627 / 882
美人コンテスト編
episode564
しおりを挟む
「美人コンテスト?」
この男にしては珍しく、露骨なまでに不可解な表情を浮かべて、その顔をベルトルドに向けていた。
「そうだ! 俺のリッキーを出場させ、当然、当たり前に優勝して賞品をゲットするのだ!」
「誰があなたのですか。――私のリッキーさんが負ける要素は、これっぽっちもありませんからね」
ドヤ顔の2人を更に怪訝そうに見つめ、シ・アティウスはリュリュを見る。
「止めても無駄よ。小娘よりやる気満々なんだから」
呆れ顔でリュリュは肩をすくめてみせた。
仕事の打ち合わせのために、宰相府のベルトルドの執務室には、アルカネット、リュリュ、シ・アティウスの4人が集っていた。
「なにか、良い賞品なんですか? 優勝賞品とは」
「ふっふっふっ、聞いて驚け。あの、ケウルーレの超最高級温泉宿ユリハルシラの招待券だ!」
「お」
シ・アティウスの表情に、ようやく興味深げな色が浮かぶ。
「かなり以前から、ケウルーレに行きたがっていたろう」
「ええ、彼の地には、ある伝説の確認をしに行きたいのです」
「あら、あーたの興味をそそる伝説なんてあるの、温泉地に」
「温泉地として名が轟いたのは、ここ100年くらいのことでしょう。――ケウルーレは、アイオン族の始祖が降り立ち、2番目の妻を迎え、終の住処と定めた地と言われている場所なんです」
「ほほお」
ベルトルドは目をぱちくりさせてシ・アティウスを見る。
「コケマキ・カウプンキは実に神秘的な自由都市です。入国規制を行っているわけではありませんが、場所が場所なだけに、訪れる人も少ない。それだけに漂ってくる噂もあまりない。せいぜいが、ケウルーレの温泉の話題くらいでしょう」
3つの惑星には、それぞれ自由都市というものが、いくつも存在している。
種族統一国家を嫌う人々が集まり、小さな町を興し、そこから都市規模まで発展したものが、自由都市の発祥と言われていた。
この世界で『国』というものは、エグザイル・システムを有していることだ。エグザイル・システムを所有していなければ、『国』を名乗ることができない。それ故、『都市』と呼ばれる。
自由都市はどの国にも属さず、また、支援や救助を受けることもできない。エグザイル・システムもない。その代償に、どの国からも政治・軍事などの圧力受けない。それが、ハワドウレ皇国のような種族統一国家からであってもだ。
コケマキ・カウプンキはワイ・メア大陸の東の果てにある、コケマキ島という大きな島一つを指す。ケウルーレはコケマキ島のほぼ中央にあると言われていた。
「でも、なんでアイオン族の始祖が、ヴィプネン族の惑星ヒイシの島を、終の住処なんかにしたのん?」
そこにロマンスを感じたのか、リュリュが興味津々で身を乗り出す。
「アイオン族の始祖アウリスは、一度は故郷の惑星ペッコで鬼籍に入っています。ですが、とある事件で黄泉がえり、その後惑星ヒイシに渡ったと言われています。何故ヒイシにきたのかは知りません」
「ンまっ、いいわあ~、そういうのって。愛し合う女とともに、終の住処に選ぶなんて、さそいい土地なんでしょうねえ。しかも良い温泉もあるなんて」
「……」
ロマンス話に『温泉』という単語が混ざるだけで、何か場違いなものでも見つけたような気分になるベルトルドだった。
「そんなに興味があるのでしたら、普通にいつでも行けばいいのではないですか?」
アルカネットが不思議そうに言うと、シ・アティウスは首を横に振る。
「入国規制はありませんが、ケウルーレのみ、予約がとれないと入れないようになっているんです。たとえ温泉目的ではなくても、ただの観光でもなんでも、予約制なんです。そしてその予約が全く取れず、行くに行けないんですよ」
「おやまあ…」
「ベルの権威も全く効果がないものねえ」
「フンッ。招待券が手に入れば、好きなだけケウルーレを闊歩出来るんだろう? 来週を楽しみにしているがいい!」
ふふーんと得意顔でベルトルドが言うと、シ・アティウスは苦笑した。
「そいえば、招待券なんてオークションにでもかけられてるんじゃない? かなりの破格だろうけどン」
「ンなもん、とっくに調べ尽くしてある」
「アッフン」
「全ては来週の美人コンテストにかかっている。ああ、待ち遠しい!」
ケウルーレに行けるチャンスが、かなりの勝率でぶら下がっている。これは、是非ともキュッリッキには勝ってもらわなければなるまい。シ・アティウスはひっそりと微笑んだ。
この男にしては珍しく、露骨なまでに不可解な表情を浮かべて、その顔をベルトルドに向けていた。
「そうだ! 俺のリッキーを出場させ、当然、当たり前に優勝して賞品をゲットするのだ!」
「誰があなたのですか。――私のリッキーさんが負ける要素は、これっぽっちもありませんからね」
ドヤ顔の2人を更に怪訝そうに見つめ、シ・アティウスはリュリュを見る。
「止めても無駄よ。小娘よりやる気満々なんだから」
呆れ顔でリュリュは肩をすくめてみせた。
仕事の打ち合わせのために、宰相府のベルトルドの執務室には、アルカネット、リュリュ、シ・アティウスの4人が集っていた。
「なにか、良い賞品なんですか? 優勝賞品とは」
「ふっふっふっ、聞いて驚け。あの、ケウルーレの超最高級温泉宿ユリハルシラの招待券だ!」
「お」
シ・アティウスの表情に、ようやく興味深げな色が浮かぶ。
「かなり以前から、ケウルーレに行きたがっていたろう」
「ええ、彼の地には、ある伝説の確認をしに行きたいのです」
「あら、あーたの興味をそそる伝説なんてあるの、温泉地に」
「温泉地として名が轟いたのは、ここ100年くらいのことでしょう。――ケウルーレは、アイオン族の始祖が降り立ち、2番目の妻を迎え、終の住処と定めた地と言われている場所なんです」
「ほほお」
ベルトルドは目をぱちくりさせてシ・アティウスを見る。
「コケマキ・カウプンキは実に神秘的な自由都市です。入国規制を行っているわけではありませんが、場所が場所なだけに、訪れる人も少ない。それだけに漂ってくる噂もあまりない。せいぜいが、ケウルーレの温泉の話題くらいでしょう」
3つの惑星には、それぞれ自由都市というものが、いくつも存在している。
種族統一国家を嫌う人々が集まり、小さな町を興し、そこから都市規模まで発展したものが、自由都市の発祥と言われていた。
この世界で『国』というものは、エグザイル・システムを有していることだ。エグザイル・システムを所有していなければ、『国』を名乗ることができない。それ故、『都市』と呼ばれる。
自由都市はどの国にも属さず、また、支援や救助を受けることもできない。エグザイル・システムもない。その代償に、どの国からも政治・軍事などの圧力受けない。それが、ハワドウレ皇国のような種族統一国家からであってもだ。
コケマキ・カウプンキはワイ・メア大陸の東の果てにある、コケマキ島という大きな島一つを指す。ケウルーレはコケマキ島のほぼ中央にあると言われていた。
「でも、なんでアイオン族の始祖が、ヴィプネン族の惑星ヒイシの島を、終の住処なんかにしたのん?」
そこにロマンスを感じたのか、リュリュが興味津々で身を乗り出す。
「アイオン族の始祖アウリスは、一度は故郷の惑星ペッコで鬼籍に入っています。ですが、とある事件で黄泉がえり、その後惑星ヒイシに渡ったと言われています。何故ヒイシにきたのかは知りません」
「ンまっ、いいわあ~、そういうのって。愛し合う女とともに、終の住処に選ぶなんて、さそいい土地なんでしょうねえ。しかも良い温泉もあるなんて」
「……」
ロマンス話に『温泉』という単語が混ざるだけで、何か場違いなものでも見つけたような気分になるベルトルドだった。
「そんなに興味があるのでしたら、普通にいつでも行けばいいのではないですか?」
アルカネットが不思議そうに言うと、シ・アティウスは首を横に振る。
「入国規制はありませんが、ケウルーレのみ、予約がとれないと入れないようになっているんです。たとえ温泉目的ではなくても、ただの観光でもなんでも、予約制なんです。そしてその予約が全く取れず、行くに行けないんですよ」
「おやまあ…」
「ベルの権威も全く効果がないものねえ」
「フンッ。招待券が手に入れば、好きなだけケウルーレを闊歩出来るんだろう? 来週を楽しみにしているがいい!」
ふふーんと得意顔でベルトルドが言うと、シ・アティウスは苦笑した。
「そいえば、招待券なんてオークションにでもかけられてるんじゃない? かなりの破格だろうけどン」
「ンなもん、とっくに調べ尽くしてある」
「アッフン」
「全ては来週の美人コンテストにかかっている。ああ、待ち遠しい!」
ケウルーレに行けるチャンスが、かなりの勝率でぶら下がっている。これは、是非ともキュッリッキには勝ってもらわなければなるまい。シ・アティウスはひっそりと微笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―
kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。
しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。
帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。
帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる