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第5章 天使の王
第35話
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ベルトルスは、無言で虚ろな目をしたまま、しばらく黙っていた。
だが、しばらくして、口を開く。
「ゲオン。例えば、だ。例えばお前がずっと死なずに若いままで、4000年以上この地上界で過ごす。そういったことを、考えてみてくれ。」
「えぇ~っと、……俺が、4000年……。つまり1つの文明が生まれてそれが滅びるぐらいの間、か……。
改めて考えてみっと、正直辛いものだな。
沢山の愛する人との別れを経験し続けねばならねぇんだからな。
俺、最初は、何も分からなくて永遠がいいって思っていたけれども、違っていたんだな。
例えばミリアと死に別れたみたいに、悲しくて寂しいことが何度も続く。それをずっと続けてゆくことを考えれば、やっぱり自分で自殺しちまうかな。」
ゲオンは、真面目な表情を浮かべてベルトルスを見た。
「ベルトルス。天使の世界の永遠と、人間界での世界の永遠は、全く違うんだな?」
「ああ。違う。恋なる『幻想』が入って来るまでは、違かった。天使の世界での永遠は、退屈といった感情も無い空間だった。いつも神の愛に包まれ、心地よい永遠の時を、天使たちは過ごしていた。
そして俺たち天使は、人間の心からの祈りが天界へ届けられた時に、そいつらを助ける役割を担っていたんだ。
人はいつも辛くて、悲しすぎて、苦しすぎる時に神へ祈る。涙を流しながら、祈る。
その時いつも、人間は辛い存在にしか、俺の目には映っていなかった。
それに、人の世を今まで4200年以上見てきたが、人間たちは、死を怖がりながら死んでいったし、人間同士のドロドロとした争い、貧困、格差、いじめ等、俺は、今まで見てきてうんざりなことが多かった。」
ベルトルスが苦い表情をした。
「ベルトルス。確かに、人間界で永遠を生きるのは、辛いかもしれないな。
実を言うと、俺だって、結構落ち込むことが多いから、ミリアの占いに通い続けてたんだぜ。
俺は、占いをしてアドバイスをしてくれるミリアや友人たち、そして、ベルトルス。お前の存在、子供たちの存在がいて、支えられてきたんだ。
それに俺は、生まれてきて思う。永遠じゃあなく、短い命だからこそ、時を味わって大切にできるってことをな。
人生100年っつーのも、良いもんだぜ。人間は弱くていつ病気になって死ぬか、いつ事故で死ぬかも分からない。だからこそ皆、泣いたり笑ったりして、精一杯に、一刻一刻を必死で生きていかれる。
一瞬一瞬を大切にする100年人生っつーのも、悪かないぜ。」
「そうか。」
確かにそうだとベルトルスは思う。
自分のように、この人間界で永遠ではなければ。
ベルトルスは、100年間という短い命で生きる人間たちの姿を、必死に模索しようとしているのだった。
だが、短い命を経験したことがないので、想像で理解する事しかできないのであった。
だが、しばらくして、口を開く。
「ゲオン。例えば、だ。例えばお前がずっと死なずに若いままで、4000年以上この地上界で過ごす。そういったことを、考えてみてくれ。」
「えぇ~っと、……俺が、4000年……。つまり1つの文明が生まれてそれが滅びるぐらいの間、か……。
改めて考えてみっと、正直辛いものだな。
沢山の愛する人との別れを経験し続けねばならねぇんだからな。
俺、最初は、何も分からなくて永遠がいいって思っていたけれども、違っていたんだな。
例えばミリアと死に別れたみたいに、悲しくて寂しいことが何度も続く。それをずっと続けてゆくことを考えれば、やっぱり自分で自殺しちまうかな。」
ゲオンは、真面目な表情を浮かべてベルトルスを見た。
「ベルトルス。天使の世界の永遠と、人間界での世界の永遠は、全く違うんだな?」
「ああ。違う。恋なる『幻想』が入って来るまでは、違かった。天使の世界での永遠は、退屈といった感情も無い空間だった。いつも神の愛に包まれ、心地よい永遠の時を、天使たちは過ごしていた。
そして俺たち天使は、人間の心からの祈りが天界へ届けられた時に、そいつらを助ける役割を担っていたんだ。
人はいつも辛くて、悲しすぎて、苦しすぎる時に神へ祈る。涙を流しながら、祈る。
その時いつも、人間は辛い存在にしか、俺の目には映っていなかった。
それに、人の世を今まで4200年以上見てきたが、人間たちは、死を怖がりながら死んでいったし、人間同士のドロドロとした争い、貧困、格差、いじめ等、俺は、今まで見てきてうんざりなことが多かった。」
ベルトルスが苦い表情をした。
「ベルトルス。確かに、人間界で永遠を生きるのは、辛いかもしれないな。
実を言うと、俺だって、結構落ち込むことが多いから、ミリアの占いに通い続けてたんだぜ。
俺は、占いをしてアドバイスをしてくれるミリアや友人たち、そして、ベルトルス。お前の存在、子供たちの存在がいて、支えられてきたんだ。
それに俺は、生まれてきて思う。永遠じゃあなく、短い命だからこそ、時を味わって大切にできるってことをな。
人生100年っつーのも、良いもんだぜ。人間は弱くていつ病気になって死ぬか、いつ事故で死ぬかも分からない。だからこそ皆、泣いたり笑ったりして、精一杯に、一刻一刻を必死で生きていかれる。
一瞬一瞬を大切にする100年人生っつーのも、悪かないぜ。」
「そうか。」
確かにそうだとベルトルスは思う。
自分のように、この人間界で永遠ではなければ。
ベルトルスは、100年間という短い命で生きる人間たちの姿を、必死に模索しようとしているのだった。
だが、短い命を経験したことがないので、想像で理解する事しかできないのであった。
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