唯一の男が女人国家を男女共存国家へと変えて行く物語

マナピナ

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帝国の思惑 Ⅰ

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 城に戻ったアートはススミナを客間へ案内させると、クリスとリリスを引き連れ謁見の間へと来ていた。

「只今戻りました、陛下」 

「皆無事な様ですね、安心しました」

アートは事情を説明し、国の対処を訪ねた。

「獣人領へは既に食料を送り終えました、魔晶石に関しては後から陛下が述べられます」

宰相ジェナの話に取り敢えず胸を撫で下ろすアートだった。

「陛下お願いします」

話を振られたセリアは1枚の書状を取り出すと口を開いた。

「帝国は貴方の提案に対し条件を付けて来ました」

「条件ですか?」

「第一王女である、ティナ・サラスタ殿下との婚約」

「え!」

「サラスタ帝国は、隣国との些細な揉め事に皇国仲裁と言う近隣諸国へ不名誉な汚点を負わされた事に成るの、オマケに自領内の獣人領発展の促し及び皇国内への引き入れによる帝国の戦力低下・・・なんて言う事をしでかしたのかしら・・・」

「そんな・・・」

俺はやり過ぎてしまったのか、しかし・・・

「それでティナとの婚約が関係有るのですか?」

「帝国に取って問題は関係無いのですよ、飽く迄も欲しいのは付け入る隙と成し遂げた事実だけ、嫁いで終わりの姫は政治的道具でしか無いと言う考えなんです」

 今頃ティナも戸惑っているだろうな、彼女には心に決めた人がいるのだろうか。
嫌、問題はそこじゃない。
ただ政治の為だけに結婚など普通は当たり前なのかも知れないが、俺のせいで彼女を巻き込む事はしたく無い。

「俺はティナ殿下を嫁に向かえるしか無いのですか?」
 
「今回の事は正式な約定を交わした訳では無いので、帝国からの書状は牽制だと思えば宜しいかと」

「ありがとう、ジェナ」

「今回の騒動、リリス嬢も大変でしたね」

「勿体無い言葉ありがとうございます、陛下」

「不出来な息子が問題を大きくした事、謝らせて頂きます」

セリアは立ち上がるとリリスに向かい大きく頭を下げた。

「陛下! 頭をお上げ下さい」

リリスが慌てて促す。

「今回の件、亜人国ではアート殿下の仲裁に対して言葉では表せない程の感謝をしています」

「リリス嬢」

「は、はい」

「それ以上は言わない方が良い、時期はまだ早いし成り行きで手に入る程安く無いわよ」

「・・・」

2人は何の話をしてるんだろう?

「俺は今後どうしたら宜しいでしょうか?」

「そうですね・・・婚約の件を謝罪の意味も含めて帝国へ渡り、断って来なさい」

「う・・・出来るでしょうか」

「出来るか出来ないかは貴方次第、流されて婚約する事に成らない事を願ってます」

「それは無いと思います」

「本当! 本当なのねアート?」

何故リリスが食い付くんだ?

「心配ならリリス嬢も着いて行っては?」

「宜しいのですか?」

「母上、他国の要人に危険では有りませんか?」

「貴方がリリス嬢を守れば問題無いでしょう、逆に貴方の事も守ってくれそうですしね」

「う、ううん?」

「アート心配しないで、私は要人では有るけど国の行く末には関係の無い者だから大丈夫よ」

「話しは終わりです、数日は城でゆっくりして行きなさい」

「では失礼します」

3人が退室するとセリアがナタリアに訪ねた。

「クリスに何か有ったの?」

「何も聞いてませんが・・・」

「アートの将来に付いての話に顔色1つ変えないなんて、今までに一度も無かった事よね」

「そうですね・・・」

セリアとナタリア、ミーナの3人は同時に首を傾げるのだった。


 キャロルとトレシアの様子を見てくる様クリスに頼み、リリスを連れススミナの待つ部屋へと訪れた。

「俺は急遽帝国へと出向かう事に成ったのだけど君はどうする?」

「またまた急な話ね・・・私は折角ここまで来れたのだから残らせて貰うわ。
最も入国の難しい国だから次入れるとは限らないしね」

「そうか、でも残ってどうするんだい?」

「アートが戻って来るまで獣人族のさらなる売り込みでもしてるわ、どうせ着いて行ってもリリスがいるしね・・・」

「リリスが何故出てくる?」

ススミナはリリスに視線を送ると直ぐに話題を変えた。

「なんでも・・・それより一緒にお茶しない?」

 そう言えばススミナは侍女も居ないで暇だったのだろうな。

「良いよ」

「ありがとう、折角だから少し大事な話も聞いて貰おうかな」

そう言いながら煙たそうな表情でリリスを見つめた。

「獣人族の事?」

黙って頷くススミナ。

「リリス悪いけど席を外してくれるかな、部屋を用意されてると思うから休んだら良いと思う」

「分かっわ、また夜にね」

「ああ」

リリスが出て行くのを確認したアートは小さな食卓に付いた。

「紅茶入れるわね、きっと話す機会が有ると思って人払いをしといて良かったわ」

 ススミナはそこまでして話さなければ行けない事を胸に秘めていたのか、もう少し俺から歩み寄ってれば良かったのかもしれない。

 紅茶の入ったカップをアートの前に出すと自分のカップを取り口まで運んだ。
瞳を閉じ少し考え込んだススミナは、意を決した様にアートを見つめると真剣な口調で語り始めた。

「まだセリア陛下には話せないけどアートには知っていて欲しい、帝国の思惑を・・・」

「帝国の思惑?」

「これから話す事は3ヶ月前に、私が経験した話よ・・・」


 時は戻り春を迎えようと言う時期の帝国領。

 ススミナは数人の護衛と共に帝国の首都へと向かっていた。
5年に1度有る帝国と獣人族の領土貸与の調印を行う為である。

「ススミナ様、大丈夫ですか?」

「少し憂鬱なだけで大丈夫」

「それなら良いんですが・・・」

「あの王子に会わないと行けないのを考えると憂鬱に成るんだよね」

「真鍮お察しします」

 ススミナが言う、あの王子とはアリソン・サラスタ第1皇太子殿下の事である。
彼は既に成人を迎えている為、政への発言力も高く帝国内では現国王ベリック・サラスタ6世に継いでの権威を確執している者である。

 ススミナ率いる獣人軍は首都に着くと王城へと足を向けたのだった。

「それにしても、ススミナ様で無ければ交渉の場を設けないと言うなんて我儘が度を越してますよね」

「仕方が無いわ、ここの所ハレムに入れと言う通達が何度も届いているからね」

「それも許されない話ですよね」

「そろそろ静かにしなさい」

「はい」

ススミナが城門を指しながら嗜めると、侍女は頭を下げ一歩下り後に続いた。


 城門を潜るとススミナと侍女は応接室へ、兵達は休憩室へと通された。
応接室に2人が入ると高価な装飾品を身に纏、両脇に綺麗な女性を侍らせた男性が迎えた。

「ススミナ嬢、お待ちしてましたよ」

「遅くなり申し訳ありませ、アリソン皇太子殿下」

膝を落とし挨拶する2人を立たせススミナを席へと促した。

「交渉へ入る前に提案なんだが、そろそろ僕のハレムに来てくれると有り難いんだが。
そうしたら、君と僕の関係が続く限り獣人領の境界は現状のまま維持と言う事で手を打つよ」

「申し訳ありません、獣人族には政の絡んだ婚姻を行う習慣が有りませんので・・・」

 もちろん嘘である。

「それなら仕方が無いな、獣人領の現状を聞かせてくれるかな?」

「街周辺は相変わらずの荒地ですが帝国から借りてる領地は5年前より10%開拓が進み、民も何とか暮らす事が出来てます。
なので、約定どおり今回5%の土地を帝国に返す事が出来ます」

「10%だ」

「え?」

「元々帝国が獣人族に領土を貸したのは一時凌ぎだったはず」

「その通りです」

「ここ数十年の様子を調べさせて貰ったが、獣人族は帝国内に国家を作り根付く考えでは無いのかと思える節が出て来た」

「それは有りません」

「口では何とも言えるけど、実際獣人族は問題の解決をしようとしていないでは無いか、条約はまだ50年も続くが僕の代で問題を終わらすなら厳しくする必要が有ると思ったんだ」

「・・・」

「気に食わないなら攻め込んで来れば良い、約定無視だろうが構わない。
帝国は獣人族の為に散々力を貸し保護もして来た、そろそろ君達にも誠意を見せて貰いたい物だ」

「申し訳ありません」

「今回の交渉は10%の土地返還だ、納得するなら明日またここで」

アリソンは席を立つと女性達を抱え部屋を出て行った。



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