」
「母さん」
隆州は薄く笑い、首を横に振りながら母親を制した。
深津紀の両親はぎょっとした目で深津紀と隆州をかわるがわる見やっている。
「どうなの? 体面があるでしょう」
隆州の母親はさすがに隆州の遺伝子の素だけあって、きれいな人だ。それゆえに、顔をしかめるとその威力が増す。
「あ、いえ、わたしたちは……」
「彼女はやっと実績を積みだして仕事に慣れつつある。無責任なことをして台無しにする気はない」
隆州は深津紀をさえぎって諭すようでいながら、きっぱりと伝えた。
「そう? それならいいけど」
「母さん、隆州も三十になる。子供は早いほうがいいだろう、せっかく結婚するんなら。母さんも言ってたじゃないか、隆州に早く結婚してほしいって」
隆州の兄が口を出した。隆州をもっと彫り深くした顔からうんざりした様子が覗けなくもない。
「それはそうだけど……」
「まあ、いいじゃないか」
と、隆州の父親は、完全に納得したわけではない妻をなだめ、深津紀に目を向けて続けた。
「やっと隆州が結婚したいと思う女性に巡り合ったんだ。歓迎するよ、深津紀さん。隆州をよろしく頼む」
「はい、わたしのほうこそよろしくお願いします」
深津紀のあとに次いで、あらためて自分の両親が娘をよろしくと頼んでいるのを眺めながら、深津紀はここでもしっくりこない。なんだろう。隆州の母親からは何かしらの不満が見えるし、父親のほうにも『まあいい』という曖昧さがある。
デザートが運ばれてきて、はしゃぐ子供たちを眺めながらうわの空で笑みを浮かべ、そして深津紀は隣を向いた。そうしたのは同時だったのか、ふたりの目が合い、するとテーブルの下で隆州は手を伸ばして、腿に置いていた深津紀の手の甲に手のひらを重ねた。
大きな手の中で手をひっくり返すと指を絡めてぎゅっと包まれる。握り返すと、上司と部下の関係を飛び越えて個々として近づけた気がして――きっとうまくいく、深津紀はそんな予感めいた心強さを隆州からもらった。
食事後に、父親たちに証人として婚姻届に署名してもらい、どうにか間に合った結婚指輪を家族の前で交換した。ちょっとした儀式の恥ずかしさもありつつ、深津紀はこれまでになく伸びやかな気持ちでうれしくなった。
レストランを出ると、その足で婚姻届を提出して、隆州のマンションに向かった。今日からは深津紀の住み処でもある。
新築で購入してまだ二年目だという住まいは、リビングが広くて2LDKの間取りでも狭くは感じない。個室のひとつは収納用だというが使われることなく、深津紀の家から運んだ段ボール箱が余裕でおさまっている。もうひとつ、寝室として使われている部屋は二分できるくらいに広い。
セキュリティも行き届いたエントランスからエレベーターに乗って七階で降り、ふたりは角部屋にたどり着く。隆州に促されて先になかに入り、靴を脱いで上がった刹那、深津紀はスリッパを履こうとしてとどまった。
「城藤リーダー、これ……」
「呼び方が違う」
途中で隆州はさえぎった。
深津紀が言おうとしたこととはまったく違っていて、なんのことかと考えを巡らせたのは一瞬。
「……癖です。じゃあ隆州さん……これ、ついてなかったですよね」
深津紀はかがんで、スリッパを手に取りながら振り向いた。
まったくなんだ、『じゃあ』って――とぶつぶつ言いながら隆州は顔をしかめた。
「おまえは詰めが甘い。六月の結婚だから、せっかくなら西洋のジンクスにのっかろうってサムシングフォーにこだわったのは深津紀だろう。完璧にするには六ペンスのコインを花嫁の靴の中に入れるってあった。中に入れて外出するのはどうかと思ったから――」
隆州は深津紀の手もとを指差した。ヒール三センチのスリッパは、甲の部分にサテンのリボンがついていて、左足のほうに六ペンスコインのチャームが留められていた。
「だからスリッパに?」
「そういうことだ」
深津紀はびっくりして大きく目を見開き、次いでめいっぱいくちびるに弧を描いた。ジンクスのことを思いついたのは先週の日曜日に打ち合わせをしたあと、結婚が現実だと実感してからだ。その夜に隆州にメッセージを送って、それから一週間のうちにこんなサプライズが待っているとは思ってもいなかった。
隆州は深津紀の笑顔を見て目を細め、それから何かを振り払うように首をひねった。
「しろふ……隆州さんてすごいですね」
「おまえがリサーチ力なさすぎだ。まだまだだな」
その『まだまだ』という言葉で深津紀は隆州に訊ねたかったことを思いだした。
「隆州さん、訊きたいんですけど……」
「早く奥に行け。玄関で話しこむ気か」
隆州に急き立てられつつも深津紀はスリッパに丁寧に足を忍ばせる。これが結婚生活のまさに第一歩だと、感慨深く履き心地を確かめながら奥に向かった。
「コーヒー、淹れてもいい?」
「そういうことで、いちいちおれの許可を取るつもりか。干渉されるのは好きじゃないけど、干渉するのもごめんだ」
新婚らしからぬ突き放した言葉は、つい今し方の幸せな気持ちに水をさす。バッグをリビングのソファに置いて、深津紀はちょっと拗ねた気分ですぐ後ろから来た隆州を見やった。
文句があるなら言ってみろ。そう言いたげに隆州は顎をくいっと上げる。きっとそうすることでこの結婚を勘違いさせないよう、一線を明確にしているのだ。
そのくせ、隆州は深津紀の縁起担ぎにきちんと付き合ってくれた。
サムシングオールドは母からネックレスをもらって、サムシングニューは隆州がパールのチャームをつけてこのマンションのキーをくれた。サムシングボローは隆州の同期の平尾から万年筆を借りて婚姻届に署名をしたし、その婚姻届は青色のオリジナルのものにしたことで、四つめのサムシングブルーも成立した。
それらこそ面倒な儀式にすぎず、隆州はくだらないと言いそうなのに、大事に扱ってくれる。
さっきのようにサプライズで深津紀を喜ばせるのは、言うのが面倒なだけだったのか。それとも隆州が生まれ持った、無意識のなせる気配りスキルなのか。〝営業の達人〟と陰で異名がつけられるのもうなずける。
ただし、深津紀が顧客でない以上、口にする言葉や口調には、飾り気も愛想もない。
「干渉って……しろ……隆州さんのテリトリーをどこまで侵していいのかつかめてないだけです」
深津紀が言い返すと、隆州は何か発見したような様子で目を凝らして、それからにやりとした。
「隙のないフォローだ」
そう言いつつ、深津紀の隙をついて隆州は身をかがめたかと思うと、深津紀の頬をくるみ、わずかに尖らせたくちびるに喰いついてきた。驚いたあまり、深津紀のくちびるが開く。小さな悲鳴は隆州が呑みこみ、引きかけた顔はしっかりと手のひらで固定された。そして、チャンスを逃さず、隆州は開いた口から舌を忍ばせた。
隆州の舌が頬の内側を撫で、奥に伸ばしたかと思うと、深津紀の舌をすくうようにして絡めてくる。甘く感じてしまうのはキスがもたらす作用なのか、うまく呼吸ができず口の中には蜜が溢れて、クチュックチュッと粘着音が絶え間ない。
息苦しいのはキスに不慣れなせいだ。キスはまだ生涯二度目なのに、同化しそうに濃密で、深津紀はキスを受けとめるだけで精いっぱいだ。すぐに酔いがまわるお酒を飲まされているかのようにのぼせていく。
「んんっ」
呼吸するのにも限界が来て、深津紀は大きく喘いだ。すかさず隆州は深津紀の舌を甘噛みして吸いつく。同時に口の中に溜まった蜜を呑みこみ、あとを追うように深津紀もまた残った蜜を呑みくだす。そのしぐさによって舌を巻きこまれた隆州は、唸るように声を発しながら顔を上げた。
深津紀は、いつの間にか閉じていた目をゆっくりと開けていく。視界はほのかにぼやけていて瞬きをした。かすかに開いた深津紀のくちびるに指先が添う。
「言うことなしだ」
荒っぽい吐息と一緒に低い声がつぶやき、その瞳は陰りを帯びてくすんでいる。
「……言うことなし……って?」
「誘惑も、反応も」
「誘惑なんてしてない」
反応していたのはそのとおりで、隆州にとって不足がなかったのなら、この結婚に肝心なことも心配はないはず。キスにのめりこんだのは不意を突かれたせいだ。そうやって別の理由を考えて気を逸らそうとするほどに、深津紀はいま家のなかで隆州とふたりきりであることに緊張している。
「してない? なるほど。無意識にやってるのなら、子作りするにはおれたちは相性がいいんだろうな」
露骨に結婚の目的を口にされると、自分が言いだしたこととはいえ、深津紀は気恥ずかしくなった。
「……そう、なんですか」
「キスはよかった? それとも嫌だった?」
「そんなことない」
隆州は、いったいどっちだ、と笑い――
「コーヒーはおれのぶんも淹れてくれ。ベッドに入るには明るすぎる」
まだ昼の三時だ、とカーテンのない窓の外をちらりと見やった。
深津紀の頬がかっと火照りだして、ごまかすように口を開いた。
「夜は何がいいですか? 食料品の買いだししないと……」
「デリバリーを頼んだ。ビーフシチューの美味しい店がある。コースで来るから何もしなくていい。いくらなんでも結婚した日に料理させるのも料理するのも味気ない」
隆州の気配りは、隆州の言葉を借りれば、言うことなし、だ。
「ありがとうございます」
隆州はなんでもないことのように肩をすくめた。そして問いかけてくる。
「煙草を吸っていいか」
「いちいちわたしに許可取ります?」
冗談混じりにやり返してやれば、隆州は声を出して笑った。
低くこもった笑い声は、録音しておきたいくらい耳を幸せにする。うきうきしてくるこの感じは、深津紀に申し分のない未来を予感させた。これからいくらだって隆州のこの笑い声が聞けるのだ。
隆州の言葉に甘えていちいち訊ねるのをやめ、深津紀はコーヒーを淹れる間に対面式のキッチンを勝手にプチ探検してみた。基本的な調理器具だったり鍋だったり、調味料などのストックもあった。食材も少し備蓄されていて、ちゃんと生活感が見える。
「隆州さん、お料理するんですか」
深津紀はリビングに行き、ソファの前のテーブルにコーヒーを置いた。ジャケットを脱いだ隆州は、ソファに座ってすっかりリラックスした様子で煙草を吹かしている。深津紀は向かい側にまわってラグの上に腰をおろした。
喫煙場所は少ないし、健康にも良くないし、臭いがつくのもいただけないし――と煙草を吸うメリットはゼロに等しいけれど、隆州に限っては深津紀にメリットがある。火をともしたり煙草をつまんだり目を細めて紫煙を吐いたり、それらはしなやかに歩く豹を眺めているような、うっとりした気分になる。言葉を換えるなら、色気だろうか。
「外食ばかりだと飽きる」
「何が得意ですか?」
「好きでやってるわけじゃないから得意ってのはない。食えるように作ってるだけだ。おまえは?」
「カレー。あ、ルーから作ったり長く煮込んだりなんていう面倒なことはしません。市販のルーのブランドにこだわってるだけ」
隆州は不意を食らった顔で「は?」と返し、それからおかしそうに首をひねった。
「それ、得意って言うのか」
「つまり、期待しないでって言いたかったんです。わたしは親と同居してたし、だいたい料理はお母さんが作り置きしてくれてたから、するとしてもチャーハンとか唐揚げ、料理の素を使ったものとか、簡単なものだけ」
「充分だろう。おれも似たようなものだ。それに、べつに深津紀を家政婦がわりにしようと思って、結婚したつもりはない」
その言葉でまた訊きたかったことを思いだした。
「隆州さん、訊いていい?」
「訊くのは深津紀の自由だ。答えるのはおれの自由」
あたりまえのことだけれど、隆州が言うと狡猾に聞こえる。踏みこんでくるなという警告だったり、深津紀が質問を躊躇するように仕向けていたりする可能性が無きにしも非ず。ただし、それで怯むほど深津紀はおとなしくはない。
「訊くっていうより確かめたいんですけど……。今日、子供のこと訊かれたときに、わたしがちゃんと仕事ができるまで待つみたいなこと言ってましたよね?」
「あの場ではああ言わないとおさまらないだろう。早く持ちたいっていうおまえの考えは理解している。ただ、親の世代の感覚だと、妊娠したら仕事はやめるものだからな」
「……やっぱりやめなくちゃならない?」
「それを理由にやめさせられる時代じゃないし、おれがフォローする。そこはおれの出番だ」
聞きたかった言葉が聞けて、深津紀の顔から不安が消えて一気に綻ぶ。
「だから、おれは弓月工業を譲ったんだろう? 弓月はうちの開発には欠かせない部品屋だ。譲ったという価値をわかれ」
「……丸山さんからそんなことを聞いたことあります」
「なら、おべっかでもなんでもないってわかるだろう。まあ、おれが碓井さんにおべっか使う必要はどこにもないけどな。ずうずうしさも謝るときも、碓井さんには嫌味がない。それが碓井さんの強みだ」
強みという言葉はまえにも聞いた。嫌味がないというのがどういうことかはわからないけれど、またこんなふうに褒められるとは思っていなくて、深津紀は拍子抜けするくらい驚いてしまう。
「ありがとうございます」
と言いつつ、深津紀は城藤がちらりと壁のほうに目をやるしぐさを見て、そこに時計があることを知ると、城藤は話をうまく逸らしたのではないかと思った。
「城藤リーダー、ずうずうしさに嫌味がないなら、話の続きを……遠慮なくずうずうしくなっていいですか」
深津紀は引き止めるように早口で言った。
「それがおれにとって『得する話』になるって言うのか」
「はい。……じゃなくて、そこは城藤リーダーの解釈次第です」
「はっ。『得する話』は釣りか」
「ごめんなさい。そうなります。でも、ウィンウィンの話です、きっと」
「それなら……おれにプレゼンしてみたらいい」
城藤は例のごとく椅子にもたれて、隙あらば取って食う、と豹が威嚇するようにゆったりとかまえた。
プレゼンなんて、仕事みたいだ。
ビジネスライクなウィンウィンという言葉を使ったのは深津紀だ。いや、いまから話すことはビジネスそのものだ、お金が伴わないだけで。それなのに、何かがしっくりこない。
城藤が挑むように顎をしゃくる。ここでためらっている場合ではない。しぐさひとつで深津紀をそんな気にさせるのは、城藤の営業のやり方でもある。
脅しばかりではなく、城藤は人を思うように促すことに長けている。弓月工業に謝罪に行ったときもそうだった。戦艦アニメの話では、城藤は深津紀と鹿島を会話に引きこもうと、解説と見せかけながら自然と質問してしまうように話していた。城藤のそんな営業力に気づくまで、深津紀が自発的にやっていると思わせられていたくらい、巧妙なのだ。
深津紀は観念して――いや、観念するも何も、深津紀がそうしたくてやっていることではあるが、とにかく駄目で元々、と口を開いた。
「わたしがこの会社に入ったのは、簡単に言えば〝デキる女〟を目指しているからです。だれかに頼らなくても生きていくのが理想なんです。でも、人生ってやり直しはきかないし、だからやれることはひととおりやって、本当に完璧な人生を送りたいっていう野望があります。つまりその……結婚と子育ては一度は経験したい。かといって、恋するってよくわからないし、それに、そういう人が現れるのを待ったすえ、アラサーになった頃に子育てで仕事が中断されるような支障が出るよりも、大変な時期を早いうちに一気に乗り越えてしまうほうが、残りをひたすら走っていけると思うんです。正直に言えば、入社するまえからこの会社で結婚相手を見つけられたらという下心もありました。城藤リーダーのこと嫌いじゃないし……わたしが選ぶなんてずうずうしいし、贅沢すぎますけど、女性は面倒だって言われてましたし、親から結婚を急かされてるってことも聞きました。でも子供はいてもいい。それなら、わたし、きっと城藤リーダーにとって都合のいい妻になれると思います。そうじゃなくなったら離婚も受け入れます。だめですか」
深津紀は一気に言い、その間、城藤は黙って耳を傾けていた。その表情からは何を感じているのか、少しも読みとれない。
「つまり、碓井さんはおれとの間に子供が欲しいってことだ」
「はい、もちろん、そういうことです」
「碓井さんに好きな奴が現れたら?」
それが博愛のような意味ではなく、恋という意味だとは察せられる。思いがけない質問に戸惑って、深津紀は少し考えた。
「……城藤リーダーはだれかに負けたって思ったことあります?」
「勝ったとも思ったことはない」
城藤を客観的に見たとき、少し言葉が辛辣な点を除けば良識的だし、容姿も経済力も、問題ないどころかパーフェクトに映る。恋には定義がなくて、よくわからない。そんな深津紀がこれからさき、城藤を差し置いてだれかに恋することがあるのだろうか。それをまわりくどく答えたわけだけれど、城藤の返しもまわりくどい。
「わたしは……いま言ったことが叶ったら満足して、きっと恋するとか、そういう対象として男の人を見ることはない気がします」
「おれが浮気したくなったら?」
「……離婚してください」
再び思いがけない質問を受けて、深津紀は言葉に詰まったうえに、胸が詰まるような感覚も覚えた。そのせいだろうか、城藤の浮気現場だったり、それを見つけたときの自分の感情だったり、そういったことを想像するよりもさきに答えていた。
「つまり、おれは碓井さんに束縛されるわけだ」
城藤は抜かりなく、鋭いところを突いてくる。
「そうなりますね……」
「詰めが甘い」
「はい。あの……少なくとも、子育てっていう夢が叶うまでそうしてもらえたら……。わたし、男性経験がないんですけど、その……愛想尽かされたり飽きられないようにがんばります」
なぜだか城藤はその言葉に目を瞠った。かと思うと、直後には笑いだす。いつもは短かったり皮肉っぽかったり、そんな笑い方しかしないのに、ツボにはまったような心からのものだ。
おかしい話をしたつもりはなく、笑われることで傷つけられたように感じて気を悪くしたのは一瞬、少年ぽくもある城藤の新たな一面を目にして、深津紀のなかにもっと知りたいと欲張りな気持ちが芽生えた。それに伴う、この焦るような気持ちはなんだろうと首をかしげる。
まもなく笑い声がやんで、室内はしんと静まる。城藤へのプロポーズがなんとか叶ったことでいったん解けていた緊張が俄に復活した。成功したか否かはまだわかっていない。
「おもしろいプレゼンだった」
終止符を打つように城藤は立ちあがった。深津紀もまた急いで立ちあがる。
「あの、返事は……考えてもらえるんですか」
焦って呼びかけている間に城藤はテーブルをまわってきた。目の前に立たれて、深津紀はその顔を振り仰ぐ。
「都合のいい妻って言ったことを忘れるなよ、碓井深津紀。契約は成立だ」
びっくり眼の深津紀の瞳に映る城藤の顔がだんだんと大きくなって、すぐにいっぱいに満ちた。
たぶん、成功したのだ。〝たぶん〟と確信が持てないくらい深津紀は混乱している。
煙草の薫りが鼻腔をくすぐり、直後、くちびるがくちびるでふさがれた。
第二章 結婚のメリット
はじめてのキスから――いや、プロポーズした日から十日たった日曜日の今日、互いの家族を呼び、レストランでささやかな結婚祝いの食事会を開いた。
この十日間、〝はじめてのキス〟と、つい深津紀はこだわってしまう。会議室のキスは吸いつくように触れただけで、城藤――否、深津紀も『城藤』となるいまに至っては隆州か――隆州は時間を置かずにくちびるを離した。触れただけで、とそう言うと物足りなく感じているように聞こえる。実際に、不意打ちで混乱したまま襲われて、くちびるに触れた体温がなくなると深津紀はさみしいような気持ちになった。
深津紀の戸惑いを知ってか知らずか、隆州はくちびるを歪めた笑みを浮かべた。それをどう受けとめればいいのかはわからない。隆州は、『打ち合わせは日曜日だ』と言った。『両親に紹介しないとだめだろう?』と続けて問われるまで、仕事のことかと思ったくらい事務的な言い方だった。
プライベートの携帯番号を教え合う間も、深津紀はどきどきするよりも戸惑ってばかりで、拍子抜けするほど普通に残業に戻った。おかげで、気にかけてくれている丸山から、『槙村の件、どうだった?』と訊ねられたときは、『大丈夫でした』とすんなり答えられた。
そうして翌々日の日曜日、打ち合わせで隆州の住み処を訪ねたものの、用事があって時間がないからと極めて端的にすませられた。キスもなかった。
――と思ってしまうあたり、やはり物足りなく感じているのだ。あのキスは契約締結の署名捺印みたいなものだったのか、なんとも無味乾燥な婚約(?)期間だった。
そもそも恋愛のすえに成り立った結婚ではないのだから、そうあっても不思議ではないし、かまわない。そのはずなのに、やはり何かがしっくりこない。何が計画と違っているのだろう。
深津紀が両親に打ち明けたのは、隆州のマンションを訪ねたあと家に帰ってからだった。プロポーズをした日にそうしなかったのは、どこか現実ではない感じがしていたせいだ。あれから仕事を切りあげて帰る段になっても隆州は至って平常どおりで、打ち合わせの日、駅に迎えに行くというメッセージが来るまでは半信半疑だった。隆州に対する大胆な自分の行動も、隆州の承諾も。
深津紀本人がそうなのだから、両親が青天の霹靂とばかりに呆気にとられ、しばらく言葉を失っていたのも致し方ない。その間に隆州のことを話すと、両親の驚きは理解に変わり、そして安堵に変わった。それは、深津紀がひとりっ子であり、行く末を心配していたからこそだ。
母は三十六歳で深津紀を出産したからもう六十歳になる。深津紀が結婚しなければ、同年代の子よりも早く娘が孤独になるのではないかと母は案じていた。確かに、小学生の頃までは同級生の親と比べて両親のことを年上に感じていた。けれど今時、三十代での出産はあたりまえだし、ひとりっ子も多いし、子供を持たないという選択をする人もいれば、もとから結婚しない人も多いのに。とはいえ深津紀自身も結婚したいと意気込んでいたから人のことは言えない。
そして、その碓井家の孤独ぶりはこの顔合わせの食事会にも表れている。出席者は、碓井家は両親のみ、城藤家からは両親と隆州の兄夫婦、そして甥と姪に当たる四歳と二歳の子が参加している。
本来は両家にそれぞれ挨拶をしにいくのが筋だけれど、隆州がかわりに食事会を提案した。深津紀と隆州の家族、そして互いの家族同士は初対面だ。隆州は昨日、深津紀が隆州のマンションに荷物の引っ越しをしたときに両親との挨拶をすませている。
城藤家にとっても結婚は唐突で、貸し切りスペースのなか和気あいあいとは言い難い。
深津紀はといえば、食事もあまり喉を通らない。幼い子供たちの無邪気さに気が紛れ、助けられている。一方で、隆州はマイペースだ。隆州に契約と称された結婚だ。だからここまで冷静でいられるのだろう、言いだした深津紀のほうがあたふたしてばかりだ。
「その拗ねた顔はいったいなんだ」
食事がすんで、デザートが来るのを待っているなか、突然、剥きだしの耳もとに吐息がかかって、背中を中心にしてぞくっとした感覚が走る。深津紀は首をすくめ、危うくあげそうになった悲鳴をどうにか堪えた。恥をかかなくてすんだことにほっとしながら隣を振り向くと、隆州の顔が間近にあった。ドキッと鼓動が高鳴り、深津紀は息を呑んだ。
「……拗ねてません。緊張してるだけです」
動揺から立ち直るまでに二拍くらい要しただろうか、鼓動はまだ乱れていて、それを引き起こした原因から遠ざかるように深津紀はわずかに顔を引き、声を潜めてほかの会話に紛れさせた。
「接客は仕事で慣れてるだろう」
隆州もまた声を忍ばせて呆れたように言う。
「それとこれとは違います」
「せめて笑え。おまえの両親から、おれの能弁ぶりをいかにも信用できないって目で見られてる」
そんなことがあるはずないのに、隆州の言い方は至って真面目だ。それがおかしくて深津紀の口もとが綻ぶ。隆州も釣られたようににやりとした。
「ふたりでこそこそ何を話してるのかしら」
そんな言葉が割りこんで、隆州は深津紀に近づけていた顔をゆっくりと上げていき、自分の母親に目をやった。
「これまで周囲に隠してきたんだ、こそこそするのが癖になってるのかもな」
「そうよね。わたしたちにも内緒にしてるなんて。いきなり『結婚する』だもの」
深津紀の母も会話に混ざり、隆州の言葉に同感しているというよりは、自分を納得させるように何度もうなずいている。
「男の人と付き合うのははじめてだから、言うタイミングを逃してただけ」
深津紀が弁明すると、まさか、と隆州の母親が不穏な気配を漂わせ、いったん言葉を区切った。そうして。
「子供ができたんじゃないでしょうね。だから急いで……」
「母さん」
隆州は薄く笑い、首を横に振りながら母親を制した。
深津紀の両親はぎょっとした目で深津紀と隆州をかわるがわる見やっている。
「どうなの? 体面があるでしょう」
隆州の母親はさすがに隆州の遺伝子の素だけあって、きれいな人だ。それゆえに、顔をしかめるとその威力が増す。
「あ、いえ、わたしたちは……」
「彼女はやっと実績を積みだして仕事に慣れつつある。無責任なことをして台無しにする気はない」
隆州は深津紀をさえぎって諭すようでいながら、きっぱりと伝えた。
「そう? それならいいけど」
「母さん、隆州も三十になる。子供は早いほうがいいだろう、せっかく結婚するんなら。母さんも言ってたじゃないか、隆州に早く結婚してほしいって」
隆州の兄が口を出した。隆州をもっと彫り深くした顔からうんざりした様子が覗けなくもない。
「それはそうだけど……」
「まあ、いいじゃないか」
と、隆州の父親は、完全に納得したわけではない妻をなだめ、深津紀に目を向けて続けた。
「やっと隆州が結婚したいと思う女性に巡り合ったんだ。歓迎するよ、深津紀さん。隆州をよろしく頼む」
「はい、わたしのほうこそよろしくお願いします」
深津紀のあとに次いで、あらためて自分の両親が娘をよろしくと頼んでいるのを眺めながら、深津紀はここでもしっくりこない。なんだろう。隆州の母親からは何かしらの不満が見えるし、父親のほうにも『まあいい』という曖昧さがある。
デザートが運ばれてきて、はしゃぐ子供たちを眺めながらうわの空で笑みを浮かべ、そして深津紀は隣を向いた。そうしたのは同時だったのか、ふたりの目が合い、するとテーブルの下で隆州は手を伸ばして、腿に置いていた深津紀の手の甲に手のひらを重ねた。
大きな手の中で手をひっくり返すと指を絡めてぎゅっと包まれる。握り返すと、上司と部下の関係を飛び越えて個々として近づけた気がして――きっとうまくいく、深津紀はそんな予感めいた心強さを隆州からもらった。
食事後に、父親たちに証人として婚姻届に署名してもらい、どうにか間に合った結婚指輪を家族の前で交換した。ちょっとした儀式の恥ずかしさもありつつ、深津紀はこれまでになく伸びやかな気持ちでうれしくなった。
レストランを出ると、その足で婚姻届を提出して、隆州のマンションに向かった。今日からは深津紀の住み処でもある。
新築で購入してまだ二年目だという住まいは、リビングが広くて2LDKの間取りでも狭くは感じない。個室のひとつは収納用だというが使われることなく、深津紀の家から運んだ段ボール箱が余裕でおさまっている。もうひとつ、寝室として使われている部屋は二分できるくらいに広い。
セキュリティも行き届いたエントランスからエレベーターに乗って七階で降り、ふたりは角部屋にたどり着く。隆州に促されて先になかに入り、靴を脱いで上がった刹那、深津紀はスリッパを履こうとしてとどまった。
「城藤リーダー、これ……」
「呼び方が違う」
途中で隆州はさえぎった。
深津紀が言おうとしたこととはまったく違っていて、なんのことかと考えを巡らせたのは一瞬。
「……癖です。じゃあ隆州さん……これ、ついてなかったですよね」
深津紀はかがんで、スリッパを手に取りながら振り向いた。
まったくなんだ、『じゃあ』って――とぶつぶつ言いながら隆州は顔をしかめた。
「おまえは詰めが甘い。六月の結婚だから、せっかくなら西洋のジンクスにのっかろうってサムシングフォーにこだわったのは深津紀だろう。完璧にするには六ペンスのコインを花嫁の靴の中に入れるってあった。中に入れて外出するのはどうかと思ったから――」
隆州は深津紀の手もとを指差した。ヒール三センチのスリッパは、甲の部分にサテンのリボンがついていて、左足のほうに六ペンスコインのチャームが留められていた。
「だからスリッパに?」
「そういうことだ」
深津紀はびっくりして大きく目を見開き、次いでめいっぱいくちびるに弧を描いた。ジンクスのことを思いついたのは先週の日曜日に打ち合わせをしたあと、結婚が現実だと実感してからだ。その夜に隆州にメッセージを送って、それから一週間のうちにこんなサプライズが待っているとは思ってもいなかった。
隆州は深津紀の笑顔を見て目を細め、それから何かを振り払うように首をひねった。
「しろふ……隆州さんてすごいですね」
「おまえがリサーチ力なさすぎだ。まだまだだな」
その『まだまだ』という言葉で深津紀は隆州に訊ねたかったことを思いだした。
「隆州さん、訊きたいんですけど……」
「早く奥に行け。玄関で話しこむ気か」
隆州に急き立てられつつも深津紀はスリッパに丁寧に足を忍ばせる。これが結婚生活のまさに第一歩だと、感慨深く履き心地を確かめながら奥に向かった。
「コーヒー、淹れてもいい?」
「そういうことで、いちいちおれの許可を取るつもりか。干渉されるのは好きじゃないけど、干渉するのもごめんだ」
新婚らしからぬ突き放した言葉は、つい今し方の幸せな気持ちに水をさす。バッグをリビングのソファに置いて、深津紀はちょっと拗ねた気分ですぐ後ろから来た隆州を見やった。
文句があるなら言ってみろ。そう言いたげに隆州は顎をくいっと上げる。きっとそうすることでこの結婚を勘違いさせないよう、一線を明確にしているのだ。
そのくせ、隆州は深津紀の縁起担ぎにきちんと付き合ってくれた。
サムシングオールドは母からネックレスをもらって、サムシングニューは隆州がパールのチャームをつけてこのマンションのキーをくれた。サムシングボローは隆州の同期の平尾から万年筆を借りて婚姻届に署名をしたし、その婚姻届は青色のオリジナルのものにしたことで、四つめのサムシングブルーも成立した。
それらこそ面倒な儀式にすぎず、隆州はくだらないと言いそうなのに、大事に扱ってくれる。
さっきのようにサプライズで深津紀を喜ばせるのは、言うのが面倒なだけだったのか。それとも隆州が生まれ持った、無意識のなせる気配りスキルなのか。〝営業の達人〟と陰で異名がつけられるのもうなずける。
ただし、深津紀が顧客でない以上、口にする言葉や口調には、飾り気も愛想もない。
「干渉って……しろ……隆州さんのテリトリーをどこまで侵していいのかつかめてないだけです」
深津紀が言い返すと、隆州は何か発見したような様子で目を凝らして、それからにやりとした。
「隙のないフォローだ」
そう言いつつ、深津紀の隙をついて隆州は身をかがめたかと思うと、深津紀の頬をくるみ、わずかに尖らせたくちびるに喰いついてきた。驚いたあまり、深津紀のくちびるが開く。小さな悲鳴は隆州が呑みこみ、引きかけた顔はしっかりと手のひらで固定された。そして、チャンスを逃さず、隆州は開いた口から舌を忍ばせた。
隆州の舌が頬の内側を撫で、奥に伸ばしたかと思うと、深津紀の舌をすくうようにして絡めてくる。甘く感じてしまうのはキスがもたらす作用なのか、うまく呼吸ができず口の中には蜜が溢れて、クチュックチュッと粘着音が絶え間ない。
息苦しいのはキスに不慣れなせいだ。キスはまだ生涯二度目なのに、同化しそうに濃密で、深津紀はキスを受けとめるだけで精いっぱいだ。すぐに酔いがまわるお酒を飲まされているかのようにのぼせていく。
「んんっ」
呼吸するのにも限界が来て、深津紀は大きく喘いだ。すかさず隆州は深津紀の舌を甘噛みして吸いつく。同時に口の中に溜まった蜜を呑みこみ、あとを追うように深津紀もまた残った蜜を呑みくだす。そのしぐさによって舌を巻きこまれた隆州は、唸るように声を発しながら顔を上げた。
深津紀は、いつの間にか閉じていた目をゆっくりと開けていく。視界はほのかにぼやけていて瞬きをした。かすかに開いた深津紀のくちびるに指先が添う。
「言うことなしだ」
荒っぽい吐息と一緒に低い声がつぶやき、その瞳は陰りを帯びてくすんでいる。
「……言うことなし……って?」
「誘惑も、反応も」
「誘惑なんてしてない」
反応していたのはそのとおりで、隆州にとって不足がなかったのなら、この結婚に肝心なことも心配はないはず。キスにのめりこんだのは不意を突かれたせいだ。そうやって別の理由を考えて気を逸らそうとするほどに、深津紀はいま家のなかで隆州とふたりきりであることに緊張している。
「してない? なるほど。無意識にやってるのなら、子作りするにはおれたちは相性がいいんだろうな」
露骨に結婚の目的を口にされると、自分が言いだしたこととはいえ、深津紀は気恥ずかしくなった。
「……そう、なんですか」
「キスはよかった? それとも嫌だった?」
「そんなことない」
隆州は、いったいどっちだ、と笑い――
「コーヒーはおれのぶんも淹れてくれ。ベッドに入るには明るすぎる」
まだ昼の三時だ、とカーテンのない窓の外をちらりと見やった。
深津紀の頬がかっと火照りだして、ごまかすように口を開いた。
「夜は何がいいですか? 食料品の買いだししないと……」
「デリバリーを頼んだ。ビーフシチューの美味しい店がある。コースで来るから何もしなくていい。いくらなんでも結婚した日に料理させるのも料理するのも味気ない」
隆州の気配りは、隆州の言葉を借りれば、言うことなし、だ。
「ありがとうございます」
隆州はなんでもないことのように肩をすくめた。そして問いかけてくる。
「煙草を吸っていいか」
「いちいちわたしに許可取ります?」
冗談混じりにやり返してやれば、隆州は声を出して笑った。
低くこもった笑い声は、録音しておきたいくらい耳を幸せにする。うきうきしてくるこの感じは、深津紀に申し分のない未来を予感させた。これからいくらだって隆州のこの笑い声が聞けるのだ。
隆州の言葉に甘えていちいち訊ねるのをやめ、深津紀はコーヒーを淹れる間に対面式のキッチンを勝手にプチ探検してみた。基本的な調理器具だったり鍋だったり、調味料などのストックもあった。食材も少し備蓄されていて、ちゃんと生活感が見える。
「隆州さん、お料理するんですか」
深津紀はリビングに行き、ソファの前のテーブルにコーヒーを置いた。ジャケットを脱いだ隆州は、ソファに座ってすっかりリラックスした様子で煙草を吹かしている。深津紀は向かい側にまわってラグの上に腰をおろした。
喫煙場所は少ないし、健康にも良くないし、臭いがつくのもいただけないし――と煙草を吸うメリットはゼロに等しいけれど、隆州に限っては深津紀にメリットがある。火をともしたり煙草をつまんだり目を細めて紫煙を吐いたり、それらはしなやかに歩く豹を眺めているような、うっとりした気分になる。言葉を換えるなら、色気だろうか。
「外食ばかりだと飽きる」
「何が得意ですか?」
「好きでやってるわけじゃないから得意ってのはない。食えるように作ってるだけだ。おまえは?」
「カレー。あ、ルーから作ったり長く煮込んだりなんていう面倒なことはしません。市販のルーのブランドにこだわってるだけ」
隆州は不意を食らった顔で「は?」と返し、それからおかしそうに首をひねった。
「それ、得意って言うのか」
「つまり、期待しないでって言いたかったんです。わたしは親と同居してたし、だいたい料理はお母さんが作り置きしてくれてたから、するとしてもチャーハンとか唐揚げ、料理の素を使ったものとか、簡単なものだけ」
「充分だろう。おれも似たようなものだ。それに、べつに深津紀を家政婦がわりにしようと思って、結婚したつもりはない」
その言葉でまた訊きたかったことを思いだした。
「隆州さん、訊いていい?」
「訊くのは深津紀の自由だ。答えるのはおれの自由」
あたりまえのことだけれど、隆州が言うと狡猾に聞こえる。踏みこんでくるなという警告だったり、深津紀が質問を躊躇するように仕向けていたりする可能性が無きにしも非ず。ただし、それで怯むほど深津紀はおとなしくはない。
「訊くっていうより確かめたいんですけど……。今日、子供のこと訊かれたときに、わたしがちゃんと仕事ができるまで待つみたいなこと言ってましたよね?」
「あの場ではああ言わないとおさまらないだろう。早く持ちたいっていうおまえの考えは理解している。ただ、親の世代の感覚だと、妊娠したら仕事はやめるものだからな」
「……やっぱりやめなくちゃならない?」
「それを理由にやめさせられる時代じゃないし、おれがフォローする。そこはおれの出番だ」
聞きたかった言葉が聞けて、深津紀の顔から不安が消えて一気に綻ぶ。
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