片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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美人コンテスト編

episode610

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 しんみりムードをヴァルトの「ハラヘッター」でぶち壊され、自然とお開きになると、ベルトルドは散歩してくると言って部屋を出た。

 ちなみに今も、リュリュは柱に縛り付けてある。

「アイツの口からマトモな言葉を聞いたことがないぞ…ったく」

 なんだか酷くガッカリした気分になって、玄関の方を目指していると、廊下の向こうにキュッリッキを見つけた。

「リッキー!」

 名を呼びながら、ベルトルドは足取り軽くすっ飛んで行った。

「俺のリッキー!」

 飛びかかるように抱きしめ、頭にスリスリと頬を擦り付ける。

「ふゅにゅ~~ベルトルドさん」

「愛してるぞ、リッキ~」

 抱きしめてきて、キスを雨のように降らせてくる。何度言っても止めようとしないので、もうキュッリッキは言うのを諦めていた。

 ここまで度を越してはいないが、仲のいい父娘はこんなもんと、ルーファスやマリオンが言っていたからだ。

 恋人はメルヴィンで、ベルトルド――とアルカネット――は父親のような存在。キュッリッキの中では、そういう位置づけになっている。

「ベルトルドさんホカホカしてる」

「今しがたまで、露天風呂に入っていたからな。リッキーも一緒に露天風呂に入ろう、な?」

「ダメなの」

「リッキぃ…」

 速攻拒否られる。

「そいえば、どっか行く途中だったの? ベルトルドさん」

「ああ、散歩か売店にでも行こうかと考えていた」

「売店?」

「うむ。屋敷の使用人やら職場の身近な連中に、何か土産でも買っていこうと思ってな。俺は話のワカル上司だから」

「お土産かあ~」

 キリ夫妻も一緒にライオン傭兵団総出で来ているし、ファニーやハドリーも一緒だ。ベルトルドたちもいるから、特別お土産をあげたいヒトがキュッリッキにはいない。

「そうだリッキー、お土産選びを手伝ってもらえるかな? リトヴァや屋敷の連中のは、リッキーが選んでくれたら、皆も喜ぶ」

「うわぁ! うん、アタシ手伝うよ!」

 ずっとお世話になった人たちだ。キュッリッキは張り切った。

「ありがとう、リッキー」

 ベルトルドはニッコリ微笑んだ。

「売店どっちかな~」

 キュッリッキは身体を前に向けた、その瞬間、

「キャッ」

「うわっ」

 誰かとぶつかり、尻餅をついてしまった。

「大丈夫かリッキー!?」

 慌ててベルトルドはしゃがみ、倒れたキュッリッキを助け起こす。

「うん、大丈夫なの。えと、ぶつかってごめんなさい」

 立ち上がりざま顔を上げると、キュッリッキは目を見張って凍りついた。

「すいません、僕の方こそ」

 明るい赤に近い茶色の髪は短く刈られ、ややつり目の美しい青年は、この宿の従業員の服を着ていた。

「よそ見をしていて、お客様に気づかず、大変失礼をしてしまいました。本当に大丈夫ですか?」

「怪我はしていないようだな。リッキー、大丈夫かい?」

 立ち上がったまま動かないキュッリッキを、ベルトルドと従業員は心配そうに覗き込む。すると、今まで身を隠していたフェンリルとフローズヴィトニルが姿を現し、従業員に向けて歯を剥いて威嚇しだした。

「ぬ、どうした、フェンリル、フローズヴィトニル」

 2匹の様子に多少驚き、ベルトルドは眉をしかめて、困惑している従業員の顔を見つめる。

 記憶の糸を何度も手繰り寄せ、そして一人の名を見つけた。

「貴様、アルッティという、あの少年か」

「え?」

 従業員の青年は、突如名を言い当てられて目を見開いた。

「なんで、僕の名前を知っているんですか?」

 不思議そうにするアルッティに、ベルトルドは見た者が腰を抜かすほど目を鋭くして、アルッティを睨みつけた。

「この子に見覚えがあるだろう」

 動かぬキュッリッキの小さな肩に、そっと両手を置く。

「貴様が幼き頃、修道院の崖の上から突き落とした、キュッリッキだ」

 途端、アルッティの顔が恐怖に歪み始めた。

「思い出したか、この鈍感が。彼女は速攻思い出したのにな」

「あっ…、あれは……」

 アルッティは後ろによろめき、へにゃりと腰をつく。そして、ジリジリと後退る。

「僕は…、生きて、生きてたんだオマエ…生きてた…」

 脂汗を流し、口はワナワナと震え、アルッティの茶色の瞳は恐怖に縮む。

「うわ、うわああああああ」

 アルッティは身体を起こしながら後ろに向けて走り出した。まろびながら、そして叫び声をあげ続け、あっという間に姿を消してしまった。
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