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Cling to glory -翼の非日常-

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屋上には誰もいなくてベンチも空いていたので座って伸びをする。
始業時間までまだまだ時間あるのでスマホを出してSNSを見る。
ハッシュタグは昨日のドラマのが多かった。

“リンリンリン”とエイレンからのメール着信の音がしたので見てみると動画が添付されていた。
つけて見ると、朝食を食べているエイレンの姿があった。

「はい翼ちゃん、あーん。美味しい?へへっ、良かった。じゃあ俺にもあーん、パクッ。美味しいよ翼ちゃん。こうやって食べ合いっこするの楽しいね。へへへっ」

ヤバっ!あの屈託のない笑顔破壊的に可愛い。もう、可愛いは正義しか出ない。
今朝のキスで色々勇気もらったから、今度の休みの日にスマホ越しじゃなくて目の前でやろうかなとベンチに横になって悶えまくりました。始業時間の15分前に落ち着いたので急いで部署に戻ると何人か出社していた。
そう言えば英淳一は大丈夫かなと周りを見ると、給湯室に英淳一の姿があり、手招きされたので行って見ると吹っ切れた表情だった。
「やっぱりお前ムカつくわ、この俺様にあんな事言うなんてさ。ちゃんと俺様の仕事っぷり刮目しておけよ。したら、いつかアイツの所行ってやるよ」とアイドル時代の様な笑顔からの親指と人差し指指でピストルの形にして「バキュン」と打つジェスチャーをした後に人差し指を代名詞の唇に当てて投げキスをする。英淳一の定番ファンサービス。
ゆかりん以外のメンバーからのファンサービスは初だからちょっとだけあの当時を思い出しドキドキした。
その後、鎌家淳一は昨日の態度を謝罪して仕事は始まった。
昼休み、屋上でホットサンドの写真を撮ってエイレンに送る。実はエイレンの分も作っておいて冷蔵庫の奥に隠していたのをバラした。返信はすぐに来て
『マジであった!翼ちゃん愛してる。レンチンとオーブンで食べるね』と。
そのメールを愛でながら”パクリ”と一口。うん、やっぱり美味しい。
「翼ちゃん、美味しそうなもの食べてるじゃない。私のサンドイッチと交換しない?」
ベンチに座った少しふくよかな女性がコンビニのサンドイッチを微笑みながら差し出した。
「妃里子さん。こっち半分とサンドイッチ一切れと交換ならいいですよ。これ、具がゆかりんのですから」
「本当に!!店の方になかなか行けないから凄い久しぶりなのよね。ゆかりんの料理」
ホットサンドを半分にして、苺のサンドイッチ一切れと交換した。
ホットサンド食べきってからデザート代わりに苺のサンドイッチを食べた。
「鎌家、英淳一うちの部署に回したの妃里子さんでしょ?その前に、うちの会社にスカウトしたのも。妃里子さん英淳一の大ファンだからね」と『謎は全て解けた』と漫画の名探偵風の言い回しで妃里子さんにぶつけた。
彼女、諸角妃里子(もろずみゆりこ)さんは私とうちの部署の熊門雅治(くまかどまさはる)課長と同期で秘書課課長で東宮物産のオカンと言われている癒し系の女性で、英淳一の古参ファンなのである。
「あらら、バレちゃった?翼ちゃんの事だからゆかりんから話聞いてると思ってたのど彼の闇じゃないけど鬱憤をプラスに変えてくれるだろうなって」
「で、せっかく推しと同じ会社なんだからモーションはかけるの?知ってるんでしょ。彼今フリーなのくらい。昔からガチ恋勢だったからね」
「ガチだからこそ奥手になっちゃうのよ。どうやって声かけたらいいのかしら」
ホットサンドをちまちまと味わう様に食べながら妃里子さんは照れ臭そうに周囲をキョロキョロし出した。
「私に用事があって来たら、紹介でいいでしょ」
「それが無難ね。善は急げだから今日中にお願い」
「はいはい、了解です。終業時間あたりに私を呼びにくるって設定でやりましょう」
私と妃里子さんはグータッチしてから妃里子さんは時計を見て慌てて屋上を後にした。

鎌家淳一は諸角妃里子と手を繋ぎ祐香里の好物のどら焼きを持って『Eternal』に来店するのはそれから半年後のお話。









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