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36 厳しい訓練 若いパーティー

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「あの、大丈夫ですか? ここより上は更に寒くなりますし、その装備では難しくはありませんか?」

「だだだだ大丈夫だ! おれおれおれ俺達は慣れてるからな!」

 かじかんでいますが、本当に大丈夫なのでしょうか。
 しかしこれ以上言うとまた怒られそうですし……まぁ危険だと思ったら戻るでしょう。

 わたくし達は早々に片づけを終わらせ、足早にキャンプ地を離れました。
 あまりノンビリしていられませんし、まだ先は長いのですから。
 

「なぁ、アイツら大丈夫だと思うか?」

「あの装備ではな。途中で戻るだろう」

「僕もそう思う」

「同じく~」

わたくしもです」

 全員の意見が一致しました。
 わたくし達よりも若いパーティーですが、変な意地など張らずに素直になって欲しいモノです。
 山はふざけて登る物では無いのですから。

 わたくし達は列を作って規則正しく進んでいますが、そろそろ木が無くなり小さな石だらけになって来ました。
 そろそろ警戒を強めなくてはいけません。
 こういう岩場では物陰に隠れて魔物が襲ってくるのです。

「止まれマット。なにかいる」

 レッドが気配を感じた様です。
 円陣を組み武器を構えますが、恐らくは進行方向左の大きな岩の陰でしょう。

「フラン、頼む」

「分かりました。エアネット・フィーディング!」

 岩へ向けて魔法を放ちます。
 岩を風の網が包み込み、そのまま網が縮んで岩を破壊しました。
 予想通り岩陰に魔物が潜んでいた様です。すっかり潰されて原型が分かりませんが。

「……よし、他には居ない様だ。行こう」

 列を戻し、登山を再開します。




 しばらくは問題もなく進めましたが、何やら見覚えの無い地形になって来ました。
 以前来た時とは変わっていますね。地図でも……はい、やはり変わっています。

 目の前には大きな亀裂があり、わたくし達の行く手を塞ぎます。
 周囲を見回しますが、亀裂の端は随分と遠いようですね。
 このまま迂回をするか、何とかわたる手段を考えるか……はてさて。

「向こう岸までは10メートル位か? 俺はジャンプしていけるが、お前達はどうする?」

「レッドにぃが飛ぶんなら俺も飛ぶぜ!」

「じゃあロープを持って行って。僕はそれを渡るよ」

「私も~」

「ではわたくしも」

「お前は飛べ」

「レッドはわたくしにだけ厳しくありませんか?」

「訓練だ、く・ん・れ・ん」

 そう言われると何も言えなくなるのですが……まあ大丈夫でしょう。
 ロープを持ってレッドとマットが亀裂を飛び越えました。
 2人とも随分と簡単に飛んでくれますね。わたくしの身にもなってください。

 ロビーとケイがロープを固定し、バランスを取りながら渡り終えます。
 わたくしがロープのこちら側を外すと、レッドとマットがロープを回収します。
 さて、行くとしましょうか。

 風の魔法を纏って……。

「魔法は使うな」

 本当に厳しすぎませんか?
 少し下がって助走をつけ、かろうじて向こう岸に足が付きました。
 が、足元の岩場が崩れます。あ。

「おっと。大丈夫?」

 落ちる前にロビーが手を引いてくれました。
 何とか両足が地面について、ほっと一安心します。
 いえ、本当に安心しました。

「魔法は上手くなったが、身体能力はまだまだだな」

魔法使いウィザード寄りなので、そこら辺を加味していただけると助かるのですが」

「加味しない」
 
 本当に手加減がありません。
 
 

 
「よし、今日はここでキャンプを張ろう」

 そろそろ薄暗くなってきたので、手頃な平地を見つけてキャンプを張ります。
 薄くですが雪が積もっており、多少の雪かきをしないといけません。

 テントを張って食事も終わり、ゆっくりと白湯を飲んでいます。
 ……はて、何かを忘れているような気がしますが、何だったでしょうか。

「思い出せないという事は、大したことでは無いのでしょう」

「どうしたの~? 忘れ物~?」

「いえ、何かを忘れているような気がしたのですが、思い出せなくて」

「あ~、私もそうなの~。何だったっけ~?」

 2人で頭を悩ましていますが……う~ん。
 しかし夜更かしをするわけにも行きませんので、さっさと寝る事にしましょう。

 そして夜遅く、外が騒がしくなりました。

「「あ」」

 わたくしもケイも思い出しました。
 あのパーティーの事。まさかこんなに暗くなるまで移動していたのでしょうか。
 自殺行為に当たります。
 
「おいお前ら、こんな時間まで移動していたのか?」

 どうやらレッドが業を煮やしたようです。
 それにマットもロビーもテントから出て来ています。
 わたくしとケイはテントから顔だけ出して様子を見ています。

「だ、だってよ、お、俺達は俺達のペースで進むんだよ!」

「こんなくらい時間に進んで何が自分のペースだ。自殺行為も良い所だぞ!」

 黙りこくって何も言えなくなりましたね。
 どうしてそんなに危険な事をするのでしょうか。
 冒険者ならば安全を考えて、最大限の対策を取らなくてはいけないのに。

「お前達は明日山を降りろ。これ以上お前たちに邪魔をされてはたまらん」

「そ、そんな事はお前に命令される事じゃないだろ! 俺達は自分で判断できる!」

「なら勝手にしろ。ただし! 次に俺達の邪魔をしたらどうなるか、しっかり考えて行動しろ」
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