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アン=マリー女学院からの依頼編
episode534
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生徒たちは授業のため教室にいるのか、校内は静けさに満ちていた。壁が厚いのか、殆ど物音一つ聞こえてこない。時折風に揺らされる木々の葉音がするくらいだ。
「どんなレディたちがいるのか、楽しみにしてきたのになあ~」
心底ガッカリしたようにルーファスが言うと、シビルが顔をしかめる。
「そういうことを、口に出して言わないでくださいよ」
「だーってさあ、まだ今日の授業終了じゃないだろうし。休み時間にかち合えば良かったナ」
「全くもう……」
2人の会話に、クラーラがくすくすと笑う。
「お好みはともかく、良い子たちですよ、当学院の生徒たちは。全寮制なので、ちょっと箱入り気味ですから、あなた方のような傭兵には馴染みがないので、会えば途端に群がられましてよ」
「いいね、いいね。群がられたいっ!」
ルーファスが目を輝かせながら言うと、
「未成年者の群れだがな……」
ぼそっとタルコットがツッコんだ。
「うっ……」
幻想が打ち砕かれて、悲壮感を漂わせながらルーファスはしょげた。そのルーファスの脚を、慰めるようにシビルがポスポス叩く。
「面白い方たちですこと」
「はは……」
笑いながらクラーラが言うと、メルヴィンは苦笑しながら、こっそりため息をついた。”女の園”と言い出さなかっただけマシかな、と思いつつ。
やがて黒檀の扉の前で立ち止まり、クラーラは軽くノックをした。
「院長様、件(くだん)の傭兵の皆様をお連れいたしました」
「入っていただいてください」
「はい。失礼致します」
クラーラは扉を開けると、身体を扉に寄せて、メルヴィンたちに道を譲った。
「失礼します」
メルヴィンを先頭に皆中へ入ると、クラーラが扉を閉める。
「ようこそ皆様、遠くからお疲れになったでしょう」
「お気遣いありがとうございます。これも仕事なので大丈夫です」
メルヴィンの返事に頷き、院長は椅子から立ち上がった。
「当アン=マリー女学院の院長をしております、シェシュティンと申します。早速ですが、ご依頼のことをお話してもよろしいでしょうか?」
赤みを帯びた茶色いドレスに身を包み、白いものの混じった髪はショートボブにしている。姿勢もよく、小柄で上品な老婦人だ。
「はい、お願いします」
「そちらにお掛けください」
シェシュティン院長は応接ソファを皆にすすめ、自らは窓のそばに立った。
温かな湯気をくゆらせた紅茶を、クラーラが運んできてテーブルに並べた。
「クラーラ先生、彼女をここへ」
「はい」
一礼してクラーラが退室する。そして、ほどなくして一人の少女を伴って戻ってきた。
「どんなレディたちがいるのか、楽しみにしてきたのになあ~」
心底ガッカリしたようにルーファスが言うと、シビルが顔をしかめる。
「そういうことを、口に出して言わないでくださいよ」
「だーってさあ、まだ今日の授業終了じゃないだろうし。休み時間にかち合えば良かったナ」
「全くもう……」
2人の会話に、クラーラがくすくすと笑う。
「お好みはともかく、良い子たちですよ、当学院の生徒たちは。全寮制なので、ちょっと箱入り気味ですから、あなた方のような傭兵には馴染みがないので、会えば途端に群がられましてよ」
「いいね、いいね。群がられたいっ!」
ルーファスが目を輝かせながら言うと、
「未成年者の群れだがな……」
ぼそっとタルコットがツッコんだ。
「うっ……」
幻想が打ち砕かれて、悲壮感を漂わせながらルーファスはしょげた。そのルーファスの脚を、慰めるようにシビルがポスポス叩く。
「面白い方たちですこと」
「はは……」
笑いながらクラーラが言うと、メルヴィンは苦笑しながら、こっそりため息をついた。”女の園”と言い出さなかっただけマシかな、と思いつつ。
やがて黒檀の扉の前で立ち止まり、クラーラは軽くノックをした。
「院長様、件(くだん)の傭兵の皆様をお連れいたしました」
「入っていただいてください」
「はい。失礼致します」
クラーラは扉を開けると、身体を扉に寄せて、メルヴィンたちに道を譲った。
「失礼します」
メルヴィンを先頭に皆中へ入ると、クラーラが扉を閉める。
「ようこそ皆様、遠くからお疲れになったでしょう」
「お気遣いありがとうございます。これも仕事なので大丈夫です」
メルヴィンの返事に頷き、院長は椅子から立ち上がった。
「当アン=マリー女学院の院長をしております、シェシュティンと申します。早速ですが、ご依頼のことをお話してもよろしいでしょうか?」
赤みを帯びた茶色いドレスに身を包み、白いものの混じった髪はショートボブにしている。姿勢もよく、小柄で上品な老婦人だ。
「はい、お願いします」
「そちらにお掛けください」
シェシュティン院長は応接ソファを皆にすすめ、自らは窓のそばに立った。
温かな湯気をくゆらせた紅茶を、クラーラが運んできてテーブルに並べた。
「クラーラ先生、彼女をここへ」
「はい」
一礼してクラーラが退室する。そして、ほどなくして一人の少女を伴って戻ってきた。
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