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フリングホルニ編
episode745
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「フった直後で、ユリディスの前で嬉しそうに言うな」
憮然とキュッリッキは呟いた。
「やっぱりそう思うでしょ! あの時も今も、私もそう思うもの!」
両手を握り拳にして、ユリディスも憤然と言った。
「乙女心判ってないよね。二重に谷底へ蹴落とすようなものじゃん」
「傷口にナイフを突き立てて、さらに抉るような行為よ」
キュッリッキもユリディスも、眉をヒクつかせながら、映像に映るヒューゴを睨みつけていた。
「いや……アレはその、今見ると配慮がなかったなーって思うけど、やっぱしその……ごめん」
突然情けなさの滲む男の声が割って入り、キュッリッキは飛び上がるように身体を跳ねさせて振り向いた。
「ユーレイ!!」
ビシッと指をつきつけ、キュッリッキは叫んだ。
「やあ、また遭ったね、ユリディスと同じ力を持つ少女」
エルアーラ遺跡で出会ったヒューゴが、笑顔でそこに立っていた。
「まあヒューゴ、やっと姿を現してくれたのね」
「うん。なんか、散々な言われようで、弁解したくなって…」
別段驚いてもいないユリディスに、ヒューゴは困ったようにウインクしてみせる。
キュッリッキは目を見開いて、口をぱくぱくと動かした。
「どうしてアンタがこんなところにいるのよ? って、ああ、キミに渡したボクの力の欠片に、ボクの思念を少し残していたんだ」
「……あの、なんにもしてくれなかった役立たずの意味不明の青い玉7個ね」
「うっ…」
キュッリッキの恨めしそうな目を受けて、ヒューゴは喉をつまらせた。実際何もしてないのだから、そう言われてもしょうがない。
ヒューゴは明後日の方向へ視線を泳がせながら、ガシガシと頭を掻くと、小さくため息をついた。
「実は、キミを守るためにボクの力をあげたわけじゃないんだ。いつかこうしてレディトゥス・システムにキミが閉じ込められるだろうことを予測して、ユリディスを呼び覚ますために持たせていたんだ」
キュッリッキは訝しげに眉をひそめる。
「ユリディスと同じ力を持つ、アルケラの巫女がフリングホルニに現れたということは、遠からずレディトゥス・システムに閉じ込められるということだ。――ボクはてっきり、ヤルヴィレフト王家の関係者によってそうされると思っていたけど、全く別の人間たちが動いているようだね」
「アタシが閉じ込められる前に、なんとか出来なかったの?」
どこか責めるような口調に、ヒューゴは苦笑を浮かべて首を横に振った。
「ごめんね。抵抗してみたんだけど、ベルトルドという男の力が強大すぎて防げなかったんだ。フリングホルニに残しておいたボクの思念体と力は、ベルトルドの力に粉砕されてしまった」
「そうですね。あの男の力は強大すぎます。このシステムに張り巡らせていた結界も、難なく破壊されてしまいました…」
頷きながら、ユリディスも残念そうにため息をついた。
二人の様子を見て、キュッリッキは俯いた。
以前ウエケラ大陸で見たベルトルドの、出鱈目とも言える強大な力を思い出す。
キュッリッキへの下心丸出しで、それで更にパワーアップしていたなどとは思いもよらないので、あの力のふるいかたを見れば、対抗するのは難しいだろうと思えた。
「もう、思わぬお邪魔虫が乱入して脱線しちゃったけど、続きを見ましょうね」
両掌をパチンと打ち合わせ、ユリディスが明るい声を上げる。
「え~、お邪魔虫って酷いなあ」
「最後に出てくれば良かったのよ。ヒューゴも黙って、一緒に見ててちょうだいね」
「ぶー」
ユリディスは目を丸くするキュッリッキの手を、ぎゅっと握った。
「私はキュッリッキに伝えなくてはならないの。1万年前の出来事と、そして、アルケラの巫女のことを」
憮然とキュッリッキは呟いた。
「やっぱりそう思うでしょ! あの時も今も、私もそう思うもの!」
両手を握り拳にして、ユリディスも憤然と言った。
「乙女心判ってないよね。二重に谷底へ蹴落とすようなものじゃん」
「傷口にナイフを突き立てて、さらに抉るような行為よ」
キュッリッキもユリディスも、眉をヒクつかせながら、映像に映るヒューゴを睨みつけていた。
「いや……アレはその、今見ると配慮がなかったなーって思うけど、やっぱしその……ごめん」
突然情けなさの滲む男の声が割って入り、キュッリッキは飛び上がるように身体を跳ねさせて振り向いた。
「ユーレイ!!」
ビシッと指をつきつけ、キュッリッキは叫んだ。
「やあ、また遭ったね、ユリディスと同じ力を持つ少女」
エルアーラ遺跡で出会ったヒューゴが、笑顔でそこに立っていた。
「まあヒューゴ、やっと姿を現してくれたのね」
「うん。なんか、散々な言われようで、弁解したくなって…」
別段驚いてもいないユリディスに、ヒューゴは困ったようにウインクしてみせる。
キュッリッキは目を見開いて、口をぱくぱくと動かした。
「どうしてアンタがこんなところにいるのよ? って、ああ、キミに渡したボクの力の欠片に、ボクの思念を少し残していたんだ」
「……あの、なんにもしてくれなかった役立たずの意味不明の青い玉7個ね」
「うっ…」
キュッリッキの恨めしそうな目を受けて、ヒューゴは喉をつまらせた。実際何もしてないのだから、そう言われてもしょうがない。
ヒューゴは明後日の方向へ視線を泳がせながら、ガシガシと頭を掻くと、小さくため息をついた。
「実は、キミを守るためにボクの力をあげたわけじゃないんだ。いつかこうしてレディトゥス・システムにキミが閉じ込められるだろうことを予測して、ユリディスを呼び覚ますために持たせていたんだ」
キュッリッキは訝しげに眉をひそめる。
「ユリディスと同じ力を持つ、アルケラの巫女がフリングホルニに現れたということは、遠からずレディトゥス・システムに閉じ込められるということだ。――ボクはてっきり、ヤルヴィレフト王家の関係者によってそうされると思っていたけど、全く別の人間たちが動いているようだね」
「アタシが閉じ込められる前に、なんとか出来なかったの?」
どこか責めるような口調に、ヒューゴは苦笑を浮かべて首を横に振った。
「ごめんね。抵抗してみたんだけど、ベルトルドという男の力が強大すぎて防げなかったんだ。フリングホルニに残しておいたボクの思念体と力は、ベルトルドの力に粉砕されてしまった」
「そうですね。あの男の力は強大すぎます。このシステムに張り巡らせていた結界も、難なく破壊されてしまいました…」
頷きながら、ユリディスも残念そうにため息をついた。
二人の様子を見て、キュッリッキは俯いた。
以前ウエケラ大陸で見たベルトルドの、出鱈目とも言える強大な力を思い出す。
キュッリッキへの下心丸出しで、それで更にパワーアップしていたなどとは思いもよらないので、あの力のふるいかたを見れば、対抗するのは難しいだろうと思えた。
「もう、思わぬお邪魔虫が乱入して脱線しちゃったけど、続きを見ましょうね」
両掌をパチンと打ち合わせ、ユリディスが明るい声を上げる。
「え~、お邪魔虫って酷いなあ」
「最後に出てくれば良かったのよ。ヒューゴも黙って、一緒に見ててちょうだいね」
「ぶー」
ユリディスは目を丸くするキュッリッキの手を、ぎゅっと握った。
「私はキュッリッキに伝えなくてはならないの。1万年前の出来事と、そして、アルケラの巫女のことを」
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