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極道と冒険者ギルド
極道と冒険者の酒場
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「なるほどなあっ」
外に立てられた掲示板、そこに貼られている、クエスト依頼の数々を眺めている石動。
掲示板は、この町、アラクレンダの冒険者ギルドが出しているもの。
ここで、石動が感心しているのは、そのクエスト内容にではない。
「学校なんざロクに行ってなくて、漢字を読むのすらあやしいこの俺が、こっちの言葉を、完璧に読めちまうってえのも、まぁっ、因果なもんだなっ」
この世界の言葉が、苦も無く理解出来ることに、驚いているのだ。
石動達がこの世界に転生するにあたり、女神アリエーネは、この世界の言語を、彼等にラーニングさせていた。それは、例えるなら、スマホにアプリをインストールするようなもので、人間の脳に、言語データをダウンロードさせるだけで済む。
「まぁっ、あれだな、寝てる間に英語が喋れるようになる、睡眠学習とか、何とかラーニングみてえな話だなっ」
読み書き、聞き取り、スピーキング、すべてが、短時間で、非常に簡単に修得出来る。真面目に言語を勉強しようとするのが、馬鹿々々しくなるような代物だ。
「もうっ、これじゃあっ、日本語より、こっちの言葉のほうが、得意なんじゃねえかな、俺はよっ」
腕を組み、左手で顎を触りながら、掲示を読む石動。
掲示板に、紐で備え付けらているペンを見つけて、つい思わず、貼り紙に、意味のない文字を書き込んでみる。本当に自分が、この世界の文字を書く事が出来るのか、確認したくなったのだろう。
「おいっおいっ! 落書きすんじゃねえよっ!」
それを見て、怒鳴って、注意をして来たのは、スキンヘッドで、左頬に傷がある男。
「おうっ、悪りぃ悪りぃっ、ついなっ」
さすがの石動も、ついつい、子供みたいなことをしてしまったと自覚しているので、笑いながら照れる。
-
地理的環境のせいで、周囲のモンスター出現率が、とんでもなく高い、アラクレンダの町。石動が見ていた、クエストの掲示も、近辺に出没するモンスター退治の依頼がほとんど。
「まぁっ、この世界は、どこに行っても、いい感じに、治安悪めだなっ」
掲示板の横には、ギルドが経営する、冒険者の酒場が建っている。
そこには、どれぐらい強そうな人間がいるのか? 石動はすでに、興味津々。
モンスターを討伐出来るぐらいなのだから、さぞかし強い奴もいるのだろうと、勝手に、期待で胸を膨らませてもいる。
――まぁっ、ちょうど、喉も乾いてやがるし、腹も減って来たところだからなっ
まるで、西部劇に出て来るような、両開きのスイングドアを手で押し、石動は、酒場の中に、足を踏み入れた。
「……まぁっ、やっぱり、いい感じに、治安悪めだなっ」
酒場にいる冒険者達の視線が一斉に、入口に立つ、見慣れない大男に注がれる。
その巨漢を見て尚、不敵な笑みを浮かべる男達。
「へッ、へへッ……」
下卑た低い笑い声を発しながら、鋭い眼光を投げかけてくる者もいれば、異様に目をギラギラと血走らせて、ナイフを手に、殺気を放っている者もいる。
数はざっと見た限りでも、二十名以上は居るだろうか。
人相も悪い、柄も悪い、態度も悪そうな、ゴロツキ、ならず者、荒くれ者、アウトロー達。冒険者を名乗ってはいるが、実際は、はみ出し者達の集まり、石動には、それが直感的に分かった。
「まぁっ、俺と同じ、同類のニオイが、プンプンとして来やがるぜっ」
まるで、鉄火場のようなヒリヒリした空気に、石動も、痺れて来てしまう。
-
歩を進めると、石動の行手には、誰かの足が投げ出される。チンピラ風情の男・ルカビが、早速、ちょっかいを出して来たのだ。
「あぁっ?」
その足の持ち主に向かって、眉間に皺を寄せ、険しい顔で、睨みを効かせる石動。
その威圧感と迫力は、ただ事ではなく、先に仕掛けたチンピラ、ルカビはゴクリと唾を呑み込む。
「チッ……」
一瞬だけ垣間見せた、まるで、野獣のような石動の本性に、本能的に怯んだルカビは、舌打ちしながら、足を引っ込めた。
ヒュッ!!
空気を裂くような音。
さらに二歩ほど、先へ進むと、今度は、石動の目の前を、ナイフが飛んで行った。
ちょうど、横の壁には、的のような円が描かれており、ナイフはその中心に突き刺さっている。
「おぉっ、悪りぃなっ、今ちょうど、ナイフ投げの練習をしてたんだっ」
ナイフを投げた男は、ニヤニヤと笑いながら、謝るフリをした。
「フハッ、ハハハッ……」
それを聞いた、酒場の男達は、笑い声を上げて喜ぶ。
「惜しいなぁっ、もうちょっとで、頭に刺さるとこだったのによおっ」
「そりゃ、呑気に、そんなとこ歩いてるほうが悪いよなあっ」
そんな、輩の挨拶、挑発にも、石動は微動だにしない。
飛んで来たナイフは見切っていたし、この手の安い挑発には慣れている。
「まぁっ、あれだな、やっぱり、いい感じに、治安悪めだなっ」
外に立てられた掲示板、そこに貼られている、クエスト依頼の数々を眺めている石動。
掲示板は、この町、アラクレンダの冒険者ギルドが出しているもの。
ここで、石動が感心しているのは、そのクエスト内容にではない。
「学校なんざロクに行ってなくて、漢字を読むのすらあやしいこの俺が、こっちの言葉を、完璧に読めちまうってえのも、まぁっ、因果なもんだなっ」
この世界の言葉が、苦も無く理解出来ることに、驚いているのだ。
石動達がこの世界に転生するにあたり、女神アリエーネは、この世界の言語を、彼等にラーニングさせていた。それは、例えるなら、スマホにアプリをインストールするようなもので、人間の脳に、言語データをダウンロードさせるだけで済む。
「まぁっ、あれだな、寝てる間に英語が喋れるようになる、睡眠学習とか、何とかラーニングみてえな話だなっ」
読み書き、聞き取り、スピーキング、すべてが、短時間で、非常に簡単に修得出来る。真面目に言語を勉強しようとするのが、馬鹿々々しくなるような代物だ。
「もうっ、これじゃあっ、日本語より、こっちの言葉のほうが、得意なんじゃねえかな、俺はよっ」
腕を組み、左手で顎を触りながら、掲示を読む石動。
掲示板に、紐で備え付けらているペンを見つけて、つい思わず、貼り紙に、意味のない文字を書き込んでみる。本当に自分が、この世界の文字を書く事が出来るのか、確認したくなったのだろう。
「おいっおいっ! 落書きすんじゃねえよっ!」
それを見て、怒鳴って、注意をして来たのは、スキンヘッドで、左頬に傷がある男。
「おうっ、悪りぃ悪りぃっ、ついなっ」
さすがの石動も、ついつい、子供みたいなことをしてしまったと自覚しているので、笑いながら照れる。
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地理的環境のせいで、周囲のモンスター出現率が、とんでもなく高い、アラクレンダの町。石動が見ていた、クエストの掲示も、近辺に出没するモンスター退治の依頼がほとんど。
「まぁっ、この世界は、どこに行っても、いい感じに、治安悪めだなっ」
掲示板の横には、ギルドが経営する、冒険者の酒場が建っている。
そこには、どれぐらい強そうな人間がいるのか? 石動はすでに、興味津々。
モンスターを討伐出来るぐらいなのだから、さぞかし強い奴もいるのだろうと、勝手に、期待で胸を膨らませてもいる。
――まぁっ、ちょうど、喉も乾いてやがるし、腹も減って来たところだからなっ
まるで、西部劇に出て来るような、両開きのスイングドアを手で押し、石動は、酒場の中に、足を踏み入れた。
「……まぁっ、やっぱり、いい感じに、治安悪めだなっ」
酒場にいる冒険者達の視線が一斉に、入口に立つ、見慣れない大男に注がれる。
その巨漢を見て尚、不敵な笑みを浮かべる男達。
「へッ、へへッ……」
下卑た低い笑い声を発しながら、鋭い眼光を投げかけてくる者もいれば、異様に目をギラギラと血走らせて、ナイフを手に、殺気を放っている者もいる。
数はざっと見た限りでも、二十名以上は居るだろうか。
人相も悪い、柄も悪い、態度も悪そうな、ゴロツキ、ならず者、荒くれ者、アウトロー達。冒険者を名乗ってはいるが、実際は、はみ出し者達の集まり、石動には、それが直感的に分かった。
「まぁっ、俺と同じ、同類のニオイが、プンプンとして来やがるぜっ」
まるで、鉄火場のようなヒリヒリした空気に、石動も、痺れて来てしまう。
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歩を進めると、石動の行手には、誰かの足が投げ出される。チンピラ風情の男・ルカビが、早速、ちょっかいを出して来たのだ。
「あぁっ?」
その足の持ち主に向かって、眉間に皺を寄せ、険しい顔で、睨みを効かせる石動。
その威圧感と迫力は、ただ事ではなく、先に仕掛けたチンピラ、ルカビはゴクリと唾を呑み込む。
「チッ……」
一瞬だけ垣間見せた、まるで、野獣のような石動の本性に、本能的に怯んだルカビは、舌打ちしながら、足を引っ込めた。
ヒュッ!!
空気を裂くような音。
さらに二歩ほど、先へ進むと、今度は、石動の目の前を、ナイフが飛んで行った。
ちょうど、横の壁には、的のような円が描かれており、ナイフはその中心に突き刺さっている。
「おぉっ、悪りぃなっ、今ちょうど、ナイフ投げの練習をしてたんだっ」
ナイフを投げた男は、ニヤニヤと笑いながら、謝るフリをした。
「フハッ、ハハハッ……」
それを聞いた、酒場の男達は、笑い声を上げて喜ぶ。
「惜しいなぁっ、もうちょっとで、頭に刺さるとこだったのによおっ」
「そりゃ、呑気に、そんなとこ歩いてるほうが悪いよなあっ」
そんな、輩の挨拶、挑発にも、石動は微動だにしない。
飛んで来たナイフは見切っていたし、この手の安い挑発には慣れている。
「まぁっ、あれだな、やっぱり、いい感じに、治安悪めだなっ」
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