52 / 138
ダンジョン攻略12
しおりを挟む
……うーん、うーん……。
本日2度目の唸り。先ほどよりも長いのには理由があり、舞は無駄なリスクに巻き込みたくない、山ゴブリンたちは1人死地に向かわせたくない、お互いがお互いのことを思いやっているからこそ、舞はすぐに肯定も否定も出来ずにいた。
3秒、吸って吐くだけの時間を、目を閉じて考える。
私は戦士、勇気あるもの。それは10年前も同じ。あの時の家族とは違うけれど、新しい家族も守る義務がある。ならば――。
『センシ』
『うむ』
『ついてくる。他、待て』
舞の選択に異論は聞こえず、そもそも戦士に選ばれた舞へ意見すること自体本来なら許されることではなく、それがまだ完全には認められていない証拠でもあり、前任のセンシが選ばれたことで溜飲を下げた他の山ゴブリンに好ましくない感情を抱くも、
『行く』
近くの蓋を開け、滑り込ませるように身体を入れる。
下は空洞、地面まで2メートルほど。常人なら多少なりとも肝が冷える程の高さだというのに舞は猫のように膝を曲げて着地すると直ぐに壁際に身体を押し付ける。センシも同様に降り、
……んー?
呆気ない程何も無いことに舞は首を捻り、5秒固まってまた首を捻る。
前後に長く伸びた通路は果てが見えず、闇の中に吸い込まれている。このまま無遠慮に進むことを許さないおどろおどろしい雰囲気があるのはいつもの事で、この場に巣食う強大で野蛮で情け容赦ない怪物がいるはずが、凪いだ湖面のようにしんと静まり返っている。その理由がわからず、いやいないほうがいいことに違いないが、大きな見落としがあるのではないかと疑心暗鬼が足を止めていた。
『――! こっち』
せわしなく目だけを動かし、遮蔽物のない通路で浮浪者のように壁に身体をこすりつけていた舞に、センシが声を掛ける。彼は堂々たる出で立ちで通路の真ん中から道の先を見据え、強者特有の慢心があるにせよ、責任を背負い続けた男の背中に凛々しさと嫉妬で心がかき乱されるようだった。
『わかった』
煩悩を払うために頭を振り、切り替えた舞が立ち上がる。センシの向かう先は右手側、何が待ち構えているのか、それは程なくして理解出来ることとなる。
「……なるほど」
巨大な透明の糸が縦横無尽に張り巡らされ、それを見た時小さく感想が零れた。通路を塞ぐそれは1匹の獲物を捉え、満足そうに食事する大蜘蛛の姿だった。
化け蜘蛛とも呼ばれるそれは小さな身体ですら1メートル近くあり、針のように長く細い手足は人間など容易に貫くことが出来る。しかし他の蜘蛛同様基本は視認しにくい糸に獲物がかかるのを待つだけなので、注意さえしていれば人間に被害を及ぼすことのない、数少ないモンスターだった。その代わり撤退時に慌てている時などは一転して凶悪なモンスターに変わるところがいやらしくもあるのだが。
愛らしくも憎たらしい蜘蛛の巣にかかった哀れなモンスターは、非常に長い身体の半分ほどが糸に絡められていて、残り半分は力無く地面に投げ出されている。土気色の身体は節がいくつもあり、
……あ。
その姿に見覚えはなくとも、特徴から直ぐに名前は思い当たり、
……サンドワームじゃん。
この事態を引き起こした下手人の、既に事切れた無常の死体に感情の行き場を失う。そもそも敵対したら勝てる訳がないのだが、六波羅の後ろから恨みつらみを乗せた石でも投げつけてやろうと、そんな小さなことを考えていたのが全てふいにされてしまった。
ともかくこれで振り出しである。不審な音の正体はサンドワームが最期のあがきによるもので、恐らく辛達はここにいない。戻ってまたあの暗く狭い安全地帯から捜索を再開しようとした時だった。
――げっ。
視界の端に揺れるものがあった。朧気なそれが何か、目を凝らすよりも先に警告音が脳内に響き渡る。
それは稀有な例だった。普段なら生息階層の違うモンスターが出逢えば一方的な虐殺劇が見られることだろう。しかし条件さえ整えば、それでも滅多にないことだが、共生や寄生という関係を築けるものもいた。特に化け蜘蛛は強力な割に積極的に獲物を襲わない、そこへ自身を釣り餌にして周囲のモンスターを駆除してもらう、小狡く賢いゴブリンに9年前辛酸を舐めさせられた経験があった。
『逃げろ!』
今からでは逃げきれないと、舞は落ちてきた穴に向かって喉が裂ける勢いで叫ぶ。もしかしたら間に合うかというタイミングだが、隠し通路とは誰にも見つかっていないから価値があるもので、ゴブリンに侵入されれば幼子もいるあの泉まで侵略されかねず、全滅の危機を招くこととなる。それは到底許可できる話ではなかった。
しかし、
……どーしよーかね。
仲間は逃がした、あとは自分とセンシだけ。前方にはゴブリンかまたはそれに近い何かが群れをなし近づいてきていて、後ろは絡まれたらちょっとやそっとでは抜け出せない、茨の道のような蜘蛛の巣が待ち構えている。陳腐な言葉を使うならピンチであり四字熟語なら絶体絶命、そんなふざけていられる時間も残り少ない。
……あっ!
もしかしたらなんて考える時間はなく、舞は腕を伸ばしてセンシの手を取る。向かう先は捕食されているサンドワームの尻尾の方、そこに目的のものがあるはずだった。
くるくると踊るように踏み荒らし、すこしして足の裏が明らかに違う感触を捉える。気付き反応する前に、くるぶしまで食われるように埋まった足を見て思わず口の端が歪み、
「いくよ!」
興奮のあまり日本語で怒鳴る。誰にも伝わらない言葉を残して、サンドワームが開けた穴に深く踏み込んでいた。
本日2度目の唸り。先ほどよりも長いのには理由があり、舞は無駄なリスクに巻き込みたくない、山ゴブリンたちは1人死地に向かわせたくない、お互いがお互いのことを思いやっているからこそ、舞はすぐに肯定も否定も出来ずにいた。
3秒、吸って吐くだけの時間を、目を閉じて考える。
私は戦士、勇気あるもの。それは10年前も同じ。あの時の家族とは違うけれど、新しい家族も守る義務がある。ならば――。
『センシ』
『うむ』
『ついてくる。他、待て』
舞の選択に異論は聞こえず、そもそも戦士に選ばれた舞へ意見すること自体本来なら許されることではなく、それがまだ完全には認められていない証拠でもあり、前任のセンシが選ばれたことで溜飲を下げた他の山ゴブリンに好ましくない感情を抱くも、
『行く』
近くの蓋を開け、滑り込ませるように身体を入れる。
下は空洞、地面まで2メートルほど。常人なら多少なりとも肝が冷える程の高さだというのに舞は猫のように膝を曲げて着地すると直ぐに壁際に身体を押し付ける。センシも同様に降り、
……んー?
呆気ない程何も無いことに舞は首を捻り、5秒固まってまた首を捻る。
前後に長く伸びた通路は果てが見えず、闇の中に吸い込まれている。このまま無遠慮に進むことを許さないおどろおどろしい雰囲気があるのはいつもの事で、この場に巣食う強大で野蛮で情け容赦ない怪物がいるはずが、凪いだ湖面のようにしんと静まり返っている。その理由がわからず、いやいないほうがいいことに違いないが、大きな見落としがあるのではないかと疑心暗鬼が足を止めていた。
『――! こっち』
せわしなく目だけを動かし、遮蔽物のない通路で浮浪者のように壁に身体をこすりつけていた舞に、センシが声を掛ける。彼は堂々たる出で立ちで通路の真ん中から道の先を見据え、強者特有の慢心があるにせよ、責任を背負い続けた男の背中に凛々しさと嫉妬で心がかき乱されるようだった。
『わかった』
煩悩を払うために頭を振り、切り替えた舞が立ち上がる。センシの向かう先は右手側、何が待ち構えているのか、それは程なくして理解出来ることとなる。
「……なるほど」
巨大な透明の糸が縦横無尽に張り巡らされ、それを見た時小さく感想が零れた。通路を塞ぐそれは1匹の獲物を捉え、満足そうに食事する大蜘蛛の姿だった。
化け蜘蛛とも呼ばれるそれは小さな身体ですら1メートル近くあり、針のように長く細い手足は人間など容易に貫くことが出来る。しかし他の蜘蛛同様基本は視認しにくい糸に獲物がかかるのを待つだけなので、注意さえしていれば人間に被害を及ぼすことのない、数少ないモンスターだった。その代わり撤退時に慌てている時などは一転して凶悪なモンスターに変わるところがいやらしくもあるのだが。
愛らしくも憎たらしい蜘蛛の巣にかかった哀れなモンスターは、非常に長い身体の半分ほどが糸に絡められていて、残り半分は力無く地面に投げ出されている。土気色の身体は節がいくつもあり、
……あ。
その姿に見覚えはなくとも、特徴から直ぐに名前は思い当たり、
……サンドワームじゃん。
この事態を引き起こした下手人の、既に事切れた無常の死体に感情の行き場を失う。そもそも敵対したら勝てる訳がないのだが、六波羅の後ろから恨みつらみを乗せた石でも投げつけてやろうと、そんな小さなことを考えていたのが全てふいにされてしまった。
ともかくこれで振り出しである。不審な音の正体はサンドワームが最期のあがきによるもので、恐らく辛達はここにいない。戻ってまたあの暗く狭い安全地帯から捜索を再開しようとした時だった。
――げっ。
視界の端に揺れるものがあった。朧気なそれが何か、目を凝らすよりも先に警告音が脳内に響き渡る。
それは稀有な例だった。普段なら生息階層の違うモンスターが出逢えば一方的な虐殺劇が見られることだろう。しかし条件さえ整えば、それでも滅多にないことだが、共生や寄生という関係を築けるものもいた。特に化け蜘蛛は強力な割に積極的に獲物を襲わない、そこへ自身を釣り餌にして周囲のモンスターを駆除してもらう、小狡く賢いゴブリンに9年前辛酸を舐めさせられた経験があった。
『逃げろ!』
今からでは逃げきれないと、舞は落ちてきた穴に向かって喉が裂ける勢いで叫ぶ。もしかしたら間に合うかというタイミングだが、隠し通路とは誰にも見つかっていないから価値があるもので、ゴブリンに侵入されれば幼子もいるあの泉まで侵略されかねず、全滅の危機を招くこととなる。それは到底許可できる話ではなかった。
しかし、
……どーしよーかね。
仲間は逃がした、あとは自分とセンシだけ。前方にはゴブリンかまたはそれに近い何かが群れをなし近づいてきていて、後ろは絡まれたらちょっとやそっとでは抜け出せない、茨の道のような蜘蛛の巣が待ち構えている。陳腐な言葉を使うならピンチであり四字熟語なら絶体絶命、そんなふざけていられる時間も残り少ない。
……あっ!
もしかしたらなんて考える時間はなく、舞は腕を伸ばしてセンシの手を取る。向かう先は捕食されているサンドワームの尻尾の方、そこに目的のものがあるはずだった。
くるくると踊るように踏み荒らし、すこしして足の裏が明らかに違う感触を捉える。気付き反応する前に、くるぶしまで食われるように埋まった足を見て思わず口の端が歪み、
「いくよ!」
興奮のあまり日本語で怒鳴る。誰にも伝わらない言葉を残して、サンドワームが開けた穴に深く踏み込んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
【完結】『80年を超越した恋~令和の世で再会した元特攻隊員の自衛官と元女子挺身隊の祖母を持つ女の子のシンクロニシティラブストーリー』
M‐赤井翼
現代文学
赤井です。今回は「恋愛小説」です(笑)。
舞台は令和7年と昭和20年の陸軍航空隊の特攻部隊の宿舎「赤糸旅館」です。
80年の時を経て2つの恋愛を描いていきます。
「特攻隊」という「難しい題材」を扱いますので、かなり真面目に資料集めをして制作しました。
「第20振武隊」という実在する部隊が出てきますが、基本的に事実に基づいた背景を活かした「フィクション」作品と思ってお読みください。
日本を護ってくれた「先人」に尊敬の念をもって書きましたので、ほとんどおふざけは有りません。
過去、一番真面目に書いた作品となりました。
ラストは結構ややこしいので前半からの「フラグ」を拾いながら読んでいただくと楽しんでもらえると思います。
全39チャプターですので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
それでは「よろひこー」!
(⋈◍>◡<◍)。✧💖
追伸
まあ、堅苦しく読んで下さいとは言いませんがいつもと違って、ちょっと気持ちを引き締めて読んでもらいたいです。合掌。
(。-人-。)
(更新終了) 採集家少女は採集家の地位を向上させたい ~公開予定のない無双動画でバズりましたが、好都合なのでこのまま配信を続けます~
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
突然世界中にダンジョンが現れた。
人々はその存在に恐怖を覚えながらも、その未知なる存在に夢を馳せた。
それからおよそ20年。
ダンジョンという存在は完全にとは言わないものの、早い速度で世界に馴染んでいった。
ダンジョンに関する法律が生まれ、企業が生まれ、ダンジョンを探索することを生業にする者も多く生まれた。
そんな中、ダンジョンの中で獲れる素材を集めることを生業として生活する少女の存在があった。
ダンジョンにかかわる職業の中で花形なのは探求者(シーカー)。ダンジョンの最奥を目指し、日々ダンジョンに住まうモンスターと戦いを繰り広げている存在だ。
次点は、技術者(メイカー)。ダンジョンから持ち出された素材を使い、新たな道具や生活に使える便利なものを作り出す存在。
そして一番目立たない存在である、採集者(コレクター)。
ダンジョンに存在する素材を拾い集め、時にはモンスターから採取する存在。正直、見た目が地味で功績としても目立たない存在のため、あまり日の目を見ない。しかし、ダンジョン探索には欠かせない縁の下の力持ち的存在。
採集者はなくてはならない存在ではある。しかし、探求者のように表立てって輝かしい功績が生まれるのは珍しく、技術者のように人々に影響のある仕事でもない。そんな採集者はあまりいいイメージを持たれることはなかった。
しかし、少女はそんな状況を不満に思いつつも、己の気の赴くままにダンジョンの素材を集め続ける。
そんな感じで活動していた少女だったが、ギルドからの依頼で不穏な動きをしている探求者とダンジョンに潜ることに。
そして何かあったときに証拠になるように事前に非公開設定でこっそりと動画を撮り始めて。
しかし、その配信をする際に設定を失敗していて、通常公開になっていた。
そんなこともつゆ知らず、悪質探求者たちにモンスターを擦り付けられてしまう。
本来であれば絶望的な状況なのだが、少女は動揺することもあせるようなこともなく迫りくるモンスターと対峙した。
そうして始まった少女による蹂躙劇。
明らかに見た目の年齢に見合わない解体技術に阿鼻叫喚のコメントと、ただの作り物だと断定しアンチ化したコメント、純粋に好意的なコメントであふれかえる配信画面。
こうして少女によって、世間の採取家の認識が塗り替えられていく、ような、ないような……
※カクヨムにて先行公開しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる