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1章
たまきの元に早く着けた理由(ステファン視点)
しおりを挟む朝一で部下の報告を聞いて、別で纏められた報告書に目を通し、偵察での被害状況を確認する為に騎獣の怪我の有無、偵察部隊の物資消費量、団員達の怪我の有無等を確認して回るのが団長の役目だ。
偵察部隊は時に未知の魔物調査で現地に赴く。
いくつかの騎士団が存在するこの国で、一番死と隣り合わせと言っても過言ではない。
そんな危険な任から帰ってきた団員達一人一人に労いの言葉をかけていく。どの団員にも妻なり子供なり親なり、帰りを待つ誰かがいる。様々な場所に赴き、国を護る立場である以上、一人も欠けないというのは難しいかもしれない。
けれど、なるべく欠ける事なく待っている人の場所に帰す、そう改めて思えたのは、愛する人から指や耳元に輝く贈り物を貰ったから。
「ステファン団長。騎獣に怪我なし。団員にも怪我はありませんでした」
「了解」
たまきに会う時間を少しでも確保する為に、仕事量をいつもの倍のスピードで片付けられたおかげで、本来数日かかるかもと思ったものも数時間で片付いた。
団員曰く「いつも動くまでが遅いから数日かかるんですよ」との事。
「まだこの時間なら研究所にいるはず…。よし、迎えに行くか」
【ステファン、こちらに】
「んだよ、白龍。これからたまきを迎えに行こうとしてたのによ」
【そのたまきの事で話があるのです、こちらに】
タイミング悪く念話で白龍に呼び止められ悪態をついたが、たまきの事と言われれば話は別だ。
「たまきの事が何だって?」
【聖天使と契約したそうですよ】
「聖天使??」
【聖女でも契約が難しい精霊よりも力を持つ天使の事です】
「……は?」
【あの子、とても不思議な力を持っていますね。召喚されたのは偶然ですけど、それとは別に……ふふ、興味深い】
白龍が人に興味を示すなんて見た事がない。
そんな白龍が興味を示すたまきという存在。
……ったく。俺の可愛い女は白龍さえも虜にするか。
【あぁ、それと。たまきが聖天使の暴走で催淫状態のようですよ】
「……あ?」
【そんな殺気を出したら、たまきに嫌われますよ】
「何でそうなった?」
【ルカにでも聞きなさい。私が説明してもいいですけど、その間にたまきがどうなってもいいなら…】
「あーいい。後で聞く」
白龍からそんな話を聞いた矢先、伝令蝶からたまきの状況が送られてくる。思わず伝令蝶を握り潰して、急いでたまきの元に向かう為に踵を返す。
【たまきの元まで転移させてあげます。止まりなさい、ステファン】
「お前、そんな事できたのか」
【白龍ですからね。その代わり、後日たまきを連れてくるのですよ。あの子に聞いてみたい事もありますし…】
「たまきを傷つける発言をしないなら連れてくる」
【私を何だと思ってるんです。まぁ、いいでしょう。今はたまきですからね。ほら、転移させますよ】
「あぁ、ありがとう。白龍」
白龍が眩い光を纏うと、次の瞬間には研究所の前に立っていた。
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