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PAGE1 原作-創作
1話
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みんなは「パラレルワールド」というのをご存じだろうか。もしあの時こうしていていたらーなど、つまりもしもの別世界である。では、もし、みんながパラレルワールドに行けるとしたら、行きたい世界はあるか?
そんなパラレルワールドや、アニメ、ゲーム、おとぎ話、過去の世界に繋がる時空の狭間にある空間、そこに、店はある。
{万事屋霧崎店}と書かれた看板が掲げられている和風の家。入口は引き戸。なかは板張りで、本棚が沢山ある。その奥に進むと、店主専用のカウンターが一つ。そこにいるのは一人の青年だ。
「…平和だ。」
カウンターにうつぶせになりながらつぶやく。平和、いや、簡単に言えば単純に暇なのだ。
「本棚の整理でもするか…」
用事がないのに腰を上げるのはだるいが最近めんどくさがったせいで、本棚がホコリにまみれてきている。ということで重い腰を持ち上げ、本棚に向かった、その時だった。入口の引き戸が何かの弾幕で吹っ飛ばされたのは。
「ここが、噂の何でも屋さんですか?」
吹っ飛ばされた出入口の向こうには、息を切らしながらたたずむ少女が一人。ただし見た感じただの少女じゃない。
(魔法使い?)
そう、でかい帽子に箒。その少女は魔法使いのような恰好をしていた。
お得意の弾幕でこじ開けた入口。その向こうには、一人の少年が本棚に向かって本を掲げていた。しまうところだったのだろうか。その状態で固まってしまっている。
「…みんなのハートにズッキュン!魔法少女、ナミカだよ!」
「…扉の修理代いただきます。」
「え…」
困った。私のお財布には今、板チョコを一枚買えるくらいのお金しかない…。
「…なるほど。それで私に依頼を。」
「そうなんです。」
今回来た魔法少女の依頼をまとめてみる。
彼女はナミカというアニメ界の魔法使いキャラらしい。
先日、彼女がナミカを、そして彼女のアニメの原作者と話をしたとき。
「元気がなくて…顔が暗かったんです。」
理由をナミカが問いただしたところ、彼女のアニメの二次創作者がいるんだという。
「でも、二次創作って良いんじゃないの?」
「原作者さんに許可を取っているなら良いんです。でも今回のは、許可もなしに勝手に作られたものらしくて…。」
しかも原作者さんが問いただそうと二次創作者のSNSアカウントを調べて質問したところ直後にログアウトし、雲隠れしたという。
「要件は分かった。だが一つ問題がある。」
「何ですか?」
「…あんたら住んでる次元違うのにどうやって会話してるんだ?」
「あんたの原作者は科学者かコンピュータ技術者かな?」
どうやら彼女は原作者によってAI化されているため人工知能を持っているという。あくまで原作者のPC内でのみだが。
「じゃあ、原作者さんに話を通したいから事前に僕が行くことを伝えといてくれ。」
「分かった!」
そういうとナミカは元気に出口から出て行った。
「…あ、出入口の修理代もらい忘れた…。」
原作者さんに払ってもらおう。
スーツは嫌いだ。ズボンは太ももがぴちぴち、背中はシャキッとのばしていないと筋が痛くなる。つまり、ダラダラできないのだ。
今、僕、霧崎はワールドナンバー118、{real world}にいる。一応僕の生まれ故郷の世界だ。この世界では25歳を過ぎた男女は、スーツを着て、会社に行く人が多いという。考えただけで無理すぎて鳥肌が立つ。
「えーっと…東京都〇〇区…。」
ナミカがくれたマップをもとに原作者さんの家に向かう。意外と早く見つかった。
「…立派なマンションだこと…」
そこは15階建てのマンションだった。教えてもらった部屋番号のインターホンを押すとしばらくして若い男性の声で返事が聞こえた。
「万事屋の霧崎という者ですが…」
すると、インターホンの向こうの自動ドアが開き、そこには
「お待ちしておりました、霧崎さん。私がマスターです。」
「…ホスト?」
クラブにいそうなイケメンがそこにはいた。
「そんなのありすか…。」
彼、マスターの名前は原山奏斗(はらやま かなと)職業がなんと、ホスト兼アニメ制作者だという。この世界でこんな兼業者はかなり珍しい。
「てことはかなり稼いでたり?」
「そこは秘密で。」
「あ、マスター、何でも屋さん来ましたか?」
突如、近くにあったパソコン画面の電源が入り、ナミカが姿を現す。
「すげぇ…。」
「ナミカはこの家にあるパソコンなら全部自由に移動できるんですよ。まあ、当たり前といえば当たり前かもしれませんが。」
「はぇぇ…。」
「さて、本題なんですが…。」
「あ、それはナミカさんからきいてるから大丈夫ですよ。」
「そうでしたか…。」
「ところで…。犯人の特定はできているんですか?」
「あ、それは私が今やっています。」
とナミカが手を上げる。
「分かった。特定出来たらまた呼んでいただけますか?」
「分かりました。」
とりあえずナミカに犯人特定を任せ、こちらは
「…とりあえず本人のアカウントと話ができるか…。」
「ですね。」
動画配信アプリでその本人のアカウントにチャットを打つとすぐに返信があった。
「あくまで自分が原作者、という設定は崩す気はないみたいですね。」
そう、自分が製作者であることを捻じ曲げる気はなさそうだ。
ここで第二の手段に出る。
「…僕が真の原作者であることを明かしてみましょうか。」
即座に奏斗は動画の生実況を始めた。概要欄に偽物の彼をタグ付けして。
視聴者からは「え、こいつ偽物?」や、「これは通報案件www」などのコメントが並びはじめた。
変化が起きたのはその時だった。
「嘘だろ⁈」
その偽物のアカウントが消えたのだ。表示には「〇〇さんが自主退会しました。」の表示。
「捕まえらんなくなったか…でも犯人も消えたし一件落着か?」
「そうでもなさそうです。」
ナミカが画面から声をかけてきた。
「なんでだ?」
「先ほど退会したデータを追いかけたのですが…また別のサーバー、アカウントでログインしてます。しかもまたマスターを偽って。」
あるアカウント画面を見せてくる。先ほどのとよく似たアカウントが表示されていた。
「また振り出しかよ…。クソッ」
「いえ、そうでもなさそうですよ。」
「どういうことだ?」
聞くと、彼女は魔法少女スマイルで言ってきた。
「犯人のPC特定、完了しました。あとは霧崎さん、あなたの説得次第です。」
ナミカが特定したコンピューターの場所に向かう。そこは…。
「…一軒家、か。」
古びた一階建ての家。そっと近づき、窓からのぞきこむ。近づくにつれ家から怒号が聞こえてきた。年老いた女性の声だ。窓にはカーテンがかかってて見えなかった。
「しゃあない…。」
インターホンを押す。すると中から60歳くらいくらいだろうか、にしてはしわが寄ったような(我ながら失礼な言い方だと思う)そして疲れ切ったような顔をした女性が出てきた。
「えっと…どなたでしょうか?」
「えっとですね…私ここの主人の…」
ここからが早かった。
「まあ!あのあほ息子のお知り合いさん?良かったわ!もう30にもなるのにずっとひきこもってパソコンに向かいっぱなしで…。そこの奥の部屋にいますの…ガツンと言ってやってくださいな!」
そう言われ半ば強引にその息子の部屋に案内された。そこは…。
「わお…。」
壁はナミカのポスター、その他部屋中ナミカのグッズでいっぱいのいわゆる{オタク部屋}だった。そしてその部屋のすみのパソコンの前に一人の
「女の子?」
「男だよ僕!」
…女の子っぽい自称、男の子が座っていた。
「え、あれが…。」
「驚いたでしょう?もうだらしなく髪伸ばしているせいで男には見えないし…。その癖にろくに手入れしてない肌はツヤツヤ…まるであれじゃ女の子よ。」
「えーと…彼は今年で確か」
「34よ。」
とても34の男性には見えない。というか18か20くらいの女性にしか見えないのだ。
「じゃ、私はさがりますわ。クラスメートさん、あとはお願いしますね。」
そういい、母親は部屋から出てしまった。どうやら完全に同級生と間違われたらしい。
すると、この部屋の主から話を切り出してきた。
「ナミカの原作者の手先でしょ?」
「…。」
「僕がこのアニメをパクッテたから僕を始末しに来たんだよね。」
「理由が分かってるなら話が早い。早急にあなたが作った作品を消して、原作者さんに謝罪をしてくれますよね?」
「…残念だけどそれはできない。」
「なっ…。」
僕は今はいい年して親に頼ってるニートに見えるかもしれない。でも、以前はちゃんと働いてたんだ。でも、絵にかいたようなブラック企業でね…死ぬ前に辞めて、家にこもったんだ。つまらない日々だったよ。ナミカに会うまではね。
僕もまさかアニメの魔法少女に心を救われるとは思わなかったよ。最初はアニメを見たとき「こんなアニメなんて」と思っていたさ。でもなぜか頭の中から離れなくて、つい見てしまうんだ。気が付けば僕はアニメキャラの虜になってしまっていた。それと同時にもっとこのアニメキャラ物語を僕流に作りたい、そして世間に認められたい、と思うようになったんだ。それで今に至るんだ。
「でもよく一文無しでそんなこと続けられましたね。」
「いや作った物語は動画サイトでアップしてるでしょ?あれ視聴回数が一定を超えるとお金もらえるんだ。それを生活の足しにしている。」
「あの、一つ質問して良いですか?」
「なんだい?」
「本当にあなたはアニメキャラのナミカさんを好きですか?」
「そんなの当たり前d」
「嘘をつかないでください。」
「…どういうこと?」
「あなたが本当にあのキャラを好きなら違法な二次創作なんかできないはずです。」
「いやでm」
「あなたはじゃあ恋人ができたとして恋人を風俗やそういうたぐいのところにいれてお金を稼ごうとしますか?」
「…」
「あなたが今やってるのはそういうことですよ。好きなキャラをダシに使って金を稼ぐ。最低ですよ。」
ここまで言い切ると彼は自分が犯した過ちを理解したのか、涙をこぼしながら、膝から崩れ落ちた。
「僕は…どうしたら…。」
「あなたは企業の厳しさを盾に甘えすぎた。よく反省して、更生してみてはどうですか。あとこれ、原作者さんの連絡先です。では、失礼します。」
そう言い放ち、メモを置き、部屋を出る、扉の向こうからは、今まで母親が聞いていただろうパソコンのキーボードを叩く音は聞こえず、嗚咽だけが響いていた。
~二日後~
あれから二日。ナミカからも原山からも音沙汰がない。パクった犯人からもなんもないし、あの世界のニュースで関連してそうな記事もない。
「…一件落着、で良いのかな。」
そうつぶやき、読みかけの本を開こうとしたその瞬間だった。ガムテープで仮止めしていた玄関扉が勢いよくはじけ飛び、人影が三つ入ってきた。原山、ナミカ、二次創作者、の三人だった。
「えーっと…。」
「霧崎さん、ご協力ありがとうありがとうございました。」
そう言いながら原山が手を差し伸べてきたので握手をする。
「えと…それで彼はどうするんですか?パクリ作者さん…。」
すると、本人が照れたように言う。
「実は…協力することになったんです…。ナミカさんの作品制作に。」
「いやぁ。パクりにしてはかなり良い作品を制作してましたから。話した結果、協力してもらえることになったからね。」
「私にしてはちょっと複雑な心情だけど…。まあ、良い作品書いてもらえるならよしとしましょう。」
…どうやら一件落着ということでよさそうだ。
「あ、そうだ…。」
これを忘れていた。
「玄関扉の修理費、どなたでも良いので払ってもらえますか?」
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そんなパラレルワールドや、アニメ、ゲーム、おとぎ話、過去の世界に繋がる時空の狭間にある空間、そこに、店はある。
{万事屋霧崎店}と書かれた看板が掲げられている和風の家。入口は引き戸。なかは板張りで、本棚が沢山ある。その奥に進むと、店主専用のカウンターが一つ。そこにいるのは一人の青年だ。
「…平和だ。」
カウンターにうつぶせになりながらつぶやく。平和、いや、簡単に言えば単純に暇なのだ。
「本棚の整理でもするか…」
用事がないのに腰を上げるのはだるいが最近めんどくさがったせいで、本棚がホコリにまみれてきている。ということで重い腰を持ち上げ、本棚に向かった、その時だった。入口の引き戸が何かの弾幕で吹っ飛ばされたのは。
「ここが、噂の何でも屋さんですか?」
吹っ飛ばされた出入口の向こうには、息を切らしながらたたずむ少女が一人。ただし見た感じただの少女じゃない。
(魔法使い?)
そう、でかい帽子に箒。その少女は魔法使いのような恰好をしていた。
お得意の弾幕でこじ開けた入口。その向こうには、一人の少年が本棚に向かって本を掲げていた。しまうところだったのだろうか。その状態で固まってしまっている。
「…みんなのハートにズッキュン!魔法少女、ナミカだよ!」
「…扉の修理代いただきます。」
「え…」
困った。私のお財布には今、板チョコを一枚買えるくらいのお金しかない…。
「…なるほど。それで私に依頼を。」
「そうなんです。」
今回来た魔法少女の依頼をまとめてみる。
彼女はナミカというアニメ界の魔法使いキャラらしい。
先日、彼女がナミカを、そして彼女のアニメの原作者と話をしたとき。
「元気がなくて…顔が暗かったんです。」
理由をナミカが問いただしたところ、彼女のアニメの二次創作者がいるんだという。
「でも、二次創作って良いんじゃないの?」
「原作者さんに許可を取っているなら良いんです。でも今回のは、許可もなしに勝手に作られたものらしくて…。」
しかも原作者さんが問いただそうと二次創作者のSNSアカウントを調べて質問したところ直後にログアウトし、雲隠れしたという。
「要件は分かった。だが一つ問題がある。」
「何ですか?」
「…あんたら住んでる次元違うのにどうやって会話してるんだ?」
「あんたの原作者は科学者かコンピュータ技術者かな?」
どうやら彼女は原作者によってAI化されているため人工知能を持っているという。あくまで原作者のPC内でのみだが。
「じゃあ、原作者さんに話を通したいから事前に僕が行くことを伝えといてくれ。」
「分かった!」
そういうとナミカは元気に出口から出て行った。
「…あ、出入口の修理代もらい忘れた…。」
原作者さんに払ってもらおう。
スーツは嫌いだ。ズボンは太ももがぴちぴち、背中はシャキッとのばしていないと筋が痛くなる。つまり、ダラダラできないのだ。
今、僕、霧崎はワールドナンバー118、{real world}にいる。一応僕の生まれ故郷の世界だ。この世界では25歳を過ぎた男女は、スーツを着て、会社に行く人が多いという。考えただけで無理すぎて鳥肌が立つ。
「えーっと…東京都〇〇区…。」
ナミカがくれたマップをもとに原作者さんの家に向かう。意外と早く見つかった。
「…立派なマンションだこと…」
そこは15階建てのマンションだった。教えてもらった部屋番号のインターホンを押すとしばらくして若い男性の声で返事が聞こえた。
「万事屋の霧崎という者ですが…」
すると、インターホンの向こうの自動ドアが開き、そこには
「お待ちしておりました、霧崎さん。私がマスターです。」
「…ホスト?」
クラブにいそうなイケメンがそこにはいた。
「そんなのありすか…。」
彼、マスターの名前は原山奏斗(はらやま かなと)職業がなんと、ホスト兼アニメ制作者だという。この世界でこんな兼業者はかなり珍しい。
「てことはかなり稼いでたり?」
「そこは秘密で。」
「あ、マスター、何でも屋さん来ましたか?」
突如、近くにあったパソコン画面の電源が入り、ナミカが姿を現す。
「すげぇ…。」
「ナミカはこの家にあるパソコンなら全部自由に移動できるんですよ。まあ、当たり前といえば当たり前かもしれませんが。」
「はぇぇ…。」
「さて、本題なんですが…。」
「あ、それはナミカさんからきいてるから大丈夫ですよ。」
「そうでしたか…。」
「ところで…。犯人の特定はできているんですか?」
「あ、それは私が今やっています。」
とナミカが手を上げる。
「分かった。特定出来たらまた呼んでいただけますか?」
「分かりました。」
とりあえずナミカに犯人特定を任せ、こちらは
「…とりあえず本人のアカウントと話ができるか…。」
「ですね。」
動画配信アプリでその本人のアカウントにチャットを打つとすぐに返信があった。
「あくまで自分が原作者、という設定は崩す気はないみたいですね。」
そう、自分が製作者であることを捻じ曲げる気はなさそうだ。
ここで第二の手段に出る。
「…僕が真の原作者であることを明かしてみましょうか。」
即座に奏斗は動画の生実況を始めた。概要欄に偽物の彼をタグ付けして。
視聴者からは「え、こいつ偽物?」や、「これは通報案件www」などのコメントが並びはじめた。
変化が起きたのはその時だった。
「嘘だろ⁈」
その偽物のアカウントが消えたのだ。表示には「〇〇さんが自主退会しました。」の表示。
「捕まえらんなくなったか…でも犯人も消えたし一件落着か?」
「そうでもなさそうです。」
ナミカが画面から声をかけてきた。
「なんでだ?」
「先ほど退会したデータを追いかけたのですが…また別のサーバー、アカウントでログインしてます。しかもまたマスターを偽って。」
あるアカウント画面を見せてくる。先ほどのとよく似たアカウントが表示されていた。
「また振り出しかよ…。クソッ」
「いえ、そうでもなさそうですよ。」
「どういうことだ?」
聞くと、彼女は魔法少女スマイルで言ってきた。
「犯人のPC特定、完了しました。あとは霧崎さん、あなたの説得次第です。」
ナミカが特定したコンピューターの場所に向かう。そこは…。
「…一軒家、か。」
古びた一階建ての家。そっと近づき、窓からのぞきこむ。近づくにつれ家から怒号が聞こえてきた。年老いた女性の声だ。窓にはカーテンがかかってて見えなかった。
「しゃあない…。」
インターホンを押す。すると中から60歳くらいくらいだろうか、にしてはしわが寄ったような(我ながら失礼な言い方だと思う)そして疲れ切ったような顔をした女性が出てきた。
「えっと…どなたでしょうか?」
「えっとですね…私ここの主人の…」
ここからが早かった。
「まあ!あのあほ息子のお知り合いさん?良かったわ!もう30にもなるのにずっとひきこもってパソコンに向かいっぱなしで…。そこの奥の部屋にいますの…ガツンと言ってやってくださいな!」
そう言われ半ば強引にその息子の部屋に案内された。そこは…。
「わお…。」
壁はナミカのポスター、その他部屋中ナミカのグッズでいっぱいのいわゆる{オタク部屋}だった。そしてその部屋のすみのパソコンの前に一人の
「女の子?」
「男だよ僕!」
…女の子っぽい自称、男の子が座っていた。
「え、あれが…。」
「驚いたでしょう?もうだらしなく髪伸ばしているせいで男には見えないし…。その癖にろくに手入れしてない肌はツヤツヤ…まるであれじゃ女の子よ。」
「えーと…彼は今年で確か」
「34よ。」
とても34の男性には見えない。というか18か20くらいの女性にしか見えないのだ。
「じゃ、私はさがりますわ。クラスメートさん、あとはお願いしますね。」
そういい、母親は部屋から出てしまった。どうやら完全に同級生と間違われたらしい。
すると、この部屋の主から話を切り出してきた。
「ナミカの原作者の手先でしょ?」
「…。」
「僕がこのアニメをパクッテたから僕を始末しに来たんだよね。」
「理由が分かってるなら話が早い。早急にあなたが作った作品を消して、原作者さんに謝罪をしてくれますよね?」
「…残念だけどそれはできない。」
「なっ…。」
僕は今はいい年して親に頼ってるニートに見えるかもしれない。でも、以前はちゃんと働いてたんだ。でも、絵にかいたようなブラック企業でね…死ぬ前に辞めて、家にこもったんだ。つまらない日々だったよ。ナミカに会うまではね。
僕もまさかアニメの魔法少女に心を救われるとは思わなかったよ。最初はアニメを見たとき「こんなアニメなんて」と思っていたさ。でもなぜか頭の中から離れなくて、つい見てしまうんだ。気が付けば僕はアニメキャラの虜になってしまっていた。それと同時にもっとこのアニメキャラ物語を僕流に作りたい、そして世間に認められたい、と思うようになったんだ。それで今に至るんだ。
「でもよく一文無しでそんなこと続けられましたね。」
「いや作った物語は動画サイトでアップしてるでしょ?あれ視聴回数が一定を超えるとお金もらえるんだ。それを生活の足しにしている。」
「あの、一つ質問して良いですか?」
「なんだい?」
「本当にあなたはアニメキャラのナミカさんを好きですか?」
「そんなの当たり前d」
「嘘をつかないでください。」
「…どういうこと?」
「あなたが本当にあのキャラを好きなら違法な二次創作なんかできないはずです。」
「いやでm」
「あなたはじゃあ恋人ができたとして恋人を風俗やそういうたぐいのところにいれてお金を稼ごうとしますか?」
「…」
「あなたが今やってるのはそういうことですよ。好きなキャラをダシに使って金を稼ぐ。最低ですよ。」
ここまで言い切ると彼は自分が犯した過ちを理解したのか、涙をこぼしながら、膝から崩れ落ちた。
「僕は…どうしたら…。」
「あなたは企業の厳しさを盾に甘えすぎた。よく反省して、更生してみてはどうですか。あとこれ、原作者さんの連絡先です。では、失礼します。」
そう言い放ち、メモを置き、部屋を出る、扉の向こうからは、今まで母親が聞いていただろうパソコンのキーボードを叩く音は聞こえず、嗚咽だけが響いていた。
~二日後~
あれから二日。ナミカからも原山からも音沙汰がない。パクった犯人からもなんもないし、あの世界のニュースで関連してそうな記事もない。
「…一件落着、で良いのかな。」
そうつぶやき、読みかけの本を開こうとしたその瞬間だった。ガムテープで仮止めしていた玄関扉が勢いよくはじけ飛び、人影が三つ入ってきた。原山、ナミカ、二次創作者、の三人だった。
「えーっと…。」
「霧崎さん、ご協力ありがとうありがとうございました。」
そう言いながら原山が手を差し伸べてきたので握手をする。
「えと…それで彼はどうするんですか?パクリ作者さん…。」
すると、本人が照れたように言う。
「実は…協力することになったんです…。ナミカさんの作品制作に。」
「いやぁ。パクりにしてはかなり良い作品を制作してましたから。話した結果、協力してもらえることになったからね。」
「私にしてはちょっと複雑な心情だけど…。まあ、良い作品書いてもらえるならよしとしましょう。」
…どうやら一件落着ということでよさそうだ。
「あ、そうだ…。」
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