89 / 138
ダンジョンってこうやって出来るんですね(吐血)2
しおりを挟む
「ていうか相手方の要求ってなんなんですか? カルト集団だってことくらいしか知らないんですよね」
良くも悪くも進展のないまま5分が経過し、生来の堪え性のなさから舞が尋ねていた。犯人らは何もかもをひっくり返して現金をかき集めているところ、生き残っているのは完璧に拘束されている優男といたいけな少女とあっては見張りも1人、それで十分だと思われており、軽い内緒話程度なら気付かれる道理もなかった。
否が応でも聞こえる声は、やれ早くしろだの、まだかかるのかなど、計画が順調には行っていないようで、苛立ち混じりの罵声が飛び交っている。遠くからサイレンの音も聞こえることから焦りが手を遅らせ口ばかりが悪くなる。
その彼はこそ、昼に新堂が言っていたダンジョン原理主義団体である。縄で縛られる時に本人が言っていたので間違いなかった。
「ダンジョンが出来たのは地球が求めているからであり、人間は淘汰されるべきって考えだね。要求はダンジョンの管理を止めてモンスターが外へ溢れるようにしようって感じかな」
「それに一体なんの意味が……?」
「それは彼らに聞くのが1番早いんじゃないかな」
波平の台詞はどこまでも代わり映えがなく、1を入力すれば1を出力する機械のようで面白みに欠けていた。この状況で爆笑でもすればその結果は自ずと知れたことだが、ユーモアのひとつもないと異性にはモテないだろう。
「へいそこのダンディーさん、少しお話よろしいかな?」
「……」
かといって真に受けて本当に質問をするのはどうなのだろうか。小銃を構え指示を出している男に恐れ知らずの舞は声をかける。
黒の目出し帽に迷彩服、どこかの軍人崩れかコスプレにも見える彼は、舞の問いには答えずただ目線だけを下げていた。
「お宅らの希望がなんなのかさっぱりでね、どうせ暇なんでしょちょっと煙草でも吸いながら――!?」
言葉を言い切る前に返答があった。小銃の先から煙を吐いて、数分ぶりに轟音が響く。
狙いは正確に舞の腕を貫いていた。肉片がはじけ飛びおびただしい量の血液が後ろの壁を染め上げる。
「――! ……ふぅ、ふぅ……」
「夜巡さん!?」
「発言を許可した覚えは無い」
言葉より先に手が出るタイプだったようだ、もしくは相当に焦っているか。
銃撃されたことのない舞は想像以上の痛みに、それでも泣き喚いたりはせず呼吸を整えていた。だらだらと流れ落ちる血は床まで到達し、小水を漏らしたように粘性の液体が広がっていく。
……おかしい。
痛覚のアラートが後頭部を殴り続ける中、舞はとある仮説を思い付いていた。まだ確証はないが試す価値はあると躊躇わずに口を開く。
「……短気ねぇ。ふぅ……モテないよ……」
言い終わりに1歩、2歩と近付く迷彩服の男性。天井のライトを隠すように掲げられた腕を見て舞の仮説は確証に変わる。
ゴチッ、という鈍い音とともに意識は刈り取られ、
……狙いは私だ。
数多の人を殺しているのに何故か生かされていること、人質なら1人で十分なのに2人を残していること、そして――。
それ以上考えることは出来ず、舞は俯いたまま気絶していた。
「……やりすぎじゃない?」
その1連の流れを口も出さずに見ていた波平は、怖気付いていた様子もなく親しみを込めて小銃を構える男性に聞く。その顔はまさに計画通りにことが運んでいるとほくそ笑んでいるようで、
「生きていればいい。そうだろう、同士よ」
男性の声を聞いて楽しそうに頷いていた。
ピンチという言葉では語り尽くせないほど危機的状況の舞とは違い、未だ机に伏せている新堂の元へ長身の女性が立ち寄っていた。
「課長、舞ちゃん知らない?」
「知らん」
辛である、彼女もまた他所の部署、特にその類稀なる身体能力を買われ実働1部にかかりきりになって姿を見せずにいた。が、戻るなり舞は何処だと言うあたりたいそうお気に入りの人形を探す子供のよう。
そんな辛の質問を新堂は短い言葉で一蹴する。彼の中で舞と話した記憶は寝ぼけていて無くなっており、額に貼ってあった付箋もその粘着力を無くし寝返りをうったときにくしゃっとなってどこへやら。十分すぎるほど仮眠をとってようやく身体を起こすまでに回復したのか、変な体勢で寝ていた身体のこりを伸ばすように両手を大きく天へ向けていた。
おまけに長い欠伸をひとつ、やる気という言葉を投げ捨てた新堂の態度に辛はため息をひとつ漏らす。
「そんな適当なこと言って。波平君の姿も見えないし」
「2人でどっか行ってんだろ。もしかしてホテルとかな」
「下品なこと言う口は溶かしてくっつけますよ」
冗談だと分かっていてもそういうことは言うものでは無い。辛は仏のような優しい笑みを浮かべつつ指先を新堂にむけると、空気中の湿気を吸収してやかんが湯気を吹き出すような音と煙を立ち上らせる。
その1滴が手に触れただけで穴が開くほどの強い酸は脅しには十分すぎるほどの効力を発し、ひぃとなんとも情けない声を出して新堂は仰け反る。薬品臭い匂いが鼻につき、このままではなにかの間違いが起こらないとも限らないと嫌になるほどぱっちりと開いた目でいち早く謝罪する。
「すまん、すまん。激務すぎて頭働かねえんだ」
「珍しいですね、何かありました?」
問われ、新堂は下唇を噛んで目を逸らす。そのまま頭を抱えようとした手は宙をさまよってから拳を作り、指を1本、トントンと机を叩く。
顔を近づけろという合図だ。逆らう理由もないため辛が少し屈むと、
「……オフレコなんだがい号ダンジョンが民間へ払い下げになるって言うんでその準備に幹部職員全員が駆り出されてたんだよ。競合も多く金だけじゃなくてちゃんと管理出来るかも問われるから色々とな」
「そんな大規模ダンジョンなんて手に入れて管理出来るんです? 得するようなものでもあるのかしら?」
「さあな。うちの部長ですら真面目に参加してるんだ、余程のことだってことしか分からねぇよ」
「まぁ……」
悲しきかな、狂島が真面目に働いているというだけで無限の説得力が生まれるのだから。
ともかく想像を超えた激務であることだけはしっかりと伝わったようで辛納得して頷いていた。そこへ対面に座っていた戸事がパソコンの縁から顔をのぞかせる。彼女もまた他所の部署から戻ってきたばかりだった。
「課長……外線です」
「ん、誰からだ?」
「それが……分からなくて……小湊って言えば――」
名前を聞いた瞬間、新堂は目にも留まらぬ速さで受話器を持ち上げるとそのまま叩きつけるように元へ戻す。まるで浮気相手からの連絡を隠す夫のような機敏さを見せ、彼はスマホだけを手に取って立ち上がる。後暗いことがある、と如実に伝える行為だが、そもそも後暗い人しか部内にいないのが虚しい。
「えっ――」
「すまん、席空ける」
呆気にとられ固まる戸事へろくな説明もせず、新堂は誰もいない部屋を目指して足早に立ち去っていた。
良くも悪くも進展のないまま5分が経過し、生来の堪え性のなさから舞が尋ねていた。犯人らは何もかもをひっくり返して現金をかき集めているところ、生き残っているのは完璧に拘束されている優男といたいけな少女とあっては見張りも1人、それで十分だと思われており、軽い内緒話程度なら気付かれる道理もなかった。
否が応でも聞こえる声は、やれ早くしろだの、まだかかるのかなど、計画が順調には行っていないようで、苛立ち混じりの罵声が飛び交っている。遠くからサイレンの音も聞こえることから焦りが手を遅らせ口ばかりが悪くなる。
その彼はこそ、昼に新堂が言っていたダンジョン原理主義団体である。縄で縛られる時に本人が言っていたので間違いなかった。
「ダンジョンが出来たのは地球が求めているからであり、人間は淘汰されるべきって考えだね。要求はダンジョンの管理を止めてモンスターが外へ溢れるようにしようって感じかな」
「それに一体なんの意味が……?」
「それは彼らに聞くのが1番早いんじゃないかな」
波平の台詞はどこまでも代わり映えがなく、1を入力すれば1を出力する機械のようで面白みに欠けていた。この状況で爆笑でもすればその結果は自ずと知れたことだが、ユーモアのひとつもないと異性にはモテないだろう。
「へいそこのダンディーさん、少しお話よろしいかな?」
「……」
かといって真に受けて本当に質問をするのはどうなのだろうか。小銃を構え指示を出している男に恐れ知らずの舞は声をかける。
黒の目出し帽に迷彩服、どこかの軍人崩れかコスプレにも見える彼は、舞の問いには答えずただ目線だけを下げていた。
「お宅らの希望がなんなのかさっぱりでね、どうせ暇なんでしょちょっと煙草でも吸いながら――!?」
言葉を言い切る前に返答があった。小銃の先から煙を吐いて、数分ぶりに轟音が響く。
狙いは正確に舞の腕を貫いていた。肉片がはじけ飛びおびただしい量の血液が後ろの壁を染め上げる。
「――! ……ふぅ、ふぅ……」
「夜巡さん!?」
「発言を許可した覚えは無い」
言葉より先に手が出るタイプだったようだ、もしくは相当に焦っているか。
銃撃されたことのない舞は想像以上の痛みに、それでも泣き喚いたりはせず呼吸を整えていた。だらだらと流れ落ちる血は床まで到達し、小水を漏らしたように粘性の液体が広がっていく。
……おかしい。
痛覚のアラートが後頭部を殴り続ける中、舞はとある仮説を思い付いていた。まだ確証はないが試す価値はあると躊躇わずに口を開く。
「……短気ねぇ。ふぅ……モテないよ……」
言い終わりに1歩、2歩と近付く迷彩服の男性。天井のライトを隠すように掲げられた腕を見て舞の仮説は確証に変わる。
ゴチッ、という鈍い音とともに意識は刈り取られ、
……狙いは私だ。
数多の人を殺しているのに何故か生かされていること、人質なら1人で十分なのに2人を残していること、そして――。
それ以上考えることは出来ず、舞は俯いたまま気絶していた。
「……やりすぎじゃない?」
その1連の流れを口も出さずに見ていた波平は、怖気付いていた様子もなく親しみを込めて小銃を構える男性に聞く。その顔はまさに計画通りにことが運んでいるとほくそ笑んでいるようで、
「生きていればいい。そうだろう、同士よ」
男性の声を聞いて楽しそうに頷いていた。
ピンチという言葉では語り尽くせないほど危機的状況の舞とは違い、未だ机に伏せている新堂の元へ長身の女性が立ち寄っていた。
「課長、舞ちゃん知らない?」
「知らん」
辛である、彼女もまた他所の部署、特にその類稀なる身体能力を買われ実働1部にかかりきりになって姿を見せずにいた。が、戻るなり舞は何処だと言うあたりたいそうお気に入りの人形を探す子供のよう。
そんな辛の質問を新堂は短い言葉で一蹴する。彼の中で舞と話した記憶は寝ぼけていて無くなっており、額に貼ってあった付箋もその粘着力を無くし寝返りをうったときにくしゃっとなってどこへやら。十分すぎるほど仮眠をとってようやく身体を起こすまでに回復したのか、変な体勢で寝ていた身体のこりを伸ばすように両手を大きく天へ向けていた。
おまけに長い欠伸をひとつ、やる気という言葉を投げ捨てた新堂の態度に辛はため息をひとつ漏らす。
「そんな適当なこと言って。波平君の姿も見えないし」
「2人でどっか行ってんだろ。もしかしてホテルとかな」
「下品なこと言う口は溶かしてくっつけますよ」
冗談だと分かっていてもそういうことは言うものでは無い。辛は仏のような優しい笑みを浮かべつつ指先を新堂にむけると、空気中の湿気を吸収してやかんが湯気を吹き出すような音と煙を立ち上らせる。
その1滴が手に触れただけで穴が開くほどの強い酸は脅しには十分すぎるほどの効力を発し、ひぃとなんとも情けない声を出して新堂は仰け反る。薬品臭い匂いが鼻につき、このままではなにかの間違いが起こらないとも限らないと嫌になるほどぱっちりと開いた目でいち早く謝罪する。
「すまん、すまん。激務すぎて頭働かねえんだ」
「珍しいですね、何かありました?」
問われ、新堂は下唇を噛んで目を逸らす。そのまま頭を抱えようとした手は宙をさまよってから拳を作り、指を1本、トントンと机を叩く。
顔を近づけろという合図だ。逆らう理由もないため辛が少し屈むと、
「……オフレコなんだがい号ダンジョンが民間へ払い下げになるって言うんでその準備に幹部職員全員が駆り出されてたんだよ。競合も多く金だけじゃなくてちゃんと管理出来るかも問われるから色々とな」
「そんな大規模ダンジョンなんて手に入れて管理出来るんです? 得するようなものでもあるのかしら?」
「さあな。うちの部長ですら真面目に参加してるんだ、余程のことだってことしか分からねぇよ」
「まぁ……」
悲しきかな、狂島が真面目に働いているというだけで無限の説得力が生まれるのだから。
ともかく想像を超えた激務であることだけはしっかりと伝わったようで辛納得して頷いていた。そこへ対面に座っていた戸事がパソコンの縁から顔をのぞかせる。彼女もまた他所の部署から戻ってきたばかりだった。
「課長……外線です」
「ん、誰からだ?」
「それが……分からなくて……小湊って言えば――」
名前を聞いた瞬間、新堂は目にも留まらぬ速さで受話器を持ち上げるとそのまま叩きつけるように元へ戻す。まるで浮気相手からの連絡を隠す夫のような機敏さを見せ、彼はスマホだけを手に取って立ち上がる。後暗いことがある、と如実に伝える行為だが、そもそも後暗い人しか部内にいないのが虚しい。
「えっ――」
「すまん、席空ける」
呆気にとられ固まる戸事へろくな説明もせず、新堂は誰もいない部屋を目指して足早に立ち去っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
【完結】『80年を超越した恋~令和の世で再会した元特攻隊員の自衛官と元女子挺身隊の祖母を持つ女の子のシンクロニシティラブストーリー』
M‐赤井翼
現代文学
赤井です。今回は「恋愛小説」です(笑)。
舞台は令和7年と昭和20年の陸軍航空隊の特攻部隊の宿舎「赤糸旅館」です。
80年の時を経て2つの恋愛を描いていきます。
「特攻隊」という「難しい題材」を扱いますので、かなり真面目に資料集めをして制作しました。
「第20振武隊」という実在する部隊が出てきますが、基本的に事実に基づいた背景を活かした「フィクション」作品と思ってお読みください。
日本を護ってくれた「先人」に尊敬の念をもって書きましたので、ほとんどおふざけは有りません。
過去、一番真面目に書いた作品となりました。
ラストは結構ややこしいので前半からの「フラグ」を拾いながら読んでいただくと楽しんでもらえると思います。
全39チャプターですので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
それでは「よろひこー」!
(⋈◍>◡<◍)。✧💖
追伸
まあ、堅苦しく読んで下さいとは言いませんがいつもと違って、ちょっと気持ちを引き締めて読んでもらいたいです。合掌。
(。-人-。)
(更新終了) 採集家少女は採集家の地位を向上させたい ~公開予定のない無双動画でバズりましたが、好都合なのでこのまま配信を続けます~
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
突然世界中にダンジョンが現れた。
人々はその存在に恐怖を覚えながらも、その未知なる存在に夢を馳せた。
それからおよそ20年。
ダンジョンという存在は完全にとは言わないものの、早い速度で世界に馴染んでいった。
ダンジョンに関する法律が生まれ、企業が生まれ、ダンジョンを探索することを生業にする者も多く生まれた。
そんな中、ダンジョンの中で獲れる素材を集めることを生業として生活する少女の存在があった。
ダンジョンにかかわる職業の中で花形なのは探求者(シーカー)。ダンジョンの最奥を目指し、日々ダンジョンに住まうモンスターと戦いを繰り広げている存在だ。
次点は、技術者(メイカー)。ダンジョンから持ち出された素材を使い、新たな道具や生活に使える便利なものを作り出す存在。
そして一番目立たない存在である、採集者(コレクター)。
ダンジョンに存在する素材を拾い集め、時にはモンスターから採取する存在。正直、見た目が地味で功績としても目立たない存在のため、あまり日の目を見ない。しかし、ダンジョン探索には欠かせない縁の下の力持ち的存在。
採集者はなくてはならない存在ではある。しかし、探求者のように表立てって輝かしい功績が生まれるのは珍しく、技術者のように人々に影響のある仕事でもない。そんな採集者はあまりいいイメージを持たれることはなかった。
しかし、少女はそんな状況を不満に思いつつも、己の気の赴くままにダンジョンの素材を集め続ける。
そんな感じで活動していた少女だったが、ギルドからの依頼で不穏な動きをしている探求者とダンジョンに潜ることに。
そして何かあったときに証拠になるように事前に非公開設定でこっそりと動画を撮り始めて。
しかし、その配信をする際に設定を失敗していて、通常公開になっていた。
そんなこともつゆ知らず、悪質探求者たちにモンスターを擦り付けられてしまう。
本来であれば絶望的な状況なのだが、少女は動揺することもあせるようなこともなく迫りくるモンスターと対峙した。
そうして始まった少女による蹂躙劇。
明らかに見た目の年齢に見合わない解体技術に阿鼻叫喚のコメントと、ただの作り物だと断定しアンチ化したコメント、純粋に好意的なコメントであふれかえる配信画面。
こうして少女によって、世間の採取家の認識が塗り替えられていく、ような、ないような……
※カクヨムにて先行公開しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる