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召喚士編
episode648
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目を覚まして身を起こすと、アルカネットは小さく息をつく。時計を見ると、まだ朝の4時を少しばかり回った頃だ。
隣を見ると、キュッリッキとベルトルドがぐっすりと眠っている。
キュッリッキの無防備で愛らしい寝顔に、アルカネットは自然と笑みが漏れた。
毎日でも見ていたいこの寝顔、しかし、今では週に一度しか拝めない。
キュッリッキはエルダー街の、ライオン傭兵団のアジトに帰ってしまい、テレビを見に水曜日にしか戻ってきてくれないのだ。
ベルトルドの屋敷がキュッリッキの本当の家となっているが、キュッリッキにとってそれはあくまで書類上のこと。帰るべき家は、エルダー街のアジトだとキュッリッキは思っているので、アルカネットもベルトルドも心から残念だった。
それでも久しぶりにこうして一緒に寝ることができて――ベルトルドが非常に邪魔――嬉しいが、昨夜の寝る前の会話を思い出して、アルカネットはズキリと痛んだ胸を押さえた。
「アタシとベルトルドさん、親娘(おやこ)みたいに見えるんだ~」
キュッリッキの言葉を思い出し、再び胸が痛む。
感心したように言い、嬉しそうな表情をしていた。
親娘の関係を求めているのなら、それをベルトルドに感じてくれているなら幸いだ。自分とは男女の関係になれる。なのに何故、親娘を求めるような感情が、ベルトルドに向いたことに、こんなにも心が痛むのだろうか。
アルカネットは急に目眩を感じたが、静かにベッドを出ると、ふらつく足で急いで部屋を出た。
翌朝キュッリッキは目を覚ますと、左右に寝ていた筈のベルトルドとアルカネットがいないので首をかしげた。サイドテーブルに置いてある時計を見ると、まだ朝の6時を回ったところだ。
アルカネットが早起きをしているのは不思議に思わないが、ベルトルドが寝ていないことには驚いた。
「今日は雨かな……」
キュッリッキは起き上がると、モソモソとベッドから出る。そしてフェンリルたちの寝ているソファのそばにあるテーブルの上を見て、書類が消えているのに気がついた。
「お仕事してるのかな。ベルトルドさんも起きてるのはビックリ」
いつもあれだけ起こしても起きないベルトルドが、自分から起きているのは本当に驚くばかりだ。
「さーて、顔洗ってこよ」
着替えを済ませると、キュッリッキは部屋を出た。
「あ、リトヴァさん、おはよう~」
「おはようございます、お嬢様」
「ベルトルドさん、もう起きてるの?」
「はい。書斎でアルカネット様とお仕事をなさっていたようです。先ほど終えられ、ご自分のお部屋に戻られていると思いますよ」
「やっぱ、ベルトルドさん、ちゃんと起きられたんだ……」
ベルトルドの寝起きの悪さをしみじみ判っている2人は、毎日こうならいいのに、という気持ちを乗せたため息をついた。
キュッリッキはふと、リトヴァが手にしているものに目を向けた。
「アルカネット様の手袋でございます。玄関ホールで脱がれたのでしょう、お忘れになっていたので、今からお届けに行くところです」
「アタシが届けてくる!」
「あら、そうですか? では、お願いいたします」
「任せて!」
本来なら、この屋敷の令嬢であるキュッリッキに、おつかいなどさせてはいけない。しかしキュッリッキが行ったほうが喜ぶだろうことを心得ているので、あえてリトヴァはキュッリッキに任せた。
リトヴァから手袋を受け取ると、キュッリッキはアルカネットの部屋へ向かった。
アルカネットの部屋も東棟にある。とにかく大きく広い屋敷なので、リトヴァが見えなくなると、キュッリッキは走り出した。屋敷の中で走っていると怒られるからである。
部屋の前に着いて、キュッリッキは扉をノックした。
暫く待っても返事がなく、ちょっと考え込み、そして扉をそっと開けてみる。
「アルカネットさん、いるー?」
部屋の中に入ると、カーテンは全て開けられて、室内は明るい陽光で満ちている。ベッドには寝た形跡がなく、誰もいなかった。
「そいえば、アルカネットさんの部屋に入ったの初めてかも」
ベルトルドの部屋へは何度も入ったことがあるが、アルカネットの部屋は初めてだ。
テーブルの上に手袋を置くと、キュッリッキはベッドのサイドテーブルの写真立てに気がついた。
不思議とそれに興味を覚え、近づいて写真立てを手に取ってみる。そしてその写真を見て、思わず目を見張った。
「あれ? アタシ??」
小さく声を上げたところで、人の気配を感じて振り向いた。
「アルカネットさん」
隣を見ると、キュッリッキとベルトルドがぐっすりと眠っている。
キュッリッキの無防備で愛らしい寝顔に、アルカネットは自然と笑みが漏れた。
毎日でも見ていたいこの寝顔、しかし、今では週に一度しか拝めない。
キュッリッキはエルダー街の、ライオン傭兵団のアジトに帰ってしまい、テレビを見に水曜日にしか戻ってきてくれないのだ。
ベルトルドの屋敷がキュッリッキの本当の家となっているが、キュッリッキにとってそれはあくまで書類上のこと。帰るべき家は、エルダー街のアジトだとキュッリッキは思っているので、アルカネットもベルトルドも心から残念だった。
それでも久しぶりにこうして一緒に寝ることができて――ベルトルドが非常に邪魔――嬉しいが、昨夜の寝る前の会話を思い出して、アルカネットはズキリと痛んだ胸を押さえた。
「アタシとベルトルドさん、親娘(おやこ)みたいに見えるんだ~」
キュッリッキの言葉を思い出し、再び胸が痛む。
感心したように言い、嬉しそうな表情をしていた。
親娘の関係を求めているのなら、それをベルトルドに感じてくれているなら幸いだ。自分とは男女の関係になれる。なのに何故、親娘を求めるような感情が、ベルトルドに向いたことに、こんなにも心が痛むのだろうか。
アルカネットは急に目眩を感じたが、静かにベッドを出ると、ふらつく足で急いで部屋を出た。
翌朝キュッリッキは目を覚ますと、左右に寝ていた筈のベルトルドとアルカネットがいないので首をかしげた。サイドテーブルに置いてある時計を見ると、まだ朝の6時を回ったところだ。
アルカネットが早起きをしているのは不思議に思わないが、ベルトルドが寝ていないことには驚いた。
「今日は雨かな……」
キュッリッキは起き上がると、モソモソとベッドから出る。そしてフェンリルたちの寝ているソファのそばにあるテーブルの上を見て、書類が消えているのに気がついた。
「お仕事してるのかな。ベルトルドさんも起きてるのはビックリ」
いつもあれだけ起こしても起きないベルトルドが、自分から起きているのは本当に驚くばかりだ。
「さーて、顔洗ってこよ」
着替えを済ませると、キュッリッキは部屋を出た。
「あ、リトヴァさん、おはよう~」
「おはようございます、お嬢様」
「ベルトルドさん、もう起きてるの?」
「はい。書斎でアルカネット様とお仕事をなさっていたようです。先ほど終えられ、ご自分のお部屋に戻られていると思いますよ」
「やっぱ、ベルトルドさん、ちゃんと起きられたんだ……」
ベルトルドの寝起きの悪さをしみじみ判っている2人は、毎日こうならいいのに、という気持ちを乗せたため息をついた。
キュッリッキはふと、リトヴァが手にしているものに目を向けた。
「アルカネット様の手袋でございます。玄関ホールで脱がれたのでしょう、お忘れになっていたので、今からお届けに行くところです」
「アタシが届けてくる!」
「あら、そうですか? では、お願いいたします」
「任せて!」
本来なら、この屋敷の令嬢であるキュッリッキに、おつかいなどさせてはいけない。しかしキュッリッキが行ったほうが喜ぶだろうことを心得ているので、あえてリトヴァはキュッリッキに任せた。
リトヴァから手袋を受け取ると、キュッリッキはアルカネットの部屋へ向かった。
アルカネットの部屋も東棟にある。とにかく大きく広い屋敷なので、リトヴァが見えなくなると、キュッリッキは走り出した。屋敷の中で走っていると怒られるからである。
部屋の前に着いて、キュッリッキは扉をノックした。
暫く待っても返事がなく、ちょっと考え込み、そして扉をそっと開けてみる。
「アルカネットさん、いるー?」
部屋の中に入ると、カーテンは全て開けられて、室内は明るい陽光で満ちている。ベッドには寝た形跡がなく、誰もいなかった。
「そいえば、アルカネットさんの部屋に入ったの初めてかも」
ベルトルドの部屋へは何度も入ったことがあるが、アルカネットの部屋は初めてだ。
テーブルの上に手袋を置くと、キュッリッキはベッドのサイドテーブルの写真立てに気がついた。
不思議とそれに興味を覚え、近づいて写真立てを手に取ってみる。そしてその写真を見て、思わず目を見張った。
「あれ? アタシ??」
小さく声を上げたところで、人の気配を感じて振り向いた。
「アルカネットさん」
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