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本編
真心の密室3
しおりを挟むミーグはジルクの背中を優しくさすりながら声をかける。
「ジルク、深呼吸じゃ。吸って……吐いて……。そうじゃ、上手く出来ておる、いい子じゃジルク」
ジルクを視界の端に入れながら部屋の中を調べていたミーグは、ジルクの異変にすぐに気がつけた。
突然何も無い方向に向かって叫び出し、身体の震えも尋常じゃない様子だった。
「師匠っ、師匠……」
「どうしたジルク、もう怖いものなど何も無いであろ?ほら、大丈夫、大丈夫」
ジルクはある日、ボロボロの姿で魔塔の前に捨てられていた。
人間にしては多く魔力を持ち、何か訳ありそうな幼い子ども。
ミーグはその頃の長に『なんか調べてみたけど、ややこしそうだからお前が面倒見て』と言われ、それからずっとジルクの面倒を見ている。(そしてややこしい事の処理もミーグが全て行った)
そう、ずっとだ。
「ジルク、お主は……お主は本当に我で良いのか?」
「……え?」
「お主の我に向けてくれている好意は、刷り込みではないのか?ずっと一緒にいたから、それで我しかおらぬと思い込んでおるのでは無いのか……?」
ミーグの口からポロッと無意識に言葉がこぼれ落ちた。
ジルクが背中のローブをぎゅっと握ったことで我に返る。
「……違うって何度も言ってるっ!俺には師匠しかいないって!色んなやつに出会ったけど、やっぱり俺は師匠がいい、師匠が大好きだってずっと言ってる!!」
「……」
必死に縋りついてくるジルクに胸が締め付けられる。
「大体、師匠は長生きするんだからいいじゃん!何十年間かの短い間だけでも俺にくれたって!一瞬でしょ?!遊びだと思えばいいじゃん!どうせ俺のことなんかすぐに忘れるくせに!遊びなんだから俺が刷り込みだろうがなんだろうがどうでもいいでしょ!?」
「ジルク」
「……っ」
ミーグは背中に回ったジルクの腕を解き、少し身体を離しジルクの目を見た。
ジルクは泣くのを我慢しているのか、目を真っ赤にし涙を溜めている。
「……確かに我は妖精族。人間からすれば途方もない年月を生きるであろう。だが、幼き頃より大切に育ててきたお主のことを遊びだなんて、忘れるだなんて出来るはずなかろう?ジルク、お主の目に我はそんなに軽薄に映っておるのか……?」
そう伝えるとジルクは眉を八の字に下げ、言葉が出ないのか口を開け閉めしている。
「……お主に捨てられるのが怖いのは我の方じゃ。お主は我を優先するあまり気付いておらぬが、とても美しい。魔力量とて、それを使う技術とて申し分ない。外に目を向ければすぐに引く手数多であろうよ。そんな美しいものを我のようなじじいが独占して良いのか、今でも分からぬ。短い人間の生じゃ。飽きられて忘れられるのは我の方であろうよ」
「……師匠」
「……だが、どうしてもこの手を離してやれぬ。人間は人間と結ばれるのが1番良いのだとわかっている。だが我は、我の方からはこの手を離してやれぬのだ、ジルクよ」
ジルクの手をキツく握ると、ジルクはハッと息を飲んだ。
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