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零怪 侍、現る。
二、
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藤原 徹は、その日いつにも増して暗かった。今朝いつの間にか出来ていた口内炎の痛みも、その要因の一つではあったが、何よりも今日出された課題の所為だ。
大学二年生になってからというものの、授業量が半端なく増え、ただでさえ忙しいというのに、今日また新たな課題を出されてしまったのだ。それも専門科目ではなく、ただ友人に勧められて取っただけの教養科目でだ。授業のコマとコマの間に空いた時間を埋める為、簡単に単位が取れるという話を聞き、適当に取った授業だったのだが、思わぬオマケが付いてきてしまった。
「今時、読書感想文なんて大学生のやることかよ……」
それは、授業で指定された幾つかの本の中から一つを選び、その内容について自分なりの考察をレポートにまとめてこい、というものだったが、要は作文だ。試験もない、出席も取らないで楽をさせてもらう代わりと思えば安いものだが、徹にはそれが辛い。
活字を読むのが苦手というわけではない。元々あまり本を読む方ではないが、知識を得るための専門書や実用書くらいなら普段から苦もなく読んでいる。ただ、フィクションと名のつくものにめっきり弱いのだ。作られた物語、偽りの小説と聞くと何故だか身体が拒否反応を起こす。これには、子供時代に姉から受けた酷い仕打ちが原因だと薄ら感じてはいるが、本人は必死に目を逸らそうとしている。また、特にここで挙げる話でもない割愛する。
その為、作文や読書感想文といったものも苦手となるのは当然のことで、これまで何度も苦汁を飲まされてきた。高校に上がってからは、そのような宿題もなくなり、やっと開放されたと思っていたら、今回の課題である。数学が嫌いで文系を選択したのに、大学の教養科目で数学の講義を取らなければならないと知った時の驚愕を想像してもらえれば解るだろう。徹は、その逆で理系を取った口だが、まさかここで読書感想文を書かされるとは思ってもいなかった。そもそも、作り物の話に対して、一体どういう考察をしろというのか。
やらなければならない課題は、他にもたくさんあるし、そろそろ試験勉強も始めなければならない。それなのに、こんな最も手間の掛かる授業を取ってしまった事に、今更ながら徹は後悔していた。
提出期限は、二週間後。嫌な事は、さっさと終わらせたいとは思うものの、一人暮らしの狭いアパートに籠もって本を読む事を考えると気が進まない。
「まぁまぁ。天気の良い日にさ、公園の芝生なんかに寝そべって読書するってのも、気持ちが良いもんだぜ。気分も変わるしさ、その分、集中して早く読める」
と言った、読書家の友人から受けたアドバイスを思い出し、学校帰りに近所の公園へと足を向けていたのだが、その足取りは重い。肩から掛けている鞄が普段よりずっと重く感じた。
大学二年生になってからというものの、授業量が半端なく増え、ただでさえ忙しいというのに、今日また新たな課題を出されてしまったのだ。それも専門科目ではなく、ただ友人に勧められて取っただけの教養科目でだ。授業のコマとコマの間に空いた時間を埋める為、簡単に単位が取れるという話を聞き、適当に取った授業だったのだが、思わぬオマケが付いてきてしまった。
「今時、読書感想文なんて大学生のやることかよ……」
それは、授業で指定された幾つかの本の中から一つを選び、その内容について自分なりの考察をレポートにまとめてこい、というものだったが、要は作文だ。試験もない、出席も取らないで楽をさせてもらう代わりと思えば安いものだが、徹にはそれが辛い。
活字を読むのが苦手というわけではない。元々あまり本を読む方ではないが、知識を得るための専門書や実用書くらいなら普段から苦もなく読んでいる。ただ、フィクションと名のつくものにめっきり弱いのだ。作られた物語、偽りの小説と聞くと何故だか身体が拒否反応を起こす。これには、子供時代に姉から受けた酷い仕打ちが原因だと薄ら感じてはいるが、本人は必死に目を逸らそうとしている。また、特にここで挙げる話でもない割愛する。
その為、作文や読書感想文といったものも苦手となるのは当然のことで、これまで何度も苦汁を飲まされてきた。高校に上がってからは、そのような宿題もなくなり、やっと開放されたと思っていたら、今回の課題である。数学が嫌いで文系を選択したのに、大学の教養科目で数学の講義を取らなければならないと知った時の驚愕を想像してもらえれば解るだろう。徹は、その逆で理系を取った口だが、まさかここで読書感想文を書かされるとは思ってもいなかった。そもそも、作り物の話に対して、一体どういう考察をしろというのか。
やらなければならない課題は、他にもたくさんあるし、そろそろ試験勉強も始めなければならない。それなのに、こんな最も手間の掛かる授業を取ってしまった事に、今更ながら徹は後悔していた。
提出期限は、二週間後。嫌な事は、さっさと終わらせたいとは思うものの、一人暮らしの狭いアパートに籠もって本を読む事を考えると気が進まない。
「まぁまぁ。天気の良い日にさ、公園の芝生なんかに寝そべって読書するってのも、気持ちが良いもんだぜ。気分も変わるしさ、その分、集中して早く読める」
と言った、読書家の友人から受けたアドバイスを思い出し、学校帰りに近所の公園へと足を向けていたのだが、その足取りは重い。肩から掛けている鞄が普段よりずっと重く感じた。
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