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七話
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◇◇◇
「隼人さん、お待たせしました」
「可愛いな。紫音、その水着似合ってるぞ」
「っ……」
メイドさんたちにはビキニを勧められたけど、私には大人っぽすぎるとワンピースにしてもらった。背中は見られると嫌だからパーカーを着て前だけ開けていた。
「紫音は泳げるか?」
「恥ずかしい話なんですけど、誰かとこうしてプールに来る自体初めてで……」
「なら紫音の初めては俺が奪ったのか」
「……!」
「言い方が悪かったな。だけど、そっちの初めても俺は紫音としたいと思ってるぞ」
「ううっ……」
今の言葉、心臓に悪すぎる。冗談だったとしても私には刺激が強い。
そりゃあ隼人さんも三十過ぎてるし、私もそれなりの年齢ではあるけれど、そういうことするにはまだ早くない? そんなことないのかな?
公孝とも大人の階段を登ることはしなかったから世間一般でいう平均が私にはわからない。でも最近は高校生のうちに初めてを体験する子も多いとか。
「それにしてもここのプール、人が全然いませんね」
温室プールだから、ここなら風邪を引かなそうだ。小学生の時、プールの授業中に突然雨が降ってきて急激に身体が冷えたのか次の日に風邪を引いちゃったんだよね。
そのせいか夏でもプールに入るのは少しだけ苦手意識がある。けれど、好きな人とプールに来れるならトラウマだってほんの些細な悩みだ。
隼人さんとなら、どんな場所だって嬉しい。最上階のレストランで食事をしなくても、普通のファミレスだって私は満足だ。
隼人さんってファミレスとか行ったことあるのかな? 注文の仕方とか知ってるんだろうか。たどたどしい隼人さんを想像したら口元がにやけてきた。
「俺たちしかいないからな」
「え?」
「今日のためにこのプールは貸し切りにしたんだ」
「えぇ!? ど、どうしてですか?」
「何故って、紫音はソレとか気になるだろ」
「……」
ソレと言って指差したのは私の背中。
「やっぱり気持ち悪いですよね……」
「俺は一言も気持ち悪いとは言ってないだろ。紫音が俺以外の誰かに見られるのが嫌だと思ったから貸し切りにしたんだ。余計なお世話だったか?」
「いえ。むしろそこまで気を遣わせていただき感謝してい……きゃっ!?」
こっちに近づいてきた隼人さんは私が着ていたパーカーをバッと脱がせた。
「いやっ……! 殴らないで。ごめんなさいごめんなさい!」
「……」
私は怯えるようにその場に座り込んでしまった。気持ち悪い傷を見た隼人さんは私にドン引きしているに決まっている。きっと醜い私を見て殴るんだ。公孝がそうだったように。隼人さんがそんな人じゃないってわかっているのにどうしても信じられない私もいて。
「俺が脱がせたんだ。殴るわけないだろ。紫音、俺と目を合わせてくれ」
「は、隼人さ……んっ!?」
「ん。俺は紫音の傷ごと全てを愛したいんだ。紫音にとっては思い出したくもないほど辛い記憶かもしれない。けれど、俺にとっては消えない傷跡があったとしても、それが気にならないほどお前のことが好きなんだ」
「隼人、さ……」
今までこの傷を見てきた人でそんなことを言ってきた人はいない。むしろそれなりに話せる女の子でさえ、この傷を見ると次の日から距離を置いていた。それほど、この傷は私にとって嫌な思い出なんだ。
この傷さえなければ普通に友達が出来て、普通に恋だって出来たかもと思うこともあった。けれど、この傷があったからこそ神宮寺さんとこうして出会えたんだとしたら、私はこの傷を作った両親のことを許してしまいそうになる。
「紫音。やっぱりダメか?」
「え?」
「俺との結婚」
「!」
「パーティーでは正式にお前が嫁だと発表する。そうすれば世間は大騒ぎになる。世間体のために嘘を突き通せと言っているわけじゃない。俺が紫音と本気で結婚したいんだ。俺の妻として俺の側にずっといてほしい」
「っ……」
「し、紫音?」
「駄目なんかじゃありません」
「いい、のか?」
「もちろんです」
「紫音、愛してる」
「私もです」
こんなにも私を愛してくれる人がいる。
どうして今まで気付かなかったんだろう? 最初は本当に同情から私のことを助けたんだと思った。お金持ちでなんでも手に入るから暇つぶしでオモチャを見つけたかっただけなんだと、そう考えたりもした。
けれど、隼人さんと暮らしていくうちに隼人さんは本当に私のことを必要としてくれた。私の傷を見て、私の傷ごと全てを愛したいと言ってくれた。
そんなに優しい人、世界中探したって隼人さんしかいない。私が本当に出会うべき人、それは隼人さんだったんだ。
こうして私たちは結婚を前提に本物の恋人となった。
「隼人さん、お待たせしました」
「可愛いな。紫音、その水着似合ってるぞ」
「っ……」
メイドさんたちにはビキニを勧められたけど、私には大人っぽすぎるとワンピースにしてもらった。背中は見られると嫌だからパーカーを着て前だけ開けていた。
「紫音は泳げるか?」
「恥ずかしい話なんですけど、誰かとこうしてプールに来る自体初めてで……」
「なら紫音の初めては俺が奪ったのか」
「……!」
「言い方が悪かったな。だけど、そっちの初めても俺は紫音としたいと思ってるぞ」
「ううっ……」
今の言葉、心臓に悪すぎる。冗談だったとしても私には刺激が強い。
そりゃあ隼人さんも三十過ぎてるし、私もそれなりの年齢ではあるけれど、そういうことするにはまだ早くない? そんなことないのかな?
公孝とも大人の階段を登ることはしなかったから世間一般でいう平均が私にはわからない。でも最近は高校生のうちに初めてを体験する子も多いとか。
「それにしてもここのプール、人が全然いませんね」
温室プールだから、ここなら風邪を引かなそうだ。小学生の時、プールの授業中に突然雨が降ってきて急激に身体が冷えたのか次の日に風邪を引いちゃったんだよね。
そのせいか夏でもプールに入るのは少しだけ苦手意識がある。けれど、好きな人とプールに来れるならトラウマだってほんの些細な悩みだ。
隼人さんとなら、どんな場所だって嬉しい。最上階のレストランで食事をしなくても、普通のファミレスだって私は満足だ。
隼人さんってファミレスとか行ったことあるのかな? 注文の仕方とか知ってるんだろうか。たどたどしい隼人さんを想像したら口元がにやけてきた。
「俺たちしかいないからな」
「え?」
「今日のためにこのプールは貸し切りにしたんだ」
「えぇ!? ど、どうしてですか?」
「何故って、紫音はソレとか気になるだろ」
「……」
ソレと言って指差したのは私の背中。
「やっぱり気持ち悪いですよね……」
「俺は一言も気持ち悪いとは言ってないだろ。紫音が俺以外の誰かに見られるのが嫌だと思ったから貸し切りにしたんだ。余計なお世話だったか?」
「いえ。むしろそこまで気を遣わせていただき感謝してい……きゃっ!?」
こっちに近づいてきた隼人さんは私が着ていたパーカーをバッと脱がせた。
「いやっ……! 殴らないで。ごめんなさいごめんなさい!」
「……」
私は怯えるようにその場に座り込んでしまった。気持ち悪い傷を見た隼人さんは私にドン引きしているに決まっている。きっと醜い私を見て殴るんだ。公孝がそうだったように。隼人さんがそんな人じゃないってわかっているのにどうしても信じられない私もいて。
「俺が脱がせたんだ。殴るわけないだろ。紫音、俺と目を合わせてくれ」
「は、隼人さ……んっ!?」
「ん。俺は紫音の傷ごと全てを愛したいんだ。紫音にとっては思い出したくもないほど辛い記憶かもしれない。けれど、俺にとっては消えない傷跡があったとしても、それが気にならないほどお前のことが好きなんだ」
「隼人、さ……」
今までこの傷を見てきた人でそんなことを言ってきた人はいない。むしろそれなりに話せる女の子でさえ、この傷を見ると次の日から距離を置いていた。それほど、この傷は私にとって嫌な思い出なんだ。
この傷さえなければ普通に友達が出来て、普通に恋だって出来たかもと思うこともあった。けれど、この傷があったからこそ神宮寺さんとこうして出会えたんだとしたら、私はこの傷を作った両親のことを許してしまいそうになる。
「紫音。やっぱりダメか?」
「え?」
「俺との結婚」
「!」
「パーティーでは正式にお前が嫁だと発表する。そうすれば世間は大騒ぎになる。世間体のために嘘を突き通せと言っているわけじゃない。俺が紫音と本気で結婚したいんだ。俺の妻として俺の側にずっといてほしい」
「っ……」
「し、紫音?」
「駄目なんかじゃありません」
「いい、のか?」
「もちろんです」
「紫音、愛してる」
「私もです」
こんなにも私を愛してくれる人がいる。
どうして今まで気付かなかったんだろう? 最初は本当に同情から私のことを助けたんだと思った。お金持ちでなんでも手に入るから暇つぶしでオモチャを見つけたかっただけなんだと、そう考えたりもした。
けれど、隼人さんと暮らしていくうちに隼人さんは本当に私のことを必要としてくれた。私の傷を見て、私の傷ごと全てを愛したいと言ってくれた。
そんなに優しい人、世界中探したって隼人さんしかいない。私が本当に出会うべき人、それは隼人さんだったんだ。
こうして私たちは結婚を前提に本物の恋人となった。
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