片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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それぞれの悪巧み編

episode300

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 19時近くになると、続々とライオン傭兵団の面々が屋敷に帰ってきた。

「おかえりなさーい」

 スモーキングルームに入ってくる仲間たちを、後ろ向きで椅子に座りながら、キュッリッキが嬉しそうに出迎える。

 アジトだと談話室にみんな集まるが、ベルトルドの屋敷には談話室がないので、スモーキングルームが談話室代わりになっていた。ベルトルドもアルカネットも、この部屋は使っていないので、少しずつ彼らの私物が持ち込まれていた。

「あー疲れたあ」

 ザカリーはソファに身体を投げ出すように座り、背もたれに両腕を広げた。

「おめぇんとこ、第9だっけか。演習か?」

 タバコに火を点け、ギャリーはチラリとザカリーを見る。

「んだんだ。もーよー、アイツら穀潰しレベルで話になんねーのなんの。腕悪すぎだろって」

「実戦経験が少なすぎるからね。ボクの相手になる奴がいなくて困る」

 タルコットは髪を払いのけるように、溜息混じりに言う。

「メルヴィンに相手してもらえばいいんじゃ」

「メルヴィンなら申し分ないけど、手合わせはいつもやってるから、他の奴がいい」

「そりゃ、無理無理」

 ザカリーとギャリーが、口を揃えて手を振った。メルヴィンは苦笑いを浮かべて、肩をすくめるだけだった。

「キューリちゃん、初めての授業はどうだったの?」

 キュッリッキの近くの椅子に座り、ルーファスが話題を振る。みんなの話についていけず、つまらなそうにしていたキュッリッキを気遣ってのことだ。

「先生が持ってきた本を朗読したの。暫くは、字を覚える授業にするんだって」

 顔をにっこりさせて、キュッリッキは授業の時の話をする。

「妖精の話、オレも知ってる。かけぶとんの話は読んだことないなあ」

「アタシは読んだことあるわぁ~。頭の足らないバカ嫁と、でれ助亭主の話よねえ」

 マリオンはみんなにビール瓶を配り、ケタケタと笑いながら言った。

「だいたいぃ、布団を上にずり上げたから、下が足らないわけじゃん。それでなんで上切って下に足すのよってぇ、読んでて怒りがこみ上げた記憶があるわぁ」

 不愉快そうなマリオンの感想に、キュッリッキは授業の時のグンヒルドの裏の顔を思い出し、ブルッと身を震わせた。

「あれって亭主もバカな言い方してるから、ってのもあるよねえ。でも、それを素直に受けてしまう嫁さんも、可愛いっていうかさ~」

 ルーファスがしみじみ言うと、ザカリーとマリオンからブーイングが飛ぶ。

「まああれだ、今も昔もバカップルは存在するってえ、ありがてー話だ」

 ギャリーがいい加減に話を締め括ると、ヤレヤレ、と部屋のあちこちから苦笑が漏れていた。

「でもさー、1時間じゃあんまり授業にならないっしょ?」

「身体の調子が戻るまでは、ヴィヒトリ先生がダメって言うの。だから、本格的な授業は、まだ当分先なんだって」

「そっかあ。まあ、字を覚えるだけでも、本もいろいろ読めるようになるし。楽しみが増えたね、キューリちゃん」

「うん」

 ルーファスに頭を撫でてもらい、キュッリッキは嬉しそうに笑った。

「でも、現在のミッション…戦争が終わって、その頃にはキューリさんもアジトに戻るでしょうから、そのあと家庭教師の先生は、ハーメンリンナの外まで教えに来るんでしょうかね?」

 カーティスが気になったように言うと、皆黙る。

「うーん、そういえば、そうかも…」

 最近ではすっかりベルトルドの屋敷に馴染んできていたが、戦争が終わればアジトへ帰るのだ。

「あとでベルトルドさんに聞いてみる」

 ベルトルドの屋敷に頓着していないキュッリッキは、勉強できるならどこでもいいと、軽く考えていた。
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