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二章
十四話 縁談
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「団子屋~! 少し話があるんだけどいい?」
「朱里か。どうした?」
「団子屋に縁談の話が来てるんだけど、どうする?」
「……っ」
縁談って、結婚のことよね?
庵様の見た目は美しい。誰が見ても素敵だと口を揃えて言うだろう。
……わかってはいた。今まで縁談の話が来なかっただけ不思議なくらいだ。
もしかしたら、私が桜ノ国に来る前にも縁談の話はあったのかもしれない。
ズキッ。胸の奥が痛い。甘い物の食べすぎかしら。
「……話だけはするが、合わなければいつものように断るぞ」
「それで良いと思う。相手には私から話をつけとくね! 早ければ今日にでも桜ノ国に親と一緒に来るとか」
「急だな。大方、結婚相手がなかなか決まらず、すぐにでも相手を決めたいのか」
「そういうわけでもなさそうなんだよね。なんでも相手は巫女で、桜ノ国にとってもこれはいい話なんじゃないかって」
「……そうか」
「あの、庵様……」
「緋翠は心配しなくていい。俺が相手と会ってる間は朱里といてくれ」
「……はい」
巫女、か。私とは違って立派な巫女なんだろう。
……嫌な予感がする。でもまさか、卯月が縁談なんて。年齢を考えればありえない話ではない。
私の行方は家族には知られていない。とっくに野垂れ死んでいると思われているから、顔を合わせたら驚かれるだろう。
できれば会いたくない。庵様の言う通り、朱里さんと居たほうが安心なのかもしれない。
「自分なら御神木の桜を咲かせることが出来ます! って自信ありげだったよ」
「巫女の舞には力があると聞くが、果たしてその巫女の力は本物なのか?」
「どうだろう? あっ、でも見た目はどことなく緋翠ちゃんに似てたかも」
「えっ……?」
「朱里ちゃん~、店主様の縁談の続きなんだけど~」
「今行くよー! 緋翠ちゃん、団子屋、私呼ばれてるから行くね」
住人に呼ばれ、朱里さんは行ってしまった。
「緋翠に似ている、か。……緋翠、お前、姉や妹はい……」
「すみません庵様。私、用事を思い出して……」
「おいっ!」
「……っ」
私は逃げるように走った。
庵様は私に聞きたいことがあったんだろう。わかってはいたけれど、先に身体が拒絶してしまった。
私はここに来てから、庵様に何も話してない。
神無月家の長女であり、代々、巫女の家系であること。そして、家族に虐げられ、自ら命を捨てようとしたこと全て。
庵様には、いつか話すとは言ったけど、いざ話すとなったら怖くなった。
庵様、相性が良ければ卯月との縁談を受けるのだろうか。だとしたら、私のここでの居場所は無くなる。無くなるどころか卯月の手によって追い出されてしまうかも。
卯月だと決めつけるのはまだ早いだろうか。巫女なんて卯月以外にもいるし……。
「私がこの木に桜を咲かせたら、庵様も私のことを見てくれるだろうか」
私は御神木の前にいた。ソッと触れてみる。私よりもずっと大きい。それでいて冷たい。他の桜は熱を帯びているみたいに暖かいのに、御神木だけは氷のように冷たいのだ。
御神木は桜の神様がいないと庵様が言っていたけど、それと何か関係があるのかしら。まるで何百年と眠っているみたい。
「桜が咲いていなくても、貴方はとても綺麗よ。でも、桜を咲かせたらもっと綺麗なんでしょうね」
御神木に触れていると、やっぱり落ち着く。まるで庵様に頭を撫でられているときみたいだ。
……本当は逃げたくなかった。私だって一度は卯月に言いたい。だって、庵様の支えになるって決めたんだから。
私も庵様のように強くなりたい。
「御神木様。どうか私に戦える勇気をください。私は今よりももっと強くなりたいの……!」
私は御神木に手を合わせた。
「聞いた? お母様。桜ノ国で一番偉い団子屋の店主様はとても素敵な方なんですって」
「あら。それなら卯月とお似合いじゃない。……あのゴミが消えて、卯月もより一層、巫女の力が強くなったし、店主様もきっと卯月を見ればすぐにでも気に入るわよ」
「っ……!」
「は? なんで生きてんの? 緋翠姉さん」
「卯月ちゃ……」
聞き覚えのある声がすると思って振り返ると、そこにいたのは妹の卯月とお母様。
……それは最悪の再会だった。
「朱里か。どうした?」
「団子屋に縁談の話が来てるんだけど、どうする?」
「……っ」
縁談って、結婚のことよね?
庵様の見た目は美しい。誰が見ても素敵だと口を揃えて言うだろう。
……わかってはいた。今まで縁談の話が来なかっただけ不思議なくらいだ。
もしかしたら、私が桜ノ国に来る前にも縁談の話はあったのかもしれない。
ズキッ。胸の奥が痛い。甘い物の食べすぎかしら。
「……話だけはするが、合わなければいつものように断るぞ」
「それで良いと思う。相手には私から話をつけとくね! 早ければ今日にでも桜ノ国に親と一緒に来るとか」
「急だな。大方、結婚相手がなかなか決まらず、すぐにでも相手を決めたいのか」
「そういうわけでもなさそうなんだよね。なんでも相手は巫女で、桜ノ国にとってもこれはいい話なんじゃないかって」
「……そうか」
「あの、庵様……」
「緋翠は心配しなくていい。俺が相手と会ってる間は朱里といてくれ」
「……はい」
巫女、か。私とは違って立派な巫女なんだろう。
……嫌な予感がする。でもまさか、卯月が縁談なんて。年齢を考えればありえない話ではない。
私の行方は家族には知られていない。とっくに野垂れ死んでいると思われているから、顔を合わせたら驚かれるだろう。
できれば会いたくない。庵様の言う通り、朱里さんと居たほうが安心なのかもしれない。
「自分なら御神木の桜を咲かせることが出来ます! って自信ありげだったよ」
「巫女の舞には力があると聞くが、果たしてその巫女の力は本物なのか?」
「どうだろう? あっ、でも見た目はどことなく緋翠ちゃんに似てたかも」
「えっ……?」
「朱里ちゃん~、店主様の縁談の続きなんだけど~」
「今行くよー! 緋翠ちゃん、団子屋、私呼ばれてるから行くね」
住人に呼ばれ、朱里さんは行ってしまった。
「緋翠に似ている、か。……緋翠、お前、姉や妹はい……」
「すみません庵様。私、用事を思い出して……」
「おいっ!」
「……っ」
私は逃げるように走った。
庵様は私に聞きたいことがあったんだろう。わかってはいたけれど、先に身体が拒絶してしまった。
私はここに来てから、庵様に何も話してない。
神無月家の長女であり、代々、巫女の家系であること。そして、家族に虐げられ、自ら命を捨てようとしたこと全て。
庵様には、いつか話すとは言ったけど、いざ話すとなったら怖くなった。
庵様、相性が良ければ卯月との縁談を受けるのだろうか。だとしたら、私のここでの居場所は無くなる。無くなるどころか卯月の手によって追い出されてしまうかも。
卯月だと決めつけるのはまだ早いだろうか。巫女なんて卯月以外にもいるし……。
「私がこの木に桜を咲かせたら、庵様も私のことを見てくれるだろうか」
私は御神木の前にいた。ソッと触れてみる。私よりもずっと大きい。それでいて冷たい。他の桜は熱を帯びているみたいに暖かいのに、御神木だけは氷のように冷たいのだ。
御神木は桜の神様がいないと庵様が言っていたけど、それと何か関係があるのかしら。まるで何百年と眠っているみたい。
「桜が咲いていなくても、貴方はとても綺麗よ。でも、桜を咲かせたらもっと綺麗なんでしょうね」
御神木に触れていると、やっぱり落ち着く。まるで庵様に頭を撫でられているときみたいだ。
……本当は逃げたくなかった。私だって一度は卯月に言いたい。だって、庵様の支えになるって決めたんだから。
私も庵様のように強くなりたい。
「御神木様。どうか私に戦える勇気をください。私は今よりももっと強くなりたいの……!」
私は御神木に手を合わせた。
「聞いた? お母様。桜ノ国で一番偉い団子屋の店主様はとても素敵な方なんですって」
「あら。それなら卯月とお似合いじゃない。……あのゴミが消えて、卯月もより一層、巫女の力が強くなったし、店主様もきっと卯月を見ればすぐにでも気に入るわよ」
「っ……!」
「は? なんで生きてんの? 緋翠姉さん」
「卯月ちゃ……」
聞き覚えのある声がすると思って振り返ると、そこにいたのは妹の卯月とお母様。
……それは最悪の再会だった。
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