五度目のループをした虐げられた追放巫女は謎多き団子屋の店主様から一生分の愛を注がれる〜追放巫女は誰にも言えない異能持ちでした〜

星空永遠

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二章

二十三話 月が綺麗ですね

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「どうした? まだ眠れないのか?」
「庵様……」

 夜になり、私は奥の部屋で一人、寝ようとしていたのだが、朱里さんのことを考えていたら目が覚めてしまった。

 それに、庵様は隣の部屋で卯月ちゃんと一緒に寝ている。私が結婚を促したのだから、二人に何が起こったとしても受け入れるべきだ。

 庵様は優しくて強いお方だ。それは私がよくわかっている。だから卯月ちゃんが庵様と共に人生を歩むことが出来れば必ず幸せになれる。

 お母様は着物屋で寝るとかで使用人を連れて行ってしまった。

 私は縁側で一人、星を眺めていたのだが、庵様に見つかってしまった。

「卯月ちゃんと一緒に寝ていたのでは?」
「話をしている途中に寝てしまったよ。手を握られていたんだが振り払ってきた」

「どうしてですか?」
「……お前と話がしたかったからだ」

「っ……!」

 月明かりに照らされて、庵様の翼がより一層輝いて見える。とても綺麗……。

 神様は見たことはないけれど、庵様みたいな人のことをいうのかな? 六枚の白い翼はまるで本当の神様みたい。

「私の本心は本当に……」
「卯月と結婚して幸せになれ、だろ。言わずともわかっている」

「そうですか」

 私はほっと胸を撫で下ろした。お母様がいなくとも用心棒は私を見張っているかもしれない。だから余計なことは言えない。

「今日は月が綺麗だな」
「そうですね……。眠れないので星を見ていたんです」

「なら、団子はどうだ?」
「ありがとうございます」

 花柄のお皿に乗ったお団子を渡された。いつの間に用意していたのだろうか。

「昼すぎから朱里の姿が見えないな」
「……」

「入口には作業のため入るなと書いてあったが、それにしてもアイツがこんなにも顔を見せないなんてことがあるか?」
「えっと……」

「多方、この国の飯の味に飽きたから隣の国に飯を食いに行ってるのだろう」
「朱里さんって放浪癖があるんですか?」

「放浪癖って……緋翠は面白いことを言うな。アイツは食うことが好きなだけだ。実際、隣の国に何日も行っていて帰らないこともある」
「そ、そうなんですか」

 もしかしてお母様はそれを知っていて、朱里さんを人質に取ったの? 

 何日も帰らない日が続く。普通なら心配するところだろう。だが、朱里さんはこの国にはない食べ物を探し求めて、旅をする。

 それなら朱里さんが着物屋を何日も空けていても不思議ではない。

「しかし変だな……。旅に出るときは俺に一言いってから行くんだけどな」
「……」

 私は朱里さんがどこにいるかまではわからない。もし、わかるのなら今すぐにでも朱里さんを助けに行くのに……。ただ、力も使えない非力な私が行ったところで意味はないかもしれない。

「庵様は隣の国には行かれないのですか?」
「俺はこの国を守る役目があるからな。あまり外に出ることはない。が、隣の国も悪くないぞ。緋翠が今見ている星がここよりも綺麗に見える場所だ」
「それは一度行ってみ……」

「どうした?」
「いえ……」

 私はもうすぐ桜ノ国を出て行かなくてはならない。だから、隣の国に行って観光などもってのほかだ。

「俺が卯月と結婚しても、お前を星ノ国に連れて行ってやる」

 隣の国は星ノ国というのか。桜ノ国と同じように星を祀っているのだろうか。名前だけでも素敵だし、ますます興味が湧いてきた。

「私は元いた国に帰るんです。だから庵様とは会えません」
「お前がどこに行こうとも俺が必ずお前を連れ戻してみせる」

「っ……」

 そういうと庵様は私を抱きしめた。
 ……桜の香りがして、心が落ち着く。

「駄目です庵様っ……。庵様には卯月ちゃんというお嫁さんがいるじゃないですか」

 こんなところを用心棒に見られたら、朱里さんが壊されてしまうのに……。

「嫌ならお前が俺を振り払えばいい」
「庵様、なにを……」

「たとえお前に巫女の力がなくとも、俺はお前を離すつもりはない」
「……どうして……?」

 なんで、そんな言葉をかけるの?
 何故、私の心を乱そうとするの?

 かき乱さないで。……勘違いしそうになる。

 私は家族だから。せっかく仲良くなったのに家族が国から居なくなるのが寂しいってことよね?

 それとも、他の意味があるの? 
 まさか、庵様が私のことを……?

 これ以上、深く考えるのはやめよう。どうせ私はこの国を出ることになるんだから。

「お前からは巫女の力を感じない」
「っ」

「それは出会ったときにわかっていた」
「私が神無月家であることも知っていた。それなのに、どうして私を助けたんですか!? なんで、こんな無能な私を……あのまま死ねていれば、どんなに楽だったか」

「お前が神無月家の人間だろうと、巫女だろうとそんなのは関係ない」
「えっ……?」

「俺はお前のことを知っている。どんなに辛い状況でもお前は泣かずに我慢していた。……今度はお前を助けられたと思っていた。だが、助けたのはお前の命だけ。お前はまだ囚われたままだ」

「私は神無月家にいて幸せなんです。だから情なんかいりません。むしろ悲しくなります。そんなことされたら、神無月家に戻るとき泣いてしまいます……」

「緋翠」
「庵、様?」

「お前は十分頑張った。だから、これ以上我慢なんてしなくていいんだ。……お前はお前の人生を生きろ。俺が緋翠を自由にしてやる」
「だから、私は……!」

 私が囚われている? それはなにに?

 お母様? それとも卯月ちゃん? 神無月家に? ……その全てに、か。

 ここに来てからの私しか庵様は知らないと思っていた。なのに、私が辛い状況でも涙を流さずに我慢していたことをどうして知っているの?
 
 まるで今までの私を見てきたような口ぶりだ。

 私の人生……私は自由になっていいの?

「でも、それは出来ないんです」
「俺がお前を自由にしてやる。命を助けたように、次はお前の……緋翠の心を救ってみせる」

「っっ……」

 涙は流さない。
 庵様に醜い姿は見せたくないから。

「あまり遅くまで起きていると風邪を引くぞ。……俺は卯月の元に戻る。だけど、お前を自由にしてやりたいと言ったのは本当だ。だからお前も我慢するな。わかったか?」
「……はい。前向きに考えておきます」

「素直じゃないな。でも、そんなお前も俺には魅力的に見える。……おやすみ、緋翠」
「おやすみなさい庵様」

 私は庵様が部屋に戻ったのを確認して、一人でお団子を食べた。何故だろう? いつもは凄く甘くて美味しいはずなのに、今日のお団子は少し塩っぱい。

 ……今日の月は、私には眩しすぎる。
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