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本編
真心の密室4
しおりを挟む「……お、俺はっ。俺だって最初に好きだって伝えた時、師匠に『刷り込み』だって言われて、そうなのかなって、いっぱい考えたよ」
「……」
「でも、それでもどうしても師匠がいい。だって、俺の全部は師匠なんだもん。刷り込みだってなんだって、他の人より師匠がいい。師匠が一番好き。……それじゃあダメなの?」
「ジルク……」
ジルクの目は真っ直ぐにミーグを見ていて、少しもブレがなかった。
「……さっき言った事もなんでもないって言ったけど、やっぱりちょっと思ってる。言うつもりは全然なかったから何で言っちゃったのかわかんないけど……」
ジルクは眉を八の字に下げた。
「でもどうしようもないもんね、種族間の寿命なんて。だから俺は……」
「……どうしようもなくはない」
「……え?」
ミーグは自らの口から出た言葉に自身でも驚いていた。
ダンジョンから無事に出られたら話そうと思っていたのに、鏡の間でした決心は何だったのか。
だが何かを匂わせたままで逃してくれるほど、この弟子は甘くないだろう。
ならば腹を括ってここで伝える他にない。
「妖精族は生涯に1人、番を持つ。番になるとその相手の寿命を自分に合わせることが出来る」
「……それって?」
「自らより短命種ならばそやつの寿命が伸び、自らより長命種ならばそやつの寿命が短くなる」
「……俺のことは番にしてくれないってこと?」
「なんでそうなる」
「……だって、今までそんな事一度も言わなかった」
やっと引っ込んだと思ったのに、ジルクの目には再び涙が溜まっていた。
「お主に人を辞めろと言うのだぞ?そんな簡単に言えるわけがなかろうが」
少し苦笑いしてミーグはジルクの赤くなった目の下を優しく親指で撫でる。
無意識だろうか、手に擦り寄ってくるのが可愛らしい。
「それでも俺は師匠と一緒に生きたいよ……」
想像通り、いや、想像以上の決意と甘さの込められた言葉にミーグは腹の底が熱くなった。
「……よいのか?一度番えば解除は出来ぬし、他の者と情を交わすことが出来なくなるぞ?」
「他のやつなんていらないよ。俺には師匠だけ。師匠は?」
「……我も、欲しいのはそなただけじゃ、ジルク」
ミーグはジルクを抱きしめながら、ジルクにしか聞こえないほどの小さな声で囁いた。
「だが、番になる儀式には時間が必要になる。どちらにせよ魔王を倒してからということになるが……人間には途方もない寿命となるのだぞ?それでも我と共に生きてくれるのか、ジルク」
「……うん!!」
ジルクはミーグにぎゅーっと強く抱きついた。
「……師匠、あのね」
「なんじゃ」
「だーいすき!」
「ふふ、知っておる」
ジルクはもぞもぞと動くと、いつものミーグを自分の腕の中に収めるような格好になる。
「やっぱりこれが1番落ち着く……」
「ふふ、そう言ってられるのもあと数百年じゃぞ」
「……え?そうなの?」
「我はまだ成長期ぞ、妖精王の身長はゴウシュほどじゃ」
「えぇ?!想像つかないな……」
2人はお互いを離さないように抱きしめあっていた。
いつの間にか部屋に満ちていた霧は無くなっていた。
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