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夏季休暇 Ⅴ
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文官達との話をしてる所へ衛兵が駆け込んで来た。
「リリス様、城の側で怪しい2人組を拘束したのですが、その者達はリリス様の知り合いだと言われるのですけど?」
「その2人は名乗りましたか?」
「クリスと言う女性にエブリンと言う男性です」
リリスは承諾して2人を客室へ案内しとく様に取りはかった。
「アート殿下以外の護衛が先に着いた様ですので、少し事情を聞いて参ります」
クリスとエブリンだけと言う状況に不安を感じながらも2人の所へ急ぐのだった。
リリスは扉を少し乱暴に開けると2人の側まで走って問いかけた。
「アートは? 何故アートが一緒じゃ無いの?」
「それは・・・」
クリスの言葉を遮り捲し立てる。
「クリス、貴方がアートから離れてるって事は何か有ったのでしょう?」
「リリス落ち着いて!」
「あ・・・ごめんなさい」
「僕が事情を話すよ」
エブリンは検問所を通る事が出来ずアートの提案で別れた事、獣人族の元へ向かった事を伝えた。
「そうだったのね」
リリスは再び自分の力無さを痛感すると同時に、アートへの期待と信頼感で胸を熱くするのだった。
「私はどうしたら良いのかな」
「今は信じて待って見たら?」
「エブリン! 他人事過ぎるわ」
「そうだね、リリスごめん」
「いえ」
クリスとエブリンの関係に違和感を持ちつつも従う事にしたのだった。
一方でフリーシアに向かう馬車は帝国獣人領から出る辺りだった。
「そろそろフリーシアに入るわよ」
「了解」
アートはアイテムボックスからゾネス皇国の旗を出すと馬車の御者を変わった。
これで奇襲される事は無く成り、止められてもコインを見せれば詮索される事も無くなる。
「ススミナ様、あの方って凄い方なんですか?」
「アートの事? あの子はゾネス皇国の時期国王よ」
「ええ! そんな方に御者をお願いしても良かったんですか?」
「良いの良いの、ここだけの話だけど私の将来の・・・」
「そうなんですか?」
「うーん、予定と言うか希望かな」
「最近まで女の娘として生活してたんですよね?」
「小さい頃、私より全然女の娘らしかったわよ、それが今では惚れてしまう位立派に成ったわ」
ススミナは昨夜アートが会議室を仕切ってた時の事を思い出していた。
「本気なんですね」
「内緒よ」
話の盛り上がってる所で前方のガラスがノックされた。
これは事前に打ち合わせしてた村を抜ける時の合図だった。
「暑いけど仕方ないわね」
ススミナは窓を閉めカーテンで中が見えない様にしたのだった。
「南はジメジメしてるから余り好きじゃ無いのよね」
そう言いながら胸のボタンを外しスカートを捲り上げ寝転がったのである。
幸い止められる事も無く王城まで辿り着く事が出来た。
知らせを聞いたリリスは誰よりも早くアートの胸へ飛び込み、涙ながらに叫んだのだった。
「無茶しないで! 貴方が居なく成ったら私は・・・私は」
クリスとエブリンもやって来て感動の再開をぶち壊した。
「アート! 荷台の半裸でいる人達は誰?」
涙を拭きながらリリスも覗きに行くと、ススミナと付き人は完全に熟睡してたのである。
「アート! 何したの・・・」
「泣いて起こって、リリスこそどうした?」
ワナワナ震え始めるリリスを見て後退りするクリスとエブリン。
次の瞬間リリスの手から氷の矢がアートに目掛けて飛んで行ったのは言うまでも無い事だった。
何とか誤解を解いたアートはススミナを叩き起こし場所を謁見の間に移したのだった。
「お久しぶりです、ヘレン女王陛下」
「アート殿下もお元気そうで何よりです、ススミナ嬢も良くいらしてくれました」
「突然の来訪申し訳有りません陛下」
アートは獣人国で話した事を謁見の間でも話して聞かせた。
「殿下の話は良く分かりました、元々フリーシアは争いを嫌う国なので受け入れます」
「ありがとうございます」
「私からも殿下に話したい事が有りますので、夕食に招待させて下さい」
ヘレン女王陛下の誘いでは断る事も出来ず、一拍する事に決めたのだった。
俺としては話が纏まったからには早く帰国して母上と交渉したいんだけどな・・・。
夕食の宴には女王陛下の他に、エルフやドワーフの族長達も参加しての大宴会と成った。
アートが陛下と2族長の席に着くと突然切り出された。
「アート殿下、リリスはどうですかね?」
「はい、良くしてくれてます」
「・・・実はリリスを殿下の所へ送ったのは、妃として見初めて下さらないかと思いましてね」
「リリスをですか?」
「本人は側に置いて貰えるだけでも嬉しいと行ってましたしね」
また恋愛か・・・。
「まだ時はありますし、良ければ殿下に一考して頂けたら幸いです」
「はい」
夏季休暇が終わったら恋愛と言う物にも真剣に取り組まないと行けないな。
アートがクリスとエブリンの席に戻るとリリスとススミナの姿が消えてた。
「おかえり」
「ただいま、リリスとススミナは?」
「話が有るみたいで向こうへ行ったわよ」
「そうか、明日には帰国の徒に就こうと思ってるけど良いかな?」
「も勿論よ」
「僕も構わないよ」
一瞬だが今まで見せた事の無い顔をクリスが見せた様な・・・気の所為だったか?
それよりも後はリリスに伝えれば出発出来るかな。
リリスとススミナは宴が開かれてる場所から離れた木陰まで来ていた。
「話とは何でしょうか? 私には政治的決定件は一切持ち合わせて居ませんがススミナ様」
「貴方はアートに恋してるでしょ、でもそれは諦めた方が良い」
「何故貴方に言われなければ成らないのでしょうか?」
「それは貴方がアートを不幸にするからよ」
「何故そんな事が・・・」
「言えるわよ! アートは必ず先に寿命が来るの貴方を愛したら大切な人を残して逝く事は確定でしょ、貴方本当は何歳? アートと同じ13歳では無いわよね?」
黙り込んでしまうリリス。
「このまま国に残りなさい、アートには私が着いて行くわ」
「なるほどね、貴方もアートに惚れてるって事ね・・・泥棒猫」
「私を猫呼ばわりするとは良い根性してるわね」
「私は確かに100歳を超えてるわ、でも人間の感覚に合わせたらアートと変わらない。
それに寿命が何? そんなの本当の恋なんかじゃないわ、どんな一生を送ったかで幸せか不幸かが決まるんじゃないかしら?」
「生意気ね」
「おおー いたいた探したぞ2人共」
『アート!』
「話は済んだのか?」
「え、ええ」
「終わったわよ、アート次は使者としてゾネスまで同行させて貰うからね」
「ありがとう、母上と交渉しやすく成るよ」
「出発は明日だから夜更かししない様にね、それじゃおやすみ」
「おやすみなさい、アート」
「おやすみ」
アートは城へと戻って行った。
「シラケタわね、後は自分で良く考えてみなさい」
ススミナも1人王城へと帰って行った。
城へ戻ったリリスは陛下に呼ばれ部屋へと赴いた。
「ただいま戻りました」
「遅くに悪いわね、今日アート殿下と少し話したのですが、貴方自身は妃と成れる自信はあるのですか?」
「私は妃で無く側室でも良いから一緒に居たいと言う気持ちは変わってません」
「分かりました、頑張りなさい」
「ありがとうございます」
陛下の部屋を出たリリスの瞳からは涙が溢れ出し、その場に崩れ落ちたのだった。
「駄目だ! 諦めたら駄目なんだ私の信じる恋愛を彼に教えると決めたのだから」
そう呟くと歯をくいしばり右手の拳で床を叩くのだった。
早朝早く、獣人族の馬車は国へと戻って行った。
アート一行の方は御者にエブリンとクリス、荷台にアートとリリスにススミナが囲む様に座っていた。
「へえ~来たんだ」
「当然でしょうアカデミーに帰らないと行けないのだからね」
「何だか2人機嫌悪く無い?」
アートが心配になり声を掛けると・・・。
『悪くない!』
威圧の有る言葉に引き下がるしか無かったのである。
一行は数日掛けカルベラ王国へ入り航路を使いルナレアの街でエブリンと別れ王城へと戻って来たのであった。
「リリス様、城の側で怪しい2人組を拘束したのですが、その者達はリリス様の知り合いだと言われるのですけど?」
「その2人は名乗りましたか?」
「クリスと言う女性にエブリンと言う男性です」
リリスは承諾して2人を客室へ案内しとく様に取りはかった。
「アート殿下以外の護衛が先に着いた様ですので、少し事情を聞いて参ります」
クリスとエブリンだけと言う状況に不安を感じながらも2人の所へ急ぐのだった。
リリスは扉を少し乱暴に開けると2人の側まで走って問いかけた。
「アートは? 何故アートが一緒じゃ無いの?」
「それは・・・」
クリスの言葉を遮り捲し立てる。
「クリス、貴方がアートから離れてるって事は何か有ったのでしょう?」
「リリス落ち着いて!」
「あ・・・ごめんなさい」
「僕が事情を話すよ」
エブリンは検問所を通る事が出来ずアートの提案で別れた事、獣人族の元へ向かった事を伝えた。
「そうだったのね」
リリスは再び自分の力無さを痛感すると同時に、アートへの期待と信頼感で胸を熱くするのだった。
「私はどうしたら良いのかな」
「今は信じて待って見たら?」
「エブリン! 他人事過ぎるわ」
「そうだね、リリスごめん」
「いえ」
クリスとエブリンの関係に違和感を持ちつつも従う事にしたのだった。
一方でフリーシアに向かう馬車は帝国獣人領から出る辺りだった。
「そろそろフリーシアに入るわよ」
「了解」
アートはアイテムボックスからゾネス皇国の旗を出すと馬車の御者を変わった。
これで奇襲される事は無く成り、止められてもコインを見せれば詮索される事も無くなる。
「ススミナ様、あの方って凄い方なんですか?」
「アートの事? あの子はゾネス皇国の時期国王よ」
「ええ! そんな方に御者をお願いしても良かったんですか?」
「良いの良いの、ここだけの話だけど私の将来の・・・」
「そうなんですか?」
「うーん、予定と言うか希望かな」
「最近まで女の娘として生活してたんですよね?」
「小さい頃、私より全然女の娘らしかったわよ、それが今では惚れてしまう位立派に成ったわ」
ススミナは昨夜アートが会議室を仕切ってた時の事を思い出していた。
「本気なんですね」
「内緒よ」
話の盛り上がってる所で前方のガラスがノックされた。
これは事前に打ち合わせしてた村を抜ける時の合図だった。
「暑いけど仕方ないわね」
ススミナは窓を閉めカーテンで中が見えない様にしたのだった。
「南はジメジメしてるから余り好きじゃ無いのよね」
そう言いながら胸のボタンを外しスカートを捲り上げ寝転がったのである。
幸い止められる事も無く王城まで辿り着く事が出来た。
知らせを聞いたリリスは誰よりも早くアートの胸へ飛び込み、涙ながらに叫んだのだった。
「無茶しないで! 貴方が居なく成ったら私は・・・私は」
クリスとエブリンもやって来て感動の再開をぶち壊した。
「アート! 荷台の半裸でいる人達は誰?」
涙を拭きながらリリスも覗きに行くと、ススミナと付き人は完全に熟睡してたのである。
「アート! 何したの・・・」
「泣いて起こって、リリスこそどうした?」
ワナワナ震え始めるリリスを見て後退りするクリスとエブリン。
次の瞬間リリスの手から氷の矢がアートに目掛けて飛んで行ったのは言うまでも無い事だった。
何とか誤解を解いたアートはススミナを叩き起こし場所を謁見の間に移したのだった。
「お久しぶりです、ヘレン女王陛下」
「アート殿下もお元気そうで何よりです、ススミナ嬢も良くいらしてくれました」
「突然の来訪申し訳有りません陛下」
アートは獣人国で話した事を謁見の間でも話して聞かせた。
「殿下の話は良く分かりました、元々フリーシアは争いを嫌う国なので受け入れます」
「ありがとうございます」
「私からも殿下に話したい事が有りますので、夕食に招待させて下さい」
ヘレン女王陛下の誘いでは断る事も出来ず、一拍する事に決めたのだった。
俺としては話が纏まったからには早く帰国して母上と交渉したいんだけどな・・・。
夕食の宴には女王陛下の他に、エルフやドワーフの族長達も参加しての大宴会と成った。
アートが陛下と2族長の席に着くと突然切り出された。
「アート殿下、リリスはどうですかね?」
「はい、良くしてくれてます」
「・・・実はリリスを殿下の所へ送ったのは、妃として見初めて下さらないかと思いましてね」
「リリスをですか?」
「本人は側に置いて貰えるだけでも嬉しいと行ってましたしね」
また恋愛か・・・。
「まだ時はありますし、良ければ殿下に一考して頂けたら幸いです」
「はい」
夏季休暇が終わったら恋愛と言う物にも真剣に取り組まないと行けないな。
アートがクリスとエブリンの席に戻るとリリスとススミナの姿が消えてた。
「おかえり」
「ただいま、リリスとススミナは?」
「話が有るみたいで向こうへ行ったわよ」
「そうか、明日には帰国の徒に就こうと思ってるけど良いかな?」
「も勿論よ」
「僕も構わないよ」
一瞬だが今まで見せた事の無い顔をクリスが見せた様な・・・気の所為だったか?
それよりも後はリリスに伝えれば出発出来るかな。
リリスとススミナは宴が開かれてる場所から離れた木陰まで来ていた。
「話とは何でしょうか? 私には政治的決定件は一切持ち合わせて居ませんがススミナ様」
「貴方はアートに恋してるでしょ、でもそれは諦めた方が良い」
「何故貴方に言われなければ成らないのでしょうか?」
「それは貴方がアートを不幸にするからよ」
「何故そんな事が・・・」
「言えるわよ! アートは必ず先に寿命が来るの貴方を愛したら大切な人を残して逝く事は確定でしょ、貴方本当は何歳? アートと同じ13歳では無いわよね?」
黙り込んでしまうリリス。
「このまま国に残りなさい、アートには私が着いて行くわ」
「なるほどね、貴方もアートに惚れてるって事ね・・・泥棒猫」
「私を猫呼ばわりするとは良い根性してるわね」
「私は確かに100歳を超えてるわ、でも人間の感覚に合わせたらアートと変わらない。
それに寿命が何? そんなの本当の恋なんかじゃないわ、どんな一生を送ったかで幸せか不幸かが決まるんじゃないかしら?」
「生意気ね」
「おおー いたいた探したぞ2人共」
『アート!』
「話は済んだのか?」
「え、ええ」
「終わったわよ、アート次は使者としてゾネスまで同行させて貰うからね」
「ありがとう、母上と交渉しやすく成るよ」
「出発は明日だから夜更かししない様にね、それじゃおやすみ」
「おやすみなさい、アート」
「おやすみ」
アートは城へと戻って行った。
「シラケタわね、後は自分で良く考えてみなさい」
ススミナも1人王城へと帰って行った。
城へ戻ったリリスは陛下に呼ばれ部屋へと赴いた。
「ただいま戻りました」
「遅くに悪いわね、今日アート殿下と少し話したのですが、貴方自身は妃と成れる自信はあるのですか?」
「私は妃で無く側室でも良いから一緒に居たいと言う気持ちは変わってません」
「分かりました、頑張りなさい」
「ありがとうございます」
陛下の部屋を出たリリスの瞳からは涙が溢れ出し、その場に崩れ落ちたのだった。
「駄目だ! 諦めたら駄目なんだ私の信じる恋愛を彼に教えると決めたのだから」
そう呟くと歯をくいしばり右手の拳で床を叩くのだった。
早朝早く、獣人族の馬車は国へと戻って行った。
アート一行の方は御者にエブリンとクリス、荷台にアートとリリスにススミナが囲む様に座っていた。
「へえ~来たんだ」
「当然でしょうアカデミーに帰らないと行けないのだからね」
「何だか2人機嫌悪く無い?」
アートが心配になり声を掛けると・・・。
『悪くない!』
威圧の有る言葉に引き下がるしか無かったのである。
一行は数日掛けカルベラ王国へ入り航路を使いルナレアの街でエブリンと別れ王城へと戻って来たのであった。
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