片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
46 / 882
ライオン傭兵団編

episode43

しおりを挟む
 ベルトルドがリュリュから”ねっとり”お仕置きされていた頃、キュッリッキの引越が行われていた。

 仕事で抜けられなかったハドリーの計らいで、ライオン傭兵団からメルヴィンとガエルの二人が、助っ人に駆けつけてくれた。

 ガエルはクマのトゥーリ族で、身長2mを超える巨躯に、筋肉隆々のガタイの良さ、短い黒い毛に覆われていた。

 この世界には、3種の人間がいる。身体的特徴を持たない平凡なヴィプネン族。背に2枚の翼を持ち、容姿に優れたアイオン族。そしてトゥーリ族だ。30種からなる動物の外見と能力を持つ亜人種。

 トゥーリ族は人魚以外は二足歩行をするし、服も着る。ガエルは黄色いタンクトップと、白いダボ付いたズボン姿だ。

 軽々と荷物を運ぶガエルの腕に、キュッリッキは飛びついてぶら下がる。姿勢を崩すと思いきや、ガエルは事も無げにそのまま荷物を運んでいた。

「お前じゃ重石替わりにもならん」

「えー」

 そう言いながらも、キュッリッキは面白がって何度もぶら下がった。その様子を見て、メルヴィンはクスクスと笑う。

 ガエルとメルヴィンで運び出された荷物はそう多くなく、馬車の必要性がまるでなかった。

「これならひとつにまとめて、俺が背負ってもよかったな」

「そうでしたね」

 メルヴィンは苦笑する。

 家具類は全て据え置きのものを使っていたし、もとより荷物が少ない。

 でも、とメルヴィンは思う。

(キュッリッキさんが楽しそうだったし、こうしてみんなと馴染んでいければ)

 ついつい兄のような気分になっていた。

「キュッリッキちゃん」

 アパート前にいると、建物から”おばちゃんズ”が現れた。

「もう荷物運び終わったのかい?」

「うん」

「そうかい。お別れだねえ」

「今度は、ずっと居られるといいね」

「頑張るんだよ」

 ”おばちゃんズ”は、キュッリッキが抱えてる悩みのことで、中々上手く馴染めず、何度も帰ってきていたのを知っている。

「おばちゃんたち、いつもありがとう。アタシね、今度は頑張れる気がするの」

 キュッリッキは恥ずかしそうに、でも、自信を見せて言った。

「ははっ、なら大丈夫だ」

 にこやかな”おばちゃんズ”は、大声で笑った。

「まあ、もしダメだったとしても、そんときはすぐに帰っておいで。キュッリッキちゃんの居場所は、ちゃんとあるからね」

「ちょっと、水さしてどーすんだい」

「ヤダよもう」

 これにも笑いが起きる。

「帰らなくてもいいように、アタシ頑張るの! でも、おばちゃんたちに会いに、遊びには来るね」

「好い子だよもう!」

 キュッリッキは”おばちゃんズ”にそれぞれギュッと抱きしめられ、別れの抱擁に暫し浸った。

 馬車の御者席でその様子を見ていたメルヴィンとガエルは、和やかな雰囲気を見て微笑んだ。

 別れをしっかりすませ、キュッリッキは荷台へと乗り込んだ。

「じゃあ、行ってきます!」

「元気でねえ~~!」

 それを合図に馬車は走り出す。見送る”おばちゃんズ”のほかに、アパートの窓を開けて、幾人かの傭兵たちが手を振ってキュッリッキの旅立ちを見送っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―

kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。 しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。 帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。 帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】学園Z隔離記録 ~禁忌の村、田を覗くなかれ ~

月影 流詩亜
ホラー
🔴全 38話 完結保証作品です🔴 逃れられない恐怖と過去、極限状況下での人間の本性、信じられるものは何か…… ◇◇ 全国から札付きの問題児たちが集められた、人里離れた廃村の「学園Z」 そこは、AI搭載の治安ロボットがすべてを管理し、教師は存在しない完全オンライン授業の矯正施設。 周囲を深い山々と川、崖に囲まれた陸の孤島で、生徒たちは来る卒業の日まで社会との接触を断たれる。 しかし、その土地には古くから伝わる不気味な都市伝説があった――白い影がくねくねと踊るのを見た者は、正気を失うという『くねくね』の伝説が。 次々と起こる不可解な事件と、仲間たちの変貌。AIは「システムエラー」を繰り返すばかりで、助けは来ない。 11人の問題児たちは、この閉鎖された学園で『くねくね』の恐怖から生き延び、無事に卒業することができるのか?

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吸血鬼が始めるダンジョン経営 ~アトラクション化で効率的に魂採取~ 【累計9.6万pt】

近衛 愛
ファンタジー
吸血鬼のウィーンは、仕事が出来ない役立たずと、ブラッドワインを生産している家から勘当されて追いだされました。 ニートになり、貯金を切り崩して生活してたある日 『ダンジョン経営始めませんか?』というダンジョン経営のメールが来た。ウィーンは経営者になることを決め、日本でダンジョンマート金沢支店をオープンすることになった。 伝説に残る、九尾の狐や座敷童、天邪鬼、猫耳娘などの物の怪と協力しながら和気あいあいと経営を進めていく。 ダンジョンの探索には危険が伴う、安全に冒険するためには保険契約が必要?その対価とは……。人間の寿命???古今東西の物の怪が協力しながら、経営する一風変わったダンジョンストーリー ダンジョンでの人間の集客と、スタッフの募集に頭を抱えることになるウィーン。様々な出会いがウィーンを成長させていく。たまにダンジョンを私物化し、温泉スパリゾートや、スキー、オアシスでの海水浴場を作ったり、物の怪の思惑が重なりダンジョンは一体どこへ向かっていくのだろうか? おっちょこちょいな猫耳娘ミリィとのかけあいのあるちょっとした笑いのあるストーリー。あなたがダンジョンの経営者なら、どういうダンジョンにしますか? アルファポリス HOTランキングについての考察 どういう風に採点評価しているのか素人なりに考えてみました。 あとは、ポイントがどのようについて、どのくらいのタイミングで計算されているか。 また、小説書初心者がどのようにすればポイントがゲットできるか? HOTランキングに入るためにはどのようにしたらよいのか? 色々検討した結果を記載しますので、ご参考にしてみてくださいね。  多くのブリーダーは、配合してより強力なモンスターを誕生、育成していくことに熱をあげるが。  レオは、ノワールの人語を武器に人とモンスターの交渉の場に動き出した。 最後にお願いです: このあらすじに少しでも心を動かされた方は、「いいね」でご一報を。 また興味のある、役に立ったと思ったら「いいね」をそのエピソードにお願いします。 今後のエピソードの投稿と勉強の糧にさせていただきます。 そして、この物語を最後まで追いかけたいと感じた方は、「お気に入り登録」をお願いいたします。

処理中です...