新しい職場はエロトラップダンジョン

ハシバミ

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 最近、とみに生活できる場所が減った。都市が開拓され、冒険者もあらゆる山間の深くにまで侵入してくるようになったからだ。これには大変な遺憾の意を唱えたい。古から続く山々には、我々の方が先に住んでいたのだと。

 しかしながら、そう訴えたところで、山は切り崩され、自然は畑や工場、街に代わり、我々は隅っこに追いやられる一方であった。

「しょうがないよなぁ。俺たちの主張が、うまく伝わってねーんじゃねぇかなぁ」

 センパイは身体を竦めて、道案内を続ける。じめっとした洞窟のような廊下だった。明かりはほぼなく、薄汚れた壁にところどころぼんやりと火が灯っているだけ。長くもない廊下を歩ききると、突き当りにはぽかりと開いた四角形の部屋に辿り着いた。

 部屋はセンパイと合わせても、身体が十分に入る大きさだ。天井には小さな穴が開いており、そこから太陽の光が差し込んでいる。光源はそれだけだった。

「ほぉー、いいですね。程よく暗くてジメジメしてる」

 部屋を見渡して言うと、センパイは満足げに頷く。

「だろ? ここ、住み込みOKだから、お前の根城にしちゃっていいよ。カスタマイズ? ってやつだ」
「最高っすね。最近、住処を追い出される奴も多くなって……職もないのに、野宿も出来なくて居住地を探すのも大変なんすよ」

 センパイはふぅ……と溜息をついた。

「かく言う俺も、ようやく上の階への移動が決まって、地下のこの部屋の担当が空いたからお前に声をかけただけなんだ。待遇は悪くないと思うんだが、まぁ不便があっても我慢してくれや」
「もちろん。ところで、センパイ。ここでは何をすればいいんですか?」

 このセンパイから働き口と住める場所に心当たりがあると聞いて、一も二もなく飛び込んだ。とある朝目覚めた時に、目の前にあったはずの深い森林が、一夜にして焼け野原に変わっていたのだ。

 びっくりして「そんな……」と呟いた。衝撃的な事実を認識すると、「そんな」としか言えないくらいに知能が低下するのだと、そこで初めて知った。
 そんな、そんな馬鹿な、と言いながらうろつきまくっていたら、そこにセンパイが現れて、此処まで連れてきてくれたわけだ。

 目の前のセンパイは、こほんと咳をする。

「よく聞け。ここはな、エロトラップダンジョンだ」

 聞いたことのない単語に、身体を揺する。

「ふむ?」
「数あるエロトラップダンジョンの中では塔型に分類されて、お前は地下担当。俺はめでたく昇進して、四階の触手壁トラップに配置転換になった」
「……ほほぉ」

 八割理解できないが、とにかくセンパイが誇らしい気分であるのだとは分かる。そこだけ分かったような振りをした触手の色で頷くと、センパイは満足したのか「がはは」と笑う。センパイの逞しい腕の役割を果たす触手がぬめっと光った。自信があるときの状態だ。

「俺たちの仕事は、ここを訪れた人間たちの、期待に応えるということだ」
「キタイに応える?」
「そうだ、よく覚えておけ。人間たちはな――エロトラップダンジョンに入ると、とにかくエロい目に遭いたいという期待があるんだ」

 びっくりして飛び跳ねる。

「えぇ!? そんな馬鹿な……得体の知れない場所へ乗り込んでまで、エロい目に遭いたいって言うんですか?」

 人間とはとんでもねー野郎だと、震えあがる。センパイはその仕草を、仕事に慣れない素人を見守るようにして、うんうんと肯定した。

「まぁいくつか此処に乗り込んでくるまでのパターンはあるが――魔物討伐依頼だったり、先に乗り込んだ冒険者の救出だったり、いずれにせよ大まかにエロい目に遭うがために乗り込んでくるんだ。エロトラップダンジョンに入って、エロい目に遭わないなんて本末転倒。口で勇ましくなんとのたまっていようと、そういう潜在意識があるんだよ、人間ってやつにはな……。その中でも、触手トラップはド定番だ。こいつがなけりゃあ、エロトラップダンジョンは始まらないぜ?」

 センパイは触手の先から体液を滲ませる。ぽとりと床に落ちる紫色の液体は、触手族が分泌できる秘伝の体液だった。粘液性が高く、たくさんの活性細胞が含まれており、よく怪我を治す為に使われる。ただし、一日に分泌出来る量には限界があり、より効能の高い体液を分泌できる者は賢者と呼ばれ、同胞たちから尊敬されていた。おおよそ体積での割合となるので、デカい触手族が該当する。

「俺たちのこの腕と、この体液は人間にとって、気持ちいいんだとよ。媚薬効果ってのがあるらしい」
「媚薬効果!? 俺たちの大事な体液が、人間にとっては媚薬だと言うんですか!? 憤慨! 憤慨っ!」

 神聖なる体液を媚薬とは何事か。ぶくぶくと触手を太らせて怒ると、センパイが慌てて宥めた。

「たまたま! たまたま人間にとってそうっていうだけから! 俺たちにとっては体液は神聖だから! でもそれが仕事になるっつーんなら、ぐっと堪えるのが大人ってもんじゃないのか? お前も仕事と住処に困ってるんだろ?」

 ぐぬぅという思いは、そのまま口に出た。

「ぐぬぅ……」
「そういえば、俺たちの言葉は人間にとっては「きしゃー」とか、「ぐふ……」とかに聞こえるらしい。何を話してるかは分からないから、まぁ愚痴を言ってもわかんねぇと思うぜ」
「はぁー、人間って不便ですねぇ。そんなに賢くないんですかね?」
「まぁ人間は、触手と聞いたら誰彼構わずエロい目に遭わせる奴と思ってる節はありそうだな」

 マッチョに女騎士、村人から冒険者まで誰でも性的対象と思っている節があるらしい。

「そんな馬鹿な……俺達にだって好みってモンがありますよ! 誰かれ構わずというか、そもそも人間が性的対象だって思い込んでるのは何故なんですか!? 俺だってエロイ行為するなら、相手は同じ触手がいいっすよ!」
「いいんだよ、そういう細かいところは! 人間にとっては、エロトラップダンジョンに入ったら触手に襲われて気持ちよくなっちゃう! 悔しいけど気持ちいい! ってエロい目に遭うのが大事なのであって、俺達がどう思ってるかなんて必要じゃねぇんだよ! そんなん考え出したらエロくねぇだろうが! あっいかされちゃう♡と喘いだ時に「ん? でも触手が人間を性的対象に見ているなんて誰が決めた?」とか考えだしたらノイズでしかねぇだろうが!」

 センパイの言葉を受け入れられず、「横暴! 横暴!」と騒ぎ立てる。

「人間の女に受胎させようとしてエロい目に遭わせるところを、男でも同じだと思ってエロい目に遭わせる……そういうのがこの仕事では大事なんだ。自我なんてくだらねぇものは、今すぐ捨てろ!」
「いいや、これだけは確認したい! 総括すると、人間は触手が男と女の違いも分からない上に、誰彼構わず生殖行為を仕掛ける低能だと思っているのですか!?」

 センパイの言葉は熱を帯びた。

「エロはな、本能なんだよ! 理性とは真逆なんだ! 考えんな! 生殖に基づく本能が剥き出しになって、なりふり構わねぇからエロイんだ! お前はエロが何なのか何も分かっていない!」
「ひ、ひどい……初めての勤務なのに」

 さすがにしおしおとしょげると、センパイは慌てて慰めにかかった。

「だ、大丈夫だ、俺も二年働いて叡智を得たんだ。お前もすぐに分かるよ。お前にはセンスがある。そう思ったから、お前に声を掛けたんだ」
「エッチを得たってことですか?」
「落ち込んでるくせにやかましいな、お前」

 一本の触手に触手を取られ、きゅっと握手する。これは仲直りの動作だった。

「まぁ、しょうがないですよねぇ……」

 センパイから仲直りを促されると、多少不服でも受け入れざるを得ない。どれほど不満があっても、仕事と住処を得る為には我慢するしかないのだ。

「今日は初めてだから、俺がOJTするからな。しっかり学べよ!」
「はい! わかりました!」

 気を取り直して頷いたところで、ガシャンと大きな音を立てて、一階の塔の扉が開かれる音がした。



 センパイと一緒に、部屋の天井を見上げる。

「……嵌まってますねぇ」
「嵌まったなぁ」
「嵌まるもんなんですか?」
「そりゃそうよ。穴があったら落ちる。腰から下が嵌まる。あ、これが壁の場合は横向きに嵌まるからな。そうなると、壁尻って呼ばれる」
「へぇ……」
「理屈とか理由とかは何でもいいんだ。エロトラップダンジョンなんだから、穴があったら身体の自由を奪われるために、嵌まるもんなんだよ。より屈辱的な思いを味わいたいときは、此処に至るまでに勇ましく強いところを発揮できる場面を用意しておくべきだな。おっちょこちょいドジっ子の場合は、即この状態でも味がある」
「勉強になります」

 見上げた先で、じたばたと二本の足が動いている。固そうな靴と、しっかりした布地のズボン。ベルトを見るに、

「男……ですねぇ」
「うん。初回の練習は男だな。ちょっと責め方が違うから、よーく学ぶように」

 おねしゃす、と答えると、センパイは触手を伸ばし、ベルトを示す。

「何はともあれ、服が問題だ。全部溶かして脱がすのも乙、ある程度着衣させておくのも乙。どうしたい?」
「えぇー、そんな人間の肌とか見たくもないし……必要なところだけで良いです」
「ははーん、大事なところだけ露出させられる、服に意味がねーじゃねぇかの羞恥パターンか。良い趣味してるな、やっぱセンスあるよ」

 褒められているのかよく分からない。センパイは体液の分泌を調整すると、ぬとぬとと服に塗り始めた。やがて、男の股の部分の服が溶け、性器と尻が露わになる。中心のつなぎ目を失ったズボンは、太腿から足首まで纏わりつくだけになった。

 床に阻まれて自らの状態は見えないながらも、弱点が剥き出しにされたことは肌で感じるのか、びくっと太腿が震える。

「お、おい、なんだよ……何かそこにいるのかっ?」

 どうやら焦っているらしい。いるけども、と思いながら答えると、更にびくっと足が震えた。そういえば、人間には触手の言葉が分からないと聞いた。キシャアとでも聞こえたのかもしれない。
 センパイは触手を伸ばし、ぶらんと下がっているペニスの先を突く。

「これが男の性器。刺激をしたら、生殖行為と勘違いして精液を撒き散らすことがある」

 触手たちを思わず歪めてしまった。

「汚されるのは嫌だなぁ。部屋は綺麗に保ちたいんです。こう見えても綺麗好きなんです」
「だったら、メスイキコースに決定だな」
「メスイキ?」
「乾いた絶頂ってやつだ。これなら精液を出させずに、エロく出来るんだぜ」

 突かれていたペニスがじわりと勃起し始めている。やめろ、触るなと震えた声が聞こえるが、センパイはお構いなしだった。ぺちりと睾丸を叩き、するすると蟻の門渡を伝うと、縮こまるアナルへと辿り着いた。

「メスイキの場合は、このナカを刺激するんだ」
「マジですか」
「大マジ。本気って書いてマジ」

 センパイが閉じたアナルに体液を吐きかけると、恐怖になのか身体が引き攣っている。ぬめつく液体を纏わせて縁を引っかいたところで、二本の足が暴れ回った。

「やめろ! やめろ! くっ、これは触手か――っ! 放せぇ!」

 触手を蹴られそうになったセンパイが「危ない危ない」と言い、華麗に避ける。その間も括約筋を押し広げて、縁に僅かに触手を引っ掛けると、ぐいっと引っ張るのをやめなかった。

「はぁっ、やっぱり、エロい目に遭わせて、蹂躙する、つもりなんだろ……っ!」
「何か言ってますよ、センパイ」
「エロい目に遭わせるつもりなんだろは、エロい目に遭いたいよってことだ。気にするな」

 やがて硬かった窄みが僅かに緩むと、センパイがこちらを促してくる。

「ほら、やってみな。自分でやらなきゃ覚えられないから。失敗しても俺が此処にいるから大丈夫だ! 自信を持て!」
「うう……仕方がない」

 そんなところに触手を突っ込むなど冗談ではないが、やらなければならないことはある。
 センパイに代わり触手を伸ばし、閉じようとする縁にくぽっと触手を潜入する。浅いところでぐるりとなぞって一周すると、やめてくれとまた悲鳴があがった。

「よし入ったな、じゃあ切れないように慎重に押し広げながら、腹の方を探ってみてくれ」

 指示通り、ゆっくりと抜き差しを繰り返しながら、徐々に奥へと触手を広げていく。抵抗する腸壁は異物を排除しようと強烈に締まり、無理に広げると観念して開いては、また触手を締め付けた。一進一退の攻防とはこのことか。しかし、すぐにその均衡は破れた。
 こりっとした箇所に触れて、今までとの違和感に首を傾げる。

「ア――ッ!」

 男の声の調子も、何故だか変わった。苦しそうなだけでなく、泣き出しそうな感じだ。どんどんという音は、男が床を叩いているからか。

「分かったみたいだな、そこが前立腺だ」
「前立腺?」
「要するに男のエロイとこってことだ」

 大雑把な説明に、はぁと頷く。もう一度つるつると撫でると、触手の前で萎えていたペニスが持ち上がりかけていた。

「うわ! ペニスがぷるぷるしてる!」
「だいじょーぶ、まだ完全に勃起してねぇから。それより前立腺を圧し潰したり、撫でたりしてみな。それがメスイキに繋がるから」

 部屋を汚されるのが嫌な一心で、前立腺と教えられた部分を、丸めた触手でこりこりと押し潰す。

「はっ、ああ、んっやめ、くれ――っ」

 先程よりも掠れた声が、制止を懇願してきた。これまでと異なる敬語でのお願いに、びくりと、触手の動きを止めてしまう。

「やめてくれって言ってますよ?」
「馬鹿、お前、それは続けろってことだ。かなりイイってことだぞ!」
「人間の言葉は難しいなぁ……」

 ならばと、前立腺を潰す作業に戻る。緊張で触手が膨らむと、ぎちりと内壁が押し広がって、男の鼻を抜けた声が響いた。

「ふ、ふぁ、あっ」
「そのナカで触手を動かすのは難しいだろ? 体液を出して、スムーズにしてみな」
「くっ、我が体液がこんなことに使われるなんて……これがエロなのか。これがエロの代償なのか!?」

 しかし、センパイの言葉通り、水分がない状態では触手が動かしにくい。動かせなければ仕事は終わらない。埋まった部分から体液を滲ませて、ぐちょぐちょと擦り付ける。途端に男の反応が代わり、びくっと太腿の筋肉が緊張した。

「ぁ――っ、何っ、熱い……っ!」

 あついあついと言いながら男の腰が捻られ、その度に触手で粘膜を抉ってしまう。男が勝手にやっているのだが、勝手のままに男の声は切羽詰まっていった。

「アッ、あ、ああああっ」

 前後に振られだした腰に追従するように、触手もぶらぶら揺れる。暫く同じように慣性の法則の如くぶらぶらしていると、センパイが様子を見てアドバイスしてきた。

「小癪にも刺激を逃がそうとしてるんだな。お前の体液は濃いって評判だから、媚薬効果が高いのかもな。腰を他の触手で抑えてやって、無理矢理固定して突いてやると喜ぶぞ」
「ぐぬぅ、媚薬効果が高いなど、屈辱……」

 ならばと、他の触手を伸ばして、するりと男の腰に巻き付ける。太腿に回して拘束すると、がくがくと揺れていた動きが止まった。人間の力はさして強くはないらしく、押さえつけるのに苦労はしない。

 下半身を留めたまま、どすどすどすと前立腺を叩く。すると、狂ったような声が床を隔てた向こう側から聞こえてきた。

「あっ、ア、アア、だめだっ、——っ」

 声が途切れたかと思えば、男の筋肉に力が入り、びくっびくっと腰が跳ね上がろうとする。慌てて抑えつけたものの、先程とは違い跳ねる動作の全てを留めることは出来なかった。

「す、すごい力だ。それに触手がめちゃくちゃに締め付けられて痛い! 痛いですセンパイ!」
「快感の反動だから、理性で制御できない反応なんだろうなぁ。ぎゅうぎゅう尻穴を締めてやがる。お前、すごいぞ。これがメスイキってやつだ」

 触手に纏わりつく肉の力が強く、あまりに痛すぎて、自然と体液が滲み出てしまう。ぬちゃと肉壁に付着すると、ますます男は不自由な体を前後に揺すり、暴れ回ろうとした。負けないように触手に力を込める。反動で逃げないようにと教え込みながら、前立腺を擦り上げて肉の奥を突いた。

「ひ、ぃ――っああぁあ!」

 空を蹴った足が虚しく揺れている。赤く熟れたアナルをひくひくとさせながら、どうやらまたメスイキしたらしい。バタバタ動く足を見て、こんな状態を見て、触手が興奮していると思う人間とは一体……という謎にまた気付いてしまった。下から見上げていれば、ただただ性器と足を露出しただけの滑稽な姿である。こんな姿を見て欲情すると思われているなどとは、俄かに信じがたい。触手たちに対する偏見だ。
 それに尻に突っ込んだままの触手の所為で、肩と呼べる器官も疲れてきた。

「センパイ、だいぶ腕が疲れてきました……」
「最初はなぁ。しょうがないよなぁ。長時間、上に向かって触手伸ばすことなんて、殆どないしな。そのうち慣れるから、頑張ってみな。あともう少しだけイかせたら、お前の仕事は終わりだから」

 そう言われてしまえば、今更下ろすも出来ない。あと少しメスイキさせればいいのなら、手早く済ませてしまおう。

 侵入したままの触手で腹側の肉をぐちゃぐちゃと抉る。前立腺ごと、くすぐるように先端を蠢かせれば、男が絶叫した。腹筋が痙攣し、強い力で肉筒が狭まる。逃れようと蹴った脚は、何を蹴ることも出来ずにその時を待つ。不思議なことに、足の動きだけで男の肉体が極度の緊張に押し上げられていると分かった。

「イぐっ、い、イイ゛~~~~っ」

 ぷしゃああっと響いた音に、びっくりしてよくよく観察すれば、ペニスから透明な液体を吹き上げていた。床を汚されたのに、怒りを覚える隙も無い。

「何だこれ! 何だこれ!?」
「おお、すごいな、潮吹きってやつだ。やっぱりお前、センスあるなぁ」

 がくっ、がくっ。筋肉の働きではなく、腰も脚も条件反射で跳ねている。衝動が治まらないのか、喉から絞り出すような嬌声が止むことはない。その間、尻の中に入れた触手は、生暖かい肉に包まれて、きゅ、きゅ、と締め上げられていた。

「うわぁ、ぐねぐねしてる」

 気持ち悪くて触手を抜こうとすれば、引き攣った悲鳴が上がり、更に強く圧迫される。それが嫌で再び元の位置に戻せば、爛れたように熱い肉が引っ切り無しに蠢いて絡みついてきた。

「お、おぉ、お前、結構、何だ、結果として容赦ない動きになってて良いぞ!」
「えぇ……?」
「あ、ああっ、あああっ」

 断続的に上がる声と共に、触手を包み込んだ肉筒が奥へ奥へと導いてくる。仕方がないのでお望みに応えて最奥まで触手を突っ込むと、突き当りで妙なところに触れた。ひぐっと上がった悲鳴と共に、また腰が痙攣している。両脚はもう役に立たないのか、抉られるアナルの横でぶらぶらと揺れるだけだ。

「何か、触手の先のところが、ぱくぱくしてます」
「ん? ああ、結腸口かな……そこに触手の先を突っ込んでやったら気持ちよくなるんだけど、よっぽど快楽を与えてからじゃないと駄目ってのはお約束のとこだ。通常は痛いからな」
「じゃあ、いきなりここを突いてやったら駄目なんですか?」

 センパイは禁忌に触れたかの如く、真剣に身体を横に振る。

「駄目だ! 前戯もメスイキもなしにいきなり結腸責めとか、情緒に欠けるだろ! メスイキし続けてグズグズになってからの追い打ちが結腸責めだ! このセオリーは守れ!」
「しかし、なんと今なら……?」

 センパイは重々しく許可した。

「やれ」

 言葉と同時に、ごぽりと結腸を無理矢理に割り開く。

「ひッ―――」

 動きが止まった男の肉体は、次の瞬間に今までで一番激しい反応を見せた。やめろ、いやだと、言葉にならないまま喚き、ぴゅうぴゅうと潮を撒き散らす。壊れた人形みたいで驚いたが、ぐねぐねと動く足の指は面白いなと思った。
 男の悲鳴は暫く続き、やがてがくりと糸が切れたように脱力する。するとセンパイが「よくやったぞ!」と褒め、触手を抜くように指示した。

 二人がかりで気絶したような男の足と腰を支え、地上へと押し出して穴から抜けさせる。上の階の適当なところに放り投げた。これでどうやら仕事は終わりらしい。

「これで終わりですか?」
「そうだ、地下一階はエロトラップダンジョンの小手先調べってところだからな。お前の責めが終わって、更に苛烈な責めへと向かう……つまり、負債を抱えたまま、上階に行くんだ!」
「なるほど。ということはセンパイの出番もきますね」

 そうだとセンパイが鼻高々に頷いたとき、穴の上からきらりと光るものが見えた。

「くそ、こんな目に遭わせやがって……! 食らいやがれ!」

 男の掠れた怒声と共に、天井から、きらりと光る槍先が振り下ろされる。それはまっすぐに、センパイに向かっていた。

「センパイイイイイ!」

 センパイは全身で見開いて槍先を見つめ、ギシャアアアと悲鳴を上げた。



「という風に、最後に仕返しされる場合もあるから気を付けてな」

 槍で刺されたセンパイは腹を押さえて、摩っている。センパイの体液も、傷を治すためにかなり使われてしまっただろう。体積も少し小さくなってしまったように見える。

「特に、大切な間柄の人間がエロトラップダンジョンに挑んで帰ってこなくなってよー、それを探しに来た人間っていうのは攻撃性が高いんだよなぁ。帰らねー奴らも帰っていいぞーと放り出しても何だかんだで望んで残ってるんだから、結構悪くねぇと思うんだけどなぁ」

 センパイの愚痴を聞き、はぁと溜息をつく。

「期待に応えているだけなのに、人間というのは摩訶不思議な生き物ですね」

 センパイはずずず、と身体を引き摺った。まだ痛みがあるのか、動きはのろのろしている。

「じゃあ、俺は四階に行くわ。これから頑張ってな。何かわかんないことがあれば、呼んでくれれば地下に来るから」
「はい、ありがとうございます」

 男もセンパイもいなくなると、部屋の中は静かになる。暗くじめっとした空間で身体を広げてみると、妙に落ち着いた。追い出された故郷に少しばかり似ている。

 ここにいられるのなら、この仕事もそんなに悪くないかもしれない。
 うとうとと眠り始めたとき、塔の一階の扉が開かれる音が響いた。

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