【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

文字の大きさ
36 / 73

36 厳しい訓練 若いパーティー

しおりを挟む
「あの、大丈夫ですか? ここより上は更に寒くなりますし、その装備では難しくはありませんか?」

「だだだだ大丈夫だ! おれおれおれ俺達は慣れてるからな!」

 かじかんでいますが、本当に大丈夫なのでしょうか。
 しかしこれ以上言うとまた怒られそうですし……まぁ危険だと思ったら戻るでしょう。

 わたくし達は早々に片づけを終わらせ、足早にキャンプ地を離れました。
 あまりノンビリしていられませんし、まだ先は長いのですから。
 

「なぁ、アイツら大丈夫だと思うか?」

「あの装備ではな。途中で戻るだろう」

「僕もそう思う」

「同じく~」

わたくしもです」

 全員の意見が一致しました。
 わたくし達よりも若いパーティーですが、変な意地など張らずに素直になって欲しいモノです。
 山はふざけて登る物では無いのですから。

 わたくし達は列を作って規則正しく進んでいますが、そろそろ木が無くなり小さな石だらけになって来ました。
 そろそろ警戒を強めなくてはいけません。
 こういう岩場では物陰に隠れて魔物が襲ってくるのです。

「止まれマット。なにかいる」

 レッドが気配を感じた様です。
 円陣を組み武器を構えますが、恐らくは進行方向左の大きな岩の陰でしょう。

「フラン、頼む」

「分かりました。エアネット・フィーディング!」

 岩へ向けて魔法を放ちます。
 岩を風の網が包み込み、そのまま網が縮んで岩を破壊しました。
 予想通り岩陰に魔物が潜んでいた様です。すっかり潰されて原型が分かりませんが。

「……よし、他には居ない様だ。行こう」

 列を戻し、登山を再開します。




 しばらくは問題もなく進めましたが、何やら見覚えの無い地形になって来ました。
 以前来た時とは変わっていますね。地図でも……はい、やはり変わっています。

 目の前には大きな亀裂があり、わたくし達の行く手を塞ぎます。
 周囲を見回しますが、亀裂の端は随分と遠いようですね。
 このまま迂回をするか、何とかわたる手段を考えるか……はてさて。

「向こう岸までは10メートル位か? 俺はジャンプしていけるが、お前達はどうする?」

「レッドにぃが飛ぶんなら俺も飛ぶぜ!」

「じゃあロープを持って行って。僕はそれを渡るよ」

「私も~」

「ではわたくしも」

「お前は飛べ」

「レッドはわたくしにだけ厳しくありませんか?」

「訓練だ、く・ん・れ・ん」

 そう言われると何も言えなくなるのですが……まあ大丈夫でしょう。
 ロープを持ってレッドとマットが亀裂を飛び越えました。
 2人とも随分と簡単に飛んでくれますね。わたくしの身にもなってください。

 ロビーとケイがロープを固定し、バランスを取りながら渡り終えます。
 わたくしがロープのこちら側を外すと、レッドとマットがロープを回収します。
 さて、行くとしましょうか。

 風の魔法を纏って……。

「魔法は使うな」

 本当に厳しすぎませんか?
 少し下がって助走をつけ、かろうじて向こう岸に足が付きました。
 が、足元の岩場が崩れます。あ。

「おっと。大丈夫?」

 落ちる前にロビーが手を引いてくれました。
 何とか両足が地面について、ほっと一安心します。
 いえ、本当に安心しました。

「魔法は上手くなったが、身体能力はまだまだだな」

魔法使いウィザード寄りなので、そこら辺を加味していただけると助かるのですが」

「加味しない」
 
 本当に手加減がありません。
 
 

 
「よし、今日はここでキャンプを張ろう」

 そろそろ薄暗くなってきたので、手頃な平地を見つけてキャンプを張ります。
 薄くですが雪が積もっており、多少の雪かきをしないといけません。

 テントを張って食事も終わり、ゆっくりと白湯を飲んでいます。
 ……はて、何かを忘れているような気がしますが、何だったでしょうか。

「思い出せないという事は、大したことでは無いのでしょう」

「どうしたの~? 忘れ物~?」

「いえ、何かを忘れているような気がしたのですが、思い出せなくて」

「あ~、私もそうなの~。何だったっけ~?」

 2人で頭を悩ましていますが……う~ん。
 しかし夜更かしをするわけにも行きませんので、さっさと寝る事にしましょう。

 そして夜遅く、外が騒がしくなりました。

「「あ」」

 わたくしもケイも思い出しました。
 あのパーティーの事。まさかこんなに暗くなるまで移動していたのでしょうか。
 自殺行為に当たります。
 
「おいお前ら、こんな時間まで移動していたのか?」

 どうやらレッドが業を煮やしたようです。
 それにマットもロビーもテントから出て来ています。
 わたくしとケイはテントから顔だけ出して様子を見ています。

「だ、だってよ、お、俺達は俺達のペースで進むんだよ!」

「こんなくらい時間に進んで何が自分のペースだ。自殺行為も良い所だぞ!」

 黙りこくって何も言えなくなりましたね。
 どうしてそんなに危険な事をするのでしょうか。
 冒険者ならば安全を考えて、最大限の対策を取らなくてはいけないのに。

「お前達は明日山を降りろ。これ以上お前たちに邪魔をされてはたまらん」

「そ、そんな事はお前に命令される事じゃないだろ! 俺達は自分で判断できる!」

「なら勝手にしろ。ただし! 次に俺達の邪魔をしたらどうなるか、しっかり考えて行動しろ」
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!

南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」  パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。  王太子は続けて言う。  システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。  突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。  馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。  目指すは西の隣国。  八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。  魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。 「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」  多勢に無勢。  窮地のシスティーナは叫ぶ。 「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」 ■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

悪役令嬢は伝説だったようです

バイオベース
恋愛
「彼女こそが聖女様の生まれ変わり」 王太子ヴァレールはそう高らかに宣言し、侯爵令嬢ティアーヌに婚約破棄を言い渡した。 聖女の生まれ変わりという、伝説の治癒魔術を使う平民の少女を抱きながら。 しかしそれを見るティアーヌの目は冷ややかだった。 (それ、私なんですけど……) 200年前に国を救い、伝説となった『聖女さま』。 ティアーヌこそがその転生者だったのだが。

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

処理中です...