想いの強さは人を超えられるか?

マナピナ

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始まりの時

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 日本国内のとある田舎地域、地図にも乗っていないコミュニティーが存在していた。
それはÅI・アンドロイドなど世界でも最先端の研究をしている研究施設を始め、家族達が暮らす為の場所であった。
 その会社の名は『農機具開発研究所』もちろん表向きではある。
社宅やスーパー・病院など生活する上で困らない様に、一通りの施設は揃っていた。
 物語はそこに暮らす少年と少女の物語から始まるのであった。

「拓哉元気が無いね」

「うん・・・」

「私に話してみなさい、貴方は将来の旦那様なんだから力に成るわよ」

「旦那様って親が勝手に決めたんじゃないか」

「私じゃ不満な訳?」

少女は穏やかな表情から一変して険しい表情を拓哉へ向けていた。

「そんな事無いよ、俺は真木ちゃんの事好きだしさ」

「それなら良いわ、早く聞かせなさいよ」

「実は父さんと母さんが離婚するかも知れないんだ」

「離婚・・・?」

 まだお子様には早いか・・・俺も同じ年だけどさ。

「別々に暮らすんだってさ」

「それは大変!」

「僕は父さんも母さんも好きだから困ってるんだよ」

「何を困ってるの?」

「2人共僕と一緒に住もうって言うんだ、母さんと一緒ならここを離れなきゃ行けないんだよ」

「そんなの絶対に嫌だわ」

「そうだよね・・・」

「私に任せときなさい」

そう言うと少女は走り去ってしまった。


 数日間少女はいつもの公園で拓哉を待ち続けた・・・。

「夏美、迎えに来たわよ」

「うーん」

真木夏美が落ち込んでるのを見て母親が気にかける。

「何かあったの?」

「最近拓哉が遊びに来ないの・・・」

「貴方知らなかったの? 拓哉君ならお母さんとコミュニティーを出て行ったわよ」

「え! 聞いてないよ?」

「あら、拓哉君から聞いてると思ったわ」

「何処へ行ったか知ってるの?」

「お母さんも後から聞いた話だからね」

「そうなんだ・・・」

「今日はお父さんも休みだから千夏に会いに行くわよ」

「うん」

夏美は拓哉の事を考えるの辞めた。


 コミュニティーから車で1時間ほど掛かる場所にある総合病院、その途中にある見渡しの悪い交差点では真木一家を乗せた車が来るのを待つ者がいるのだった。

「白のセダンでナンバーは・・・覚えたぞ早く来い」

その時標的の白いセダンが大型トラックを追い越した。
安全運転を心がけるセダンとは違い距離を詰めて行く大型トラック。
交差点を右折しようと停車したセダンにブレーキも掛けず衝突したトラックは、力の限りセダンを押し続けた。
2台の車は壁に衝突し止まった。

「まだまだだー」

男はトラックを後退させると、アクセルを一杯まで踏み込み壁に刺さってるセダンへ突撃したのである。
壁と挟まれたセダンは原型を留めるはずもなく、車体の中からは真っ赤な血が大量に流れていたのだった。

「やった、やったぞー」

男は叫びながらその場を逃走した。


 15分後、真木一家3人は総合病院へと運び込まれていた。
母親と夏美はすでに息を引き取り、父親も非常に危ない状態だった。

「先生お願いが・・・もし夏美に何か有ったら心臓を妹の千夏のお願いします」

「しかし」

「どうかお願いします・・・」

これが最後の言葉であった。


 病院へ駆け付けた拓哉の父は医師に呼ばれていた。

「そうですか、全ての費用や責任は私が取りますので親友の遺言を叶えて頂けませんでしょうか?」

医師は暫く考えた上で了解したのである。

 手術は無事に成功し天涯孤独と成ってしまった千夏は、陰ながら応援する拓哉父の力もあり普通に暮らすまでに至ったのであった。
しかし夏美の意志は心臓に留まり千夏の中で過ごす事と成ってしまったのだ。

「千夏は本当に良いの?」

「私は夏美の心臓で命を繋げてるのだから好きにして良いわよ」

「・・・」

「夏美の記憶を見る限り拓哉さんとは許嫁なんでしょう」

「そうだよ、きっと拓哉なら私達2人を受け入れてくれると思うわ」

「決まりね」

それから2人は遅れた物を取り返す為に、昼は千夏が通信講座を夜は夏美が家事を行い毎日を過ごしたのである。
因みに夏美は千夏の中にいない時は、大きなクマのぬいぐるみに入っているのであった。


 月日は経ち高校3年の夏

「千夏、私は暫く留守にするけど頑張るのよ」

「何処へ行くの?」

「そろそろ拓哉を探さないとね、既に結婚出来る年齢だし接近する頃合いだと思うのよ」

「そうだね、任せるわ」

千夏の体を後にして2周間、夏美は通りすがりのアンドロイドを乗り継ぎ、事前に調べた拓哉の元へと辿り着いた。

「拓哉は進学希望だっけ?」

「ああ、東京の・・・大学受けるんだ」

「拓哉なら行けそうだな」

「こんな田舎とはオサラバしたいから頑張るさ」

帰宅途中であっさりと聞けた内容に夏美は運を感じたのだった。

 それから2周間、夏美は千夏の元に戻り聞いた事を報告した。

「その大学なら受かる可能性は高いよ」

「やった!」

「メールのおじさんには私から連絡しとくわね」

千夏の言うメールのおじさんとは拓哉の父である。
彼はここまで正体を明かさずメールでのやり取りだけで千夏を支えて来たのであった。

「部屋を借りる事が出来たら最後のお願いに成るね」

「そうね、後は自分達で生きて行きましょう」

クマのぬいぐるみが立ち上がり片手を天井に向け力強く上げた。


 入試一週間前、千夏のスマホにメールが届いた。
差出人は御子柴香織とある。

「千夏、内容は?」

「ええと・・・」

彼女は元々父と同じ会社で働いていた様であり、今後の大学生活を送る上で是非アルバイトをして欲しいと言う事だった。

「まずは話だけでもと書いてあるんだけど、どうする?」

「何故こちらを知ってるのか疑問だけど、バイトは探さないと行けないんだし話だけなら良いんじゃない?」

「分かった」


 指定の日指定のビルに入っている1つの事務所に赴いた千夏は香織から発せられた一言で即決したのであった。

部屋に戻った千夏はクマのぬいぐるみにからかわる事と成った。

「貴方話も聞かないで、拓哉も働くと知って即決したわね」

「それは・・・夏美の為を思ってでしょう」

「その割には私に相談も無かったわよね」

「夏美は嫌なの? 直ぐに連絡して断わるよ」

「いやいや、今日は千夏の好きなハンバーグ作ろうかな」

「それで良し」

何とも安上がりな性格である。

「しかし、ここまで来ると偶然じゃないわよね」

「私も夏美と同じ事を考えていたよ」

「人生面白く成りそうね」

「・・・夏美の人生はまだ続いていたんだね・・・」

「何か言った?」

「何も言ってないよ」

「所で隣への挨拶はいつ行くのかな?」

「それは合格が決まってからしようよ、挨拶しといて浪人とかに成ったら格好悪いじゃない?」

「そうだけど早く会いたいな」

千夏は浸っているクマのぬいぐるみを置いて勉強を始めるのであった。


 一方隣の部屋では拓哉が口笛まじりで念力を使いながら家具を動かしていた。

「まずは快適な部屋作りからだよな」

拓哉の能力と言うのは触れたものを重くも軽くも出来、ある程度の重さなら移動させる事も出来るのであった。
この能力は幼い頃父の研究所を訪れた時に誤って授かってしまった物だが、本人は自覚が無く突然と芽生えた力だと認識しているのだった。
父の教えを守り自分で責任を持てる様に成るまでは封印していたが、最近に成り少しづつと制御できる様に使い始めたのだった。
新しいバイトで役立てる為にである・・・。




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