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四章 俺にとってアカリという存在は

22話

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「普通、そういう反応になるよな…」


私の反応を見るや否や、黒炎くんはしょんぼりとしていた。


「待って、理解が追いつかないだけ! アカリちゃんって、二次元の女の子なの? でも付き合ってるってどういうこと?」


「おそらくまわりからは妄想癖があるとか心の病だとか言われると思う。俺は、とあるギャルゲーに登場する黒崎アカリっていう女子と付き合ってるって思ってるんだ。

皆からは二次元のキャラクターと思われるだろう。だけど、俺にとっては黒崎アカリという存在は生きてるんだ。
いつも俺の側にいて、俺を見守ってくれてる。俺はそんなアカリが好きだし、アカリも俺のことを好きだと言ってくれた。
……再会した幼馴染がこんな奴になってて幻滅したか?」


「幻滅なんかしてないよ! 他の人が黒炎くんを幻滅したとしても、私は黒炎くんを否定したりしない!!!」


多分、黒炎くんの発言を一瞬で理解することはおそらく難しいだろう。だけど、アカリちゃんという存在は黒炎くんにとって心の支えになってることだけは理解できた。


「朱里…お前って本当に良い幼馴染だな」


「そんなことないよ」


黒炎くんがアカリちゃんのこと話すたびに私は嫉妬してたんだよ? そんな私が良い幼馴染なわけない。だけど、黒炎くんがそういってくれるだけで嬉しく思う私がいた。


「ねぇ、どうしてギャルゲー好きなったの?」


「それもアカリ関係なんだ。パッケージを見てアカリに一目惚れしたから。それからギャルゲーにハマって、それをしてる時は悲しいことを忘れられた。ハッピーエンドを見るたび、俺の心も救われた気がしたんだ」


「悲しいこと?」


「それは…まだ話せない。俺、本当は怖かったんだ。ギャルゲー好きって明かすのを。でも、お前は俺がギャルゲーの話をしてもけして笑ったりバカにしたりしなかった。だから、アカリのことちゃんと話そうと思ったんだ」


「人の趣味を笑ったりしないよ。まだ全部理解はしていないし、正直混乱してるの。でも、話してくれてありがとう、黒炎くん」


「いや、お礼を言うのはこっちのセリフだ。
ありがとう、朱里」
 

私は黒炎くんに触れることはせず、ただ話を聞き慰めた。それと同時にこみ上げてくるのは黒炎くんを好きという気持ち。こんなにも心の闇が深かったなんて。それをずっと一人で抱え込んでいたんだと思うと胸が張り裂けそうだった。


黒炎くんは本当にアカリちゃんがこの世界にいると思ってる。だけど、それがまわりから理解されないこともちゃんと知ってる。きっと話すのにかなりの覚悟があったはずだろう。だから、否定なんかしたりしない。


アカリちゃんごと、黒炎くんの全てを理解したい。もっと知りたい、黒炎くんのこと。


これは同情なんかじゃない。本当に心からの気持ち。今の弱ってる黒炎くんを慰めたら、もしかしたら私のことを好きになるかもしれない。だけど、そんなのは駄目なの。
アカリちゃんの代わりなんかじゃなくて、私自身を見てちゃんと好きって言ってくれなきゃ。そんな日がいつ来るかわからない。


だけど、アカリちゃんの存在を知った今も私の心は変わらない。幼稚園の頃からずっと好きだった気持ち。私が黒炎くんのこと救ってあげたいと思うのはワガママですか?
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