召喚勇者と関西弁エルフ

えびまる

文字の大きさ
79 / 80
本編

真心の密室4

しおりを挟む

「……お、俺はっ。俺だって最初に好きだって伝えた時、師匠に『刷り込み』だって言われて、そうなのかなって、いっぱい考えたよ」
「……」
「でも、それでもどうしても師匠がいい。だって、俺の全部は師匠なんだもん。刷り込みだってなんだって、他の人より師匠がいい。師匠が一番好き。……それじゃあダメなの?」
「ジルク……」

 ジルクの目は真っ直ぐにミーグを見ていて、少しもブレがなかった。

「……さっき言った事もなんでもないって言ったけど、やっぱりちょっと思ってる。言うつもりは全然なかったから何で言っちゃったのかわかんないけど……」

 ジルクは眉を八の字に下げた。

「でもどうしようもないもんね、種族間の寿命なんて。だから俺は……」
「……どうしようもなくはない」
「……え?」

 ミーグは自らの口から出た言葉に自身でも驚いていた。
 ダンジョンから無事に出られたら話そうと思っていたのに、鏡の間でした決心は何だったのか。

 だが何かを匂わせたままで逃してくれるほど、この弟子は甘くないだろう。
 ならば腹を括ってここで伝える他にない。

「妖精族は生涯に1人、番を持つ。番になるとその相手の寿命を自分に合わせることが出来る」
「……それって?」
「自らより短命種ならばそやつの寿命が伸び、自らより長命種ならばそやつの寿命が短くなる」
「……俺のことは番にしてくれないってこと?」
「なんでそうなる」
「……だって、今までそんな事一度も言わなかった」

 やっと引っ込んだと思ったのに、ジルクの目には再び涙が溜まっていた。

「お主に人を辞めろと言うのだぞ?そんな簡単に言えるわけがなかろうが」

 少し苦笑いしてミーグはジルクの赤くなった目の下を優しく親指で撫でる。
 無意識だろうか、手に擦り寄ってくるのが可愛らしい。

「それでも俺は師匠と一緒に生きたいよ……」

 想像通り、いや、想像以上の決意と甘さの込められた言葉にミーグは腹の底が熱くなった。

「……よいのか?一度番えば解除は出来ぬし、他の者と情を交わすことが出来なくなるぞ?」
「他のやつなんていらないよ。俺には師匠だけ。師匠は?」

「……我も、欲しいのはそなただけじゃ、ジルク」
 
 ミーグはジルクを抱きしめながら、ジルクにしか聞こえないほどの小さな声で囁いた。

「だが、番になる儀式には時間が必要になる。どちらにせよ魔王を倒してからということになるが……人間には途方もない寿命となるのだぞ?それでも我と共に生きてくれるのか、ジルク」
「……うん!!」

 ジルクはミーグにぎゅーっと強く抱きついた。

「……師匠、あのね」
「なんじゃ」
「だーいすき!」
「ふふ、知っておる」

 ジルクはもぞもぞと動くと、いつものミーグを自分の腕の中に収めるような格好になる。

「やっぱりこれが1番落ち着く……」
「ふふ、そう言ってられるのもあと数百年じゃぞ」
「……え?そうなの?」
「我はまだ成長期ぞ、妖精王の身長はゴウシュほどじゃ」
「えぇ?!想像つかないな……」

 2人はお互いを離さないように抱きしめあっていた。
 いつの間にか部屋に満ちていた霧は無くなっていた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...