召喚勇者と関西弁エルフ

えびまる

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本編

真心の密室5

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 霧が晴れた部屋の中央に、ぽつりと石碑が立っていた。
 ミーグはジルクの拘束から抜け出し、そっと石碑に近付いて行く。

「……先程まであのようなものは無かったはずだが」
「えぇ、やだよービビらせないでよぉ……」

 ジルクはすっかり平常心を取り戻し、ミーグの後ろをついて行く。

 石碑には文字が刻まれていた。

『欺きの霧、心の影を映す。真を語らねば、幻は魂を喰らう。愛も欲も包み隠さずさらけ出せ』

「……」
「……どういう意味?」

 ミーグはジルクからの問いかけに答えた。

「あの霧は潜在意識にある本心を話させるものであったのだろう。逆に黙り込めば自らの闇が炙り出される……と言ったところか」
「あ……俺、昔の俺が見えたよ」
「そうか……」
「本心を話させる霧かぁ、だからあんな事言っちゃったんだね、結局もっとラブラブになれたからいいけどっ♡」

 再び抱きついてくるジルクをチラッと見ながらミーグは言う。

「……我らは丸く収まったから良いが、そうでない者たちも少なからずいたはずじゃ」
「……うぇー。てかさ、後出しずるいよね?霧が晴れてからこれ出てきたじゃん」
「そうだの……だか変じゃ」
「……ん?」
「次に進めるような何かが現れぬ」

 ミーグの言う通り、2人は霧の効果により本心をさらけ出し『魔王を倒したら番になる』という約束さえ交わしたのに、霧が晴れ、石碑が現れた以外の変化は何も見られない。

「……んー、まだ言えてないことがあるとか?」
「いや、それならば霧が出ていた時に口から出たはずじゃ」
「……そうかぁ」

 ミーグは再び石碑に目を向ける。
 文字に変化はない。
 石碑に他の文字が刻まれているのでは、と周りをぐるっと見てみたがそんなものは無かった。

「うーん。じゃあ『欲』の方なんじゃない?」
「ん?」
「だって俺、さっきの部屋の媚薬みたいなのでムラムラしてるもん」
「……」

 ジルクのあけすけに放たれた言葉に、ミーグは少し呆れたものの、確かに……と思ってしまっていた。

 実際ミーグもある程度耐性があるとはいえ、長時間あの迷宮で吸ったピンク色の霧の効果は出ている。

「こんな所でか?」
「うーん。こんな石の上でしたら背中とかずるむけになりそう!」

 長年の付き合いの2人には最早ムードとか言うものは無い時の方が多い。
 する事になるならさっき思いを伝えあったいい感じの時に襲えばよかった、とジルクは思っていた。
 ミーグに軽くいなされそうだなと思ったからしなかったのだけれど。

「……ふむ、じゃあ寝心地のよい空間にするかの」
「えっ……?」

 冗談半分で言ったはずが、返ってきた言葉にジルクは動揺し、思わず目を見開きミーグをじっと見る。
 えっちの時はいつもジルクから誘うし、ミーグは淡白なのだと思っているので積極的な事を言われるのに慣れていないのだ。
 (ミーグは『いたいけな幼子に手を出している気分になる』と未だに言ってくるし)

「……い、いいの?」
「そなたの欲も、我の欲も……さらけ出せばいいのであろ?」

 いたずらっぽく笑うミーグにジルクの心臓は激しく音を立て始めた。
  
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