僕らは、ただ一つの愛を誓う

星空永遠

文字の大きさ
9 / 16
第二章

9話

しおりを挟む
落ち着こうと残りの紅茶を飲んでいると、二人の客が入って来た。

一人は二十代後半くらいの男性で、もう一人の男性は制服を着ていたので、おそらく学生だ。

ふとあたりを見ると、満席に近いくらいの客で店は溢れていた。

その多くが、やはり紅茶を好む女性客が多く、俺のような男が来るのは、彼女に連れ添ってきた彼氏くらいなものだった。

だが、今さっき入って来た二人の客はどちらも男性客のように見えた。

「神崎君、少し遅くなって申し訳ないね。神崎君の言っていたこの店の場所がわからなくて……」

「いえ、大丈夫です。自分も今来たところですから」

(神崎君……?)

俺は自分のことを呼ばれているのかと思い、男性のほうを振り向こうとしたが、どうやら神崎君とは俺ではなく、男性の隣にいる学生のことのようだった。

それにしても、神崎紅にしろ、俺にしろ、神崎という名字は多いんだな……。

……ん? 神崎君って言ってたよな。 
神崎紅も学生で、もしかして……いや、まさかな。

神崎君と呼ばれていた学生と二十代後半の男性は、俺の席のすぐ隣の席へと座った。

俺は神崎君と呼ばれていた学生が少し気になったので、二人の会話をこっそり聞くことにした。

それに二人のどちらの声も、一度は聞いたことがあるような声だった。

「神崎君。それで、小説の進み具合はどうかな? そういえば、今度は別のジャンルに挑戦してみたいと言っていたけど、どんなの? 普段はミステリーやファンタジーだから、次は路線を変えて、恋愛とか?」

「……はい、恋愛小説を書くつもりでいます。……僕の考えていることがわかるんですね」

「君とは中学からの付き合いだからね。それに中学から、学校のほうでも……生徒会のほうは、どう?」

「生徒会のほうは、いつもと変わりません。副会長以外は僕のことを怖がって、生徒会室以外で書類をしています」

「君は相変わらずだね、神崎君。生徒会長としても、作家としても優秀で、君は一体どこを目指しているんだい?」

「久遠先生。自分は優秀ではありません。自分より優秀な人を僕は知っています。その人を越えるため、自分は上を目指しているんです」

「ははは……そうだったね。君は、その人のことが好きなのかな? その人との今までのことを小説として書くつもりだったりするのかい? ……期待、しているよ。ペンネームにも、ちゃんと意味があるんだろう? じゃあ、ちゃんとその人に文章ではなく、言葉で伝えなきゃね。また小説が書けたらメールで知らせて。じゃあ、また学校でね……紅蓮君」

「……好きです、とても。小説の件、わかりました。それでは、また学校で」

「……」

二人の会話に、俺は一言も言葉を発することは出来なかった。

(神崎紅が……紅蓮……)

こんなに当てはまる人が他に居なかった。神崎紅の公表されている情報には学生とだけ書かれていた。しかし、今の会話はどう考えても、神崎紅が紅蓮である他なかった。

二十代後半の久遠先生と呼ばれていた人は紛れもなく、俺や紅蓮が通っている高校の臨時講師だった。
普段はあまり学校に来ないから姿を見ることは少ないが、それでも俺たちのクラスを担当してる教師だ。

俺が顔を見間違えるはずがない。神崎紅のことを最後には紅蓮君と呼んでいた。

あの話し方や、声は……紅蓮しかいない。生徒会長で、副会長以外は自分のことを怖がって、違う部屋で作業をしている。

生徒から怖がられる生徒会長なんて、他の学校に居るはずがない。居たとしても、数少ないだろう。

今の会話を聞いて、紅蓮じゃないと考える方がありえない。

俺の憧れていた作家、神崎紅が、俺の親友で……いや、俺の好きな人、如月紅蓮だったなんて……。

それに、紅蓮には心を寄せている相手がいるということ。

夏休み最終日、俺は紅蓮の一番知ってはいけない秘密を知った……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

処理中です...