上 下
109 / 115
最終章 ゴーレムはゴーレム

第八十八話 ゴーレムの中身

しおりを挟む
「サイス大陸には久しぶりに来ました。……暑いですね」

 ケイのゲートで出てきた場所、レベッカの屋敷の近くに都合よく開いてくれた。
 なんでもケイはレベッカとも認識があったらしく、屋敷の近くも把握していたようだ。

「ええ、私もずいぶん慣れたつもりでしたがやはり暑いですからね」
「オレは平気だが?」
「自分も暑く思います」

 オレには参加できない会話なんだなー。

「シオ様は完全無欠ですから」

 完全に無血ではありますけれども。

「旨い事言うなあ」
「実際血は流れてないっぽいけどな」

 うむ。

「しかし異世界人とはいっても、ゴーレムとの会話というのも不思議な感じがしますね」

 そう言いながらサフィーラさんがオレの胸に手を当てて来る。
 うーむ、美人エルフさんの接近には心臓はないけどドキドキするぜ。
 以前も接近されたが、アレは男だったからな!

「シオ様?」

 ナンデモナイデスヨ。

「こう触ると不思議な金属ですね。オリハルコンのような強度を持ちつつアダマンタイトのように魔力の通しを抑える構造、その中にもゴーレムの肉体を操作するための魔鉱かミスリルのように魔力を流す構造……矛盾していますが、それらの特性を一つに纏められたような。とてもじゃないですがそんな物質が存在するなんて考えられません」

 どんな物質なんだろうね?

「見てください……私が魔力を通そうとしても弾かれます。外部から魔力が通らないようになっています。これは耐魔の特性を持つ金属特有の反応です」

 オレの胸に当てられた手から魔法の光が溢れて来る。

「単純な物質ならこれで魔力を通せますが、弾かれます。それにお話を聞く限りでは、貴方が過去にダメージを受けたのは古龍の爪やオリハルコン性の海槍クラーケンという強度的に見ても攻撃力的に見ても世界最高峰レベルの攻撃です。そんな強烈な一撃を受けない限り損傷を受けないなんて異常な強度です。オリハルコンも加工を施さなければただ硬いだけの物質ですから、それを攻撃に特化させたクラーケンでようやくダメージを受けたというのであれば貴方の肉体はオリハルコンレベルなのでしょうけど」

 オリハルコンていうとゲーム的な世界でいうところの最硬の物質ですよね。あの爺さんそんなもんでオレの体作ったのか。

「個人で全身をオリハルコンで作れるほどの量が手に入るとも思えませんけど……自己修復というか、再生もするんですよね?」

 おう、何度かヒビが入っても治ったぞ。

「修復するのも魔力が使われているのですよね?」

 多分ね。

「外部からの魔力を遮断できるのに、自身の肉体を直す事の出来るほどの魔力を通わせるなんて……貴方相当に魔力があるのね」
「シオ様は高威力の魔法を当たり前のようにポンポン撃てますよね」
「非常識なレベルで手軽に魔法を使うよな」
「魔法の覚え方も非常識だしな」

 非常識かなあ。お手軽でいいと思うけど。

「胸に魔石を当てるだけで、ですか。すでに覚えている魔法の系統魔石も吸収されるのですか?」

 うん。グランフォールで経験済みだよ。

「なんと言いますか、貴方の中でどのような処理が行われているのか非常に気になりますね……中身……中身……」

 解剖はしないでね!?

「え、あ!? すいませんでした。中身が気になってしまって。まあ貴方の体を分解出来るような道具がそもそも思いつかないので安心してください。出来ませんから、多分」

 出来たらやるの!?

「……」

 答えて! ねえ! 出来たらやるのかよ!?

「えっと、まあその時はその時で考えましょうか」

 考えないで!? 柔らかく微笑むその表情が怖いんですけどー。

「シオの場合解剖じゃにゃくて解体にゃ」

 ていつおおおおおおおおおおおおおお!!!!

 仲間たちに軽い笑いが生まれた所で、レベッカの屋敷に到着した。
 瞬間、オレの顔以外に深く険しい皺が生まれた。
 全員の視線の先、レベッカの屋敷から出てきた男だ。特徴のあまりないラフな格好をしているが、褐色肌が特徴的な優男が、軽薄な笑みを浮かべながらこちらに手を振って来る。

 ……見たことないな。誰だ?
しおりを挟む

処理中です...