【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

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69 新種 スキル

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 上空に浮かぶ扉を見ると、沢山の赤い悪魔がこちらを覗き込んでいました。
 あれを……全て倒さないといけないのですね。
 沢山の悪魔が雨の様に落ちてきます。さらにコガネムシの一団が追加されました。

「フラン! まずは虫を何とかしよう!」

「了解しました」
 
 とはいえ、先輩勇者たちの戦いを見ていましたから、対処方法は分かっています。
 その上でアレンジを加えましょう。
 なぜか知りませんが、先輩方は範囲攻撃を行っていませんでした。
 列を組んで飛んでくるのですから、炎で焼き尽くせば良いのではありませんか?

 なので炎獄えんごくの魔法を飛んでくる虫を目がけて放出します!

「燃え尽きなさい!」

 巨大な炎の柱が伸びて虫の列を包み込みます。
 上手くいったようですね。このまま飛んでくる虫を燃やし尽くして……!?

 炎の中から虫が飛び出してきました。

「フラン! こいつ等は火が効かないみたいだ!」

「その様ですね! もしくは魔法への耐性が強いのかもしれません!」

 なるほど、先輩たちが範囲魔法を使わなかった訳ですね、これではまとめて倒す事は出来ません。
 仕方なく先輩たちと同じ戦いをしましたが、赤い悪魔たちも地面に降り立ちました。
 ……同時進行ですか。

「フラン、【先見の明せんけんのめい】は使える?」

「いえ全く。【後の先ごのせん】はどうですか?」

「全く使えない」

 そうですか……やはり妨害が始まったようですね。
 スキル無しでやるしかありません。

「坊主たち! ワシらもそっちに行くから少しだけ辛抱するのじゃ!」

「俺達ももうすぐ終わる! 少しだけ我慢しろ!」

 祖父勇者と父勇者が虫の始末を終えようとしてます。
 ええ、持ちこたえて見せますとも!




 どれだけの時間が過ぎたでしょう。
 赤い悪魔は個々の能力はそれほどでもありませんが、あまりにも数が多すぎます。
 全て倒しきったのは、夜を過ぎて、朝日が昇り始める頃でした。

「ムリ……もう無理……」

「やっと、やっと終わったのですね」

 わたくしとロビーは地面に寝そべっています。
 精魂尽き果てて、魔力も尽きました。
 もう、動けま……せん。

「残念だが、まだ休ませてはくれないようだぞ」

 また悪魔でしょうか……上空の扉を見ると、そこからは黒い体をしたヒトがゆっくりと降りてきました。
 何とか立ち上がり、迎撃態勢を取りますが……黒いヒトは背中に小さな翼が生え、その顔には巨大な目が一つあるだけでした。
 
 小さな黒い翼を広げ、地面に降り立ったそれは、ヒトというにはあまりにもイビツ過ぎました。
 腕も足も関節が一つ多く、全身に細かいトゲが生えています。

「アレは一体何なのでしょうか……?」

「分からん。前の時はあんな奴はおらんかった。ばーさん記憶にあるか?」

「ありませんねぇ。さっきの悪魔の黒いタイプは居ましたが、人間サイズのモノは初めてです」

 なるほど、新種、という訳ですか。
 ならばこの新種がスキルの妨害をしているのでしょうか。

「でも、やるしか無いんだね。幸い他の敵は倒したし、あいつ1体に集中できる。全員でかかれば何とかなるんじゃない?」

「そうですね、6人でかかれば……」

「うむ、そうじゃな」

 それぞれが武器を構え、相手の様子を見ています。
 新種は武器などは持っていないように見えますが、全身からトゲは生えているため注意が必要です。

「ヲ……」

 ……? いま、何か声が聞えたような……。

「ヲマエタチ……ハ ナゼ テイコウ スル」

「喋った!?!?」

「言葉が通じるのですか!?」

「バカな! こんな事は初めてじゃ!」

「親父、これはどういう事だ?」

 みんなが混乱しています。
 異世界の敵がこちらの言葉を理解している……知性があるのは構いませんが、言葉を理解しているという事は、こちらの研究も進んでいるという事です。
 なるほど、それでスキルの妨害が出来たのですね。

「ナゼ、ですって? 侵略されるわけにはいきませんので、抵抗するのは当たり前ではありませんか?」

「テイコウ ハ ムイミ  オトナシク シネ」

 滅茶苦茶です。抵抗するな、死ねですって? 殺されるのにハイそうですかと誰が納得しますか。
 やはり世界が違えば常識も違うのでしょう、言葉は通じても、分かり合う事は無理です。

「死ねと言われて大人しく殺される奴がいるか! お前が死ね!」

 父勇者が襲い掛かります。
 早いですね、疲れているにもかかわらず、その速度は落ちてはいません。
 これは終わったかもしれません。

 父勇者が弾き飛ばされました。
 !? なにが起きたのですか!

「貴様……今の……まさか今のは!」

 新種が腕のトゲを伸ばしていますが、今の挙動は間違いなく……勇者のスキル【後の先ごのせん】です。
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