114 / 882
ナルバ山の遺跡編
episode111
しおりを挟む
「副宰相のナマ声、オレ初めて聴いたぜ…」
緊張を解くように、ハドリーがふぅっと息を吐き出して言う。
「胃が痛くなるので、あまり聴いていたくないんですけどね」
苦笑しながらメルヴィンが応じた。ガエルも黙って頷く。眼鏡をクイッと手で押し上げて、ブルニタルは彼らを振り向いた。
「神殿から出ましょう。外の様子も気になりますし、ここに居てもしょうがないでしょうから」
「そうしましょう」
4人は頷いた。
「みんなまだかな~」
壁にもたれかかって、床で転がったり丸まったりしているフェンリルを構いながら、神殿の入口を見つめる。ファニーは目を覚まさず、話し相手がいなくなって、急激に退屈感に蝕まれつつあった。
暇つぶしに何か襲ってこないか意識をこらしたが、哨戒に出している綿毛たちは、何も見つけていない。
「つまんない」
神殿の入口から離れていると、先ほど感じたような、足がすくむほどの怖さはなかった。しかし相変わらず嫌な気配のようなものは、ヒシヒシと感じ続けていた。
戦場での危険感知とは若干違う。敵意といったようなものでもない。
ただ、怖いと感じるのだ。
キュッリッキはそうした勘を、これまで外したことがない。キュッリッキだけが感じる何かが、この神殿にはあるのだろうか。心の中で警鐘は鳴りっぱなしだったが、今はまだ小さい。神殿の中に入らなければ大丈夫だと、キュッリッキには確信があった。
「早くみんな戻ってきたら、気にしなくてもすむのに~」
ちょっとふくれっ面になってぼやくと、ファニーが身じろぎする気配があった。
「う……ン」
何度か小さく呻いたあと、ファニーは身体を僅かに揺らし、薄らと目を開いた。
「ファニー起きた!」
キュッリッキは壁から離れると、ファニーの顔の前に膝を揃えて座り直した。身を乗り出して顔を覗き込む。
「その元気な声は……リッキー?」
「うんっ!」
嬉しそうにキュッリッキは首を縦に振った。
ファニーはゆるゆると上体を起こすと、壁にもたれかかって頭を軽く振った。まるで悪夢をみて目が覚めたような、不快感を貼り付けたような表情で辺りを見回す。
「縄切ってくれたんだ、あんがと」
「どーいたしまして。アタシじゃないけど」
「ところで、ハドリーどこいったの?」
「神殿の中だよ」
そう言って神殿を指す。
「ふうん…?」
「アタシも仕事でここにきたんだけど、仲間を案内するのに神殿入っていったよ」
「あれ~? アンタってば毎日が休日状態だったのに、仕事見つかったんだ?」
大きな目をさらに大きくして驚くファニーを、キュッリッキは憮然と睨みつけた。
「もうとっくの2週間前に、決まっちゃってるもん!」
「えーーー!! だったらさっさと連絡くれたらいいじゃないのもー!」
「年中無休のファニーがちっとも家に寄り付かないから、ドコにいるか判んなくて連絡も取れないんだってば!」
怒鳴るように言って、キュッリッキはぷっくりと両頬を膨らませて抗議する。それを見てファニーは誤魔化すように、引き攣りながら手をヒラヒラさせて笑った。
緊張を解くように、ハドリーがふぅっと息を吐き出して言う。
「胃が痛くなるので、あまり聴いていたくないんですけどね」
苦笑しながらメルヴィンが応じた。ガエルも黙って頷く。眼鏡をクイッと手で押し上げて、ブルニタルは彼らを振り向いた。
「神殿から出ましょう。外の様子も気になりますし、ここに居てもしょうがないでしょうから」
「そうしましょう」
4人は頷いた。
「みんなまだかな~」
壁にもたれかかって、床で転がったり丸まったりしているフェンリルを構いながら、神殿の入口を見つめる。ファニーは目を覚まさず、話し相手がいなくなって、急激に退屈感に蝕まれつつあった。
暇つぶしに何か襲ってこないか意識をこらしたが、哨戒に出している綿毛たちは、何も見つけていない。
「つまんない」
神殿の入口から離れていると、先ほど感じたような、足がすくむほどの怖さはなかった。しかし相変わらず嫌な気配のようなものは、ヒシヒシと感じ続けていた。
戦場での危険感知とは若干違う。敵意といったようなものでもない。
ただ、怖いと感じるのだ。
キュッリッキはそうした勘を、これまで外したことがない。キュッリッキだけが感じる何かが、この神殿にはあるのだろうか。心の中で警鐘は鳴りっぱなしだったが、今はまだ小さい。神殿の中に入らなければ大丈夫だと、キュッリッキには確信があった。
「早くみんな戻ってきたら、気にしなくてもすむのに~」
ちょっとふくれっ面になってぼやくと、ファニーが身じろぎする気配があった。
「う……ン」
何度か小さく呻いたあと、ファニーは身体を僅かに揺らし、薄らと目を開いた。
「ファニー起きた!」
キュッリッキは壁から離れると、ファニーの顔の前に膝を揃えて座り直した。身を乗り出して顔を覗き込む。
「その元気な声は……リッキー?」
「うんっ!」
嬉しそうにキュッリッキは首を縦に振った。
ファニーはゆるゆると上体を起こすと、壁にもたれかかって頭を軽く振った。まるで悪夢をみて目が覚めたような、不快感を貼り付けたような表情で辺りを見回す。
「縄切ってくれたんだ、あんがと」
「どーいたしまして。アタシじゃないけど」
「ところで、ハドリーどこいったの?」
「神殿の中だよ」
そう言って神殿を指す。
「ふうん…?」
「アタシも仕事でここにきたんだけど、仲間を案内するのに神殿入っていったよ」
「あれ~? アンタってば毎日が休日状態だったのに、仕事見つかったんだ?」
大きな目をさらに大きくして驚くファニーを、キュッリッキは憮然と睨みつけた。
「もうとっくの2週間前に、決まっちゃってるもん!」
「えーーー!! だったらさっさと連絡くれたらいいじゃないのもー!」
「年中無休のファニーがちっとも家に寄り付かないから、ドコにいるか判んなくて連絡も取れないんだってば!」
怒鳴るように言って、キュッリッキはぷっくりと両頬を膨らませて抗議する。それを見てファニーは誤魔化すように、引き攣りながら手をヒラヒラさせて笑った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―
kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。
しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。
帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。
帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる