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第5章 天使の王
第34話
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ゲオンは、何も聞いてこない。
何かを計算高く聞き出そうとか、そういった事も言ってこない。
何も話さずとも、全てを受け入れんとしている。
ベルトルスは、ゲオンの計り知れぬほどの優しさを感じ、心が打ち震えた。そして、自分の事も話そうか。そういう気持ちへと変わっていった。
「ゲオン。あのな……。俺は、元々天使の王だったんだ。」
「えっ!?」
ベルトルスが告げた重大な事柄に、ゲオンの顔が、驚きで、タヌキのように間抜けに変化する。
ベルトルスは、話しはじめた。
「今から4200年以上昔の話だ。」
「よっ……!よんせんにひゃくねんっ!!?」
その時の長さに、ゲオンは、あっけにとられ、目の前の、12歳ほどにしか見えない美しい顔立ちの少年を見つめる。
ベルトルスは心を殺し、無表情だった。
が、その奥に重ねすぎてきた年月の重さと共に、大きくて抑えられないほどの悲しみが存在することが、ゲオンには感じられた。
「4200年よりも前に、俺は、天界で、神と共にいて、ずっと永遠に至福の時に包まれて暮らしていた。天界は、とてつもなく美しく、幸せな場所だった。
俺は、天使たちが暮らす場所で、天使の王だった。
全ての天使たちを見守っていた。天使たちの仕事は、人間の幸せの手伝いをすることなんだ。
天使の王である俺は、天使たちが仕事をスムーズにこなせるように、導いてゆく事をしていた。
それから、たまに攻めてくる魔界の住人から天使たちを守ることも、俺の仕事だった。
俺の強さは、魔界の住人の撃退と、年月をかけ、ダンジョンを攻略し続けていくことで、鍛え上げられたんだ。
天界には、ずっと平和な時が流れ続けていた。
だが、ある時、人間を守護し続けてきた天使たちは、人間の儚くも一瞬の『恋』の美しさに捕らわれた。
そのせいで、自分勝手に振る舞う者まで出てきたんだ。
恋なんていう感情が、美しい天使の精神を汚したと考えた俺は、恋なるものを、心の奥底から憎んだ。
恋なんてものが持ち込まれたからいけないっ!それをなくさねばっ!!
俺は、その恋なるものを天界から排除しようと、ある事をしたんだ。」
そこでベルトルスは、黙り込む。彼の眉間には、皺が寄っていた。
「ある事って?」
ゲオンも、聞かずにはいられなかった。
ベルトルスは、続けてゆく。
「俺は、天使同士でできた赤子たちを『汚らわしい!!』と、強く嫌悪し、人間の永遠の輪廻転生の輪に落としていった。
いや。子供だけじゃなく、恋をした天使たちをも、人間の永遠の輪廻転生の輪に落とし続けていたんだ。
人間の世界は、天使の世界と違って辛いものだ。お前もよく分かっているだろうけどな。」
ベルトルスが、遠く切ない目を、壊れかけた美しい神殿へ向ける。
「ベルトルス。人間は、確かに辛いことが多いし、お前たち天使たちと違い、永遠は無く、すぐに死んじまう弱き生き物だ。
だが、辛さの中にも嬉しさ、喜びの輝きを見出した瞬間、俺たち人間の心は満たされ、輝く。その瞬間が、俺は大好きで、それで今日まで俺は、俺として生きてこれたんだ。
人間は、寿命は短いが、悪かないぜ。」
そこでゲオンはにいっ!と、歯を見せて笑った。
何かを計算高く聞き出そうとか、そういった事も言ってこない。
何も話さずとも、全てを受け入れんとしている。
ベルトルスは、ゲオンの計り知れぬほどの優しさを感じ、心が打ち震えた。そして、自分の事も話そうか。そういう気持ちへと変わっていった。
「ゲオン。あのな……。俺は、元々天使の王だったんだ。」
「えっ!?」
ベルトルスが告げた重大な事柄に、ゲオンの顔が、驚きで、タヌキのように間抜けに変化する。
ベルトルスは、話しはじめた。
「今から4200年以上昔の話だ。」
「よっ……!よんせんにひゃくねんっ!!?」
その時の長さに、ゲオンは、あっけにとられ、目の前の、12歳ほどにしか見えない美しい顔立ちの少年を見つめる。
ベルトルスは心を殺し、無表情だった。
が、その奥に重ねすぎてきた年月の重さと共に、大きくて抑えられないほどの悲しみが存在することが、ゲオンには感じられた。
「4200年よりも前に、俺は、天界で、神と共にいて、ずっと永遠に至福の時に包まれて暮らしていた。天界は、とてつもなく美しく、幸せな場所だった。
俺は、天使たちが暮らす場所で、天使の王だった。
全ての天使たちを見守っていた。天使たちの仕事は、人間の幸せの手伝いをすることなんだ。
天使の王である俺は、天使たちが仕事をスムーズにこなせるように、導いてゆく事をしていた。
それから、たまに攻めてくる魔界の住人から天使たちを守ることも、俺の仕事だった。
俺の強さは、魔界の住人の撃退と、年月をかけ、ダンジョンを攻略し続けていくことで、鍛え上げられたんだ。
天界には、ずっと平和な時が流れ続けていた。
だが、ある時、人間を守護し続けてきた天使たちは、人間の儚くも一瞬の『恋』の美しさに捕らわれた。
そのせいで、自分勝手に振る舞う者まで出てきたんだ。
恋なんていう感情が、美しい天使の精神を汚したと考えた俺は、恋なるものを、心の奥底から憎んだ。
恋なんてものが持ち込まれたからいけないっ!それをなくさねばっ!!
俺は、その恋なるものを天界から排除しようと、ある事をしたんだ。」
そこでベルトルスは、黙り込む。彼の眉間には、皺が寄っていた。
「ある事って?」
ゲオンも、聞かずにはいられなかった。
ベルトルスは、続けてゆく。
「俺は、天使同士でできた赤子たちを『汚らわしい!!』と、強く嫌悪し、人間の永遠の輪廻転生の輪に落としていった。
いや。子供だけじゃなく、恋をした天使たちをも、人間の永遠の輪廻転生の輪に落とし続けていたんだ。
人間の世界は、天使の世界と違って辛いものだ。お前もよく分かっているだろうけどな。」
ベルトルスが、遠く切ない目を、壊れかけた美しい神殿へ向ける。
「ベルトルス。人間は、確かに辛いことが多いし、お前たち天使たちと違い、永遠は無く、すぐに死んじまう弱き生き物だ。
だが、辛さの中にも嬉しさ、喜びの輝きを見出した瞬間、俺たち人間の心は満たされ、輝く。その瞬間が、俺は大好きで、それで今日まで俺は、俺として生きてこれたんだ。
人間は、寿命は短いが、悪かないぜ。」
そこでゲオンはにいっ!と、歯を見せて笑った。
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