五度目のループをした虐げられた追放巫女は謎多き団子屋の店主様から一生分の愛を注がれる〜追放巫女は誰にも言えない異能持ちでした〜

星空永遠

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二章

二十四話 言葉の暴力

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「店主様。私の舞はどう? 私、踊りには自信があって~」
「桜は蕾すらつけていないようだが?」

「店主様ってば冷たい~! こんなの、ただの茶番でしょ?」
「茶番?」

「五日後に緋翠お姉ちゃんは元いた国に帰る。私は緋翠お姉ちゃんの願い通り、店主様と結婚する。だから、店主様が最初に出していた条件は私が桜ノ国の住人に相応しいか、試しただけでしょ?」

「……なら、君の力はまだ本気じゃないということだな」
「な、なにを言って……」

「これは本物の桜だ。俺が最初に出した条件も茶番などではない。わかったら、さっさと本気の舞とやらを見せることだ」
「ちょっと、店主様ってば……」

「う、卯月ちゃん」

 次の日の朝、卯月ちゃんは昨日のように舞を踊り続けていた。

 私は二人のことを一歩下がったところで見ていたけれど、庵様はあきらかに卯月ちゃんに対して当たりが強いように感じる。

 あれから庵様は卯月ちゃんと同じ部屋で寝たはず。その時に何かあったのかな?

 庵様は団子屋の仕事をしなければと早足でその場を去った。

「だから二人の時は様をつけろって言ってるでしょ!?」
「ご、ごめなさ……」

「緋翠姉さん、店主様って本当に女性のことが好きなの?」
「えっ?」

「昨晩、私が誘惑したら、店主様は私を突き飛ばしたのよ! こんな風に……ねっ!」
「……いたっ……」

 私は卯月ちゃんに突き飛ばされた。痛い。また傷が増えてしまった。気がつけば、庵様に貰った椿の花の着物は汚れてしまっている。せっかく朱里さんに仕立ててもらったのに……。

「この私が誘惑しても落ちないとか、店主様は女性に興味がないのよ。……今日はアンタが店主様と寝なさいよ!」
「卯月ちゃん。何言ってるの?」

「お母様から聞いたわ。夜這いでもなんでもして店主様を落とすんでしょ? 私が店主様と結婚出来るように必死に頼む。そうしないと着物屋の娘を返してもらえないんですって?」
「っ……」

 そうだよね。お母様が単独でやるはずがない。

 全ては卯月ちゃんがお母様に頼んだんだ。可愛い卯月ちゃんの願いなら、お母様はどんなことだって叶えてきた。

「アンタの片目は生まれつき見えない。そんな醜い見た目で男を落とそうだなんて無理な話だけど、店主様は多少はアンタのことを気にかけてくれてるみたいだし、色仕掛けの一つでもしてみたらいいんじゃない?」
「私が庵様に気に入られている?」

「調子に乗らないで。アンタを気にかけるのはメリットがあるからよ」
「……」

 庵様は私に巫女の力がないことは最初から知っていた様子だった。なのに、私を気にかけるメリット? それは一体なんなの?

「……跡継ぎよ」
「っ……」

「彼だって男性だもの。跡継ぎの一人くらい欲しいわよ。どうせアンタの子供なんて醜いだけだろうけど、半分は店主様の血が混じってるんだもの。多少は見られる顔して生まれてくるんじゃない?」

「私は庵様と一緒に居られるだけで……いっ……卯月ちゃ……痛い」

 卯月ちゃんは私の髪を引っ張って、無理やり私を立たせた。

「店主様と一緒に居られるだけで幸せ? 寝言は寝てから言ってよね。それに、数日も経てばアンタは店主様と離ればなれなんだから。……アンタなんか生まれてこなければ良かったのに」
「……」

 その言葉を言われても尚、私は泣けなかった。
 卯月ちゃんは私の存在が許せないんだ。

「ごめんね、卯月ちゃん。私が生まれたから卯月ちゃんが不幸になったんだよね?」
「は? 私のこと本気でバカにしてるってわけ?」

「そんなつもりじゃ……」
「私はアンタに謝ってほしいわけじゃない! そんな目で私を見るな!もう喋らなくていいから!!」

「……いっ、ッッ!!」

 私は御神木に頭を何度も打ちつけられた。頭からは血が流れている。……御神木に私の穢れた血がつかないといいな。

「私はアンタなんか大嫌い! お願いだから早く死んでよ! どうして生きてるの? ねぇ、穢れているくせに生きてるのが恥ずかしくないの?」

「……私も早く死にたいと思っていた」
「だったら、なんで?」

「庵様はどんな私でも家族として認めてくれるの。私は桜ノ国に来て、本当の幸せがどういうものかわかったの。初めて人の優しさに触れたとき、自ら命を捨てようとした行為がなんて馬鹿な行動だったのだと気付かされた」

「その幸せはあと数日でなくなるのよ。アンタは再び地獄のような生活が待ってる。ううん、次は家の外にすら出さないようにお母様に頼んであげる」

「私はもう幸せをたくさんもらったから……だから、もういいの」

 欲をいうなら、庵様と星ノ国に行ってみたい。朱里さんともっと仲良くなりたい。私にしか出来ないことをして住人の役に立ちたい。

 いろんな願いがあるけれど、それはもう諦めなければいけない。

「次は卯月ちゃんが庵様と幸せになる番だから」
「今の私が幸せじゃないって、そう言いたいの?」

「ちがっ……」
「こんな無駄に長くて邪魔な髪、切ってやるんだから」

「やめて……卯月ちゃん……」

 卯月ちゃんには、私のどんな言葉も届かない。それどころか卯月ちゃんの機嫌を悪くするだけ。頭に血が上った卯月ちゃんは私の髪をグイグイと引っ張る。

「……卯月さん、やめなさい」
「お母様! だって、緋翠姉さんが私に説教なんてするから」

「説教、ですって?」
「っ……」

 お母様の冷たく氷のような瞳が私をとらえた。
 視線がそらせない。

「私が幸せじゃないとか言い出すの。神無月家の巫女の力なんて大したことないし、用心棒だって怖くないって。それに着物屋の娘がどうなろうと私には関係ないってさ」

「私、そんなこと言ってな……!」

「緋翠さん」
「は、はい」

「貴女、昨晩は店主様とお楽しみだったようね」
「っ……」

「あれが夜這いのつもり? はしたない。本当に醜い子。なのに、店主様ったらこんな醜い化け物に騙されそうになるなんて……」
「私は卯月ちゃんとの結婚が上手くいくように手助けを……」

「嘘をつくなら相手を選びなさい。神無月家が大したことないって……朱里さんがどうなってもいいのよね?」
「だから、そんなこと一言も……」

「これ以上、口答え出来ないようにたっぷり身体に教えてあげる。……貴女の壊れかけの心を完全に砕くことなど母の私には造作もないんだから」
「お母様……」

「アンタに母呼ばわりされるなんて私も落ちたものね。……さぁ、化け物。貴女はどこまで耐えられるかしら」
「い、や……卯月ちゃ……」

「緋翠姉さん。これからも私のお姉ちゃんでいるならさ……いい子でいなくちゃ、ねっ?」

 ……私の声は誰にも届かない。
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