竜と人と半竜と

維都

文字の大きさ
上 下
2 / 2

半竜族の僕と○○

しおりを挟む
母様が新しい卵を産み落としてからしばらく。
外の魔力に馴染んでから孵るため、実際に手がかかるようになるまではもう少し時間があった。
新しく一族に入るこの子が孵り、独り立ち出来るようになるまで見守るのが父様に与えられた僕の仕事だ。
弟妹達がたまに持って来てくれるふかふかのクッションで作った卵の置き場に卵を置いて、時折触れて魔力を分け与えながら母様のフォローをしたりご飯を貰ったり、薬草の手入れをしたり服を繕ったりしている。
卵から孵る時から人の姿をしているが、竜族の特徴である角、爪と鱗に翼は皆が持って孵る。
その範囲の広さによって人寄りなのか竜族寄りなのかが決まる。僕以外は。
僕だけは食事が弟妹達と違うから、見た目は人寄りだし目立つ竜族の特徴は角くらい。
2番目の弟のニドは水竜で、母に似た白い肌に水色と青色が映えて綺麗な子だ。
水竜だからか、この子が居ると想寿草がよく育ってくれる。
性格も母様に似ているのかのんびりしていて穏やかだけど、下の弟と喧嘩するとなったら止まらない。
3番目の弟のサンドは竜族の特徴が強く出て、今は僕たちと同じ程度に肌を見せられるように擬態出来るけれど、孵った時点ではほとんど全身が鱗に覆われていたから服を着せることが出来なくてほとんど裸で遊ばせていた。
孵ったときから小さな身体を覆う程の翼も持っていたし、育ってからは争い好きだった父様に似たのか鍛錬好きで僕もたまに負けたし、母様もだった。
父様にも挑んでは返り討ちにされてたけど、2人とも余程楽しいのか洞窟を破壊しかけては母様に怒られていた。
サンドは深い紫色の鱗がとても綺麗な雷竜で、ニドと喧嘩すると水と雷が荒れ狂って僕が感電するからやめて欲しい。
今は外の世界をふらふらと歩き回っては10年に1度位のペースで戻って来てはあれこれと物をくれたり経験したことの話を聞かせてくれる大事な弟だ。
4番目と5番目は双子で、妹と弟。
ヨーとゴードは火竜と風竜で、妹のヨーの方が負けん気が強くてこっちもまたサンドと顔を合わせると喧嘩してる。
燃えるような紅い髪とオレンジ色の目が綺麗な子。
ゴードは基本的にはヨーの味方だけど、こっちの方が面白そうと思ったらサンドの味方に着いたりして喧嘩を煽ったりすることがあるから止めて欲しい。
たまたま皆戻ってきてた時もヨーとサンドが喧嘩して、ゴードが煽ってて、止めに入った僕が燃えてニドに消火されるなんて事故があったもんね。あれは熱かった。
僕が木竜だからすごい勢いで燃えるのに驚いたゴードが風で消火しようとして悪化して、ヨーがニドを呼んできてくれなかったら燃え尽きてた気がする。
しばらく意識が無かったから動けなくて、起きた時に母様に怒られた3人が居なかったから、気にしなくてもいいって3人を探しに行ったのが初めて森林の外まで出た時だったな。
戻ってから父様が燃えにくい素体に身体の表面を擬態させる方法とか教えてくれたし、それはそれで嬉しかった。
それで、今から孵る子はどんな子なんだろうか。
そう思いながら山と置かれたクッションの上に自分も横になって、割らないように気を付けながら卵を抱えた。
こうして抱いてやるほうが早く孵るらしいと気が付いたのは、双子の時だ。
ヨーは孵る前から卵の中で暴れ回っていたのか安置していたにも関わらずころころと転がっていた事が何度もあったので、仕方なくふたつの卵を抱えるようにしていたら数日して孵ったのだ。
ただたんに孵る間際だった可能性もあるけれど。
僕の抱えた腕の中で孵った妹と弟は、初めは僕を母様と認識したようだったけれど、母様と父様を紹介して自分は兄だと説明したところとてもよく懐いてくれた。
ちなみに僕が燃えた事件は、ヨーとゴードが生まれてから10年くらいの時。
まだ力の制御も上手く出来ないヨーがサンドにからかわれて火の粉をたくさん舞わせてサンドにぶつけようとして、サンドはサンドで静電気で跳ね返そうとして間に入った僕が全部食らったからだった。
ぼんともばんともつかないすごい音がして、その時点で僕の身体が半分燃えて崩れたらしいから、2人ともすごい強いよね。
ちなみに僕ら半竜は父様の持つ逆鱗とは少し違う、竜核というものをそれぞれ体内に持ってる。
その竜核が喪われなければ身体がぼろぼろになってもそのうち再生するから、傷付いても大丈夫。
弟妹の方が力が強いし、力の制御も未熟なうちは片手が燃えるとか窒息したりとかよくあったから慣れてるし。
話が逸れた。
次の子は土龍かな。
光竜や氷竜の可能性もあるよね。
火竜だったらヨーの時みたいに抱っこしようとしたら腕が燃えるかもしれないし、氷竜だったら腕が凍ったりするかも。
もう少ししたらこの子が孵って、そしたらきっとニドやサンド、双子も帰ってくる。
何時もはほとんど僕1人で静かな洞窟が、しばらくの間はすごく賑やかになるんだ。
「楽しみだね」
早く出ておいで。
そう思いながら、少し休もうと思って目を閉じた。



どんっと、父様の張ってる結界が揺れたのを感じたのは卵が孵ってわたわたと面倒を見始めて、ご飯をあげて眠っててとし始めてから多分3日くらい過ぎた頃。
父様も気付いだろうけどまだ出てくる気配が無かったから、すやすやと眠っている弟をクッションで隠してから念の為に愛用の槍を持って洞窟の外へと出向いた。
弟妹達は武器の類は余り使わないけど、僕は母様に教えてもらった槍を使うのが得意だ。
森の木々達に襲撃者の情報をもらうと、またアイツだと古老の大樹が言う。
アイツが来ると森林一帯が焼け野原になりかねん、なんて言い出した。それは困る。
結界に一撃を落としてからは様子を見てるようだと言う大樹に礼を返しつつ、少し焦りながらも教えられた場所に向かった。
人族の襲撃者とは明らかに気配も何もかも違っていて、どちらかと言うと父様に似た圧を感じる。
「なにか用か」
父様の張ってる結界ギリギリのところ、空中に浮いている相手の少し下、森林一帯が見渡せる程度に高い木の上まで上がってから声をかけた。
僕を見下ろしているのは僕の知らない竜だった。
父様と同等クラスの古竜。
不思議そうに眉を上げて僕を見下ろしているその竜は、火竜イグニスだとさっき大樹が言っていた。
「父様に用事があるなら伝言を受けるが」
「と……父様……!?」
「黒竜だ。僕の父様だが、火竜の貴方が私や母様に用があるとは思えない。だから、用があるとすれば黒竜の父様だろう?」
僕の言った父様、の言葉に驚愕の表情を浮かべたイグニスを見ながら、父様に用事ではなかったのだろうかと首を傾げた。
僕や元人族である母様、まだ産まれていない卵に用事があるとは思えないから、父様に会いに来たと考えるのが正解だと思ったのだが。
「黒竜が、父様だと本気で言ってるのか?」
「? 父様は父様だが……嘘をつく必要がない」
「マジか……あの黒竜が……」
「あの?」
あの黒竜とはどう言う意味なんだろうと思っていたら、大樹が母様に出会うもっと遥か昔に、この火竜イグニスと父様はやり合っていたと教えてくれた。
今は森林となっている一帯も恵みを齎してくれる湖も、父様と火竜の喧嘩で出来たものだとも。
「父様はしばらく外に出てこないと思う。だから伝言があるなら僕が受けよう」
「……お前、黒竜のなんだ」
「なんだと言われても……父様と母様の子、としか……」
「名は」
「イドだ」
名乗った僕の名前をイドか、と呟いたイグニスが、僕を見下ろしたまま見定める様に視線を投げてくる。
竜族では無くて半竜だし、父様以外の純粋な竜に会ったことのあるサンドは半竜だと舐められたと怒っていた事があったから、品定めするような視線にむっとしながらも事実でもあるから黙ったまま見返す。
「よし、決めた」
「帰るのか」
伝言は無しでいいんだなと、じゃあ戻ろうと大樹から飛び降りようとした瞬間。
父様の結界から引き摺り出される感覚がした。
結界の外から腕を突っ込んだイグニスが、僕のそんなに大きくもない翼の付け根を掴んで、結界の外に引き摺り出したのだ。
驚いて落とした槍を拾おうとする余裕も無く、父様とは違う竜の竜圧と、燃えるような火の気配、それにじりじりと翼や背中から侵食してくるような熱に身体が強ばる。
父様の結界、すごいんだな。
なんて考えていた隙に鳩尾を殴られて、体力が落ちていた僕は呆気なく気絶した。

母様がご飯中に零すような喘ぎ声と少し違う、けれど、すすり泣くような掠れた声が響いてる。
あと、すごく……すごく、熱い。
ヨーが怒ったり苛立っている時も似たような感じになるけど、それよりももっと濃密で、重苦しいくらいに熱い。
空気を求めて口を開いたのにそこを塞がれて、肉厚ななにかが口の中をまさぐってくる。
舌を吸われて粘膜を擦れさせるのが気持ちよくて、息苦しいのにもっとと口を開いたら熱いなにかが流れ込んできた。
燃えると思ったけど燃えなくて、ただ口の中も喉も腹の中も全部が熱い。
熱くて、味わったことがない味だけど、美味しい。
孵った弟にご飯をやる一方で自分のご飯と言えば木の実や弟妹のくれた保存食で済ませていたから、お腹が空いている自覚はある。
父様と母様のくれる魔力や精力に比べると木の実や保存食から得られるのは、食べ物は食べたという自己認識だけに近い。
それでも食べないよりはマシだから口にはする、そのくらいだ。
もう少ししたら父様が落ち着くだろうし、弟妹も差し入れに来てくれるからそれまでの我慢と思っていたのに、こんなに美味しいものがたくさん食べられるなんて幸せだと、ぼんやりとした頭で考える。
「やべぇ、超美味い上にくっそエロい」
「もっと……足りない……」
すぐ近くから誰か……イグニスの声が聞こえて、なにかを飲み込むごくりという音がした。
僕も、欲しい。
そう思って、彼の唇を塞ぐ。
驚いた気配はしたけれど、同時に唾液と共に精力と魔力も流れてきて身体の内側から熱くなる。
「っ、は……発火、しそ……」
「はっ……あぁ、発火か。お前、木竜だしな」
確かに燃えても可笑しくねぇなと言うイグニスの言葉に頷いて、でも、こんなに美味しいものをくれるのなら燃えても良いかと思う。
燃えたとしても、しばらくすれば大丈夫だし。
「燃えてもいいから、もっと……ご飯、欲しい」
「は?ご飯?」
「ん……お腹、空いてる、から」
卵が孵る前に母様にたくさんご飯はもらったし、父様の精液ももらったけど、僕自身が消費する生命力と合わせて弟にあげるための精力や生命力もあったから、何時もより消費する生命力が多かったせいで空腹を自覚したら止まらない。
あと3日くらい待ってたら父様も落ち着いただろうから、それまで我慢と思っていたところに不意打ちで与えられた上質な竜の生命力だ。思考が蕩ける。
もっとご飯をくれとイグニスに強請ると、呆気にとられていたイグニスがまぁいいかとでも言いたそうな表情ながらもまた口を塞いでご飯をくれた。
上質な火竜の生命力をもっと取り込みたくて舌をもごもごさせていたら、小さく笑ったイグニスが僕の舌を吸って、甘噛みしてくる。
「そんなに欲しいんなら舌出せ」
舌を出せと言われたから口を開けて舌を出すと、口の中に指を入れられた。
ちゃんとしたのに嘘つかれたと思ってイグニスを睨むと、楽しそうに笑ったイグニスが嘘はついてないと言う。
「お前、口から生命力を食ってことはあってもこっちは無いんだろ」
こっち、と言いながら、イグニスが僕の下腹部を撫でた。
母様が父様に満たされているのはよく見るけれど、そもそも弟妹以外の誰かに会うのもほとんどないんだから当たり前だと、イグニスを見る。
気絶してた間に開かれていたらしい前開きの服は腹筋を隠していなくて、イグニスの手のひらが僕の腹筋を撫でてからにやりと笑った。
「今からもう要らないって言っても許されねぇってくらい、腹満たしてやる」
「……」
「泣こうが喚こうが止めねぇから、とりあえずお前は大人しく美味いって思っとけ」
全部任せろ、とイグニスが言って、よく分からないまま頷いたらいい子だと引き抜かれた指の代わりにまた口から生命力をくれた。
出しっぱなしの舌を吸われながら乳首に触れられて、身体がビクッと跳ねる。
右の乳首も左の乳首もイグニスの手に触られて、捏ねられると腰が浮いて、その隙に腰帯を取られて下履きごと下衣を脱がされた。
産まれたばかりの弟にご飯をやるために着脱しやすい服を選んでいたから、脱がされたことに気づいたのは勃起したペニスにイグニスの手が触れた時だ。
驚いてほんの少しだけ肩を押すと、イグニスが不満そうながらも口を離して見下ろして来たから疑問を口にする。
「っ……その……イグニスも、腹が減ってるの、か……?」
「…………おう、減ってる」
「そう、か……」
それなら触れられるのも仕方ないかと力を抜いて、やりやすいように足を開く。
とは言え、最初からイグニスが僕の足の間に陣取っているから、挟んでしまって動きを邪魔しないようにする程度だけれど。
相手が弟妹であれば恥ずかしいものの食事だと割り切れるのに、イグニスが相手だと割り切るには羞恥を殺すことが出来ない。
けれど、イグニスも腹が減っているのなら、僕の生命力や精力で間に合ってくれるのなら我慢するしかない。
せめてもの抵抗に重い腕を持ち上げて顔を隠したら、隠した腕を退けられた挙句にまた口を塞いで生命力を流し込んでくる。
純粋な竜族の生命力がだいぶ満たされた僕の身体に侵食して来て思考が霞みがかって、また蕩けていく。
口の端から溢れた唾液を舐められながらペニスを扱かれてイグニスの手の内に射精すると、イグニスが僕の精液を味見するように舐めた。
弟妹達は洞窟を巣立つまで僕の精液や含めれる生命力、精力が主食だし美味しいと言うし、今でも戻ってきたときはご飯ご飯と言うけれど、イグニスに取っても美味しいと思えるものなんだろうか。
「……イグニス?」
「おう、全部出させるから覚悟しとけよ」
「……!?」
全部、とは、父様の言う全部と同意義でいいのか?
精液だけではなくて、おしっこや潮までと言うことなんだろうか!?
「む、無理だ。僕は精液しか無理だぞ!?」
「ぶっ」
「母様のように潮を噴いたり出来ないし、イグニスの前でおしっこをするのも無理だ!!!」
恥ずかしいけれども前もって言っておかないと、と思って宣言したら、また呆気にとられていたイグニスが頭を押さえて、僕の肩に頭を乗せて小さな声でなんなんだこいつと呟いた。
なにか変なことを言ったのだろうかと不安になったけれど、無理なものは無理だし、先に宣言したのは間違っていないと思う。
「まぁいい。お前が変な知識だけは持ってるってのは分かってるからな。潮とおしっこについてはおいおいとして、精液は空になるまで出して貰うからな!」
「それは困る。弟にやれるだけは残してくれ」
「は!?」
「3日前に孵ったばかりで…………あれ、此処は何処だ?弟は?」
「みっ……それで腹減らしてたのか……此処は俺の棲家で、お前の弟は居ねぇ」
「帰る」
「いや帰すか!!?」
退いてくれとイグニスの肩を押すと、握られたままだったペニスをぎゅうと掴まれた。
痛みに悲鳴をあげると慌てたイグニスが離してくれて、すまんと謝りながら今度は気持ち良さを与えるようにまた緩くしごき始める。
「いや、ほら、俺の飯代まだだろ!腹いっぱいになったんなら俺も腹いっぱいになるまで食わせて貰わねーと不公平だろ!?」
「それは…………しかし……」
「普通の竜族なら卵から孵る時点で一人なんだ、数日離れたところで死にやしねぇよ」
「僕らは純粋な竜族では無くて半竜だ。それに今は母様は出て来られないし父様は出てくる気配が無かったから、僕が面倒を見ないと」
「その結果が腹減り過ぎて、俺に拉致られてんなら本末転倒じゃね?」
「…………」
確かに本調子の時なら、たとえイグニスが相手だったとしてももう少し気を付けて動けただろうし、竜族相手だとしても鳩尾を一発殴られて気絶、なんてことにはならなかったはずだ。
イグニスの言う通り過ぎて何も言い返せずに居ると、黙った僕の口をイグニスが塞いできた。
閉じた唇を割って入ってくる舌に舌をすり合わせると、竜牙で甘噛みされて不思議なほど身体の力が抜ける。
傾けられて晒された首にも竜牙を立てられて思考回路が溶けて、左右の乳首を舐めて吸ってとした後にまた竜牙で甘噛みされるとペニスがとぷりと精液を漏らした。
胸筋、脇腹、臍に下腹部と口をつけては竜牙を立てられて、気持ちいいと思うことと喘ぐことしか出来ない。
「ひ、あっ」
ペニスを掴まれたまま内股に竜牙を立てられてイって、吐いた精液ごとペニスそのものをイグニスの口に含まれると今度こそ他のことを考える余裕が消えた。
舐めたり吸われたりする度に2度、3度と絶頂して、力が入らなくなった僕の脚を担いだイグニスが、僕の身体をひっくり返す。
引っかかっていた上着まで脱がされて、肩から背中、背骨に沿って腰まで念入りに竜牙で甘噛みされたあとは二の腕から指の先、腕が終わったら足の付け根から太腿、膝裏に脹脛、鱗を纏った足先にまで竜牙を立てられた。
指先一つ動かせないほど脱力して喘ぐ僕の尻肉を揉んでから甘噛みしたイグニスが満足そうに一息吐いて、それから何かで濡らした指をアナルに潜らせてくる。
シーツを握り締めて力無く悶えて、前立腺を探る指に耐える。
弟妹達がご飯ご飯と言う時に触られることに慣れたアナルは、イグニスの指も簡単に受け入れてしまって、理性の溶けた頭でもそれかひどく恥ずかしい。
「……お前、初めてじゃねぇな?」
「ち、が……きょう、だ……ごは……」
「ケツ開発までされてんのかよ!」
「うぁ、あっ」
「兄弟以外に触らせたことは!」
「っな、い、ない、からぁ」
「弟に突っ込まれてんのか!?」
「んっま、あっ」
ないと言う一言さえ言えずに首を横に振ると、乱雑な手付きだったイグニスが手を止めて、悪いと僕の流した涙を舐めてきた。
きもちいい、くるしい、つらい。
けど、イグニスに誤解されたままなのはなんだかイヤで、動けないままだけど口を開く。
「っ……きょうだい、ろくにん、いて」
「6!?」
「ごはん……ぼくの、精液、足りないときに、もっとって、父様に、聞いたって……」
息も絶え絶えに説明して、なんとなくごめんなさいと付け足すと、また僕を仰向けにしたイグニスが、涙を舐めてから口を塞いできた。
ご飯と言うよりはただ口を触れ合わせていて、僕がまだ足りないのかなと舌を差し出してみせたら、舌をかぷと噛んだけれど、なんと言うか戯れるような感じだ。
「こうして触られんのは、俺が初めてか」
「……こんなにたくさん誰かと話すこと自体、初めてだ」
「マジか……」
なんか悪かったとイグニスが言って、詫びるように唇を触れ合わせてきたから大丈夫だと思って、思いが伝わればいいのにと思いながら口付けを返す。
口付けをしたままイグニスがまた胸や下腹部に触れてきて、その度に小さく声が漏れる。
きもちいい。きもちいい。
弟妹達に触られる時とはなんか違う気持ち良さに翻弄されて、堪らなくなってイグニスを呼ぶと、また口付けてくれるから何度もイグニスを呼ぶ。
その内にまたアナルにも触れてきた手が前立腺を揉んでくるのに悶えて、きゅうきゅうと指を締め付ける。
イグニスになにかされる度にきもちいいが襲ってきて、それに熱くて燃えそうで、怖くてくるしいのに、もっとってなる。
「イド」
「ひぁっ」
いつの間にか動くようになっていた腕を回してしがみついていたイグニスに唐突に名前を呼ばれてびっくりしてまたイって、震えながらもイグニスを見返したらなんか変な顔をしてた。
何かを我慢してるような、でも我慢し切れないって言う……あ、母様の休息中とか触れ合い制限されてる時の父様に似てる。
ぼやーとした思考の中でそんなことを考えてたら、何度か口を開いたり閉じたりしていたイグニスが、ようやく言葉を発した。
「……あのな、性行為って分かるか」
「せい、こうい……?」
「あのくそ黒竜とお前の母親も似たようなことしてんだろ」
似たようなことと言われて、心当たりしかないので頷く。
「俺ら竜族はこいつだと思ったら番にするし、だいたいの場合はお前の母親みたいに閉じ込めてひたすら番う。んで、番ってことは何するかって、性行為、セックスだ」
「せっくす」
「今から俺のをお前に突っ込んで腹いっぱいにしてやるが、それがセックスで、子作りってことだ。まあこの1回で孕むことはないからそこは安心しろ」
「……え?はら、む?」
「孕むには1回じゃ生命力も魔力も足りないからなー」
孕むとは?1回じゃ足りないってどういうこと???俺のを突っ込んで腹いっぱいにしてやるって、父様が母様に射精しているのと、同じことをされるって、言うこと?
回らない頭の中が疑問符で埋め尽くされている僕を見下ろしたイグニスが、にやりと笑う。
雄くさい、捕食者の目で僕を見下ろしてる。
「ぁ……ああ……」
「うわ、すげぇ顔……」
すごい顔と言われたけど自分で自分の顔は見れないから、どんな顔をしてるのかは分からないけど、だらしなく涎を溢れさせてどきどきしてるのだけは分かる。
だって、孕まないにしても、イグニスとセックスするって、なんだかとても、堪らない。
震えるだけで静止する言葉なんて出せるはずもない僕の脚を持ち上げて肩に乗せたイグニスが、自分のペニスを支えながら僕のアナルに差し込んでくる。
「う、ぁ……あ、あぁ……っ」
「おい、力抜け。噛むぞ」
「ひっ」
噛むぞって脅されて、竜牙で全身噛まれた時のことを思い出して……力が抜けて、その変わりにイグニスのペニスを締め付けるとイグニスが小さく呻く。
僕がわざとじゃないと涙目で見上げると、イグニスが分かってると言いたげに額に口付けてきたからしがみついた。
あつい、きもちいい、燃えそう。
頭の中がその3つで埋まって、イグニスにしがみついたままアナルの奥まで拓かれていくのに耐える。
「燃やさないからそこは安心しとけ」
無意識にあつい、燃えるってずっと呟いてた僕に汗だくになってるイグニスが笑って言って、でもそれ以外は悪いって言う。
ぼんやりしている僕の髪を撫でたイグニスが身体を起こして、僕の腰をぐっと掴んでから唐突に動き出した。
「俺も我慢の限界なんで、なっ」
「あ、あぁっ」
イグニスの大きさに慣れるまで待ってくれていたのだとかも理解できないまま、突然に引き抜かれたイグニスのペニスがまた奥まで貫いてきて、大き過ぎるきもちいいに目の前がちかちかする。
長くて太いイグニスのペニスが前立腺を擦って押し潰して、全然知らなかった奥の方、行き止まりのところまで押し込まれる度に頭が白くなる。
「それ、や、あっこわ、あっ」
「気持ちいいだけだろ?大丈夫だ」
「や、あっなんか、なんかくるぅ……っ」
「マジか、初めてでケツイキしそうとかやっぱりエロ過ぎる!」
僕が必死になって言い返してるのに余計にイグニスのペニスが大きくなって息をするのも辛いのに、涙目に映るぼやけたイグニスはなんでか嬉しそうで、それで僕までなんだか胸がきゅうっとなる。
「っ、中すご……」
「あついぃ……っ」
アナルを行き来するイグニスのペニスから齎される先走りに含まれる火の魔力や生命力に身の内から燃えそうで、怖くて、気持ち良くてイグニスの方に手を伸ばしたら、手首をがっちりと掴まれた。
そのまま抱き起こされたと思ったら口付けられて、僕自身の重みで奥の奥まで拓かれた上に中に射精される。
衝撃に上がった悲鳴はイグニスの口に吸い込まれて、逃げ場のない熱がただ身体の中に渦巻いていく。
竜の射精は長い。
つまり、その間は僕は逃げられない。物理的に。
「もうやだ……あついぃ……」
「腹いっぱいになっても止めてやれねぇって言ったろ」
「お腹いっぱい過ぎてつらい……」
「慣れろ」
「むり」
ぼんやりしていた僕が少しだけ意識を取り戻したけど、イグニスの射精は終わってなくて、お腹の奥で火の魔力や生命力がぐるぐる渦巻いては僕をのぼせさせる。
それでも何とか無茶苦茶言われるのに言い返したら、ぐったりしてる僕にイグニスが
「任せろ慣らす」
って言い出した。
慣らすって何!?!?
「!?」
「つか、そのうち孕ますから。お前半竜だし卵は育ててもいいけど、俺のこと放ってたら覚えとけよ」
「!?」
「あとこの1回で終わりじゃねぇから。黒竜がしつこいんじゃなくて、それが竜族の当たり前だからな」
「むり」
「よしこれ飲め」
「話聞いて」
「却下」
「むぐっ」
話聞いてって言って背中を叩いたところでどうにもならないイグニスに無視されたと思ったら、指先に摘んだ何かを口に押し込まれて、そのまま口付けられたから渋々唾液ごとそれを飲み込む。
僕の喉がこくりと動いたのを確認したイグニスが口を離したから、一体何を飲ませたんだとじっと見る。
「身体、楽になっただろ」
「……うん。なんで?」
「逆鱗飲ませたから」
「…………は?」
「火耐性がついたとはいえ木竜だからな、燃える心配は無くなったと思えばいい。まあ熱いのは俺の特性だからどうしようもないし諦めてくれ」
「ちょ、は?え?」
「竜族が番を見付けた時の蜜月がどのくらいかは知ってるか?」
「えーと……母様は数年って……」
「そこは知ってるのか。なら話は早いな。籠るぞ」
「いや帰る!帰るからな!?」
「ダメに決まってんだろ?こんなエロ過ぎる番を外に出すとか無いから。腹いっぱいにずっと満たしてやるし精液だけじゃなくて他のも全部俺のもんだし俺のもんはお前のもんだ」
「っ」
ずっとお腹いっぱいに満たしてくれるって言う一言にちょっと心が動いたけど、それでも僕は帰らないと、弟が待ってるし、それに。
「1回、帰らないと、母様が」
「却下」
「此処、壊しに来ると思う」
「無い無い、人に来れる場所じゃねぇし」
「母様が僕のこと探すってことは父様も来るし、卵が孵ったばかりだから弟と妹も戻って来るし、すぐ見つかると思う」
えーって言う顔で僕を見るイグニスに、服取ってとお願いして、上着のポケットに入れてあったものを取り出して見せる。
僕の手のひらサイズの、1枚の黒竜の鱗。
「母様からのお願いで、兄弟みんな父様の鱗持ってる。だから、父様には僕らの居場所が分かる」
「………………」
「何時も卵の面倒見てる僕が居ないって分かったら、攫われたって分かる。……あれ、今日って、此処に来てどのくらい?」
「2日」
「今から帰ったらギリギリ間に合う」
「無し!却下!」
「でも……っ、は……あ……?」
イグニスと言い争って帰るっもぞもぞしてたら、急に身体が熱くなった。
力が入らなくて、イグニスの膝の上でくたりと身体を預ける以外に何もできない。
「やっと効いた」
「……?」
変なものでも飲まされたのかと思ってイグニスを見たら、僕を横たえたイグニスが逆鱗って言って、母様が逆鱗を飲まされたときに発情させられたって言ってたのを思い出した。
「半竜だと発情期ないのか?」
「知ら、な……あついぃ……っ」
「あっても無視してそうだもんな、お前」
「お前じゃな……イド……!」
僕はずっとイグニスって呼んでるのに1回しか名前で呼んでくれてないからなんとなく言い返したら、ちょっとびっくりした顔をしたイグニスが笑う。
「イド」
「ん、ん……っ」
「イドって呼ばれるの、好きか」
「……母様以外、呼んでくれる相手、居ない」
父様はおいって呼ぶし、弟達は僕のことは兄様って呼ぶ。
下の子達はニド兄様とかサンド兄様って呼ばれてるけど、すぐ下のニドが僕を兄様って呼ぶからそれが定着しちゃった感じだ。
結果、母様以外にイドって呼んでくれる相手が居なくて、でも母様も頻繁に会える訳じゃないから、イグニスに呼ばれて嬉しかった。
「イド」
「っ」
「俺も呼んで」
「いぐ、にす……っ、なん、で……」
呼んでって言われたから呼んだら、アナルを埋めたままのイグニスのペニスが大きくなった。
びっくりしてイグニスを見たら、すごく嬉しそうで僕が驚く。
「俺もずっと一人だったからな、呼ばれるの嬉しい」
あーやべぇテンション上がるとか言いながら僕の肩に頭を寄せてぐりぐりと擦り付けて来るイグニスに、イグニスって呼び掛けると嬉しそうに口付けてくる。
イグニスもイドって呼んでくれるから、嬉しくなって口を開いたら、イグニスの舌が入ってきて、また舌を甘噛みされた。
無意識にイグニスの唾液を飲み込んで、熱くなってぼんやりし始めた頭が、なにか考えないとって警告してるんだけど。
「イド」
イグニスに名前を呼ばれるとその思考も何処かに消えて、動き出したイグニスに触れられるままに喘いで鳴いた。


    
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...