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最終章 永遠の翼
episode775
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「ちょっ、何するのフローズヴィトニル!!」
キュッリッキが悲鳴を上げるのと同時に、ドラゴンは大咆哮をあげて、フローズヴィトニルを叩き落とそうと身体を激しくもがいた。
「頭落としちゃえばいいじゃん。そしたら死んでおとなしくなるよ」
呑気な声はそのままに、フローズヴィトニルは鋭く巨大な牙を、更に喉笛に深々と食い込ませる。
牙を喰い込ませた傷口から、滝のような血が噴き出し、辺りを鮮血に染め上げ始めた。
「やめて、ベルトルドさんが死んじゃう」
ドラゴンは苦しげな咆哮を上げながらも、己の周囲に無数の白い光を作り出す。
「あれは…」
「いかん! ドラゴンから離れろフローズヴィトニル!!」
「うん?」
放電しながら膨らむ無数の白い光の玉は、強い光を放つと、大爆発を起こした。
「きゃああ」
両腕を交差させて目を庇ったキュッリッキにかぶさるように、フェンリルがキュッリッキを守る。
室内には爆音と白い煙が充満し、空気中に静電気が多量に含まれ、あちこちで細い電気がバチバチと音を立てていた。
ライオン傭兵団はヴェズルフェルニルの作り出した、風の膜によって守られ、かすり傷一つない。
キュッリッキもフェンリルに守られ、傷ひとつなかった。
爆音のせいで耳が聞こえづらくなっていたキュッリッキは、頭を拳でトントン叩いて、聴力を取り戻そうとする。
「今の……サンダースパーク……ベルトルドさんの」
頭を軽く振ると、ゆっくりと周りの音が耳に聞こえてきてホッとする。しかし、
「下がれフローズヴィトニル!!」
フェンリルの怒号で、キュッリッキはビクッと身体を震わせた。
「よくも…、よくもやってくれたな、下郎の分際で!」
フローズヴィトニルの怒鳴り声がして、キュッリッキはハッと顔を上げた。
頭と首の付け根から、大量の血を噴き上げながら、白銀の鱗を朱く染めたドラゴンが睨みつけるその先には。
ドラゴンと同じくらい躯を大きくしたフローズヴィトニルが、今にも食いつかんばかりの険しい表情(かお)で、ドラゴンを睨みつけていた。
その剣呑な空気に危険を察知し、キュッリッキは声を張り上げた。
「だめ、ダメ、ベルトルドさんを殺しちゃダメなの!」
叫ぶキュッリッキの声が聞こえていないのか、フローズヴィトニルは躯を低くすると、ドラゴン目掛けて飛びかかった。
ドラゴンはサイ《超能力》を使って、身体の周りに幾重にも防御壁を敷いていたが、その全てを突破して、フローズヴィトニルの鋭い爪が、白銀の鱗に覆われた腹に突き刺さる。そして、鋭い牙は再び喉笛に喰らいつき、首を食いちぎろうと、フローズヴィトニルは激しく首を振った。
絶叫のような咆哮を上げ、ドラゴンはフローズヴィトニルの爪と牙から逃れようと、身体を激しく何度も振り続けた。時々口からサラマブレスが吐き出され、辺りを紫電の色に染め上げる。血も雨のように、室内に振りまかれた。
「お願いフローズヴィトニルやめて、ベルトルドさんが死んじゃう! お願いだからやめてえ」
キュッリッキはどうしていいか判らず、暴走するフローズヴィトニルに泣き叫んだ。あのままでは、人間に戻す前に絶命してしまう。
血を流し続け暴れるドラゴンの姿に、キュッリッキも相当頭の中がテンパっていた。その様子を見てとって、フェンリルは軽く首を振る。
あまりにも短時間に色々なことがその身に起きて、あらゆる処理が追いついていないのだ。
普段のキュッリッキなら、このような事態でも冷静に判断出来る。今すぐフローズヴィトニルに、制限をかけ直せばいいだけなのだ。
あの男に酷いめにあわされたというのに、少しも死を願ってはいない。傷ついたあの姿に、心配のあまり心を痛めて涙を流している。
本当に、優しい子なのだ。
「スコル、ハティ」
フローズヴィトニルの剣幕に気圧されて、下がっていた2匹の狼に、フェンリルは静かに声をかける。
「巫女を守れ」
2匹は服従するように身を伏せ、そして起き上がる。
「全く、世話の焼ける、我が半身だ」
フェンリルはキュッリッキから離れると、身体をフローズヴィトニルと同じように大きくした。
「フェンリル……?」
手で涙を拭いながら、キュッリッキはフェンリルを見上げる。
「いい加減、落ち着かんか馬鹿者!!」
フェンリルは静かに床を蹴り、勢いよくフローズヴィトニルに体当りした。
キュッリッキが悲鳴を上げるのと同時に、ドラゴンは大咆哮をあげて、フローズヴィトニルを叩き落とそうと身体を激しくもがいた。
「頭落としちゃえばいいじゃん。そしたら死んでおとなしくなるよ」
呑気な声はそのままに、フローズヴィトニルは鋭く巨大な牙を、更に喉笛に深々と食い込ませる。
牙を喰い込ませた傷口から、滝のような血が噴き出し、辺りを鮮血に染め上げ始めた。
「やめて、ベルトルドさんが死んじゃう」
ドラゴンは苦しげな咆哮を上げながらも、己の周囲に無数の白い光を作り出す。
「あれは…」
「いかん! ドラゴンから離れろフローズヴィトニル!!」
「うん?」
放電しながら膨らむ無数の白い光の玉は、強い光を放つと、大爆発を起こした。
「きゃああ」
両腕を交差させて目を庇ったキュッリッキにかぶさるように、フェンリルがキュッリッキを守る。
室内には爆音と白い煙が充満し、空気中に静電気が多量に含まれ、あちこちで細い電気がバチバチと音を立てていた。
ライオン傭兵団はヴェズルフェルニルの作り出した、風の膜によって守られ、かすり傷一つない。
キュッリッキもフェンリルに守られ、傷ひとつなかった。
爆音のせいで耳が聞こえづらくなっていたキュッリッキは、頭を拳でトントン叩いて、聴力を取り戻そうとする。
「今の……サンダースパーク……ベルトルドさんの」
頭を軽く振ると、ゆっくりと周りの音が耳に聞こえてきてホッとする。しかし、
「下がれフローズヴィトニル!!」
フェンリルの怒号で、キュッリッキはビクッと身体を震わせた。
「よくも…、よくもやってくれたな、下郎の分際で!」
フローズヴィトニルの怒鳴り声がして、キュッリッキはハッと顔を上げた。
頭と首の付け根から、大量の血を噴き上げながら、白銀の鱗を朱く染めたドラゴンが睨みつけるその先には。
ドラゴンと同じくらい躯を大きくしたフローズヴィトニルが、今にも食いつかんばかりの険しい表情(かお)で、ドラゴンを睨みつけていた。
その剣呑な空気に危険を察知し、キュッリッキは声を張り上げた。
「だめ、ダメ、ベルトルドさんを殺しちゃダメなの!」
叫ぶキュッリッキの声が聞こえていないのか、フローズヴィトニルは躯を低くすると、ドラゴン目掛けて飛びかかった。
ドラゴンはサイ《超能力》を使って、身体の周りに幾重にも防御壁を敷いていたが、その全てを突破して、フローズヴィトニルの鋭い爪が、白銀の鱗に覆われた腹に突き刺さる。そして、鋭い牙は再び喉笛に喰らいつき、首を食いちぎろうと、フローズヴィトニルは激しく首を振った。
絶叫のような咆哮を上げ、ドラゴンはフローズヴィトニルの爪と牙から逃れようと、身体を激しく何度も振り続けた。時々口からサラマブレスが吐き出され、辺りを紫電の色に染め上げる。血も雨のように、室内に振りまかれた。
「お願いフローズヴィトニルやめて、ベルトルドさんが死んじゃう! お願いだからやめてえ」
キュッリッキはどうしていいか判らず、暴走するフローズヴィトニルに泣き叫んだ。あのままでは、人間に戻す前に絶命してしまう。
血を流し続け暴れるドラゴンの姿に、キュッリッキも相当頭の中がテンパっていた。その様子を見てとって、フェンリルは軽く首を振る。
あまりにも短時間に色々なことがその身に起きて、あらゆる処理が追いついていないのだ。
普段のキュッリッキなら、このような事態でも冷静に判断出来る。今すぐフローズヴィトニルに、制限をかけ直せばいいだけなのだ。
あの男に酷いめにあわされたというのに、少しも死を願ってはいない。傷ついたあの姿に、心配のあまり心を痛めて涙を流している。
本当に、優しい子なのだ。
「スコル、ハティ」
フローズヴィトニルの剣幕に気圧されて、下がっていた2匹の狼に、フェンリルは静かに声をかける。
「巫女を守れ」
2匹は服従するように身を伏せ、そして起き上がる。
「全く、世話の焼ける、我が半身だ」
フェンリルはキュッリッキから離れると、身体をフローズヴィトニルと同じように大きくした。
「フェンリル……?」
手で涙を拭いながら、キュッリッキはフェンリルを見上げる。
「いい加減、落ち着かんか馬鹿者!!」
フェンリルは静かに床を蹴り、勢いよくフローズヴィトニルに体当りした。
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