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1章
ステファン様とデート②
しおりを挟む「お初にお目にかかります、お嬢様。デザイナーのリリイと申します。お嬢様に似合うドレスをご提案させて頂く為に、まずは採寸にご協力くださいませ」
案内された個室の奥には、試着や採寸を行う部屋があって、そこで下着も脱いで採寸用の薄いワンピースを着てから全身隅々余すことなく採寸された。
リリイさん曰く、採寸用の薄いワンピースは新しく開発されたもので、普段こういうのを着ない女性は最初躊躇するのだとか。
私はもちろん、躊躇なく着てしまったからリリイさんの方が驚いてた。
「お嬢様はどんなドレスがお好みでいらっしゃいますか?」
「あの…そのお嬢様というのは呼ばれ慣れてないので、たまきと呼んで頂けますか?それと口調も楽にしていただいて構いません。後ドレスには詳しくないのでお任せしてもいいですか?」
「そう?では、お言葉に甘えてそうさせてもらうわね!たまきちゃんはもしかして東の国のお生まれ?ここでは見ない素敵な髪と瞳の色をしてるわ」
「はい。今は身寄りのない私をステファン様が婚約者として迎え入れてくださって、この国で暮らしています」
「あのステファン様にもこんな可愛らしい素敵な婚約者ができて嬉しい限りよ」
雑談をしつつ、同席してるリリイさんのお弟子さんに指示をしながらドレスが次々と運ばれてくる。
「普段着はさっき着てたワンピースタイプがお好みであれば、コルセット付きのフレアスカートタイプのワンピースとか、ミモレ丈のドレスも似合うわね!パーティードレスはボディラインが良く見えるようにマーメイドライン、胸元はレースを使って…うん、合わせただけなのに良く似合うわ」
「ドレスはステファン様の色も入れたくて…社交界ではご法度でしょうか」
「あーーん!いいじゃない!じゃあ、星空を纏ったような黒のドレスとステファン様の真紅を取り入れたドレスを作りましょ!デザインは任せておいて!」
リリイさんのお弟子さんが凄い速さで、リリイさんの提案をメモしていく。普段からこんな感じの弾丸トークから必要な箇所をメモするのが日課なんだろうな。頑張れ、お弟子さん。
「あ、そうだ!最近こんなの作ったんだけど良ければ試してくれない?」
そう言われて渡されたものは、ステファン様に見せたら絶対喜びそうなアレだった。この世界では流通していないそうでリリイさんは売り出すかカップルの反応を見たいんだって。
「分かりました。今度試して見ますね」
◇◇◇◇◇
マダムリリイでの買い物を終えて、ステファン様と最近帝都で話題のカフェでお昼を食べて、手を繋ぎながら歩いていると、あるお店の前で足を止める。
「どうした?」
「このお店入ってみてもいいですか?」
「おう」
ステファン様と入ったお店は色とりどりのタイピンを取り揃えたメンズ向けショップ。
さっき、リリイさんから男性にタイピンを贈るのは、彼が私の元に怪我なく戻ってきますようにという意味があるって聞いたから、私からも何か贈ろうと画策中。
お金も沢山あるし、贈り物をする余裕があるしね。
...とはいったものの、タイピンを選ぶのも贈るのも初めてだから何を選べばいいか全く分からない。降ってこい、私のプレゼントセンス。
「なにかお探しですか?」
「初めてタイピンを贈るのですが、どんなものを贈ればいいのか悩んでしまって.....」
「そういう事でしたら、お客様の色が入ったタイピンを選ばれると喜ばれますよ。贈られた相手を想像するほど、その人の元に帰れるというものですので」
「なるほど!ありがとうございます!」
店員さんの話を聞いてからはスムーズにタイピンを選ぶ事ができた。ステファン様と、この間のお詫びもかねてルカ様、受け取ってもらえるかすら怪しいけどノヴァ様にも。
その後はいくつかお土産を買って、急遽騎士団長の召集が陛下からかかった事で、私達は慌ててデートを切り上げて城へと戻った。
「悪いな、また慌ただしくなって」
「いいえ、お仕事ですから気にしないでください」
「久遠、紫苑。問題ないとは思うが、たまきの事よろしくな」
【まっかせてー!主には指一本触れさせないから!】
部屋の前まで送ってくれたステファン様は、そのまま陛下の元へと走っていく。
その後ろ姿は先程までのステファン様とは違い、国を守護する誇り高き騎士の背中をしていた。
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