あるギルドでの一幕

維都

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ダンジョンから帰ってたらあったかいご飯を食べて、あったかいお風呂に入って寝落ちしよう。
そう決めていたのに思った通りにならないのが人生で。
みんなと一緒に緊急依頼の来ていた攻略の終わったダンジョンを出て、相棒のウルフに乗って領地に戻ってご飯を食べ、領地内のお風呂に入って部屋に戻り、ベッドの端に座ってほっと一息吐いた瞬間だった。
こんこんとノックの音がして開かれたドアの先に居たのは親友の弓使いで、ワインボトル片手に飲み足りないから付き合えと部屋の前に立っていた。
なんだかんだと長く居る団長室は日課の盗伐依頼や緊急討伐などで長居することの方が少ないが、それでもベッドに着替えの入ったタンスや机くらいは置いてあるので生活感丸出しだ。
返事をする前にラグの上に座り込んだ相手は、早く座れとラグをぱふぱふと叩いている。
そこまで酒に強くない僕は、相手が持ってきたワインを舐めるようにちびちびと飲みつつ今日攻略したダンジョンのことや明日の討伐依頼について、ギルドメンバーのみんなについて、とか、たわいのない話をしていた。
暫くして時計を見れば結構な時間になっていて、グラスに1杯も飲んでいないが酔いが回ってきたのもあってそろそろ寝ようと話を切り上げる。
僕と違ってそこそこ強い相手は結構な量を飲んでいて、んーとか言いながら立たせてと手を伸ばしてくる。
はいはいと手を取って立ち上がらせて、嫌がらせにお姫様抱っこしてやろうかと思うが酔っ払い相手に嫌がらせしてもなと思い直して肩を貸してベッドに寝転がす。
ダンジョンに出向いた後、食堂でご飯を食べてから飲み足りないと部屋に来たのでいつもの服装のままだが部屋着に着替えさせるのも面倒なので、ファー付きの上着だけ脱がせてそのまま放置。
剥ぎ取った上着を椅子の背にかけ、ラグの上に座って飲んでいたので置きっぱなしのグラスと空き瓶を寝ぼけて蹴らないように机の上に避難させておく。
起きてるなら風呂入れと言えば起きてから入る、と、ベッドのど真ん中を占領する相手が言うので、これもはいはいと答えながら、火を絞ったランプを付けてベッドサイドへ置き、煌々としたメイン照明の明かりを落としてから、暫くぶりだったベッドの上に寝転がろうとした瞬間だった。
シーツにつく寸前だった腕を思いっきり引かれ、体制を崩したところに重みを感じて見上げるとアレコレデジャブ…?
疲れたし寝たい、と言えばボクは眠くないと返ってきて、ちゅっちゅと顔周りにキスされる。
抑え込まれている訳でもないので逃げようと思えば逃げられるけれど、僕だってうら若い青年なもので、触れ合うのは嫌いじゃないというか、奥手なりに好きなのでされるがままになりながら、そっと手を相手の腰に添わせると、今日はダメー、と手を外された。
前はいいから触れと怒られたので疑問符を浮かべていると酔っているのか欲情か、赤い舌で唇を舐め、今日はお前が下、と仰った。
マジですか…と思わず言うと、うんマジでマジで。と楽しそうに笑う顔がランプの炎に照らされる。
自分に似た色の、けれど決して同じではない長い髪が降ってきて、触れ合えるならまぁいいか、と促されるまま目を閉じた。


翌日。
「…今日団長の被ダメ多くない?(モンスター殴りながら)」
「あーうん、ボクのせいデスネ(キュアブレス唱えながら)」
と言うやり取りが最前線で戦うパラディンの団長を見ながらされたとか、されなかったとか。
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