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Belle rencontre
アウフォ・ハーフェング サイド 後編 ②
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それよりも彼女が彼の存在に気付いているのは俄かに信じられない。
歴代のウザい存在もとい、聖乙女も全く見えなかった。俺の体を覆う禍々しい存在の事を。
驚きを隠せない彼女も愛らしいなと見つめていたが、本当に彼が見えるのかと言う疑問よりもまずは俺の存在を知って欲しい。
いや、彼よりも俺を見て欲しいと言う思いがフツフツと湧き上がりワイシャツを脱ぎ出した。
ここにずっと封印されているが、鍛錬は欠かさずにやっているので勇者当時と変わらない程体は引き締まっていると自負している。
彼女はこんないきなり体を見せつける男をどう思うと少し後悔したが、彼女から白い波動が発生し、それが俺の体に入り込んだ。全身にピリッとするくすぐったい感じだ。
それが俺には分からなかったが、彼はようやく理解したと言う声で呟いた。
《やっぱりお前古の呪いの『俺』が見えるんだ》
彼の驚く声と同時に目の前の彼女が糸の切れた人形の様に倒れ込んだ。
咄嗟に抱き抱えたからよかったか、腕の中の彼女はどんどんと冷たくなってきている。
《ヤバイぞ。過剰な魔力消費で魔力切れを起こしている。早く魔力補充しないと最悪彼女死ぬ・・・》
魔力の充電器でもある俺が抱き抱えているだけでも魔力補充なっているはずなのに彼女の体は冷たいままだ。
その時、邪神討伐の際に他国の聖女が魔術師にやった行動を思い出した。
その後の彼の魔法が討伐の切り口になったんだよな。
抱き抱えた彼女の器を図り、暴走しないように深呼吸をしてから彼女の唇に自分の唇を重ねて魔力を流し込む。
《おいおい。あの聖女と魔術師は付き合っていたから回路が繋がっていて出来たことで・・・ええっ!!!彼女の回路すんなり受け入れてる!脈ありでいいのか?》
唇ってこんなに柔らかいんだ。もっと味わいたいがこれ以上の魔力補充すると彼女の器が壊れてしまう。
5秒ほどすると彼女の体は暖かくなり、小さかった鼓動も感じる。
頭の中で彼が慌てふためいているが、今は腕の中の彼女に集中。眠っているみたいで体をあずけてくれている。
「ゆっくりおやすみ」
寝るには枕が必要だがそんな物はここにはない。なら何を代用するか。俺の膝枕でしょ。
彼女の頭を膝にそっと乗せて眠っている彼女を眺める至福のひと時。
眠っている女性に色々な事をするのは人としてアウトなのは理解しているが、本能と言うか欲望は少しくらいならいいよなと。
ストップかける彼も今のところは何も言ってこないから今のうちに。
まずLevel 1 頭を撫でる
恐る恐る彼女の頭を2度ナデナデした所、気持ち良かったのか微笑んだ。
次にLevel 2 頬を触る。
唇と同じように柔らかいし、手に吸い付く気持ちよさ。これはハマるな危険。
これに調子を良くした俺はそこから一気にすっとばしてLevel10に。
それは、頬にキス。触って気持ち良かった頬に口づけしたらどんなに幸せだろう。
まずは、頬にキス。唇が”プルン”なら頬は”プニ”ならおでこは?目元は?鼻は?顎は?と顔中にキスの嵐。
個人的にはやっぱり唇が1番好きと結論。
だんだんと消えて行く理性。
彼女が早く目を覚ましてくれないと、キス以上の事をしそうな自分が怖い。
本などで軽く知識はあるが実体験は皆無。
抱きしめることから初めてなレベルだからなと考えていたら、彼女がモゾモゾとし始めた。
目を覚ました事の安堵感もあるが、これ以上暴走しなくて良かった気持ちが強いのは内緒。彼も彼女が目を覚ました事に気付いてホッとした。
「良かった目が覚めて。いきなり崩れ落ちたから心配したんだよ」
寝起きの彼女はすぐに自分が膝枕されている事に気づき、顔が瞬時に赤くなった。
「あっ・・・ご迷惑かけてすいません。じゃあ、私はこれで失礼します」と彼女はガバッと起き上がり離れようとしたので彼女の手を掴もうとしたところ、肩越しから何故か小さい蛇化した彼が現れ彼女を押さえつけた。
《まあまあ、力使いすぎて疲れたんだろう。少し休めよ。アウフォの奴膝枕なんて生まれて初めてやったんだぞ》
『ナイス』と心の中で彼にサムズアップしつつ、初体験がバレた事が恥ずかしくなり照れた笑顔で頷きながら彼女の頭をナデナデし始めた。
そんな俺と赤面が止まらない彼女を生暖かい目で見ていた彼が急に驚愕の発言をした。
《ちょっと待てよ!お前『見る』スキル持ちなのか?》
そう言えば、起きた彼女の頭上にスキルボードが現れたが俺は彼女を愛で倒す方を優先にしたので見ていない。
確か五感スキルはおとぎ話や伝説に神話に出てくる奴だぞ誰がそんなヤバイスキルを付与したんだ。
「そうですよ。女神が投げやりな態度で付与したスキルですが?」
彼女の呆れた発言に俺と彼は顔を見合わせてどでかいため息をついた。
奴か・・・多分価値全く分かってないで適当に付与した姿が目に浮かぶ。
「一応うちの国女神だぞ。威厳もなくて呆れて言葉も出ないわ」
《そう言えば、あいつ昔から勉強全くしなかったからな。お前の『見る』スキルは、スキルって形になっているけど人間の五感「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」に特化した失われた魔術。「見る」だから、自分が見た事やイメージした事がそのまま反映される俗に言うチートな物なんだよな》
「へっ?」
アホ面になった彼女は首をコテンと傾げてから、先程俺を包んだ白い波動を自らの身にまとい思い当たる節があったのかブツブツと何やら呟き出した。
数分後にまた彼女は俺と彼に向けて白い波動を向けると、目を大きく見開き頷いた。
多分、あの白い波動は『見る』スキルでそれを対象物にまとわせる事でその情報を会得するのだろう。
一応俺は彼の影響もありスキルの波動を感じる事が出来るから分かっている。
個人的に驚いているのは、伝説のスキルのはずなのに魔力の消費量が少ない事だ。
基本的には持続性のスキルだろう。
周囲に張り巡らされているスキルの消費量は10分間で1くらい。先程の対象物にまとわせる奴で1回ごとに2あたりかな。
スキルボード見ると消費量が1番多いので10か。
それに装着している防具が周囲に強固な防御膜を張るのに毎秒2消費で補充に毎秒5。
自動的に魔力補充って俺の側にいるようなものじゃないか。嫉妬心がフツフツと湧き上がってる。
今は、今は俺に膝枕されてるから消費量してもすぐに補充されで実質消費量0だからよしとしよう。
今度俺と繋がる魔導アクセサリーの作り方をエイロスに教わろう。
この伝説スキルがバレたらクソ貴族どもや各国から彼女が狙われるのは必然だ。
ただでさえ異世界人と言うだけで貴族共が舌舐めずりしているのに。
彼女は俺の運命の女性なんだからな。
彼女はそんな俺の重い思いを見たのか、赤くなった顔を手で隠しながら起き出した。
手で隠さなくても可愛いんだからもっと顔を見せて欲しいし、このまま去られるのは名残惜しい。1番肝心なのは彼女の名前すらまだ知らない事だ。
スキルボード出ているなら普通名前分かるだろうとアホか?と皆思うだろう。
しかし、彼女のスキルボードの多く、特に基本情報が嫌がらせかと言うくらいモザイクかかって見えないのだ。
積極的に人と接する事が苦手なので、なかなか話す事が出来ない。結構彼女と居るが話せたのは一言二言くらい。
ちょっと落ち込んできた俺の手をいきなり彼女は握りしめて上下にブンブンと振り俺の目を見てニコッと微笑んだ。
チャンスか?今話しかけるチャンスだと生唾を飲み込み「あのっ!」と言おうとした時に彼女は思いもよらない言葉を発した。
「モヤだっけ?『古の呪い』?蒲焼き?んーっっ!!そうだ!『ミザリー』アンタの事そう呼んで良い?」
俺をするり抜けて後ろの彼。『古の呪い』に名前を付けたのだ。と言う事は、微笑みかけたのも俺じゃなくて?
心臓に絡みついている彼の尻尾が思い切り締め付けているように胸が苦しい。
しかし、このまま何も言わないと話は進まないしチャンスも逃してしまう。
「ミザリーってどう言う意味なの?」
悔しいけどなんでそんな名前にしたのかきになる。俺的には意味はわからないが蒲焼きと言う響きが好きだ。
「直訳したら『不幸』なんだけど、私は文字の音が好きだから出たのかな。それに、不幸って中でもちょっとした幸せでも見つけたらめっけもんでしょ」
俺の蒲焼きの響きが好きと一緒か。
確かに呪いと言う存在は不幸だが、長い時の中一緒に居てくれることが幸せだったりする。
《不幸の中の小さな幸せか。気に入った、今日からミザリーって呼べよ》
声にドヤ感があるのがちょっと腹立つ。
「俺は蒲焼きでもいいけど・・・」
『でも』と言っているが、心は完全に『が』に決まっている。
《蒲焼きは絶対に拒否する!ミザリーってなったんだからミザリーなんだよ!!》
彼は子供のように駄々をこね始めた。
俺も『蒲焼き』は譲れない。
意味はわからないけど響きが好きだし自分が上位にいる感じがある。
それから30分くらい討論して2人とも譲れず結局ジャンケンに。
「《じゃーんけーんぽーーんっ!!!》」
俺がグーで彼がパー。
《いょっしゃあ!!!勝ったぁぁぁっ!!改めて今日から俺はミザリーだからな!》
「クソォっ!!負けた!!!」
決戦が終わったので彼女の方を向くと、俺とミザリーに会釈して事務棟の方へ駆け出した。
まだ彼女の名前すら聞いていないし、これで終わりなんて神が許したとしても俺が絶対に許さない。
足に強化魔法をかけて結界の外に出る直前の彼女の右腕を掴み思い切り引き寄せるとバックハグ状態になった。
丁度彼女の耳に口が当たる。
「君の名前聞いてなかったね。靴が片方脱げたらシンデレラって呼んでいただろうな」
耳を”パクっ”てしたらどう言う反応するんだろう。
「八女ツバサです。同行者が探してると思うのでもう・・・いいです・・・か?」
後ろだから顔を見ることが出来ないが掌で彼女の頬に触れると暖かい。
「同行者さんが探しているのでこれで、また」
『また』と言うことは彼女、ツバサとの関係は続く事が嬉しくなって手を緩めると、ツバサは振り返り会釈をすると事務棟の方に一目散に走っていった。
《よかったなアウフオ。また会えるって流れだな。うわっ、なんだその惚けた表情は。百年の恋も冷めるくらいのアホヅラだぞ》
ミザリーが頭の中で何か言っているが、ツバサとまた会える事が何よりも幸せだ。
その後、エイロスからの情報で毎週緑月の日(木曜日)に学園に依頼の収集をしに来ると。その時は会いにきてくれるだろう。
そして、ギルドにゲイリューンがわざわざ変装して来襲し、彼女のスキルをバラしてしまったと言う事でエイロスがツバサを守るためのアクセサリーを作る話になったのでそれは俺に任せて欲しいと頼み込んで今鋭意作成中。
簡単なのはネックレスだが、俺は指輪にした。それもお揃いの。
ペアが作りたいじゃなくて俺の指輪を媒体にして魔力補充や自動で敵対する奴らの滅殺とかしないとなんかツバサ危なっかしいイメージあるんだよな。
エイロス経由で早めに渡そう。
さて、もうそろそろ緑月の日だ。早く会いたいな。
歴代のウザい存在もとい、聖乙女も全く見えなかった。俺の体を覆う禍々しい存在の事を。
驚きを隠せない彼女も愛らしいなと見つめていたが、本当に彼が見えるのかと言う疑問よりもまずは俺の存在を知って欲しい。
いや、彼よりも俺を見て欲しいと言う思いがフツフツと湧き上がりワイシャツを脱ぎ出した。
ここにずっと封印されているが、鍛錬は欠かさずにやっているので勇者当時と変わらない程体は引き締まっていると自負している。
彼女はこんないきなり体を見せつける男をどう思うと少し後悔したが、彼女から白い波動が発生し、それが俺の体に入り込んだ。全身にピリッとするくすぐったい感じだ。
それが俺には分からなかったが、彼はようやく理解したと言う声で呟いた。
《やっぱりお前古の呪いの『俺』が見えるんだ》
彼の驚く声と同時に目の前の彼女が糸の切れた人形の様に倒れ込んだ。
咄嗟に抱き抱えたからよかったか、腕の中の彼女はどんどんと冷たくなってきている。
《ヤバイぞ。過剰な魔力消費で魔力切れを起こしている。早く魔力補充しないと最悪彼女死ぬ・・・》
魔力の充電器でもある俺が抱き抱えているだけでも魔力補充なっているはずなのに彼女の体は冷たいままだ。
その時、邪神討伐の際に他国の聖女が魔術師にやった行動を思い出した。
その後の彼の魔法が討伐の切り口になったんだよな。
抱き抱えた彼女の器を図り、暴走しないように深呼吸をしてから彼女の唇に自分の唇を重ねて魔力を流し込む。
《おいおい。あの聖女と魔術師は付き合っていたから回路が繋がっていて出来たことで・・・ええっ!!!彼女の回路すんなり受け入れてる!脈ありでいいのか?》
唇ってこんなに柔らかいんだ。もっと味わいたいがこれ以上の魔力補充すると彼女の器が壊れてしまう。
5秒ほどすると彼女の体は暖かくなり、小さかった鼓動も感じる。
頭の中で彼が慌てふためいているが、今は腕の中の彼女に集中。眠っているみたいで体をあずけてくれている。
「ゆっくりおやすみ」
寝るには枕が必要だがそんな物はここにはない。なら何を代用するか。俺の膝枕でしょ。
彼女の頭を膝にそっと乗せて眠っている彼女を眺める至福のひと時。
眠っている女性に色々な事をするのは人としてアウトなのは理解しているが、本能と言うか欲望は少しくらいならいいよなと。
ストップかける彼も今のところは何も言ってこないから今のうちに。
まずLevel 1 頭を撫でる
恐る恐る彼女の頭を2度ナデナデした所、気持ち良かったのか微笑んだ。
次にLevel 2 頬を触る。
唇と同じように柔らかいし、手に吸い付く気持ちよさ。これはハマるな危険。
これに調子を良くした俺はそこから一気にすっとばしてLevel10に。
それは、頬にキス。触って気持ち良かった頬に口づけしたらどんなに幸せだろう。
まずは、頬にキス。唇が”プルン”なら頬は”プニ”ならおでこは?目元は?鼻は?顎は?と顔中にキスの嵐。
個人的にはやっぱり唇が1番好きと結論。
だんだんと消えて行く理性。
彼女が早く目を覚ましてくれないと、キス以上の事をしそうな自分が怖い。
本などで軽く知識はあるが実体験は皆無。
抱きしめることから初めてなレベルだからなと考えていたら、彼女がモゾモゾとし始めた。
目を覚ました事の安堵感もあるが、これ以上暴走しなくて良かった気持ちが強いのは内緒。彼も彼女が目を覚ました事に気付いてホッとした。
「良かった目が覚めて。いきなり崩れ落ちたから心配したんだよ」
寝起きの彼女はすぐに自分が膝枕されている事に気づき、顔が瞬時に赤くなった。
「あっ・・・ご迷惑かけてすいません。じゃあ、私はこれで失礼します」と彼女はガバッと起き上がり離れようとしたので彼女の手を掴もうとしたところ、肩越しから何故か小さい蛇化した彼が現れ彼女を押さえつけた。
《まあまあ、力使いすぎて疲れたんだろう。少し休めよ。アウフォの奴膝枕なんて生まれて初めてやったんだぞ》
『ナイス』と心の中で彼にサムズアップしつつ、初体験がバレた事が恥ずかしくなり照れた笑顔で頷きながら彼女の頭をナデナデし始めた。
そんな俺と赤面が止まらない彼女を生暖かい目で見ていた彼が急に驚愕の発言をした。
《ちょっと待てよ!お前『見る』スキル持ちなのか?》
そう言えば、起きた彼女の頭上にスキルボードが現れたが俺は彼女を愛で倒す方を優先にしたので見ていない。
確か五感スキルはおとぎ話や伝説に神話に出てくる奴だぞ誰がそんなヤバイスキルを付与したんだ。
「そうですよ。女神が投げやりな態度で付与したスキルですが?」
彼女の呆れた発言に俺と彼は顔を見合わせてどでかいため息をついた。
奴か・・・多分価値全く分かってないで適当に付与した姿が目に浮かぶ。
「一応うちの国女神だぞ。威厳もなくて呆れて言葉も出ないわ」
《そう言えば、あいつ昔から勉強全くしなかったからな。お前の『見る』スキルは、スキルって形になっているけど人間の五感「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」に特化した失われた魔術。「見る」だから、自分が見た事やイメージした事がそのまま反映される俗に言うチートな物なんだよな》
「へっ?」
アホ面になった彼女は首をコテンと傾げてから、先程俺を包んだ白い波動を自らの身にまとい思い当たる節があったのかブツブツと何やら呟き出した。
数分後にまた彼女は俺と彼に向けて白い波動を向けると、目を大きく見開き頷いた。
多分、あの白い波動は『見る』スキルでそれを対象物にまとわせる事でその情報を会得するのだろう。
一応俺は彼の影響もありスキルの波動を感じる事が出来るから分かっている。
個人的に驚いているのは、伝説のスキルのはずなのに魔力の消費量が少ない事だ。
基本的には持続性のスキルだろう。
周囲に張り巡らされているスキルの消費量は10分間で1くらい。先程の対象物にまとわせる奴で1回ごとに2あたりかな。
スキルボード見ると消費量が1番多いので10か。
それに装着している防具が周囲に強固な防御膜を張るのに毎秒2消費で補充に毎秒5。
自動的に魔力補充って俺の側にいるようなものじゃないか。嫉妬心がフツフツと湧き上がってる。
今は、今は俺に膝枕されてるから消費量してもすぐに補充されで実質消費量0だからよしとしよう。
今度俺と繋がる魔導アクセサリーの作り方をエイロスに教わろう。
この伝説スキルがバレたらクソ貴族どもや各国から彼女が狙われるのは必然だ。
ただでさえ異世界人と言うだけで貴族共が舌舐めずりしているのに。
彼女は俺の運命の女性なんだからな。
彼女はそんな俺の重い思いを見たのか、赤くなった顔を手で隠しながら起き出した。
手で隠さなくても可愛いんだからもっと顔を見せて欲しいし、このまま去られるのは名残惜しい。1番肝心なのは彼女の名前すらまだ知らない事だ。
スキルボード出ているなら普通名前分かるだろうとアホか?と皆思うだろう。
しかし、彼女のスキルボードの多く、特に基本情報が嫌がらせかと言うくらいモザイクかかって見えないのだ。
積極的に人と接する事が苦手なので、なかなか話す事が出来ない。結構彼女と居るが話せたのは一言二言くらい。
ちょっと落ち込んできた俺の手をいきなり彼女は握りしめて上下にブンブンと振り俺の目を見てニコッと微笑んだ。
チャンスか?今話しかけるチャンスだと生唾を飲み込み「あのっ!」と言おうとした時に彼女は思いもよらない言葉を発した。
「モヤだっけ?『古の呪い』?蒲焼き?んーっっ!!そうだ!『ミザリー』アンタの事そう呼んで良い?」
俺をするり抜けて後ろの彼。『古の呪い』に名前を付けたのだ。と言う事は、微笑みかけたのも俺じゃなくて?
心臓に絡みついている彼の尻尾が思い切り締め付けているように胸が苦しい。
しかし、このまま何も言わないと話は進まないしチャンスも逃してしまう。
「ミザリーってどう言う意味なの?」
悔しいけどなんでそんな名前にしたのかきになる。俺的には意味はわからないが蒲焼きと言う響きが好きだ。
「直訳したら『不幸』なんだけど、私は文字の音が好きだから出たのかな。それに、不幸って中でもちょっとした幸せでも見つけたらめっけもんでしょ」
俺の蒲焼きの響きが好きと一緒か。
確かに呪いと言う存在は不幸だが、長い時の中一緒に居てくれることが幸せだったりする。
《不幸の中の小さな幸せか。気に入った、今日からミザリーって呼べよ》
声にドヤ感があるのがちょっと腹立つ。
「俺は蒲焼きでもいいけど・・・」
『でも』と言っているが、心は完全に『が』に決まっている。
《蒲焼きは絶対に拒否する!ミザリーってなったんだからミザリーなんだよ!!》
彼は子供のように駄々をこね始めた。
俺も『蒲焼き』は譲れない。
意味はわからないけど響きが好きだし自分が上位にいる感じがある。
それから30分くらい討論して2人とも譲れず結局ジャンケンに。
「《じゃーんけーんぽーーんっ!!!》」
俺がグーで彼がパー。
《いょっしゃあ!!!勝ったぁぁぁっ!!改めて今日から俺はミザリーだからな!》
「クソォっ!!負けた!!!」
決戦が終わったので彼女の方を向くと、俺とミザリーに会釈して事務棟の方へ駆け出した。
まだ彼女の名前すら聞いていないし、これで終わりなんて神が許したとしても俺が絶対に許さない。
足に強化魔法をかけて結界の外に出る直前の彼女の右腕を掴み思い切り引き寄せるとバックハグ状態になった。
丁度彼女の耳に口が当たる。
「君の名前聞いてなかったね。靴が片方脱げたらシンデレラって呼んでいただろうな」
耳を”パクっ”てしたらどう言う反応するんだろう。
「八女ツバサです。同行者が探してると思うのでもう・・・いいです・・・か?」
後ろだから顔を見ることが出来ないが掌で彼女の頬に触れると暖かい。
「同行者さんが探しているのでこれで、また」
『また』と言うことは彼女、ツバサとの関係は続く事が嬉しくなって手を緩めると、ツバサは振り返り会釈をすると事務棟の方に一目散に走っていった。
《よかったなアウフオ。また会えるって流れだな。うわっ、なんだその惚けた表情は。百年の恋も冷めるくらいのアホヅラだぞ》
ミザリーが頭の中で何か言っているが、ツバサとまた会える事が何よりも幸せだ。
その後、エイロスからの情報で毎週緑月の日(木曜日)に学園に依頼の収集をしに来ると。その時は会いにきてくれるだろう。
そして、ギルドにゲイリューンがわざわざ変装して来襲し、彼女のスキルをバラしてしまったと言う事でエイロスがツバサを守るためのアクセサリーを作る話になったのでそれは俺に任せて欲しいと頼み込んで今鋭意作成中。
簡単なのはネックレスだが、俺は指輪にした。それもお揃いの。
ペアが作りたいじゃなくて俺の指輪を媒体にして魔力補充や自動で敵対する奴らの滅殺とかしないとなんかツバサ危なっかしいイメージあるんだよな。
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