ユメノハナシ

ワタシノハナシ

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あおいという女の事を少し話しておこう

銀行マンの父と看護師の母の末っ子として産まれた

忙しい父と母は遅くまで仕事をしていたので

自分の事は自分でやるのが当たり前だった

一番甘えたい時期をとっくに過ぎた女の子が甘える術も

知らずぽっかり空いた心の空洞を埋める何かを求め

彷徨い生きてきた様な女と言えば分かり易いだろうか、

いろいろな感情をごくんと呑み込み脳内で処理する

喜びも哀しみも孤独も・・



厳しかった父は恥ずかしくない様に勉強だけはやれと

口癖のように言っていた

そんな父に女が居た事をあおいは知っている

母も何となく勘付いてはいたが、父に楯突く事もせず

ただ静かに耐えている姿をずっと見つめてきた

1人目の女は部下の若い女

長い黒髪で切れ長の目が印象的な人

まだあおいが小さい頃、父と出掛けた事があった

会社の何人かも合流して食事をした中に居た黒髪の女

ジュースを持って来てくれたり、話しかけて来たり

いちいち気に掛けてくれていた。横に座っていた

その女の独特な香水のにおいが忘れられなかった

その後も何事も無く日々は過ぎていくが

父が会社から帰るとたまにあの独特なにおいがした

あおいの脳裏にあの時会っただけのあの女が

どんどん侵食しにおいと共に刻まれてく感覚が嫌で

その瞬間脳内で黒髪の女をズタズタにしていた

家族を裏切っておいてあんなに優しい顔で見つめてくる

あの女がただ許せずズタズタにした。ズタズタに・・





父はそれから何年間か同じにおいが続いたが

それは突然消えた




あおいは昔から哀しみも苦しみも全てを押し込んで

内に秘めガチガチに固まった鉛と化すまでに育てていた

その鉛がグツグツと暴れ始め騒ぎ出す予兆を感じ取ると

脳内で残酷な作業を繰り返し冷却させる

もう何年もずっと・・



誰も理解してくれる人なんて居ないし

相談出来る筈もなかった。





部長
「佐々木（あおい）、ちょっと・・」


あおい
「あ、はい・・ドン・・ガチャ、スタタタ・・はい」


部長
「今日18時、接待入ったから準備しておいてくれ」


あおい
「・・・・今日ですか・・」


部長
「何だ？」


あおい
「いえ、、はい、わかりました」




いつも部長は突然入る接待に私を使う

ゆみに頼めばいいものの女癖の悪い自分を曝け出す事を

恥ずかしのだろうと客観的に理解はできる

しかし全く迷惑だ、、

明日は休みだし、お酒を呑みながら撮り溜めた映画を

観て、明日はドライブに行く約束もしていた

さとる怒るだろうなとぼんやり考えていた



デスクに戻ったあおいは

慌ててさとるにラインをするのだった




aoi お疲れ様、さとる。
       今日突然接待入っちゃった・・ごめん


sato そっか



aoi なるべく早く帰るから！
       ご飯とかちゃんと食べてよね、ホントごめん


sato  ごゆっくり


aoi ・・・いじわる。


sato   ・・・